公共R不動産のプロジェクトスタディ
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空中に現れる、時間限定の公園
Minhocão

夜は屋外クラブのような空間に

 

ブラジル最大の都市、サンパウロ。オリンピックを控えてますます発展が進むこの街に、ユニークな公共空間の使い方をみつけました。

ここは通称Minhocãoとよばれる高速道路。日曜と平日夜〜早朝、約3.5キロにわたって車がおいだされ、歩行者とサイクリストに開放されます。その間は限定的に、街のどまんなかの空中に公園のような空間が現れていました。

拡大する街と、住空間との衝突

もともとこの高速道路は、サンパウロの渋滞緩和のために1969年につくられた場所。ですが写真をご覧のとおり、間近にアパートが建ち並び、高架の近くの住民たちは騒音問題に直面していました。

そこで1976年、行政は日曜・祝日は高速道路を封鎖すると決断。1990年代には、平日の夜〜早朝も車を追い出すことに決めました。高速道路の再生・再活用は、NYのハイライン(2009年公開)が有名ですが、その30年も前に、ブラジルでこんな取り組みが始まっていたのですね。

昼はウォーキングコース、夜はクラブに変身

筆者が訪れたのは日曜昼〜夜の時間帯。思い思いに散歩やジョギングをする人、サイクリングする人が行き交う風景が広がっていました。隣のアパートを見るとリビングでくつろぐ人が見えたり、高架の上とアパートで井戸端会議が行われていたり。不思議な光景!

夜になると高速道路はさらに変身。DJブースが設置されて音楽が鳴り響き、踊る人々であふれて屋外クラブ状態。高架下からはお酒を片手にした若者が、次々と上を目指してのぼってきました。さすが音楽と踊りの情熱の国。たしか騒音対策のために高速道路を封鎖したはず…これもサンバの国ならではでしょうか。

時間限定であらわれる公園

このプロジェクトが面白いのは、時間限定で公共空間を生み出しているところ。必ずしも物理的な変化を必要としない、新しい空間のありかたが提案されているように感じます。シロクロはっきりさせるだけでなく、こんなトランジションがあってもいいかもしれませんね。(写真:内田友紀)

PROFILE

飯石 藍

公共R不動産/株式会社nest/リージョンワークス合同会社。1982年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、アクセンチュア株式会社にて自治体向けのコンサルティング業務に従事。その後2013年に独立し、2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。全国各地で公民連携・リノベーションまちづくりのプロジェクトに携わりながら、南池袋公園・グリーン大通りのPPPエージェント会社の立ち上げにも参画。

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