公共R不動産のプロジェクトスタディ
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「使い方の数だけ、都市が豊かになる」PUBLICWAREが実装する新しい公共空間

PUBLICWAREは、公共空間をもっと自由に使いこなすための家具やツール、運用の仕組みを開発し、都市の現場へと実装するプロジェクトです。2020年のスタート以来、プロダクト開発や場づくりの実践を通じて、公共空間の新しい使い方を探ってきました。2026年春の法人化を経て、その活動はさらに広がっています。今回は代表の大橋一隆に、PUBLICWARE誕生の背景やこれまでの実践、そしてこれから描く都市の風景について聞きました。

PUBLICWAREとは?

街にあふれる公共空間や広場、遊休空間を、もっと楽しく、もっと自由に、誰もが気軽に使うことができたら、街はもっと豊かになる。

こうしたテーマを掲げて、2020年、PUBLICWAREは立ち上がりました。
建築設計事務所・株式会社オープン・エーのプロジェクトとして、これまでストリートファニチャーや屋台などのプロダクト開発のほか、空間を使いこなす企画提案や場づくりを実施。公共空間を気軽に楽しむきっかけをつくる実践を重ねてきました。

株式会社PUBLICWARE代表の大橋一隆。2003年、株式会社OpenA設立に参画。現在同社クリエイティブディレクター。空間設計/デザインを軸としながら社会課題の解決や、エリアの開発、新しい価値創出を実現するプロジェクトに取り組む。

プロジェクト誕生のきっかけは、ひとつの言葉のひらめきだったと大橋は話します。

「当時、Open Aや公共R不動産を通じて、パブリックな領域の仕事に携わることが年々増えていました。そのなかで、都市を構成するあらゆる要素を一言で表現できる「PUBLICWARE(パブリックウェア)」という言葉を思いつきました。

食器やカトラリーなどのテーブルウェア(TABLEWARE)が食卓を豊かにするように、PUBLICWAREは都市生活を豊かにするための道具。そんなイメージから生まれた名前です。

頭の中にあった風景を、一枚の絵に描き出してみました。多様なツールが街に溶け出して、新しい「場」が生まれ、それが街に広がっていく。この風景を実現できるようなプロダクトや仕組みをつくりたい。そんな想いから動き始めました」

PUBLICWAREが都市に展開されているイメージ図

実践から生まれたPUBLICWARE

ここで、これまでの活動を振り返りながら、プロダクトをどのように改良してきたのか、そのプロセスを紐解いていきます。

自主事業もあれば、クライアントワークもあり、行政・地域・企業などの多様なステークホルダーと協働してきたこともPUBLICWAREの特徴です。
場所や企画ごとに実施条件は異なり、その都度見えてくるさまざまな課題をプロダクト開発や改良へとつなげてきました。

泊まれる公園 INN THE PARK

静岡県沼津市で愛されてきた「少年自然の家」を現代的にリノベーションした、新しいタイプの複合宿泊施設。PUBLICWARE誕生のきっかけともなったプロジェクトです。
企画や設計を自社で行い、施設のアイコンでもある森に浮かぶ球体テントも自社開発。運営もOpenAの子会社が手がけています。

「INN THE PARKで広大な公園を舞台にさまざまな企画やイベントを実践するなかで、雨、風、紫外線、片付け、運搬など屋外で場づくりをする難しさを感じてきました。もっと気軽に、快適な屋外空間を設けることはできないか?と模索を続けていきました」

所沢市の社会実験「STREET PLACE CHALLENGE」

所沢駅周辺のグランドデザインに基づく社会実験マーケット『STREET PLACE CHALLENGE』。今後開発が行われる駅前空間に、マーケットと憩いの空間を創出するための什器を制作しました。

