公共R不動産研究所
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どうする? 猛暑の公共空間デザイン #03 いざソウル視察! 〈探索編〉

年々、過酷になる夏の暑さ。同時に公共空間も使いづらくなる状況が生まれています。最高気温40℃以上の日を「酷暑日」と名付られるなど、都市の暑さは非常時ではなく、日常となっていきそうです。そんな状況に対して、都市政策として、また公共空間としてどんなアクションを取り得るのか、あれこれ議論を重ねる連載。今回は金子研究員による韓国・ソウル視察〈探索編〉です!

どうする? 猛暑の公共空間デザイン #01 暑さを乗りこなす世界の都市から考える」の記事でも紹介されていた韓国の猛暑対策。

私自身も2023年から年に2回程度韓国に行き始め、横断歩道のパラソルを発見し、記事(「日本でも取り入れたい、台湾の公園における「日陰」のデザイン」)やpodcastでも度々話題にしてきました。
個人的な感覚ではありますが、行くたびに暑さ対策に対して目に見える変化があるソウルと、公共空間での変化が見えづらい東京。そこにはどんな違いがあるのだろう?
そんな中、企画した公共Rメンバーでの自主韓国・ソウル視察。
街を巡り、ソウルの取り組みを実際に見たり、延世大学の方々と意見交換をしたりと充実の視察となりました。その様子をレポートします!

ソウルツアーの視点と基礎情報

まずは基礎情報。各国の首都があるソウルと東京の気温を比較してみると、下記の図の通り、冬の平均気温は日本の方が高いものの、夏はあまり変わりません。湿度は、冬は日本の方が低く乾燥しており、6月の梅雨の時期は日本の方が高く、夏は気温同様あまり差がありません。

2025年の月別平均気温と湿度 参照:日本気象協会の「過去の気象データ検索」と韓国気象庁「気象資料開放ポータル」より

私たちがソウルに行ったのは4月の中旬。日本と気温はほぼ変わらず、日中は20-24℃くらいと過ごしやすく、夜は少し肌寒くなるくらいの気候です。

今回巡ったのは、計6ヶ所。
ソウルエナジードリームセンター
・汝矣島漢江公園
・ソウルの森公園
・ソウル広場
・清渓川
・光化門広場

前半は、漢江沿いの大きな公園(ワールドカップ公園/汝矣島漢江公園/ソウルの森公園)を中心に、夕方〜夜には、ソウル市庁舎駅周辺の都市空間(ソウル広場/清渓川/光化門広場)へと、大きく2パートに分けて計画。

前半の公園パートでは、漢江周辺に位置するソウルエナジードリームセンター、汝矣島漢江公園、ソウルの森公園を巡り、公園など広大な緑地でなされている暑熱対策を、後半の都市空間パートでは、ソウル広場、清渓川、光化門広場を対象に、都市空間における日除け対策や緑地づくりの工夫を体感しました。
14:00に集合し、20:00の解散まで、たっぷり散策しました。

公共R不動産チームの韓国猛暑対策ツアーマップはこちら

①14:00-14:30 ソウルエナジードリームセンター

特徴的な造形のソウルエナジードリームセンター。正面の扉も斜めでした(撮影:金子愛)

まず向かったのは、ソウルエナジードリームセンター。韓国初で最大となるエネルギー自給自足施設で、エコ・エネルギー技術について学んだり体験することができるとのことで、ソウルの暑熱対策が学べるかなと思い訪れました。

少し早めについたので、この座面が広めの日除け付きベンチで皆を待っていたのですが、座面が広くて背もたれもしっかりついているため、外なのにとてもくつろげました。

日除け付きベンチ。家族でピクニックしていたり、寝っ転がってお話ししている人も。とても気持ちがよさそうでした。(撮影:金子愛)

敷地内には他にも色々なベンチ&充電できるスペースや、夏は水遊びができるスペースなど、エネルギーセンター周辺だけでも、様々な日除け付きベンチを見ることができて、楽しかったです。

肝心のソウルエナジーセンターは、エネルギー源の種類や、地球温暖化についてゲーム感覚で学べる工夫がたくさんありました。Google翻訳を駆使したものの、自分自身がどこまで理解できているかは不明ですが、ハングルがわからなくても、展示の仕方に工夫があり、伝え方が興味深かったです。

ゲームや動画で環境やエネルギーに関する問題を解いたり、映像で見たりすることができます

②15:00-16:00 汝矣島漢江公園

続いて、タクシーで向かったのは、汝矣島漢江公園。私が「2025年度メンバーが行ってよかった公共施設」でも取りあげたお気に入りの公園です。

汝矣島漢江公園の全体マップ
出典:https://hangang.seoul.go.kr/www/contents/669.do?mid=473

この汝矣島漢江公園は、長さ8.4km/1,487,374㎡という広大な面積を有しています。(日本で近しい規模の公園を探すと国営昭和記念公園が1,653,000㎡。行ったことがある方は、その広さをイメージできるかと)

