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公共R不動産のプロジェクトスタディ
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佐賀城公園「こころざしのもり」から広がるエリアリノベーションのこれから

2018年3月に大規模な改修を経てオープンした、佐賀城公園「こころざしのもり」。もともと隣接していた図書館と公園、ふたつの施設をつなぐことで、暗い印象だった公園が、市民の日常的な居場所へと生まれ変わりました。そして、公園のリニューアルを皮切りにエリアリノベーションの動きも起きています。そのプロセスに注目しました。

図書館と連続する広場、こころざしのもり(Photo by Hideki Mizuta)
図書館と連続する広場、こころざしのもり(Photo by Hideki Mizuta)

佐賀市の中心部に位置する城内エリア。旧佐賀藩の城下町だったことから、現在でも行政・教育・文化の中心地となっており、お濠に囲まれたエリアに、県庁や図書館、博物館などの公共施設が点在しています。

佐賀城公園「こころざしのもり」は、このうち県立図書館の南側に隣接した一画です。県立図書館が整備されたのが1962年 。県立図書館と市村記念体育館に隣接する広場として、建築と一体的なデザインで設計されました。それから50年余りが経過し、老朽化した施設の補修や機能の再編が必要なタイミングで、改修が行われることになりました。

改修前の県立図書館と公園。整然と樹木が並び、少し殺風景な印象でした。(Photo by OpenA)

コンセプトは、居心地の良い「普段使い」の図書館公園。改修前の公園は、建築の意匠と合わせて作られた幾何学的なデザインで、庭園的な美しさを持ちつつも、人が座って一息つけるような、空間的な拠り所が少ない状況でした。そのため改修時には、腰掛けて休める場所を多く設置し、子どもが遊べる場所を増やすなど、人が滞在するためのデザインが意識されました。

図書館と公園をつなぐ部分には階段デッキが新設され、公園を眺めながらゆっくりと過ごすことができます。公園内の樹木の下にはさりげなく木陰デッキが配置され、寝転がってくつろぐ人々の姿も。また、公園内の芝生広場には築山や噴水など設けて、子供たちが思い切り遊び回れるような空間になっています。

公園の改修に合わせて、図書館内部の機能の再編も行われました。公園側に面していた執務室は館内の別のスペースへ移動し、空いた部屋を一般の方が自由に使えるフリースペースとして解放しています。図書館で借りた本を読みながら、館内のカフェで買ったコーヒーを片手に、公園を眺めて時間を過ごす。そんな新しい時間の過ごし方が生まれています。

図書館と公園をつなぐ部分に階段状のデッキが配置され、腰掛けて公園を眺める人の姿も。可動式の家具が置かれ、訪れる人が思い思いに時間を過ごしています。(Photo by OpenA)
プレイマウンテン(築山)は子どもたちに大人気。頂上からは図書館と公園を一望できます。(Photo by OpenA)
桜の木の下に作られたロングベンチと木陰デッキ。(Photo by OpenA)
図書館の元執務室に作られたオープンスペース。公園を眺めながらコーヒーを飲み、読書をしながら過ごすことができます。(Photo by OpenA)

図書館と公園をつなぐプロセスデザイン

図書館と公園をつなぐように階段デッキが設けられたのには、両者の空間的な分断をなくすだけでなく、管理面での両者の連携を図る目的もありました。

行政施設の管理は、一般的に施設ごとに担当する課が分かれているため、たとえ隣接する施設間でも、施設間での連携が生まれにくい傾向にあります。そこで、それぞれの担当課がお互いに意識を向け合うきっかけとして、管理区分が曖昧な領域をあえて設けているのです。

検討段階においても、部署横断型の会議や、施設の活用に関心のある民間事業者へのヒアリングを行うなど、運用後を見据えたプロセスが設計されました。この時、縦割りを越えた調整を可能にしたのは「さがデザイン」という部署の存在。あらゆる政策にデザイン思考を取り入れるという知事の意向によって設置されたこのチームが、関係者同士を横繋ぎする役割を果たしてくれました。

