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クリエイティブな公共発注について考えてみた by PPP妄想研究会
  クリエイティブな公共発注について考えてみた by PPP妄想研究会

第7話:一括発注の雄・PFIの弱点を乗り越えるDO方式!?

行政経営の効率化を図る公民連携(PPP)。その法制度や仕組みがクリアになれば、もっとクリエイティブな公共発注が可能になるのでは??という問題意識から発足した「PPP妄想研」が、既存のルールを読み解いた上で、「こんな制度が理想的なんじゃないか」論を妄想していきます。

現状、「構想」「設計」「施工」「運営」とステップごとに分断されている発注。これらが一括発注できれば、構想段階から運営目線をとり入れた、現実的かつクリエイティブな事業ができるのではないか?という視点で考えていきます。
現状、「構想」「設計」「施工」「運営」とステップごとに分断されている発注。これらが一括発注できれば、構想段階から運営目線をとり入れた、現実的かつクリエイティブな事業ができるのではないか?という視点で考えていきます。

PFIの妄想研的弱点とは?

前回は、一般的な公共施設のリノベーション工程が「構想→設計→施工→運営」で進む場合に、それらがステップごとに分断発注されている現状に対し、まとめて一括発注することで、構想段階から運営目線を入れることができ、現実的かつクリエイティブな事業ができるのではないか、というアイディアにたどり着きました。が、そこではたと気づいたのは「一括発注」といえばPFI(Private Finance Initiative)。もしかして、我々はぐるっと回って、PFIが目指していた世界観をなぞっていただけなのか……!? ということ。

とはいえ、PFIも、手法的にはよさそうなのに、我々妄想研が目指している、第1話第2話でみてきたような、ワクワクするような公共施設活用とはやっぱり毛色が違う。THE・公共施設みたいな施設が完成している例が多いように見える……。今回は、なぜPFIはワクワクしないのか、その弱点を分析し、それを乗り越える妄想をしてみたいと思います。

一周回って、もしかしてPFIが答えなの……??でも何か違うような……。

PFIのおさらい

まず、そもそも、PFIとは何か?からおさらいです。もともとイギリスの1980年代の緊縮財政下で編み出された公民連携手法と言われています。日本では1999年に内閣府主導でPFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)が制定されました。自治体が、「PFIでやりたいな〜」と勝手にできるわけではなく、この法律に基づいて手続きを進める必要があります。内閣府に「こんな案件を、こういう理由から、PFI手法でやりたいと思ってます」ということを届け出て、「これはPFIでやる意味ありそうだからOKです」というゴーサインが国から出て初めて、PFI事業ができるようになります。

ざっくりとスキームをおさらいすると、こんな感じです。(以下、「PFI」は、日本で最も一般的な「サービス購入型」のPFIを前提とします)
PFIはその名の通り、Private(企業)Finance(お金)Initiative(先がけ)ということで、イニシャル(初期投資)を民間事業者が投資するスキーム。

  • 民間事業者が初期投資を調達
  • 民間事業者が設計、整備、運営まで一括して実施
  • 行政は、施設完成後、そこから提供される「サービスを買う」というかたちで、10〜20年の期間にわたり、整備・運営コストを負担する

行政は、民間が立て替えた整備費と運営費用を、割賦払いで返済していくイメージです。これが、前回触れた、予算に最初から予算に上限をもうける「債務負担行為」(複数年度に渡ってある額を拠出することを決定する議決)ですね。

初期投資を民間事業者が負担することによって行政の財政負担の平準化が可能になるPFIというスキーム

PFIのストロングポイント

では、このPFI。いったい何がすごいの?というと、その画期性は、主に以下4つ。

①設計・施工・運営が一括で発注されるので、より運営目線を反映した、効率よい施設を設計できる
② 発注時間と工期の短縮ができ、実現スピードが早い
③ 巨額の予算を一括で計上せず、財政負担の平準化が可能
④必ずしも行政が担う必要がない運営業務を民間事業者に切り出すことで、コストパフォーマンスが向上する

ここに挙げた4つ以前に、そもそも、PFI法という公民連携に関する法整備ができたこと自体が、大きなインパクトだったともいえます。それまでは、公務員の苦手とする「白黒はっきりしないグレーゾーン」である「民営化」とか「規制緩和」はどちらかといえば国家レベルの話で、かなりハードルの高いもの。それが、「PFI法にのっとって、こうやってください」と手続きが明確に示されたことの意義。基礎自治体の公務員のみなさんが「このルールで進めれば、合法的に公民連携ができる!」という、国のお墨付きと、安心感を得られたことの功績は、日本の公民連携を推し進めるうえで、大きな前進だったのではないでしょうか。

PFIのウィークポイント

さて、このPFI、導入されてから今年で30周年なんですね!パチパチ。実績として日本PFI・PPP協会のデータベース上で発表されているのは900件程度(実施方針公表件数ベース)。まずまずな数な気もするし、日本に1800の自治体があるなかで、年間30件程度と言われると、物足りない気もするし……。いずれにせよ、爆発的に普及しなかった理由としては、以下のようなことが挙げられそうです。

①手続きが煩雑で、自治体に使いこなせる人材が不足している(らしい。個人的にはそうは思いませんが)。結局、コンサルに手続きを外注しているケースがほとんど。
② 上記の理由から、ある程度金額規模のある案件じゃないと、逆にコストがかかってしまう
③金額規模の大きい案件となると、初期投資額も大きくなり、その規模の資金調達をできる民間事業者が絞られる(地方都市では事業者が限られる)。
④せっかく設計・施工・運営が一括で発注されても、お金のかかる開発や工事側の声が大きくなり、運営やデザインの視点が反映されないことがある。