この広大な公園では、橋の下に健康遊具や自転車などで走れるパンプトラックやベンチが設置されていたり、気持ちよい木陰があったり、浅い水路があったり(9月ごろに行った時には足をつけて涼んでいる大人と子どもがいました)と、随所に暑さ対策をしながら、快適に過ごす工夫がなされています。

橋の下に縁台ベンチが設置され、人の居場所になっている。
橋の下に設置されたパンプトラック 
子どもが足をつけて遊びやすい水位の水路

訪れたのが平日(木曜)の15:00にも関わらず、、駐車場に車がびっしり。イベント(スプリングフェスティバル)中だったことも関係していたのかもしれませんが、その賑わいに驚きました。

白と黒の車ばかりの駐車場

公園の木陰ではピクニックしている人をたくさん見かけました。
#02で紹介した、iFデザイン賞を受賞した雲幕のシェード等も発見しましたが、できる影の範囲の狭さからなのか、木陰の方が圧倒的に人が多く、人気でした。
木も背が高いというよりも横に葉が大きく広がるような樹種が植えられていて、木陰をデザインしている印象を受けました。

左 雲幕のシェード。目の細かいメッシュのような素材で作られていました 右 日本でも見かけることがあるシェード
木陰では多くの人がピクニックを楽しんでいました

ピクニック用のシートやアウトドアチェア、テーブルなどのレンタルサービスも公園内にあり、手ぶらできても、快適に過ごせそうでした。

③16:00-17:00 ソウルの森公園

続いて一行はソウルの森公園へ。
ソウルの森の面積は約1,156,498㎡、ソウル市内で6番目前後にランクインする大きい公園です。元々は競馬場やゴルフ場、工場などが立ち並ぶエリアでしたが、2005年、都市の過密化と緑地不足を解消すべく、ゼロから木を植えてできた「人工の森」がつくられ、現在は都市の熱を冷ますクールアイランドとして機能しているといいます。
私たちが行った時期は、ソウルインターナショナルガーデンショーの準備中で、ほとんどの場所に立ち入ることができませんでしたが、そんな中でも印象的だった場所をご紹介します。
まずは、いたるところに設置されている木陰の縁台タイプのベンチ。ただのベンチではなく、座面が広いことで、外とは思えないくらいリラックスして時間を過ごす様子が見られました。

ソウルの森公園の至る所に設置された縁台ベンチ

そして、公園の植栽の豊かさと程よい森感。これは、公共Rのメンバー内でも意見が異なった部分はあるのですが、私自身は、「光が差し込む心地よい森・庭」を感じました。これは、この後に記載する光化門広場でも感じました。

単一の植物ではなく色々な植物が植えられ共存しているところが、心地よい森・緑感を感じるポイントなのかもしれないです
左 エアプレッサー 右 駅の微細粉塵自動吸引マット(撮影:金子愛)

また、埃を落とすエアプレッサーが公園の入り口に設置されていたのも興味深かったです。
最寄駅には、砂埃などを吸い込む微細粉塵自動吸引マットも設置されており、埃や花粉を家や建物に持ち込みたくないという意志を感じました。

ソウルインターナショナルガーデンショーの仮囲い。

そして、絶賛準備中だったソウルインターナショナルガーデンショーの仮囲いもオシャレです。気になって調べてみると、2026年5月から10月に、ソウルで開催される大規模な国際園芸博覧会で、、単に美しい庭を作って鑑賞するというだけでなく、都市環境の改善と持続可能な未来を目指すソウル市の施策「 Garden City Seoul」の一環でもあるとのこと。

Garden City Seoul(庭園都市・ソウル)」は、現在のソウル市長(呉世勲氏)が推し進めている「都市そのものをひとつの巨大な庭園にする」というプロジェクトです。

  • 「空き地」を庭園に。2026年までに、ソウル市内の至る所(道路の脇、ビルの屋上、高架下など)に1,000カ所の庭園を新設する計画。
  • 「歩ける距離」に緑を。家から徒歩5分以内で誰でも緑に触れられる環境(「庭園歩き」)を整備し、市民のメンタルヘルス向上を目指す。
  • 「気候変動対策」としてのインフラ:植物を「装飾」ではなく、ヒートアイランド対策や微細粉塵(PM2.5)を吸着するための「都市の装置」として活用する。

https://www.koreatimes.co.kr/southkorea/society/20240307/seoul-city-to-create-1000-gardens-by-2026

ヒートアイランド現象の低減や空気の浄化を目指した都市の緑地化を、人々に身近な「庭園」という形で進めています。生物多様性を守るアクションや、倒木や落ち葉などの廃材を再利用した庭園デザインも展示されており、ゴミを出さない循環型の都市づくりのモデルを示しているそうです。
単なるイベントで終わらせず、都市政策と繋げながら、都市の未来を本気でデザインしようとするソウルの姿勢が伝わってきました。

