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「ウォーカブルなまちづくり」の本質に迫る!番外編
池袋の「新しい日常」を育むストリートと公園

6月3日に、ウォーカブル推進法(改正都市再生特別措置法)が成立し、さまざまな自治体でウォーカブル推進都市に対する政策が立てられ、試行錯誤が始まっています。そうした試みはどのような都市ビジョンにつながっていくのでしょうか。

今回は「ウォーカブルなまちづくりに迫る」シリーズの番外編として、「IKEBUKURO LIVING LOOP」(10/30〜11/1、11/20〜23)において10月31日に開催されたトークセッションの様子をご紹介します。

IKEBUKURO LIVING LOOPは、池袋駅東口から伸びるメインストリート「グリーン大通り」の活性化を目的に組成された「グリーン大通りエリアマネジメント協議会」主催のマルシェなどを中心としたイベントです。
グリーン大通りは、2016年に国家戦略道路占用事業の適用区域に認定され(注)、道路空間を利用したオープンカフェや、マルシェといったさまざまなイベントが展開されています。ストリートを単なる通過動線として捉えるのではなく、より「居心地のよい」場所にするために、社会実験を通じて、道路沿いの植栽帯や街路灯、ベンチの設置などの整備も進められています。

ウォーカブル的にも注目のストリートである、グリーン大通りと南池袋公園を舞台に開催されたIKEBUKURO LIVING LOOP。4回目となる今年は、「新しい日常を育もう」がコンセプト。
この日は、ILLの企画運営を務める、株式会社nest/株式会社グリップセカンド/株式会社サンシャインシティ/株式会社良品計画の4者が集まり、共催の豊島区長と共に「誰も取り残さないSDGs未来都市・豊島区のこれから」をテーマにトークが行われました。

グリーン大通りの歩道の一角で行われた公開トークセッション。たくさんの聴衆が足を止めて話に聞き入った。

【概要】
日時:2020年10月31日(土)14:00〜15:00
場所:グリーン大通り ニッセイ池袋ビル前広場

登壇者:敬称略
高野之夫(たかの・ゆきお/豊島区長)
合場直人(あいば・なおと/株式会社サンシャインシティ 代表取締役社長)
金井政明(かない・まさあき/株式会社良品計画 代表取締役会長)
金子信也(かねこ・しんや/株式会社グリップセカンド 代表取締役社長)
青木純(あおき・じゅん/株式会社nest 代表取締役)
馬場正尊(ばば・まさたか/公共R不動産/株式会社nest 代表取締役)

池袋ってどんな街?

青木 皆さんこんにちは。IKEBUKURO LIVING LOOP(以下、ILL)も、今年で4年目の開催になります。年を重ねるごとに、たくさんの方がイベントではなく「日常」として楽しんでくださっていることを実感しています。高野区長もこのグリーン大通りは池袋のエントランスである、とお話しされていましたね。

高野 はい。おっしゃる通り、緑豊かで歩道もゆったりとしたグリーン大通りは池袋の顔です。とはいえ、これまでは人通りもあまり多くなく少し寂しい印象でした。しかし、皆さんの力で近年、少しずつ変わってきました。
今年7月に、豊島区は、今日のトークテーマである「SDGs」への優れた取組を行う自治体「SDGs未来都市」として、内閣府より選定されました。しかも、特に先導的な取組として「自治体SDGsモデル事業」にもダブル選定されました。
これからも皆さんと共に池袋を盛り上げて、東京を代表する素晴らしい街にしていきたいと思っております。

SDGs未来都市・豊島区が目指すもの(豊島区)

馬場 ありがとうございます。今日はILLの企画運営メンバーであり、また池袋のメインプレイヤーでもある皆さんに集まってお話しいただいています。池袋の未来について「公開企画会議」のような雰囲気で考えて行きたいと思います。

青木 僕は池袋生まれで、まさにサンシャインシティの麓の、校歌にもその名前が出てくるような学校に通って育ちました。その池袋の象徴とも言える(株)サンシャインシティを率いる合場社長から見て、池袋はどのような街でしょうか?