「INN THE PARKで課題としていた、かさばるファニチャーの運搬。ひとつのブレイクスルーとなったのが、結束バンドで固定するというアイディアです。所沢市の社会実験では、木製の組み立て式什器を制作して、現地で組み立てられる仕様にしました。結束バンドを使うことで、工具を使わず、誰でも組み立てられるのがポイントです」

隅田公園のイベント「PLAY! PUBLIC」

公共R不動産10周年の記念として開催したイベント「PLAY! PUBLIC」。誰もが公園を自由に使いこなし、新しい公園の日常風景をつくるための実験として実施しました。

「所沢の社会実験で運搬の課題はクリアできたのですが、木材は雨風に弱い。そこで、素材を再生プラスチックボードにしました。加工もしやすくなり、耐久性もアップ。一定の重さがあるので、風に煽られる心配もありません。こうしてPUBLICWAREを代表するシリーズ『BIND FURNITURE』が誕生しました」

左 「BIND FURNITURE」すべて分解すると宅急便で郵送できる。 右 工具は不要。結束バンドでパーツを組み立てることでファニチャーができあがる。

猛暑の公園を考える 
Night Park @グラングリーン大阪

もうひとつ、PUBLICWAREのプロジェクトを大きく突き動かしたきっかけがありました。それは近年の猛暑。

近頃の日本の夏は35℃を越える猛暑日が当たり前になり、熱中症の危険から子どもたちは公園などの屋外で遊べなくなっています。大橋も自身の子育てを通じて、痛切にこの課題を感じていたといいます。

「暑い夏の季節、子どもたちが安全に遊べて、親も見守りながら楽しめる。そんな公園のあり方はないだろうか。ファミリーだけでなく、若者やカップルなど、幅広い層が楽しく過ごせる新しい公園のかたちを模索するなかでたどり着いたのが、『夜の公園』という可能性です。企画を『Night Park』と名付けて構想を温めていたタイミングで、グラングリーン大阪での実証実験の機会に巡り合いました」

準備したのは、家具や什器のほか、木馬やシーソー、カートなどの簡易的な遊具などのプロダクト。そこにLEDを仕込むことで光がゆらぐようなデザインに仕立てました。

「日が落ちると広場にたくさんの人が出てきて、自然と子どもたちが遊び、見守る親もカップルたちも楽しむ姿が見られました。夜の公園は薄暗くて近寄りがたい場所もありますが、こうしたツールがあることで、夜の公園がエンタメ空間になる。人々の活動の幅が広がり、街の風景が変わることを実感しました」

Night Parkのイベントレポートはこちら
自分の動きに合わせて光が揺らいだり動いたりする遊具

屋内でも、民間の施設でも

PUBLICWAREは屋内でも活躍します。例えば、京都市の図書館で実施した社会実験。本が主役の場所から、人々の居場所へ。図書館内にスツールやソファなどのファニチャーを置いて仮設空間を創出し、イベント企画を実施しました。

新しい図書館の体験 POP-UP LIBRARY KYOTO「&BOOKS」

また、パブリックスペースとは行政の空間だけではありません。例えば、ビルの公開空地や共有部など、有効に使われていない場所にツールやコンテンツなどのきっかけを与えることで、新しい交流や体験が生まれていくはずです。

使い方の数だけ、都市が豊かになる

こうした実践を重ねるなかで、PUBLICWAREはプロダクト開発だけでなく、都市の仕組みそのものを軽やかに更新することを目指すようになっていきました。

「建築未満の場づくり」という手法を軸に、2026年春には法人化。Open Aや公共R不動産とも連携しつつ、プロダクトスケールに特化した事業を展開していく方向に舵を切りました。