④17:30- 20:00 ソウル市庁舎駅周辺の公共空間(ソウル広場〜清渓川〜光化門広場)

最後にソウルの森公園から、ソウル市庁舎駅まで電車で移動。ソウルの森公園から駅までの道のりでクーリングシェルターとパラソルを発見しました。

ソウルの森近くのパラソル。椅子がついています。

パラソルはソーラーパネルを電源に、自動開閉型と、手動のものがあります。翌日の延世大学との意見交換で教えていただいたのですが、手動といっても毎日開閉するのではなく、4月ごろに開いたら10月ごろまでは開きっぱなしで、台風の時など強風の時には手動で閉じる運用になっているとのこと。このパラソルは、韓国内のテント幕メーカー(中小企業)約30社が作っており、年々、改良され続けているそうです。テント幕の素材はメッシュで、風を通すようになっており、支柱は地面に埋め込まれ、しっかり固定されているものが多かったです。

別のところで見つけたソーラーパネル付きの自動開閉のもの。こちらの幕は、強風の時には閉じるため、メッシュ素材ではありませんでした。(撮影:金子愛)

こちらは、バス停近くのクーリングシェルター。
日本でいう電車のホームの待合室のようなもので、空調付きの部屋の中で、座ったり、スマートフォンの充電をしたり、バスや現在の気温などの情報を得ることができます。

クーリングシェルター。右の方が新しいタイプのようです。

ちょうど私たちが行った日から、ソウル野外図書館が始まっていたので、その様子も見ながら、ソウル広場〜清渓川〜光化門広場を歩きました。

ソウル市庁舎の前にあるソウル広場では、様々なイベントが開催されています。ベンチにも植栽が埋め込まれており、プチガーデンがありました。

左 ソウル広場 右 ソウル広場に設置された植栽埋め込み型ベンチ。背もたれに角度があり、座面が広く座りやすかったです。

続いて清渓川へ。今年度のソウル野外図書館の1日目ということで、トークイベントが行われていました。心地よい気候だったこともあり、たくさんの人で溢れていました。

夜の時間のイベント開催は暑さ対策としても有効。
左 今年はネオンで光る本棚もありました。 右 テーマーカラーは白とオレンジのよう。このオレンジは、ガーデンショーのテーマカラーでもあり、至る所でキーカラーとして使われていました。
別の日に行ったら、昼間は、日傘の貸し出しなどを行なっていました。(撮影:金子愛)

最後に、光化門広場へ。高層ビルに囲まれた、日本でいう東京駅前の広場のような雰囲気の場所なのですが、広大な広場の至る所に木々や草花が植えられ、日陰には、誰もが自由に腰を下ろせるベンチがあちこちにあります。夏には水路に水が流れており、子どもからお年寄りまで、老若男女が思い思いにくつろぐ姿が印象的な場所です。

光化門広場でくつろぐ人々。デザイン性の高いファニチャーも印象的。(撮影:金子愛)
別の日に行った夕方の光化門広場の様子。どの時間に行っても人が座って、くつろいでいます。(撮影:金子愛)

ソウルで見た風景につながる『Garden City Seoul』の考え方

今回の視察を通じたメンバー間の議論や、帰国後友人と旅の話をする中で、日本と韓国における「暑さ対策」への向き合い方の違いを感じました。
日本では、暑さ対策は「個人の努力(日傘や服装など)」に委ねられがちです。対するソウルでは、横断歩道の巨大パラソルやバス停のクーリングシェルター、そして街全体の庭園化など、行政が主体となって推進していくという姿勢が感じられました。

なかでも印象的だったのは、ソウル市が掲げる「Garden City Seoul(庭園都市・ソウル)」の思想です。推進ロードマップでは、

“従来の公園が行政の管理する「見る」場所だったのに対し、庭園は市民が「楽しみ、自ら育て、体験する」主体的な空間である”

と書かれています。

呉世勲(オ・セフン)市長も「市民が自らガーデナーとなり、まちを愛でる文化を作ることが、都市の品格を高め、孤独や環境問題の解決につながる」と発信しているとのこと。

調べていくうちに、視察中に感じた「心地よい森・緑感」や、「縁台ベンチでくつろぐ人々」を思い出し、私が見た風景は、ソウル市の『Garden City Seoul』の考え方につながっているんだと気づきました。

日常のすぐそばに程よく人の手がかけられた心地よい自然や、公共空間の中の居場所があり、その恩恵を市民が享受している。その空間で過ごす中で、「この居心地のよい空間を失いたくないから、環境のことを自分ごととして考えてみる」というきっかけになっているのではないかと感じました。それは暑さ対策を超えて、「このまちが好きだ」という気持ちが芽生える仕掛けにもなっているように見えます。

これからも各地の取り組みを調査しつつ、日本でできることがないか研究していきたいと思います。

参考:庭園都市ソウル物語.pdf

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