千葉県空き公共施設活用促進プロジェクト
公共R不動産のプロジェクトスタディ
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[11月16-17日]千葉県佐倉市のライフスタイルを体験する社会実験「タマルバ〜城下町HANGOUT2024〜」

2024年11月16-17日、千葉県佐倉市の中心市街地にて社会実験「タマルバ〜城下町HANG OUT2024〜」が行われます。豊かな自然環境と江戸時代の歴史的背景がある城下町・佐倉市の魅力に触れながら、まちを回遊していくイベントです。社会実験の狙いや計画のプロセス、佐倉市がこれから目指すまちの姿について紹介します。

11月16-17日 開催!佐倉市の魅力が体験できる社会実験

東京駅から約60分。社会実験の舞台となるのは、江戸時代の城下町としての歴史的景観と豊かな自然環境が調和した文化都市、千葉県佐倉市です。

中心市街地の城下町エリアに9つのイベントの拠点が設けられ、オーガニック・マーケットや体操×音楽×食をテーマにしたイベント、子育て世代向けイベント、古民家を活用したセレクトショップなど、佐倉市を拠点に活動する人たちによる多様なコンテンツが集結します

2日間で集まる出店者や出演者の数は120人以上!9つそれぞれにコンセプトがあり、言うならば9つのイベントがエリア内で同時開催されるというイメージです。そのなかのひとつでも、自分にとって居心地のいい溜まり場のようになれたらという想いを込めて、「タマルバ」と名付けられました。

オーガニック・マーケットや子育て世代向けのイベントなど、佐倉市を拠点に活動する人たちによる多様なコンテンツが集結する。

今回の社会実験は「佐倉市におけるにぎわい・魅力創出事業」の一環で行われます。公共R不動産は社会実験のプロデュースと運営を行い、ちばぎん総研が効果測定業務を行うという役割となっています。

今回の社会実験はどんな狙いで、どのようなプロセスで実施されているのでしょうか。社会実験の実行委員をつとめる、佐倉市魅力推進課の向後貴大さん、環境再⽣型の協働農園「フィールズ農園」を主催する茂木紀子さん、公共R不動産の小柴智絵さんにお話をうかがいました。

社会実験の実行委員をつとめる、(左から)佐倉市魅力推進課の向後貴大さん、環境再⽣型の協働農園「フィールズ農園」を主催する茂木紀子さん、公共R不動産の小柴智絵さん。撮影:井上哉人(いのうえかなと)

社会実験のベースとなる「佐倉城下町エリアビジョン」

社会実験の話に入る前に「佐倉城下町エリアビジョン」の話をしなければなりません。そもそも社会実験の前段として、2024年6月、佐倉市は中心市街地である城下町エリアを対象としたエリアビジョンを策定しました。

城下町エリアは、江戸時代に城下町として発展した歴史があり、学校や美術館、公園などの公共施設がコンパクトにまとまっている魅力的なエリアですが、近年では空き家や空き店舗が増え、まちを歩く人が減るなど、さまざまな課題を抱えています。

佐倉城下町エリアビジョンは、京成佐倉駅前、新町、城址公園の3つのゾーンで構成されている。

エリアビジョンを策定した狙いとして、「公民連携のまちづくりを強化していくうえで、地域のプレーヤーのみなさんと同じ方向を目指して活動していけるように、まずはまちの将来像を描くことが大切だと考えた」と佐倉市佐倉の魅力推進課の向後さんは話します。

エリアビジョンでは「暮らす人も訪れる人も楽しめる『となりの城下町』」というスローガンを掲げ、これを実現するために、「まちへ出る動機となる目的地づくり」「持続的な取組を支える仕組みづくり」「誰もが安心できる都市空間づくり」という3つの視点が設けられました。

このエリアビジョンを具現化するひとつの方法として、社会実験が実施されることになったのです。

佐倉市城下町エリアが目指す姿(佐倉城下町エリアビジョンより抜粋)

多様なプレーヤーと市職員のネットワーク

今回の社会実験は佐倉城下町エリアビジョンを具現化するために実施されるのですが、社会実験を実施するきっかけとなった、とあるエピソードがありました。エリアビジョン策定のアドバイザーとして関わっていた公共R不動産の小柴さんは、このように振り返ります。

小柴さん「ある日、庁内のみなさんと話していたとき、“佐倉市のコミュニティの生態図”というものを見せてもらったんです。市内のお店やイベントなどで活動しているプレイヤー(事業者や団体など)を一覧化した図なのですが、そのプレーヤーの数とバリエーションに驚いてしまって。佐倉市は広いので普段はそれぞれ拠点が分散していますが、そのプレイヤーが城下町に集結したらすごいことになるはずと、ワクワクしました。

そこでエリアビジョンを実現する手段として、社会実験をやりませんか? と提案したんです。すると、向後さんが『プレーヤーの方たちとはつながっているので、集めることはできると思います』と言うではないですか!行政の担当者さんがここまで地域のネットワークを持っていらっしゃることにも本当に驚きました。これってすごいことだと思うんです」

