公共R不動産の頭の中
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2023年度 公共R不動産メンバーが行ってよかった公共空間 part 1

特別企画として、公共R不動産のメンバーが2023年度に訪れて「よかった!」と感じた公共空間をご紹介します!

2023年度に公共R不動産のメンバーが訪れて「いいな」と感じた公共施設、パブリックスペースをメンバーの一言コメントとともにご紹介します。世界や日本全国各地から公園や子ども用遊戯施設、アートセンターなどのラインナップです。気になる場所があれば、ぜひ訪れてみてください!

※公共R不動産による独断と偏見でピックアップしています。

商業施設の公園化

ザ・コモンズ(タイ・バンコク)
https://www.thecommonsbkk.com/

中島さん

バンコク郊外のトンロー地区にある商業施設。周辺で大規模再開発が進むなか、緑地やコミュニティを育む空間を守ろうという想いから生まれたそう。この施設の主役は共有部。建物の中心は半屋外の吹き抜けで、それを取り囲むようにテナント空間がありつつベンチやテーブルが至るところにある。共有部はオープンエアーで、緑が豊かで自然の風がそよそよ入ってくる。施設内の飲食店で買ったものを食べたり、PCを広げて作業していたり、お座敷のようなスペースでお昼寝をする人も。みんなが自分の居場所としてリラックスして過ごしている。商業施設でありながら、まるで公園のよう。まちに空間を開放するスタンス、そして内と外の境界の曖昧さが寛容でリラックスした雰囲気をつくっているのか。何時間でもここで過ごしていたい!と思う場所でした。

楽しく運動できる仕掛けと健康遊具
多世代が集う都心の緑豊かな公園

大安森林公園(台湾・台北)
https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003090&id=6187

金子さん

台北の都心にある26haの緑豊かな公園。広い公園の中には、子どもの遊具の他に、台湾の植物や鳥や亀などの生き物がいる生態水池、健康遊具、広場、ステージ、バスケットコート、ヤシの木が生い茂るゾーンなど、公園の中にさまざまなエリアが広がっています。木が生い茂り、日陰が多く過ごしやすい公園で、子どもから大人まで思い思いの過ごし方をしています。私が特に好きなのは、水辺の健康遊具。エアロバイクのような健康遊具をこぐと、水が汲み上げられます。それだけでも楽しいのですが、健康遊具についているQRコードを読み取ると、何分間にどれくらいこいで水を汲み上げたかを計測してランキング形式で表示してくれたり、対戦もできるので、楽しく運動ができます。ちょっと立ち寄って休憩したり、運動したり、散歩したり、遊んだり、多世代で楽しめる公園です。

YCAM(山口情報芸術センター)の内と外と市街地と

YCAM・山口情報芸術センター(山口県山口市)
https://www.ycam.jp/

矢ヶ部さん

2023年はYCAM開館20周年。記念事業が館内だけでなく市街地にも飛び出して実施されていた。先端メディアアートを探究してきたYCAMはいま、その知見を社会共創に転用して、教育・福祉・まちづくりの現場に飛び出しコラボレーションを広げている。ニーズやマーケットを追いかけないYCAMが、社会の変化により、マーケットで調達できない最先端の公共財を地域に供給しはじめている。そんなYCAM前にある芝生の公園では、散歩したりジョギングしたりボールを蹴ったり本を読んだりと幅広い年齢層が過ごし、近くの某タバは夜遅くまで20〜30代が席を埋めるなど、日常的な光景が広がるエリアになっている。The New York Times が 52 Places to Go in 2024 に山口を選んだことを知ったのは後日のこと。歴史と日常と先端アートが、それぞれ深い薫りを放ちつつ混ざりすぎずに絶妙に薫り分けている。山口、面白い。

里山が残る懐かしい風景

里山自然公園(千葉県佐倉市)
https://www.city.sakura.lg.jp/soshiki/koenryokuchika/3/1/index.html

小柴さん

市街地からほど近い場所にありながら、谷津と里山が残っている自然豊かな公園です。日本昔話に出てくるようなどこか懐かしい風景を感じられます。
私が訪れた日は、月に一回の里山プレパークが開催されていました。大人たちは無農薬の畑を耕し、子どもたちはどろんこになりながら、探索したり、採れたての野菜をそのままボリボリ。ここでは、15以上の市民団体が、公園の保全に関わりながら交流しているのだとか。この場所以外にも、市内には市民団体による10のプレパークなるものが存在するそうで、なんとも羨ましい。子育中で移住をお考えの方は、注目のエリアです。

ローカル企業が創る子どものための環境がまちの未来を育む

キッズドームソライ(山形県鶴岡市)
https://www.sorai.shonai.inc/

梶田さん

「子どもの本能と創造性が爆発する遊び場」をコンセプトに、地域の子育て環境を充実化させるべく民間の街づくり会社である (株)SHONAI がつくった児童遊戯施設。建物の設計は坂茂氏が行い、県産のスギ・カラマツを使ったドーム状の大屋根が特徴。からだを思いきり動かして遊べる「アソビバ」と、好きな素材で自由にものづくりができる「ツクルバ」の2つの空間があり、どちらのフロアにもライブラリスペース(約800冊の本)がある。体験や遊びを通して学び、好きが見つかる、子どもにとっても親にとっても嬉しいコンテンツやサービス。民間開発だからこそ、ここまで自由な空間になっていると思う反面、人口減少社会の今、行政が民間サービスに上手く乗ること、乗ってもらうための行政のメッセージ性が、今後は益々必要になってくるはず。ローカル企業の魅力がまちの魅力や質を高める好事例だと感じた施設。

日常とアートが溶け合う空気

アムステルダム国立美術館(オランダ・アムステルダム)
https://www.rijksmuseum.nl/en

鎌田さん

美術館の真ん中を貫く道を、自転車で颯爽と走り抜けるアムステルダムの人々。道の左右はガラスになっていて、吹き抜けから指す光と、日常とアートが溶け合う空気がとても気持ちの良い場所でした。ハード面の良さにときめきながら中に入ると、ソフト面での工夫にまた感激。公式アプリは日本語にも対応しており、様々な切り口のツアーが用意され、とてもわかりやすい。アムステルダムの街全体に感じた「UI・UX設計の素晴らしさ」がアムステルダム国立美術館にもしっかり反映されているように感じました。
実は、帰国してからpodcast「公共R不動産の頭の中」で改修にあたり10年以上にも及ぶ紆余曲折があったことを知り、急がばまわれで市民の声を聞くことの重要性を改めて噛み締めました。

大きな池のほとりで

大濠公園(福岡県福岡市)
https://www.ohorikouen.jp/

内海さん

福岡市の中心部、大きな池を囲む公園です。ぐるっと一周すると素敵な水辺で思い思いに過ごす人々の姿を見ることができます。公園の民間活用としてはスターバックスやPark-PFI施設「大濠テラス」も有名ですが、私が一番好きなのは水との距離感。この池、柵がないんです。一番池に近いベンチは気を抜いたら落ちそうなくらいでこれが気持ちいい。そこから少し下がった園路は植栽帯や水路や舗装の切り替えで幾重かに分かれていて、散歩、ランニング、自転車などの異なるスピード感が共存しています。福岡市美術館(前川國男設計、2019年にリニューアル)からのビューとアプローチもまた絶品です。


part 2は以下より。

関連

2023年度 公共R不動産メンバーが行ってよかった公共空間 part 2

昨年版、2022年度 公共R不動産メンバーが行ってよかった公共空間もあわせてどうぞ。

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2022年度 公共R不動産メンバーが行ってよかった公共空間

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