公共R不動産のプロジェクトスタディ
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市民の自由を守る都市の余白 
テンペルホーフ空港

空港跡地をワイルドに使いこなすベルリン市民

380ha の巨大な空き地を市民の共有の庭へ

ベルリン中心部からほど近い場所に広がる、茫漠とした風景。公園としてつくられたにしては、あまりにも広すぎる。それもそのはず、ここは第二次世界大戦中に軍事飛行場として使われていた場所です。その後、国際空港として利用されたが、2008年に閉鎖。380haもの巨大な空き地ができました。

行政が空港跡地の活用案として、大規模な施設の建設や企業への売却などを提示したところ、市民の大反対を受け、2014年に暫定利用の方法について市民投票が行われました。その結果、開発計画は白紙に戻され、現在は市民の憩いの場として、日光浴やサイクリング、バーベキューからスポーツまで、思い思いに使われています。

敷地の一画には、NPO「GemeinschaftsgartenAllmende-Kontore.V(.共同の庭・アルメンデ事務所)」が運営する「アーバンガーデン」という共有の庭があります。土地の所有者である市と、NPO が賃貸契約を結び、寄付や会費、庭の利用料から賃料を支払っています。ここでも市民は、作物を育てたり、家具を置いて家族とくつろいだりと、自由に空間を使っています。特徴は、柵などの境界がないことで、あらゆる人に開かれた共有空間であることが意識されています。

ドイツでは、ここ以外にも、空き地を利用者が維持管理する代わりに、所有者から暫定利用許可を得るアーバンガーデンの取り組みが全国に広がっています。開発が進むベルリンでは、放っておけば高層ビルが立ち並びます。そのような状況下で、自分たちの住むまちを、自らつくり、維持していくことが大事にされているようです。

誰もが自由に使える共有の庭

PROFILE

加藤 優一

Open A/公共R不動産/(一社)最上のくらし舎代表理事。1987年生まれ。東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻博士課程単位取得退学。2011年より東日本大震災の復興事業を支援しながら自治体組織と計画プロセスの研究を行う。2015年より現職にて、建築の企画設計、まちづくり、公共空間の活用、編集・執筆等に携わる。銭湯ぐらし主宰。編著書に『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』。

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