有楽町に現れた夜の公園
今年の夏、有楽町・丸の内仲通りに、夜だけ現れる小さな公園のような場所が生まれました。2026年7月24日から8月6日まで開催された「NIGHT PARK & PLAYGROUND YURAKUCHO」。18時から22時まで、光る遊具や屋外ソファ、インタラクティブアート、花屋やキッチンカーなどが丸の内仲通りに展開され、仕事帰りの人や来街者が思い思いに過ごす風景が生まれました。
イベントはNEWSKOOLが主催・企画・運営、三菱地所が共催し、「MARUNOUCHI SUMMER FEST」の一環として実施。PUBLICWAREでは、企画および空間とファニチャーのデザイン/制作を行いました。
今回、僕たちが試したかったのは、単に「夜にイベントをする」ということではありません。暑すぎる夏に、都市の活動時間そのものを少し夜側へずらしてみる。そして、普段は働くための街として認識される有楽町に、目的がなくても滞在できる「夜の居場所」をつくってみる。そんな、これからの夏の都市の使い方を考えるための実験でした。

「暑すぎる夏」に、都市の時間をシフトする
僕たちは昨年、グラングリーン大阪で「Night Park」の実証実験を行いました。
背景にあったのは、近年の夏があまりにも暑く、日中の屋外空間が使いづらくなっているという問題です。都市に公園や広場をつくっても、真夏の日中にそこで長時間過ごすことが難しければ、そのポテンシャルを十分に活かすことはできません。そこで着目したのが「夜」でした。
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暑すぎる夏、公園の主役は夜へ。グラングリーン大阪で実証実験「Night Park」を実施しました
大阪での実証では、日が落ちるにつれて公園に人が戻り、子どもだけでなく、若者やカップル、大人たちが光る遊具や家具を使いながら過ごす風景が生まれました。それによって、「Night Park」は単なる暑さ対策ではなく、これまで十分に使われてこなかった夜の時間帯に、公園や公共空間の可能性を広げる方法なのではないかという手応えを得ました。
そして今回は、その仮説を「公園」ではなく、有楽町という都心のストリートで試しました。

開催時間は18時から22時。
日中の暑さが残る夏でも、陽が落ちるにつれて街の空気は少しずつ変わっていきます。仕事を終えた人たちが通りに出て、ベンチに腰掛けたり、飲み物を片手に話し込んだり、遊具を試してみたりする。
実際に会場を見ていると、夜になることで初めて屋外に「過ごせる時間」が戻ってくる感覚がありました。酷暑に対して、日陰をつくる、ミストを設置する、といった環境設備による対策はもちろん重要です。一方で、暑い時間には無理に使わず、使う時間そのものをずらす。「ナイトシフト」という考え方もまた、これからの夏の公共空間に必要になっていくのではないでしょうか。
ビジネス街にも「何もしなくていい場所」が必要だった
今回もうひとつ大きな発見だったのが、有楽町のようなビジネス街における「居場所」へのニーズでした。
丸の内・有楽町にはオフィスや商業施設、レストランなど多くの場所があります。一方で、何かを買ったり、予約したり、明確な目的を持ったりせずに、ただ座って話したり、少し長く過ごせる場所は意外と多くありません。
今回のように家具や遊具などの小さな仕掛けを通りに点在させることで、「ちょっと寄ってみようかな」と足が向き、自然に人が混ざっていく。そんな何気ない居場所が求められているはずです。
PUBLICWAREとしても、空間全体をひとつのイベント会場として囲い込むのではなく、普段のストリートの延長として使えることを意識しました。

「屋外用ソファ」で通りがリビングに
なかでも今回、新しく制作したのが屋外用のソファです。
一般的な公共空間ではベンチが中心ですが、今回はもっと身体を預けて、家のリビングのように過ごせる家具を街の中に置いてみました。すると、想像以上に長く使われました。
友人同士で飲み物を片手に話す人。一人でスマートフォンを眺める人。食事をする人。待ち合わせをする人。なかには、2時間以上同じソファで過ごしている人たちもいました。