合場 サンシャインシティがオープンしてから今年で43年になります。地元の人々に愛され、たくさんの思い出をつくることができて、大変幸せです。池袋は、古くは、「駅から人が出ない街」ということで、ずいぶん苦労してきましたが、だんだんと駅周辺やその沿道も含めて栄えるようになってきました。さらにこれから、街が一体となって発展していくステージを迎えています。私も、グループ社員も含め、施設の中だけではなく、街に積極的に出ていろんなことを知り、その課題解決に少しでもお役に立てればという思いです。

左から、高野さん、合場さん。

馬場 サンシャインシティの他にもう一つ、世界に誇る「無印良品」を展開する(株)良品計画本社があるのもここ、池袋ですね。長年池袋でやってこられた金井会長にも、街の印象と、その変化について語っていただきたいです。

金井 良品計画は創業時から池袋に本社があります。昔は「オフィスはどこにありますか?」と聞かれた時に豊島区池袋の、と言うのがちょっと辛かったこともあります。渋谷の方と言いたいのに……と(笑)。それも今では、高野区長はじめ、皆さんのおかげでいい思い出になりつつあります。池袋は、今とても変わり始めていますよね。未来から見れば「そんな時代もあったのね」と思えるくらい、可能性が見えてきたんじゃないかなと思います。

馬場 本社が池袋と言いにくい時代があったとは、衝撃の告白ですね(笑)。
では、豊島区で多数の飲食店を経営し、南池袋公園の中でも「ラシーヌ」というかっこいいカフェを経営されている、(株)グリップセカンドの金子さんにも、池袋への思いや感じている変化についてお話しいただければと思います。

金子 僕や青木さんは、いわば街の実行部隊です。過渡期と言われる池袋で、地域に根ざし、どこまで「圧倒的当事者」として活動できるか?ということを常に問われていると思っています。
池袋は、皆さんおっしゃるように、この10〜15年ですごく変わりましたよね。SDGs未来都市認定、国際アート・カルチャー都市構想といった都市政策やカルチャーに後押しされて、自分たちが見ている世界をさらに具現化したいという思いが強くなっています。もはやVS渋谷、VS新宿ではなくて、VS世界という姿勢で、これからも続けていきたいです。「圧倒的当事者」が増えていくほどに、理想の都市ができるのかなと。

左から、金井さん、金子さん。

それぞれの思う持続可能な都市の姿とは

馬場 「圧倒的当事者」いい言葉ですね。豊島区の強みは良品計画やサンシャインシティのような地元大企業と並行して、中小の地元事業者がたくさん集まっているところですね。
改めて、今日のキーワードである「SDGs」について、説明しておきたいのですが、これは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。環境的に持続可能な社会をいかにしてつくっていくかという国からの問いに対して、豊島区は手を挙げたわけですね。なぜ高野区長は、SDGs未来都市のコンセプトに手を挙げたのでしょうか。また、これからどういう風に街を導いていこうと考えていらっしゃるのでしょうか。

高野 2014年、豊島区は、「日本創成会議」が発表した全国自治体の将来推計人口により、23区で唯一、人口を維持することができない「消滅可能性都市」に挙げられました。その衝撃は忘れられませんが、ピンチをチャンスと捉え、大きく街を変えていこうとするきっかけになりました。
その原因として色々挙げられる中でも、「女性に優しく子育てしやすい街」という特性に欠けている、豊島区としてはここが一番反省すべきところでした。未来に向けてどういう街をつくっていこうとしているのか、このビジョンが見えませんでした。豊島区は外国人居住人口も多く、国際色や文化を大切にしたまちづくりを進めようというコンセンサスはありましたが、その具体的な目標が定まっていなかったとも言えます。 豊島区の国際アート・カルチャー都市構想はそうしたコンセンサスを都市政策に落とし込んだものであり、消滅可能性都市という汚名を覆したい、という思いで挑戦しました。

