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Yahoo!官公庁オークションで公共不動産を売却!
大和郡山市のスーパー職員・今西武史氏インタビュー

公有財産の売却で全国的なシェアを誇る「Yahoo!官公庁オークション」と公共R不動産とのコラボレート企画。
前回「解剖!Yahoo!官公庁オークションって何?」では今回の連携企画の背景や意義についてご紹介しました。第2弾となる今回は、実際にこのサイトを活用して4億5000万円もの価格で市有地を売却することに成功した奈良県大和郡山市の職員・今西武史さんとYahoo!官公庁オークション・川畑徳行さんに立ち上げや参加するまでの経緯、その実績や効果について聞きました。

民間のデベロッパーから自治体職員に。使命は「土地を売ること」

―早速ですが、まずは今西さんが大和郡山市の職員としてYahoo!官公庁オークションに出会うまでの経緯について教えていただけますか?

今西氏(以下、今西):大和郡山市は人口8万8000人強、江戸時代後半から金魚の養殖を盛んに行ってきた市ですが、近年、日本創生会議の「消滅可能性都市」にも挙げられ、観光都市奈良市と法隆寺のある斑鳩町に挟まれた「観光バスが素通りする街」となっておりました。

私は民間デベロッパーから転職する形で大和郡山市に入庁し、社会福祉課、下水道課、ケースワーカーなどを経て、2007年に総務課管財係に異動になりました。ちょうどその頃、大和郡山市は少子化や高齢化による歳入減・歳出増大の中、「リメイク大和郡山」として行財政改革プランを掲げ、歳出削減・自主財源確保策の1つとして公有財産の売却を検討し始めたところ。異動先で与えられたミッションは「土地を売れ」の一言でした。

(提供=大和郡山市今西氏)

 

―Yahoo!官公庁オークションができたのもちょうどその頃ですよね。

川畑氏(以下、川畑):はい、Yahoo!官公庁オークションの公有財産売却の提案が出てきて具体的に協議し始めたのが2006年です。実は、私もその頃は地方自治体(和歌山県)の職員だったのですが、当時の県知事からのミッションで公有財産の売却をインターネットで行うため、ヤフーに相談していました。その後、ヤフーの自治体窓口担当として転職し、今西さんと出会うことになるわけです。

仕組みを作った川畑さん(写真左)、120%活用して公有財産売却に動く今西さん(写真右)。ナイスコンビです!

 

まずは小さな実績をつくる –公用車売却からスタート

―今でもインターネットにおける商取引の安全性が問われますが、当時はもっと大変だったのではないですか?

今西:それはもう、当時の幹部からはいろんな不安の声が上がりました。
「どこのだれが買うかわからない」とか「奈良県内で他のどこの市もインターネットで売却していない」とか「売却先と近隣住民がトラブルになったらどうするんだ」とか……。そもそも「一般企業であるヤフーに入札を委ねて大丈夫か?」といった声まで。

まず、そういった幹部のインターネットアレルギーを取り除くには、実績が必要だと考えました。そこで私は、利用していた事業の廃止により不要になり、10年以上放置されている不要車両があったことに思い至ったんです。高額になる不動産の売却の前に、少額で見向きもされていない中古の公用車をYahoo!官公庁オークションで売却できれば、幹部の認識が変わるきっかけを作れるかもしれないぞ、と。

―結果はどうだったのですか?

今西:予定価格100万円で出していたリフト付きのマイクロバスを270万円で売却しました。売却前には「そんなもんが売れたら飲みに連れてったるわ」と言っていた幹部が何人もいたもんで、それからしばらく私は夜が忙しかったですよ(笑)。

15回目の入札でようやく成約、住民のニーズも捉える

―公用車売却を経て、いよいよ公的不動産の売却をYahoo!官公庁オークションで行うことというステップに。

今西:そうです。2008年頃まで十数年間、塩漬け状態だった土地を4.5億円で売るというので当時は話題になり、大手新聞社の5紙でも随分取り上げてもらいました。それにより、随意契約で売ってくれないかという相談が市役所にいくつも舞い込んできたほどです。

―初めての公的不動産売却も順調に買い手が見つかったんですね?

今西:それが大変でした。説明会直後にリーマンショックが起こり、さらに不景気による経済停滞で、何度出品しても入札者がないという状況が続いたんです。その後、14回出品しても落札者がなかったのですが、15回目の出品でようやく業務用扇風機を作っているメーカーが、工場の移転先用地として落札してくれました。

(作成=公共R不動産、素材提供=大和郡山市今西氏)

 

この売却はさまざまな効果を大和郡山市にもたらしてくれました。売却代金による歳入増はもちろん、塩漬けの土地がなくなったことで、管理にかかっていた歳出がなくなりました。また、メーカーが工場用地として購入してくれたおかげで、新たな固定資産税や法人市民税の課税開始によって歳入が増え、雇用創出にもつながる見込みです。加えて、このような取り組みを行ったことにより、大和郡山市の行財政改革の取り組みを広く全国にアピールできたことが大きかったように思います。

閉ざされていた機会がオープンになれば、売り手・買い手の双方にチャンスが

―それからヤフーさんと一緒に新しい入札の仕組みも作られたそうですね。

今西:これは必要に迫られてヤフーさんに相談をしました。次に売却の候補に挙がったのが、もともと近隣住民の広場として活用されており、自治会が草刈り等の管理を行っていた土地でした。自治会の高齢化にともない、市への管理返還の申し入れがあったのですが、住民からの提示条件として「用途を戸建住宅に限定して周囲との調和を図るように」といったことが挙げられたのです。

