ヨーロッパの屋外卓球台はいろんな使われ方をしているらしい
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ドイツのライプツィヒに3週間滞在したことがあるのですが、たしかに公園に卓球台が置いてありましたね。
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イギリスにもいっぱいありましたよ!
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富安隼久さんの作品集『TTP』を持っているのですが、まさにライプツィヒで、当時富安さんが住んでいた部屋の窓から、同じ卓球台の写真を撮り続けた写真集なんです。季節や天候によっていろんな使い方をしている光景があるんですが、卓球をしてる人はほとんどいないんですよね(笑)。
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その本、PING PONG PLATZの発起人の灰谷歩さんも持ってました!
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象徴としての卓球台
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最初卓球と聞いた時は、現代の日本に馴染むんだろうかって思っちゃったんです。スポーツとしては反射神経がけっこう必要だし、経験者と素人の差が出やすいし。より多くの人が楽しむにはゲートボールとかモルックとかの方がいいんじゃない?とか。でも、写真を見たり話を聞いたりしていると、どうやら卓球台という環境が、いろんな行動をアフォードしている。ゲートボールやモルックじゃ生まれない何かが卓球にはあるのかもなあ。
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先述の写真集でも、卓球台の本来の目的を超えた風景が現れているところがいいな、と思ったんですよね。卓球台があることで、「遊びの可視化」というか、「この場所が使えるんだ」というメッセージになるというか。
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例えば、ただの空き地には入っていいのかわからないけど、アイコンとしてベンチを置くだけでメッセージが発せて、公園的に使われるようになったりしますよね。「使えますよ、でも使い方は自由ですよ」とちょうどいい塩梅で発信するのが建築家や空間のつくり手の腕の見せどころになってきます。屋外の卓球台というのは、日本では新しいアイコンになりえますね。
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将来的には卓球台を屋外に常設したいけど、いきなりは難しいから、少しずつ認知してもらえるように、まずはポップアップのイベントをやっている、というステップの踏み方がおもしろいと思いました。多くの人が理解するためのスピードって大事ですよね。
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「そういうものがあったら実際どう?」というのは、身近にできて初めてわかることですからね。公共空間活用というと、熱い思いを持っているアクティブなプレイヤーをイメージしがちだけど、たまたま通りがかっただけで二度と来ないかもしれないような人も含めて実験しているというのも素敵です。
「目的がないこと」をどう保つか
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必ずしも卓球をする場所が欲しいわけじゃない、スポーツ振興を目的にしてるわけではない、というのがポイントですよね。
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今回は意識的にアートプロジェクトという形をとることで、「実は卓球をすること自体が目的ではないんです」という姿勢を維持しています。将来的に屋外への常設が実現するとしたら、どんな理解の元で設置されるのかが鍵ですね。「卓球台」であるからにはやっぱり卓球をすることが第一になるんでしょうか。
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たしかに、「違う使い方をしてる人がいて卓球したい人ができなかった」とクレームがくる、みたいな状況が出てきそう。
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複数の目的を併せ持つ、というのはなかなか受け入れられないですよね。なんでなんだろう。
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「安心・安全でなければならない」という話なんですかね。管理者としては想定外の使い方はしてほしくない。
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「じゃあどういうルールだったらいいんだろう?」ということを自分たちで考えてつくっていくよいトレーニングになりますね。
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イギリスで見た卓球台は、エリアによって全然違うしつらえになっていました。ローカルルールがあるのがいいんですよね。卓球にするのに必要な道具が、手づくりで置いてあるところもあれば、全部チェーンで繋がってるところもあるし、何もないところもある。その時々でルールをつくれることが大事なのかもしれません。