家具ひとつで、人を2時間滞在させることができる。
これは、公共空間のデザインを考えるうえで、とても興味深い結果でした。座ることができる、ではなく、「居続けることができる」家具をつくる。滞在時間を生み出すこと自体が、これからの都市空間を考えるうえで重要なデザインのテーマになりそうです。
とはいえ、雨風にさらされる屋外にソファを置くのは簡単ではありません。そして、ソファのような大型の家具は運搬や保管の問題も生じます。そこで今回は、現地で組み立て可能な構造にしつつ、クッションには通水性のある素材を採用し、仮設的に屋外でも使える仕様を試しました。プロダクトの詳細は、また後日紹介します。
「遊具」は子どものものじゃなかった
そして今回、ある意味で最も有楽町らしい風景だったのが、遊具を楽しむ大人たちでした。
会場には、これまでNight Parkで開発してきた光る木馬やシーソー、ゆらゆらチェアなどを設置しました。ほかにも大判のオセロやボードゲームなど、「大人の遊び場」をテーマにしたコンテンツが用意されています。

実際に置いてみると、スーツ姿の会社員や仕事帰りと思われる人たちが、思った以上に普通に遊んでくれました。最初は少し遠巻きに見ていても、一人が乗ると友人も乗る。揺らしてみる。笑う。写真を撮る。
遊具というと、どうしても「子どものためのもの」と考えがちです。でも、人が身体を動かしたり、ちょっとくだらないことで笑ったりすることに、本来年齢はあまり関係ありません。むしろ、普段そうした振る舞いをする機会が少ない大人だからこそ、街の中に少しだけ「遊べる余白」があることの意味は大きいのかもしれません。

有楽町という大人中心の街でこの風景を見ることができたことで、以前から考えていた「大人の公園」というテーマにも、ひとつ確かな手応えが生まれました。
公園的な場所とは、必ずしも芝生や樹木がある場所のことではない。
座れること。ぼーっとできること。誰かと話せること。身体を動かせること。そして、特に目的がなくてもそこにいられること。
そうした行為を受け止める環境があれば、都市のストリートも十分に「公園化」することができます。
夜だからこそ、光が人を呼び込む
Night Parkを構成するもうひとつの重要な要素が「光」です。
今回も遊具や家具に仕込んだライン状の照明に加え、人が触れることで光が変化する球体のインタラクティブアートなどを配置しました。球体群は人が近づいたり、複数人が同時に触れたりすることで光の反応が変わる仕掛けとして設計されています。


夜の公共空間での光は、単に「明るくする」ためだけのものではありません。
少し離れた場所から「あそこに何かありそう」と気づかせたり、近づいて触れてみる理由をつくったり、人の存在そのものを風景として浮かび上がらせたりする。照明、家具、遊具、植栽を個別に考えるのではなく、それらを一体としてデザインすることで、夜そのものをひとつの空間資源として扱えることも、Night Parkを続けるなかで見えてきています。
「イベント」から、夏の都市のスタンダードへ
大阪でのNight Parkでは、「夏の公園は夜にもっと使える」という可能性が見えました。そして今回の有楽町では、そこからさらに一歩進んで、ビジネス街のストリートにも、夜に滞在し、遊び、リラックスする場所への大きなニーズがあることを実感しました。
しかも、それは特別なイベントに参加するというよりも、仕事帰りに少し座る、友人と話す、なんとなく遊具に乗ってみる、といった、とても日常的な行為として現れていました。

これから夏の暑さがさらに厳しくなっていくとすれば、「昼間の環境をどう快適にするか」だけではなく、都市そのもののタイムスケジュールをどう変えるかという視点も必要になってくると思います。夕方から公園が開く。夜に広場で遊ぶ。仕事帰りにストリートのソファで過ごす。そんな風景が、特別なイベントではなく、夏の日常になっていく。
Night Parkを始めた当初は、「夜の公園をつくってみよう」という比較的シンプルな発想でした。しかし実践を重ねるうちに、それは少しずつ、暑くなっていく都市で、公共空間を使い続けるためのひとつの都市戦略なのではないかと思うようになりました。


PUBLICWAREでは、今回開発した屋外ソファや光るファニチャー、遊具などをさらにアップデートしながら、場所ごとの環境や使われ方に合わせたNight Parkの展開を続けていきたいと考えています。公園だけではなく、駅前、道路、公開空地、オフィス街、商業施設。昼から夜へ時間を少しずらすだけで、まだ使われていない都市の余白は、きっとたくさんあります。
夏の都市は、もっと夜にひらいていける。
有楽町の2週間で生まれた風景は、その可能性をかなり具体的に見せてくれました。
NIGHT PARK & PLAYGROUND YURAKUCHO
主催・企画・運営:合同会社NEWSKOOL
共催:三菱地所株式会社
協力:株式会社電通ライブ
空間設計/什器制作:株式会社OpenA/株式会社PUBLICWARE
技術開発支援:慧エンジニアリング株式会社
運営協力:EVEKI合同会社
PUBLICWARE誕生の背景やビジョンについては、以下よりどうぞ。




