公共R不動産の頭の中
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2023年度 公共R不動産メンバーが行ってよかった公共空間 part 2

特別企画として、公共R不動産のメンバーが2023年度に訪れて「よかった!」と感じた公共空間をご紹介。前回に続いて、part2をお届けします!

2023年度に公共R不動産のメンバーが訪れて「いいな」と感じた公共施設、パブリックスペースをメンバーの一言コメントとともにご紹介します。世界や日本全国各地から公園や広場、博物館などのラインナップです。気になる場所があれば、ぜひ訪れてみてください!

part 1はこちら

※公共R不動産による独断と偏見でピックアップしています。

ゴミステーションをコンテンツにした公共複合施設

上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY(徳島県上勝町)
https://why-kamikatsu.jp/

菊地さん

上勝町は2003年に国内ではじめて「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)宣言」を発表し、住民一体となって廃棄物の発生抑制、ゴミの削減に取り組んでいることで注目を集めています。その象徴としてつくられたのがここ。ホテルとゴミステーションなどが融合した公共複合施設なんです。上勝町にはゴミ収集車がなく、全町民がここにゴミを捨てにきます。ゴミ捨ては日々の生活に必要なアクション。ここがコミュニティのハブとなりながら、地域外の宿泊者や視察者を受け入れ、世界に発信する拠点にもなっている。ゴミステーションというネガティブな要素を公共的な場所として捉え、町民と来訪者が融合する、逆転の発想でつくられた象徴的な施設です。

ゴミ埋め立て地のPARKnize

モエレ沼公園(北海道札幌市東区)
https://moerenumapark.jp/

木下さん

世界的に著名な彫刻家イサム・ノグチが基本設計を手がけ、1982年着工、2005年オープンと、実に20年以上をかけてつくられたモエレ沼公園。学生時代から写真だけ見ていて、勝手に雄大な自然の中にあると思い込んでいたのですが、意外にも札幌市内からもほど近い場所。それもそのはず、ゴミ処理場跡地を公共工事で出た建設残土を使って公園化したものでした。完成して20年が経った現在では、もはや地形の一部のよう。まだまだ雪が残る季節に訪れたので山に登るのも一苦労でしたが、頂上からはスキーで滑り降りていく人もいて、彫刻のような遊具のようなランドスケープを人々が楽しんでいる姿が印象的でした。

戦うパブリックスペース・アーキテクトの生活回廊

宜蘭河畔旧市街生活回廊(台湾・宜蘭)
http://www.fieldoffice-architects.com/

岸田さん

台湾・宜蘭市の宜蘭河畔旧市街生活回廊と呼ばれる公共施設を核としリニアに連続する公共空間は、血管のように住宅地、市街地、自然地を巡り、まちの動脈となる。公民館では子どもが遊ぶように学ぶ横で大人が涼んでいる。隣接する公園の静かな緑は、旅行者の僕らにも休む機会を与える。萎縮するほどにプライベートな雰囲気の小さな広場では、井戸端麻雀。社会福祉センターは地元職人の技術の復興の機会となった。川を渡る橋にぶら下がる広場では、中高生が何やら話し込んでいる。生活回廊は第1~3まで続く連続的かつ長大な公共空間計画の最初の取組みだ。95年の開始以降、建築家は今もなお行政と住民と共に戦い続けている。その長大な公共空間のそこかしこに建築家の無数の戦跡が垣間見え、それもまたこの空間の強度をつくっている。

トーハクBEER NIGHT

東京国立博物館(東京都台東区)
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2565

松田さん

コロナ禍以降、夜間開館をとりやめていた上野の東京国立博物館で、特別展に合わせて行われたビアナイト。前庭にキッチンカーが集い、メキシコ料理やドリンクを楽しめたほか、期間中の金・土・日は特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」の開館時間を19時まで延長していました。真夏の子連れでのおでかけに苦労していたとき、夕方涼しくなってから出かけても十分楽しめ、夫婦交代で特別展をじっくり鑑賞、待っているほうはビールを飲みながら前庭で駆け回る子どもたちを鑑賞、夜だから空いていて子どもたちものびのびと展示を鑑賞(ジュニアガイドも充実)して家族みんなでメキシコ好きにと、いいことづくしでした。2023年11月から金土は19時まで開館(入場は30分前まで)、現在は日常的に夜のミュージアムを楽しめます。ナイトミュージアム最高!もっといろんなところでやってほしい!