青木 日本はこれから超高齢化社会を迎えます。僕は今45才ですが、20年後には60才以上の単身世帯が過半数を超える、と言われています。今回ILLを主催するにあたって、金井会長と「何のためにこのイベントをやるのか?」についてたくさん話をしました。その時に「高齢者が幸せな街にならないと、これからはダメじゃないか」とお話されていたのが印象的です。たまにご自身を重ねておられるのかな?と思ったり……(笑)。金井さん、どういう思いがあったのでしょうか。

左から、馬場さん、青木さん。

金井 SDGsの概念は、3つの日本語に置き換えられるのではないかと思います。「お互いさま」、「おかげさま」、そして「お疲れさま」。特に都市部では人と人の関係性や繋がりが、この何十年間で希薄になりましたよね。誰もがもれなく歳をとることを考えれば、これらは、この3つの価値観を中心に、お互いが自立しながらも助け合えるような関係性をどうつくるか、というのが社会の課題になるのではないでしょうか。

僕は毎朝、早朝に1時間近く散歩をしているんです。近所の小さな公園がゴールで、そこで僕より少し年配の方々、20名くらいのラジオ体操仲間に入れてもらっています。70代は個人差が大きくて、すごくお元気な方もいれば、ジャンプができない方、足を曲げられない方もいる。日々よく歩くことの大切さを実感させられます。このラジオ体操は6時半から始まるのですが、3名くらいの方が、ラジオ体操の45分前にはすでに公園に着いて、掃除をしているんですね。偉いなと驚いたのですが、さらには、その内の一人が沿道のガードレールまで拭いていたんです。これは本当に衝撃でした。同時に、かつては身の回りの公共空間までもを自分のものとして捉える社会だったんだろうということに気づかされました。

高野 私はあまり散歩はしない怠け者ですが(笑)、なぜ今回豊島区がSDGsを獲得できたのかについて、ぜひお話したいです。豊島区が出した提案書は、池袋駅周辺の大きな4つの公園、そして、金井さんが毎朝ラジオ体操をされているような地域に根ざした小さな公園が166ヵ所あります。それらの公園を中心にまちづくりをします、というものでした。4つの公園のうちの一つが、南池袋公園です。あの南池袋公園がグリップセカンドさんを中心に変わったことが、まず池袋が変わっていくきっかけになりました。こうした「公園を主体としたまちづくり」提案が、高い評価を受け、「SDGs未来都市」を獲得したわけです。

公民連携による都市空間活用プロジェクト(豊島区)

青木 豊島区は消滅可能性都市になったことを起爆剤に、もう一度本気でまちづくりに取り組まれたわけですね。今回のコロナ禍は誰も望まない状況ではありますが、それでもポジティブに捉えるとすれば、密閉空間に人が集まりづらい、その状況を逆に利用して、公園や広場、ストリートを積極的に使っていく、その変化のきっかけにできると思います。
豊島区は行政単位で見ると、日本一の高密都市です。一人当たりの公園面積は、実は23区で一番少ない。そういう豊島区だからこそ、大きな公園と小さな公園に加えて、ストリートも日々の居場所にしていくことで、魅力的なパブリックスペースの風景を市民に届けられるんじゃないかと思います。

グリーン大通りを池袋の玄関とし、4つの公園・周辺企業の連携による池袋エリアの回遊促進
池袋駅前からグリーン大通りを広場化して人が歩きやすいストリートを整備し、サンシャインシティ・グリップセカンド・良品計画・nestが連携することで、周辺施設や4つの公園を回遊しやすい状況を創出する。

青木 サンシャインシティのすぐ足元にも、新しい公園、IKE・SUNPARK(イケサンパーク)がオープンしましたが、合場さんはどのように見ていらっしゃいいますか?