この住民の声を反映させようにも、通常の入札では法的規制がない限り、落札後の用途は入札者側の意志に委ねざるを得ません。何とか用途を限定して売却するために、2008年から制度化された「二段階一般競争入札」の仕組みを取り入れられないかとヤフーさんに持ちかけたんです。

この制度は、第一段階で公的不動産の利用に関する企画や提案を募集し、予め設定した開発条件に合っているかどうかの審査を行い、第二段階で審査を通過した事業者による競争入札を行って売却先を決定します。最終的に、奈良市に本社をもつデベロッパーが36戸の戸建て専用住宅用地として落札してくれたのですが、二段階一般競争入札制度を利用することで、近隣住民の意向をふまえた良好な住環境形成という価値も提供できることになりました。

(作成=公共R不動産、素材提供=大和郡山市今西氏)

 

オークションを活用することで、売却先決定プロセスの透明性や、売却価格への優位性、広域への物件情報の周知というメリットを担保しながら、信頼できる売却先に落札してもらうことができたわけです。

―それは当然、落札する側にとってもメリットがあるから成り立った取引ですよね?

今西:そうだと思います。入札側がほしいと思ったタイミングで、売りに出ている案件を探すことができ、希望額を入札できることはまさに「マッチング」の仕組みによるものです。また、官公庁オークションに限って言えば、自治体が管理してきたものは、入札側にとってもある程度のクオリティで管理がされているだろうという信頼を担保しています。

なので、出品する行政側もその信頼に応え、買いたい人が安心して入札できるように配慮が必要です。本来、宅地建物取引士が責任を担う重要事項説明に記載の項目も最低限チェックをしておくとか、地上権や通行地役権など使用に制限がかかるような「買い手が嫌がる」権利はできる限り外してから売却するよう尽力しました。

誰もやったことがない領域で、
試行錯誤しながらやるのが楽しい

―今西さんはうまくメディアも活用されていますよね。

今西:やはり、多くの人に「売っている」ことを知ってもらうための工夫は、売る側として当然するべきことだと思っています。より多くの数の人にリーチできれば、それだけ売れるチャンスが広がるわけですからね。売却の際にはどうしたらテレビや新聞などに取り上げてもらえるかを考えますし、ただ出品・掲載するだけではなく、そのタイミングにあわせて地元の会社にはDMを送ったり、物件概要書を持ち込んで出品していることを告知しました。メディア側にも機能として必要だと思ったことはどんどん提案しますしね。

 

川畑:私たちも行政のニーズにあわせてサービスを提供していきたいと思っていますから、「こんなことができないか」と提案いただくのはとてもありがたいです。実際、官公庁オークション(インターネット公売)自体、もともとは東京都の提案を受けてヤフーが作ったものなんですよ。その後の公有財産売却を始める前の話ですが、一緒に参加してくれそうな14の自治体に慌しい年末の27日にお誘いの電話をしたら、その内の13の自治体から「やりますよ」と前向きな返事が来てニーズとやりがいを感じました。

今西:そうやってメディアやサービス提供者である民間の企業と協働しながら、新しい仕組みを一緒に作り上げていく過程は本当に胸が躍る体験です。管財担当の6年間は楽しくて仕方がなかった。

東京の街と建物をバックに記念撮影。自治体とメディアが連携・協働して作る未来の可能性を感じる

 

―そんな今西さんが、これからのYahoo!官公庁オークションや公共R不動産との連携に期待していることはありますか?

今西:単に売却だけではなく、債権や賃貸借も扱えるようになれば、もっとユーザーが広がっていくのでは、と思います。行政側にも売りたいもの、売買できるものはもっと色々あるわけです。例えばネーミングライツ(命名権)やCO2排出権などはどうでしょう?
行政も、Yahoo!官公庁オークションも、みんなが成功を目指して走ることで、もっともっと社会全体が良くなれば、と思います。やらされてやるとしんどいですけど、これをやると成功してこうなるやろ、と描きながらやるものは夢中になれます。誰もやったことがない領域でこれからも試行錯誤できたらいいですね。

「誰もやったことがない領域で試行錯誤」
まさに公共R不動産が新しい社会の仕組みや官民連携のあり方を模索するスタンスとも言えます。今西さん、川畑さんをはじめ多くの自治体とYahoo!官公庁オークションが築いてきた実績をふまえながら、チャレンジを繰り返して公共不動産の活用にイノベーションを起こしていきたいものです。
その足掛かりとして、次回は公共R不動産が一緒に取り組むならこんなことをしてみたい!という妄想企画を紹介します。

 

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連載#1「解剖!Yahoo!官公庁オークションってなに?」

PROFILE

唐松奈津子

ライター
唐松奈津子

(株)リスパルタデザイン代表取締役。東洋大学PPP研究センターリサーチパートナー。2002年(株)リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)入社以来、住宅・不動産メディアの立ち上げ、編集、ライティング等を行う。「SUUMOジャーナル」「ノムコム with Kids」等にて連載。2018年東洋大学大学院公民連携専攻入学。公共不動産、空き家・空き地、住宅セーフティネットに関する研究を行う。佐賀県出身。