住民投票で開発計画を退けた、市民の憩いの場

テンペルホフ・フェルト(ドイツ・ベルリン)
https://www.visitberlin.de/en/tempelhofer-feld-tempelhof-field

飯石さん

ベルリン中心部からわずか20分あまりの場所に突如広がる、茫漠とした平地。既存の建物がぽつ、ぽつと立ち並ぶだけで、他には何もない。カフェも遊具もほぼない。
360haもの面積を誇る「テンペルホフ・フェルト」は、戦時中に軍事飛行場から国際空港になり、空港閉鎖後の活用を行政が検討している中、大規模開発や企業への一部売却などの計画が提示されたものの、ベルリン市民が大反対。その声を行政が受け止め、2014年に住民投票が行われた結果、開発計画は棄却され全ての敷地を公園として開かれた場にするという形で現在も運営されています。話には聞いていましたが、だだっ広い敷地の中でローラーブレードをする老夫婦やかけっこする子どもたちの姿を目にし、小さな市民の声が重なって自分たちの場を取り戻したというプロセスの重みを感じました。

とことんファミリーを気遣える、やさしい駅前広場

流山おおたかの森駅南口都市広場(千葉県流山市)
https://www.otakanomori-sc.com/

守屋さん

子どもがうまれて気づくようになった公共空間のやさしくない部分。ちょっとした段差がベビーカーの障害になったり、どこまでいってもベンチすらない空間だったり。そんなことが気になりはじめた頃に、子育てファミリーに人気のまちがあると家族で訪れてみたのが「おおたかの森」。実際いってみると、とことん子育てファミリーに優しい!バリアフリーはもちろん、ベビー休憩室のおむつ替えコーナーには子どもが飽きないようにモビールが下げられていたり、屋外広場にはベンチにも子どもの遊び場にもなるストリートファニチャーがあったり。モールがあるだけではなく、マルシェも開かれていて、ただの商売としての商業ではなく、多世代にやさしい商業空間がありました。さりげなく気遣いができる人が好かれるように、気遣いのできるまちに人が集まっている気がしました。

屋外で食べることを前提とした道路空間での過ごし方

ハノイ大教会と周辺の雑踏(ベトナム・ハノイ

高松さん

ベトナムはハノイ。国の平均年齢が30代とあって街中に活気が溢れている。 行き交う大量のバイクを縫うように歩きながら、目的地の食堂へ辿り着く。どの店も、ドアなどはなく、少しの店内席と多くは歩くスペースもないほどの歩道占用。可変する小さなプラスチックテーブルと椅子で、時間帯によって可変する風景の可笑しさと、「満席です」と断られない安心感。 注文すると隣の店や前の店から料理が運ばれてくることもしばしばあり、まさに「共用」。活気と裏腹に、笑顔に溢れ、イライラした様子もないのは常夏の気候と、厳しくも勝ち抜いた歴史のたまものか。社会主義国の「公共」を見つめることは、「共に」という概念をどう捉えているかを見つめ直すことにもなり、塩漬けライムジュースを飲みながらまちと行き交う人々を眺め続ける。

40年もの地元住民による、自主的まちづくりの成果の一つ

雑司ヶ谷公園(東京都豊島区)
https://zoshigaya.org/takada.html

小野さん

私と娘がこよなく愛し、毎週末ふらりと向かう公園。小学校跡地を、素直に愛すべき公園に生まれ変わらせた好例だと思っています。かつての校舎やグランドは緑豊かな原っぱになり、かけっこや鬼ごっこをする子がいつも走り回り、小さい子用のプレイグランド、こんもりした小山のどんぐりの林、公園外縁では自然雑木が日陰をつくり、フィットネス器具で体を鍛える高齢者も。フェンスに囲まれた色鮮やかなボール広場には、キャッチボールやサッカーに興じる姿。そして、屋内「丘の上テラス」は放課後思い思いに過ごす子がたくさんいて、運営の方々があたたかく、ときに厳しく見守ってくれています。防音室からは楽器の音色を聞きながら、近くで買ったパンと一緒にテラスで販売されているコンソメスープやお汁粉などの飲み物を啜る。プログラムも多く、企画が練られていて、毎日でも行きたい、いつ行ってもホッとするそんな公共空間です。

part1は以下から

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2023年度 公共R不動産メンバーが行ってよかった公共空間 part 1

昨年版、2022年度 公共R不動産メンバーが行ってよかった公共空間もあわせてどうぞ。

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2022年度 公共R不動産メンバーが行ってよかった公共空間

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