合場 IKE・SUNPARKはとても快適な公園で、何も遮るものがないことがこんなに気持ちがいいのか、と実感しています。休日はもちろん、平日や夜にも、皆さんがくつろいで過ごされていて、その様子が本当にいいですね。

造幣局跡地にオープンしたIKE・SUNPARK。区内最大の防災機能を備えた公園として、防火樹林帯も設えられている(撮影:Foward Stroke inc.)。

私の思うSDGsは、「無理をしない」ということです。人間がもともと持っている本能や欲求、それをそのまま無理なく表現できる環境やまち、人間関係を追求していけば、自ずとSDGsにたどり着くのかなと思います。
このグリーン大通りも、名前の通り、緑に溢れた素晴らしい通りにしようということで構想されたと聞いています。でもいつの間にか、人よりも車のための通りになってしまっていました。道は本来、人のためにあるものです。人々が交流し、情報が行き交ったり、子どもたちが遊んだり、そういう機能を今一度取り戻せないでしょうか。グリーン大通りにはそのポテンシャルがあると思います。
もちろん車の交通をすべてなくすことはできないですが、なるべく中心部には車を入れず、歩いて楽しい街をつくっていけたら、区が目指している国際アート・カルチャー都市にも繋がるし、「誰も取り残さない」というSDGsのビジョンにも繋がると思います。

自由なパブリックスペースを日常にするために

馬場 合場さんから、グリーン大通りの次の風景を提示していただきました。せっかくですから他の皆さんからも、この池袋をどういう風景にしていきたいか、具体的な提言を好き勝手に区長に届けたいと思いますがどうでしょう(笑)。

青木 グリーン大通りは既存の歩道幅が広いので、ILLのような取り組みをしやすい環境ではあります。でも、ソーシャルディスタンスを確保したり、お互いを思いやりつつゆったり過ごすためには、さらに広げたいところです。現状、植栽帯の先の道路は貨物車両の停車場所になっているんですが、ここまでが歩道になって、軽トラックはそこに停めて販売ができるようになればいいですよね。

金井 今日のトークセッションは歩道の一角で開催していますが、いい空間ですよね。歩道にストリートファニチャーが置かれていて、座ると頭上には木陰がある。立ち止まって過ごすきっかけがあるとそういう豊かさに改めて気付きます。日々通勤するだけでは見過ごしてしまうので、非常にもったいないない気がします。

このグリーン大通りはパリのシャンゼリゼ通りと同じ幅なんだそうですね。今は木の密度も、グラウンドレベルの店舗も違うので、そうは見えないかもしれません。かといってパリのようにハイブランドの店舗を持ってくればいいという訳でもないですよね。もっと地元の人に出てきてもらいたいです。それから、池袋は商圏として埼玉に非常に近いので、たとえば埼玉で野菜をつくっている人、商いしている人と協力して、交流が起きたら楽しいなというイメージを持っています。

グリーン大通りの賑わい創出に向けた提案パース。グリーン大通り(右)と公園(左)が連続する形で滞在の場となる。
IKEBUKURO LIVING LOOPの期間中、歩道に設置されたストリートファニチャー。たくさんの人がたたずむ場所となった。

合場 ストリートにおいて、スムーズな通行が優先されすぎるあまり、たとえば今日のようなイベントのために占用許可を取ることですら、大変になってしまっていますよね。金井さんがおっしゃるように、日常的に屋台やファニチャーを置くというアイデアも、現行のルールだと通行の妨げになるから絶対だめ、ということになるわけですが、そもそも、道ってなんのためにあるんだろう、ということから見直すことで、実現に近づくのではないかと思います。

金子 地元の人が関わる、ということでいうと、南池袋公園の中にラシーヌをつくる時、区長と約束したのは、「オール豊島でいきますよ」ということでした。たとえば、今ラシーヌで雇用しているアルバイトは120人くらいいるんですが、原則として豊島区民、または区内の大学に通学している人を採用しています。それが「圧倒的当事者」に繋がると思っています。