こころざしのもり計画時、さがデザインの存在によって縦割りを越えた意見調整が可能になりました。(図版作成・寄稿:OpenA 加藤優一)

公園の改修を皮切りに段階的に進むエリアリノベーション

「こころざしのもり」の改修と同時進行で、同じく城内エリアにある県庁や博物館公園の改修も行われました。これらのデザイン監修を一貫して担当することになったのがOpenA。設計者として、各施設のデザイン監修という設計業務のみならず、エリアのビジョン策定や、実現に向けた関係者との意見調整を行ってきました。

一連の施設の改修が行われていた2017年。その前の年に開催されたイベント「勝手にプレゼンフェス」での一幕が、その後のエリアリノベーションの展開に繋がるきっかけとなりました。

勝手にプレゼンフェスとは、佐賀に縁のあるクリエイターたちが、知事や県庁職員へ向けて、文字通り「勝手に」公開の場でアイデアをプレゼンするというイベント。提案が政策とフィットすれば、事業化の検討に進むこともあり、もはやこのイベントは県庁の恒例行事のひとつのようにもなっています。

この時OpenAが提案したのは、城内エリアを文化・芸術拠点として再定義し、市民が日常的に集える場所へと転換すること。城内エリアには、史跡や公共施設、さらには住宅や教育施設、昔ながらの商店街までもが入り混じり、そこで営まれる日常の風景は実に表情豊か。しかし、市民はそのポテンシャルに気づいていません。そこで、「城内エリアを市民の日常的な居場所にする」というビジョンを掲げ、エリアリノベーションの提案がなされたのです。

3年前の提案をきっかけに、公園や県庁に続くエリア全体のデザインの再編が行われてきました。今後の動きとして、城内を歩くきっかけとなる拠点整備や園路のデザイン、県庁前の広場や駐車場の改修などが計画されています。

左 こころざしのもりの改修と同時に行われた博物館公園の改修。 (Photo by OpenA) 右 県庁のサイン改修も同時に行われました。(Photo by Koichiro Fujimoto)
城内エリアで竣工/計画中のプロジェクト。2017年の県庁・図書館公園(こころざしのもり) ・博物館公園の改修を経て、現在は園路のデザイン、県庁前の広場などのプロジェクトが進行中。(作成:OpenA)

地域をデザインする方法を、決められた制度の中で模索する

こうしたエリアリノベーションの動きは、最初から秩序立てて計画されてきたわけではありませんでした。初年度は県庁・公園の改修のみが計画されましたが、次年度以降は設計範囲を拡大しながら、都度見えてくる課題に答えていく形で、エリアリノベーションの動きが進められています。

現在、公共案件における設計者のエリアへの関与は、発注のシステム上、建物単体に限定されやすいという課題があります。また、基本的に単年度の業務発注となるため、ひとつのエリアに長期的に関わるということが難しいのです。

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第6話:誰が構想を描くべき!?段階ごとのブツ切り発注の理由

この事業には、複数の案件が入れ子状に存在しており、それぞれの担当課もばらばらです。設計者であるOpenAは、案件によって公募に参加することもあれば、設計者が決まっている事業のアドバイザーとして関わることもあります。その都度設計者としての立ち位置を柔軟に変えながら、小さくても継続的に仕事をし続けることによって、エリア全体に関わることができているのです。

このような手法は、佐賀県の行政組織としての柔軟性や横断性が可能にしたもので、簡単には応用できないような、特殊解かもしれません。しかし、エリアリノベーションの手法を用いて漸進的に公共空間を変えていくことは、先が見えない時代において、今後のひとつの回答になるのではないでしょうか。

お濠の中に公共施設や住宅地などが点在する佐賀城内エリア。今後のエリアリノベーションの動きに注目です。(Google Earth より)

PROFILE

清水襟子

清水襟子

OpenA/公共R不動産。1993年生まれ。千葉大学工学部建築学科卒業。東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修了。2017年にOpenAに入社し、公共空間のリノベーションや企画設計に携わる。