行政職員が地域のプレーヤー(事業者や団体など)との繋がりを持ち、地域の活動について把握しているのは、かなり珍しいこと。プレーヤーとのネットワークがあることで、より具体的なエリアビジョンを描くことができたうえ、社会実験の計画も組み立てやすかったといいます。

左 社会実験の舞台となる佐倉市城下町エリアの新町通り 右 新町通りにある旧平井家住宅。社会実験では、千葉に縁のある調味料や食品、日用品などが集まるセレクトショップが開かれる。

イベント主催者たちを巻き込んだ企画会議

今回の社会実験は、そのプロセスにも大きな特徴があります。通常は、市や委託された専門家などが企画や実施要項などをまとめて、そこに対して出店するプレーヤーを募ることが一般的ですが、今回はプレーヤーのみなさんに事前に声をかけ、企画段階から参加してもらっているといいます。

小柴さん「佐倉市は魅力的なプレーヤーが豊富にいらっしゃるのですが、お互いに名前を聞いたことはあっても会ったことがないという人が多い状態でした。プレーヤー同士に繋がってもらうことが一番のポイントだと考えたので、企画会議をきっかけにみなさんに集まってもらい、みんなで社会実験をつくっていく立て付けにしました」

企画会議は、社会実験の拠点となる公園や美術館の裏庭、倉庫など、公共空間を題材に、参加者が「アイディアシート」に提案内容を書いて発表するというもの。参加者は22名。驚くことに、その大半はいち出店者ではなく、自らイベントを主催している人たちだったといいます。例えば、毎月多くのリピーターが訪れる人気の親子イベントや、来場者数2万人の大規模なクラフトフェアなど、市内で開催しているさまざまなイベント主催者が集まりました。

小柴さん「やはり自分でイベントをプロデュースされている方々なので、社会実験の趣旨をすぐに理解してくださるし、こちら側(主催者側)の視点で、会場の新しい候補地、回遊ルートなどを提案いただいたりしました。そんなみなさんと議論することができて、たくさんの気づきをいただきました」

企画会議の参加者が主催している大規模なクラフトフェア。

企画会議で出たアイディアは、実行委員のみなさんが集約したり、グループ分けをして、参加者のみなさんとそれぞれコミュニケーションを重ねながら、丁寧にプログラムに落とし込まれていきました。

それぞれ独自に活動する人々が集まると、意見がぶつかったり方向性が合わないことも想像できますが、意外にも参加者をまとめる過程で苦労は少なかったそうです。参加者同士がお互いのターゲット層を共有し、出店者を紹介しあったり、社会実験の前からいい流れができているといいます。

向後さん「いままで佐倉市のまちのあり方や今後について、なんとなく同じことを考えていた人たちが、この機会に出会い繋がることができたのかもしれないと思うと、この社会実験には大きな価値があると感じています」

企画会議の様子。22名ものイベント主催者が集まり、コンテンツのアイディアを交わした。

9つのイベントが同時開催される新しい社会実験

9つの拠点ごとにテーマが設定されて、コンテンツのバリエーションも個性も実に豊かな社会実験。ファミリー向けの「佐倉こそだちフェス」や、若い世代に響きそうな美術館でのDJイベント、そして年配の方も楽しめそうな伝統工芸の展示会など、いろんな層の人が楽しめる内容になっています。

特に注目したいのが、オーガニック・ビレッジ・マーケットです。佐倉市は2022年に「オーガニックビレッジ宣言」をして、市をあげて有機農業に力を入れています。社会実験の実行委員であり、有機農家の茂木さんは「この機会に、農村とまちの暮らしをつなげていきたい」と話します。

茂木さん「市内でも産直など有機野菜を買える場所が少しはありますが、せっかくなので有機野菜だけを集めたマーケットがあってもいいのではと思い、企画しました。市としてもまちの特色をPRする機会になるし、市民や来訪者のみなさんにとっても、安心安全な食材を買えて、同時に生産者とコミュニケーションをとる機会にしてもらえたら嬉しいです。まちを歩けば、佐倉市でつくられた有機野菜が買える。そんな城下町エリアのライフスタイルをつくることが社会実験の大きな目的のひとつになっています」

オーガニック・マーケットを開催する有機農家「フィールズ農園」の参加者のみなさん。

城址公園の周辺も注目したいスポットです。緑豊かな素晴らしい環境でありながら、普段はあまり人が歩いていないという城址公園。本来のポテンシャルを生かすために、飲食の拠点としてキッチンカーが出店するほか、体操のプログラムが実施されます

向後さん「例えば、大阪城公園では観光客だけでなく、地域の人が集まって太極拳をやっていたりするじゃないですか。城址公園も同じように、周辺にお住まいのみなさんが気軽に来てからだを動かせる場所になったらいいなと思っていて。ふらっと来て体操して、コーヒーを飲んでおしゃべりをして帰るといった感じで、日常生活で“使える場所”として城址公園を認知してもらえたらいいなと思います」