高野 12月には、IKE・SUNPARKでも、このIKEBUKURO LIVING LOOPの延長のような形でマルシェをやろうとしています。その野菜は埼玉から産地直送という形にできるよう、埼玉県の農林部と交渉中です。そしてもちろん地元・池袋の商店街の方々にも出店していただけるよう強く要請しています。どれだけ素晴らしい公園ができても、やはりそこに魂を入れていかなければなりません。区民の皆さまに喜んでもらえるような場所になってこそ、池袋の活性化に繋がります。さらには、一時的なイベントではなくて、日常的な動きにしていきたいと意気込む声もありますから、活動の連続性が生まれ、さらに広がっていく仕組みも考えていかないといけないと思っています。

青木 埼玉の農家さんが普通に週末ふらっとやってきて、路上で野菜を売り始めるとか、大掛かりな仕掛けをしなくても、こういう動きが日常になるような仕組みの構築がこれからすごく重要ですね。

歩道上に設置されたマルシェ。

金井 屋台やストリートファニチャーも常時置いて、区民誰もが気軽に参加できる、当事者になれる、そういう仕組みを考えていった方がいいですよね。皆、家に不要な物って必ずあるでしょう。それをここへ持ってくれば物物交換できる、そんな会があったらすごく面白いでしょうね。

金子 その頻度は月1回か、週1回か、または毎日になるのか分かりませんが、日常化を目指すには、皆が集いやすく、参加しやすい工夫が必要です。地元の商店街の人たちにももっと路面に出てきてほしいな、という思いがあります。
先日、主催者の皆さんとお話していて、これからは「共済」だよね、という話で盛り上がりました。地域内のプレイヤーで、還元したり、力を合わせたりを可視化する手段として、資金を出し合うような仕組みがあり得るのではないかと思います。

青木 まさに、ドネーション文化を育てていくということですね。価値を交換し合い、「お互いさま」で支え合えるコミュニティが日常的にあるのは理想的です。
今豊島区の人口は、約30万人です。最近は、0〜14才の若い世代が増えています。一方でこれから身寄りがない方も増えていくでしょう。その時に、残された財産がただ相続税として徴収されるのではなくて、自分の意思で、豊島区のまちづくりに遺贈寄付できるような仕組みがあれば、さらにそうした文化が進むんじゃないかと思います。
たとえば南池袋公園を特徴付けている芝生も、きれいに維持するためには結構お金がかかります。現状では、税金や、一部をカフェゆるの収益から捻出したりしているわけですが、それをさらに広げて、区民のドネーションで直接賄えたら素敵ですよね。集めて再配分するという点では税金と変わらないんですが、「この公園が好きだ」という「共感」から、まちづくりに貢献ができるところが違います。

金井 日本の相続財産って年間で62兆円もあるそうです。人生100年時代と言われていますが、あの世には一銭も持っていけないわけです。どうせ持っていけないわけなので、生きている間にどう使うかが重要です。そのためにはお金の心配をしないで過ごせる社会にしなければいけないですけどね。

金子 ラシーヌでは、豊島区との約束で売り上げの0.5%を地域貢献費として寄付しています。今年5年目を迎えて、相当な額に達しているので、公園のためでも街のためでも、積極的に周辺のまちづくりに使っていけるような仕組みをつくりたいと思っています。
一方で、南池袋公園やグリーン大通りは、豊島区の中ですでに象徴的な場所なので、ある意味いつでも、どんなことでもできるんです。むしろこういうイベントは、周辺エリアから始めた方が、もっといろんな可能性がありそうです。どうしても都心部である池袋への偏りが生じがちになってしまうので、豊島区も広いですから、範囲を広げていけるといいのかなと思います。