公式サイトもリニューアルしました。

「自律性を備えた、価値を生み出し続ける場へ」

こちらが新たに掲げるビジョンです。これまでと変わらず、社会実験やイベントなどを通じて、活用されていない場所や公共空間が動き出すきっかけを与えていきます。

さらに、「自律性」というキーワードについて、大橋はこのように話します。

「例えば、屋外でイベントや社会実験をしようとすると、まず必要になるのが電源や照明、配線などのインフラです。場を立ち上げるだけでも、大掛かりな準備が必要になることもあります。
だけど、光る什器そのものがバッテリーを内蔵していたら、そこに置くだけで場を立ち上げることができる。そんなふうに物理的なインフラの重さから解放されることで、都市はもっと軽やかに、柔軟に場をつくれるようになるはずです。

僕たちが掲げる『自律性』とは、そうした都市のあり方のこと。小さなツールや仕掛けによって、人が集まり、活動が生まれ、場が動き出していく。PUBLICWAREでは、そんな自律性の高い都市の風景を、プロダクトや仕組みを通じて実装していきたいと思っています」

小さく仕掛け、大きく広げる

今後は、プロダクトの開発から空間への実装、企画・運営までを一体的に手がけながら、場の価値を引き出す事業を展開していきます。

例えば、BIND FURNITUREをはじめとするオリジナルプロダクトの開発・販売やレンタルのほか、Night Parkのような空間パッケージの企画・実装、社会実験やイベントのプロデュースなど。行政やデベロッパー、企業などと協働しながら、公共空間や遊休空間に新しい使い方を生み出していきます。

根本的に小さなスケールのものづくりが好きだという大橋。「自分の思いがストレートに表現できるのが楽しい」と話す。アトリエスペース「Make A」にて。

「使い方の数だけ、都市が豊かになる。そのために、PUBLICWAREがあります。場の活性化は、大規模な再開発だけのものではありません。大掛かりな工事や準備を必要としない、軽やかで自由な場づくり。そんな小さなきっかけを起点に、波紋のように価値を広げていくアプローチを目指しています。

このビジョンを実現するために、さまざまな企業や自治体のみなさんとコラボレーションしていきたいと考えています。
デベロッパーのみなさまやイベント運営の方々には、豊かな空間と賑わいを生み出すための什器や空間パッケージを。テクノロジーやIoTなどの技術をお持ちの企業・研究機関の方々とは、通信やエネルギーの供給といった都市機能を持つ、新しい家具やプロダクトの共同開発を。
都市生活をより自由で自律的なものへと広げていくために、みなさまと力を合わせてこの試みを進めていけたら嬉しいです」

事業内容の詳細は公式HPをご覧ください
https://publicware.co.jp/services/

プロジェクトのご相談、お問い合わせはこちら
https://publicware.co.jp/contact-us/

PUBLICWAREを体験しに行こう!

2026年7月24日〜8月6日に、丸の内で開催される社会実験「NIGHT PARK & PLAYGROUND」にPUBLICWAREのファニチャーや什器が登場します。丸の内仲通りに夜間公共空間の新たな活用モデルが創出されます。
新作プロダクトも登場する予定なので、ぜひ足をお運びください!

NIGHT PARK & PLAYGROUND
期間:2026年7月24日(金)〜8月6日(木) 
時間:18:00–22:00
場所:丸の内仲通り 二重橋ビル前・新東京ビル前
https://nightpark-playground.com/yurakucho/

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公共R不動産の本のご紹介

クリエイティブな公共発注のための『公募要項作成ガイドブック』

公共R不動産のウェブ連載『クリエイティブな公共発注を考えてみた by PPP妄想研究会』から、初のスピンオフ企画として制作された『公募要項作成ガイドブック』。その名の通り、遊休公共施設を活用するために、どんな発注をすればよいのか?公募要項の例文とともに、そのベースとなる考え方と、ポイント解説を盛り込みました。
自治体の皆さんには、このガイドブックを参照しながら公募要項を作成していただければ、日本中のどんなまちの遊休施設でも、おもしろい活用に向けての第一歩が踏み出せるはず!という期待のもと、妄想研究会メンバーもわくわくしながらこのガイドブックを世の中に送り出します。ぜひぜひ、ご活用ください!

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