佐倉城址公園は、佐倉城跡の中に設置されている緑多き歴史公園。

楽しみ方の提案として、「当日はぜひ歩いて会場を巡ってほしい」と茂木さんは話します。城下町エリアの規模感として、駅前、新町通り、城址公園のエリア間はそれぞれ徒歩10分くらい。各イベントを見ながらぐるっと駆け足で歩けば、全体で2~3時間ほどの距離感です。

茂木さん「地方都市は車中心の生活になりがちですが、歩くと知らなかったお店や人、景色などいろんな出会いがありますよね。車で来られた方も、城址公園に車を停めてそこから歩いてもらえるように、拠点の配置も検討しました。今回の社会実験をきっかけに、城下町エリアを歩く楽しさを体感してもらえたらいいなと思います」

駅前と城址公園にはレンタサイクル、さらに城址公園には電動キックボードも設置されるので、モビリティを使って巡るのもおすすめです。

佐倉市のライフスタイルに触れられる場所

最後に、社会実験に向けた意気込みをみなさんにうかがいました。

小柴さん「この社会実験を佐倉市のアンテナショップのような場所にしたいと思っています。つまりは、佐倉市のライフスタイルに触れられるような場所。例えば、市内にいくつもある有機農園から、代わる代わる農家さんがマーケットに出店したり、市内に20ヶ所くらいある子ども食堂や同じく市内に10ヶ所以上あるプレーパークなどが代わる代わる城下町エリアにやってきたり。市外から来た方が、『佐倉市で活動する方たちと知り合いたい、コラボしたいなら、あそこへ行ったらいいよ』と言われる場所になるといいですね」

大手門跡広場で毎月開催している「佐倉こそだちフェス」。プレーパークやフードマルシェ、有機野菜の販売など、子どもも大人も楽しめるイベント。今回の社会実験でも11月17日に開催される予定。

茂木さん「佐倉市内は広いので、市内の人でさえこの趣ある城下町の魅力について知らない人がきっといると思います。今回をきっかけにまちを巡ることで、市内の人にはまちの再発見をしてもらえたらいいなと思います」

向後さん「今回の社会実験ではたくさんのプレーヤーのみなさんに集まっていただきます。一度きりのイベントではなく継続していくことが大切なので、来年度の基盤となるような組織体制や仕組みをしっかりとつくっていきたいと思います。
11月16-17日はぜひ佐倉市城下町エリアにお集まりください。たくさんの人に佐倉の魅力に触れていただいたり、主催者さんや出演者さんにしっかり収益があがったり、まちの人たちにも『おもしろそうだな』『私も参加してみたい』と思ってもらえたり。準備段階から生まれているいい機運が、さらに多くの人に広がっていくことをを期待しています」

千葉県佐倉市の社会実験「タマルバ〜城下町HANGOUT2024〜」に参加する主催者のみなさんの集合写真
タマルバに参加する主催者のみなさん

社会実験「タマルバ〜城下町HANGOUT2024〜」開催概要

日時:2024年11月16日(土)、17日(日) 10:00〜15:00
※コンテンツによって開催時間が異なります。
場所:佐倉市城下町エリア内
コンテンツ:体操、音楽、オーガニック、本、子育て、伝統工芸、雑貨、家具、日用品、哲学、等

公式Instagram
https://www.instagram.com/tamaruba_hangout?igsh=MWVndW9lNHN0c2sxNw%3D%3D
佐倉市HP
https://www.city.sakura.lg.jp/soshiki/sakuranomiryoku/oshirase_kanko/19569.html

主催:佐倉市
企画・運営支援:株式会社オープン・エー(公共R不動産)

フライヤーはこちらで拡大表示されます。

社会実験「タマルバ〜城下町HANGOUT2024〜」実行委員  プロフィール

佐倉市 魅力推進部 佐倉の魅力推進課 観光班
向後 貴大
1990年千葉県旧印旛村生まれ。大学時代に観光学を専攻し、市役所に入庁して5年目に念願だった観光の部署に配属され現在に至る。「住んでよし、訪れてよし」と思われる佐倉市を公民連携で実現すべく日々奮闘中!

一般社団法人フィールズ・フィールズ 代表
茂木紀子
2021年に東京から佐倉市へ移住。(一社)フィールズ・フィールズを設立し、環境再生型の協働農園「フィールズ農園」では、種まきから参加できる味噌・醤油作りの体験を開催するなど、農のある暮らしの楽しさを広めている。

公共R不動産 プロジェクトプロデュース事業部 
小柴智絵
千葉県出身/在住。シェアオフィスや宿泊施設の運営をしながら、子育てに奮闘中。ビジョン作成等の川上から、運営者マッチング、設計コーディネートといった川下まで、未来の風景を描きながらプロジェクトを伴走する。

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