ILLの期間中、南池袋公園にて開催されたヨガ。奥の建物がラシーヌ。

青木 大塚や駒込、かつてアトリエ文化の育まれた椎名町や長崎、南長崎も、豊島区です。今回のイベントにはそうした各豊島区のユニークなエリアからも出店してもらっています。各エリアのプレイヤーがそれぞれの街を面白くさせていって、池袋は彼らが時々集結して、連携会議みたいなものをする場所と位置付けるのもいいですね。
どうしたらいい街になるか、と考えることを、今まで僕たちは行政にお任せだったと思うんですよ。でも、民間が市民の目線で関わっていくことが必要な時代になっています。民間がきちんとお金を投資して、自分たちの街をよくしようという意識を持つ、各地域でのマルシェがそのきっかけになったらいいですね。

高野 豊島区は財政が厳しく、私の区長人生の半分は財政再建でしたが、新庁舎建て替えが公民連携のスタートになりました。そこから玉突きのように、それぞれの地域に広がりつつあります。民間の方々と共に街をつくっていこうという姿勢を、最大の豊島区の売りにしていきたいし、なり始めているのではないかと思います。

アイデアを街にインストールするには?

グリーン大通りから池袋駅方向を見る。

馬場 今日はいろんなアイデアが出されましたね!一方で、こうした自由なアイデアを街にインストールするための仕組みが十分じゃないから、なかなか実行できないという実態も、浮かび上がってきたと思うのですが、今後どうしたらいいでしょうか?

合場 これまで、パブリックスペースでは利益を上げてはいけない、という暗黙の戒律があったように思います。でも民間が元気じゃないと街の活性化もできませんから、これからは、民間がきちんと儲かる街にしていかないといけないと思います。逆に民間の方も、ただ自分が儲かればいいというよりも、いかに街に貢献し、いい街にできるかということを考えるように変化してきています。これからは、行政の「豊島区をよくしよう」という思いと、民間の「自分たちの街に貢献したい」という思いが重なっていくと思うんです。だからこそ、既成概念を取り払って、行政もきちんと民間が利益を上げられるように、仕組みの部分でサポートしていくのが新たな役割になると思いますね。

馬場 公共空間で企業が活動しやすく、かつきちんと利益を上げられる仕組みを行政側がうまく準備できるか、一方で民間側がうまく使いこなせるか、が重要だということですね。

青木 たとえばIKE・SUNPARKでは、従来の行政の代わりに管理するだけではない「積極的な指定管理」という形で市民の持ち込みイベントでの公園占用の受け入れ事業の展開が可能になり、稼ぐ仕組みがインストールされましたよね。これから、IKE・SUNPARK、グリーン大通り、南池袋公園が連続すれば、市民がどんどん街中を使いやすくなっていくはずです。さらに、池袋駅には南北連絡デッキ構想がありますよね。それが完成すれば、西口の方まで繋がります。駅前全体が日常的に使いやすく、地元の企業や市民が街を舞台に活動でき、かつそこでしっかり稼ぐことによって、また再投資ができる。そういう流れをつくれたら未来は明るいですね。

僕からのお願いは、日常を支えるという意味では、お互い様の気持ちで、参加する方も意識を高く持ってほしいということです。南池袋公園を支えるためには、行きたくなるカフェをつくるのは当然ですが、使う方もお金を落としてほしい。マルシェも埼玉の農家さんが生野菜を運んでくるためには、当然売れ残りのリスクがあります。だからみなさん、今日はまず、この野菜を買って帰ってください(笑)。

金子 先進国の中で、公園が上場していない国って日本だけなんだそうです。運営方法も、企業が後援したり、運営したり、さらに集まったドネーションや、稼いだ分の利益を還元する仕組みは、指定管理の他にも色々あると思います。今日のようなイベントを日常として持続するためには、街場のプレイヤーとしては、売り上げは無視できません。