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彼らの機運醸成の取り組みは、まさにその落とし所を探っているとも言えると思います。
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まちの中に「こういうことをやっていい場所ですよ」を示す手段って何があるんだろうと考えると、例えば「特区」ってありますよね。ざっくり言うと「一定の目的に沿っていれば規制緩和ができる」という仕組みですが、公設・民設、常設・仮設含めていろんな「特区」的要素を持った公園的な空間が都市に点在したらおもしろそう!という連想をしました。
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制度的な特区の可能性もありますが、もっとカジュアルな精神的な特区の可能性もあると思います。例えばお祭りも精神的な特区の事例かなと思います。僕が10年参加しているお祭りは、神輿を長時間担ぐ過酷な祭りなんですけど、2日間のお祭りの期間だけ、参加者や見物人が普段座らない壊れた塀の上に座って休憩したり、道路の上を占拠してお酒を飲んだり、道路の真ん中で寝たりしちゃうんです。これが日常になったら恐ろしいけど、もっとまちの環境を読み解き、より豊かに振る舞えることって重要なのかなと思っています。このような振る舞いのトリガーとなる精神的な特区も良いなと思っています。
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「遊び」を生み出す方法
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PING PONG PLATZが見据える常設化には、ニーズに左右されすぎないという意味もあると思っています。僕がずっと調べている歩行者天国って仮設性が高い場なので、ニーズがなくなるとすぐになくなりがちです。例えば子どもの遊び場のために始めたけれど、子どもがいなくなったからやめましょう、というような。でも、常設化された交通規制があると、ニーズが変わってても継続されて、結果的に他の時代に他の目的で役立つ可能性もあります。例えば蓄積されてきた管理のノウハウや合意形成の仕組みが、防災や地域コミュニティの維持と役立っている、というような事例です。
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常設化することで違う時代に日の目を見ることもある、ってことですね。僕は以前再開発の仕事をやっていましたが、「まちを変える」方法として共通して活かすことができる現場ノウハウの蓄積はあると思っていて、社会状況や事業環境などの変化に応じて事業手法の趨勢が変わっても、その経験値はどこかに生かしていかないともったいない、という思いはあります。全部やり方を変えるんじゃなくて、どこかにオルタナティブを残しておくのが大事。
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少し違う視点で言うと、先日山口市のYCAMの取材に行きましたが、例えばメディア教育について、ニーズに先行して研究をしていて、後からニーズが追いついたと。地方都市で民間企業が参入するマーケットが成立しないから、公共でやるべきなんだ、という矜持を持って取り組んでいるのが印象的でした。
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「ニーズがないけれどやった方がいいんじゃないか」ということをどう捉えるのか?というのは大きなテーマですね。「遊び」という話題とも関連して、公共R不動産研究所でも取り上げた『“遊び”からの地方創生 – 寛容と幸福の地方論 Part2』(https://www.realpublicestate.jp/post/r_book03/)を思い出します。「人々が外に出て、人に会って、遊びたくなるような機会を作り出すことが重要である」と提言しているわけですが、身近な楽しい場所や、実験できる遊び場を提供できるのは誰なんだろう。
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PING PONG PLATZは民間主導のポップアップでニーズを捉えている段階ですが、これからは行政や多様な主体とどういう関係を築いていくかが重要になってくるんでしょうね。
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民間だとおもしろいことができても常設が担保されているわけではない。なくてはならないのなら行政の仕事ではないか?という見方もできて、やはり公共のことなんだと感じます。行政と民間と地域と、それぞれのセクターが何をやっていくのかしっかり考えないといけない。そんなところに切り込んでいくきっかけになるおもしろい事例ですね。今後の展開も楽しみにしています!
先日、「隅田川 森羅万象 墨に夢」(通称:すみゆめ)のサイトで、僕が執筆した、アートプロジェクト「PING PONG PLATZ」のレポート記事が公開されました。
公共空間×ピンポンでまちを少しずつ変えていく
「PING PONG PLATZ」の詳細はレポート記事を読んでいただきたいのですが、ざっくりいうと、まちなかに卓球台を置いて、それをきっかけにいろんな人を巻き込んでコミュニケーションや現象を起こす、という実験をしたアートプロジェクトです。ドイツの公共空間に卓球台がたくさん置かれているのを参照したそうですが、みなさん知ってましたか?