馬場 重要な提言ですね。NYのブライアントパークは、経営が法人化されていて、年間の売り上げが15億円あります。グリーン大通りや南池袋公園のようなストリートやパブリックスペースも、組織化して「経営」できるようになればだいぶ変わりそうですね。さらに、そこには企業のドネーションもあれば、共済的に、個人が寄贈贈与できる仕組みもあるとか。大企業から、地元の中小企業、市民団体、さらには個々の市民といった、いろんな規模のメンバーの協働で成り立つパブリックスペースの運営団体が生まれてもいいなと改めて思います。

金子 南池袋公園をつくる時には、ブライアントパークの人たちとも、どういう仕組みで公園を運営しているのか、相当議論しました。その時に彼らに言われたのは「税金が出るなんて最高じゃないか」ということ(笑)。運営にまつわるカルチャーが国によって全然違うんですよね。ただ、日本は税金で賄われる分、民間の関わるハードルが高いです。官と民の分け方がもう少し柔軟にならないといけないんじゃないかと思っています。

高野 南池袋公園にラシーヌがなかったら単なる公園で終わっていたでしょう。公民連携で池袋が大きく変わる一歩になりました。ここからは、ラシーヌがちゃんと儲かっているよ、ということが可視化できなければ、さらなる発展が望めないですね。これからも金子さんにはいいお手本になってもらいたいです。

馬場 地元企業が元気であること。秘訣は案外シンプルですね。

青木 IKEBUKURO LIVING LOOPの企画運営をしていると、たとえば「自分たちもここでライブをやりたい」とか、たくさんの声が届くんです。僕たちは4社で豊島区と契約を結んで活動しているので、比較的スムーズに実現できるのですが、僕らがその人たちに「どうぞやってください」と言うことができないのがもどかしいですね。
国際アート・カルチャー都市構想のもと、2020年には元庁舎跡地に8つの劇場を備える新複合商業施設「Hareza池袋」がオープンしましたし、西口には東京芸術劇場もあります。駅前でオーケストラの音楽が聞こえてくる街なんてなかなかないですよね。そういう動きがさらにストリートにも展開して、日々、街のそこら中で劇場的な営みが行われると面白くなりそうですが、どうですか?

路上のステージで開かれた生演奏。

高野 豊島区では「まち全体が舞台の、誰もが主役になれる劇場都市」、このスローガンで、まちづくりに貢献してくださる方がいっぱいいらっしゃるので、行政としても一生懸命サポートしなければいけませんね。

合場 ストリートの環境づくりもすごく大事ですね。たとえばビルのグラウンドレベルはなるべく開かれるようなお店を揃える。これはなかなか義務化できることではありませんが、ビルの所有者が少しずつ協力しながら賑わいをつくっていけるような、緩やかなルールができるといいなと思います。

金井 市民の声を行政に届けるために、毎週こういう路上公開会議をやるのはどうでしょう。そんな区は他にないでしょうし(笑)。

馬場 この光景は民主主義!という感じがしますね。

高野 毎週は体が持ちませんが(笑)、私ではなく、若い人がどんどん出て来てほしいですね。豊島区では「稼げる自治体」というのをひとつのテーマにしており、これからも民と官が一体となって進めていきたいです。

青木 今日をきっかけに、それぞれがこの賑わいを日常にしていきましょう。2021年は、まちがどんどん人間中心になり、建物の足元の表情も少しずつ開いて、街並みが大きく変わる元年にしましょう。

高野 今日まちづくりに情熱をもった方々とトークができて本当にありがたいです。聞いていただいている皆さん、お一人お一人が主役になり、街全体が文化都市、劇場都市として、池袋らしさが産まれようとしているのではないかと思います。
豊島区は、SDGs未来都市として、誰も取り残さない、そして持続可能な開発目標がスローガンです。それは行政だけではできません。民間の皆さんの力あってのことです。街に関心を持ってもらえるこの機会を十分に生かしたいと思います。

皆さん、ありがとうございました!

2020年10月31日 グリーン大通りにて収録されたものを編集・加筆
編集:木下まりこ
写真提供:nest(特記を除く)

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