まとめると、一括発注できるPFIは、行政側からみれば、ステップごとに発注する手間が省け、時間的な短縮もでき、財政負担も平準化してありがたい制度。けれども結局、結構な手間がかかるので、大規模な案件でしか効果が出にくい面もあります。一方、大規模な案件では工事費も高額になってしまうため、民間側にとっては、参加のハードルが高くなったり、必然的に、施工(工事)事業者さんの声が大きくなって、設計・運営事業者の声が弱まってしまう場合もある……。という、最初に狙った「運営者目線を最初から取り入れた現実的且つクリエイティブな施設をつくる」という効果が薄れてしまう結果に終わっているかもしれない、ということがウィークポイントとして挙げられますね。

一般論として、予算区分の大きな施工(工事)業者の力が大きくなりがちな面も。
矢ヶ部慎一 矢ヶ部さん

事業規模に応じて巨額になる工事費は、事業上の制約として大きな要素であり、関わる企業の規模も大きくなる傾向にはあります。不動産会社・施工会社・管理運営会社が組む事業において、厳しいコスト条件を施工業者が迫られる場合もあり、一概に、施工業者の声が大きいというわけでもありません。その事業の座組みとリスク分担で変化する、というところは押さえておきたいポイントです。

DO方式ってどうなの?

そこで、妄想です。妄想というより、実は使われているけど普及していない手法を、より使いやすくするためのTIPSという感じです。

一括発注で目指したのは、運営者目線を最初から取り入れた現実的且つクリエイティブな施設をいかにつくるか、ということ。その上で、上記メリットデメリットを考え合わせると…..一番大きなお金の動く「施工」部分を外した、「設計」と「運営」というパートをつないだ発注にしてはどうだろうか?というアイディア。ちょっとアクロバティックに聞こえるかもしれません。しかし、実は、なんら目新しいことではなく、すでにこの手法はDO方式(Design and Operateの意)というやり方で、手法として存在しています。それほどメジャーではない、というだけで……。

「施工」部分を外し、「設計」と「運営」を一括発注するDO方式

DO方式がマイナーな理由① ハコモノ整備重視の行政思考

この手法がメジャーではない理由を、まずは考えてみます。

一番の理由は、DO方式は、行政にとってもメリットが「感じられない」から。間違えないでくださいね、メリットが「ある」のに「感じられない」のです。これまでの行政の思考パターンとして、ハコモノを「整備すること」が即ち市民サービスを提供することと同意と捕らえられており、いかに使われるように「運営するか」ということにはあまり注意が払われてきませんでした。なので、「整備」より先に「運営」の事業者を決定するという順番自体に、違和感を感じるのではないでしょうか。

例えば、この「整備」偏重の行政の思考パターンというのは、パン屋さんが欲しいので「かっこいいパン屋のハコ」を整備する。その後で、ここで営業する「パン屋さん」を募集するチラシを配る、みたいなもの。民間的な感覚だと、どう考えても先に、「おいしい」「センスある」と発注主が思える「パン屋さん」を口説いてきて、お店づくりから一緒にやるのが普通です。つまり、運営のプロも交えてハコを考える、ということ。

世にも不思議なハコモノ思考のパン屋募集……
加藤優一 加藤さん

実際に公共空間の再生に関わっていると、運営者がイメージできていないのに設計だけ先行させようとする場合がよくあります。もっとマズいのが、よかれと思って工事まで完了してしまったけど、空間のセンスが合わずに運営者が決まらないという状況。前者の場合は、急いで意欲のありそうな民間事業者を探してヒアリングなどを行いますが、後者の場合は手遅れ。特に地方都市では、参入する民間事業者が限られているので、気をつけたいところです。

DO方式がマイナーな理由② 債務負担行為をとれるほどメリットが示せない

DO方式がメジャーにならないもう1つの理由は、この方式を採用するメリットが数値で示せるほど明確でないからです。もし「構想」「設計」「運営」の3点セットを一括で発注する場合、複数年度にわたる予算を確保するために変則的な「債務負担行為」をとる必要があります。
しかし、そこに立ちはだかるのは、「議会説明」の厚く高い壁。鋼の如く強固な理論武装をして「なぜ債務負担行為をとる必要があるのか」を議会に説得せねばなりません。PFIであれば、手続きも確立している(ガイドや雛形などが内閣府HPに公表されている)上、「PFI導入時と通常発注を比較すると、これくらいお得になります。」という数字の算出方法も明確に決まっています(Value For Money =VFMと呼ばれる指標)。
しかし、DO方式の3点セットでは、一番お金がかかる「施工」のステップが抜けているため、数字ではお得感を演出しにくい。理論的に「いいものができるんです!」と、いくら主張しても、議員さんには伝わりません。単年度が基本の「き」である行政システムの中で、それを覆す予算組みをするのは想像以上に難しいのです。

DO方式「的」な発注の妄想

そこで、そのデメリットを少しでも抑えたかたちでDO方式的な発注方法を導入できないか、考えてみました。

まず、「債務負担行為」をやめる!
「えっ! 一括発注しようって主張してきたのに、いきなりそこ諦めるんですか!?」というツッコミが入りそうですが、そこの壁が厚いのですから、仕方ありません。他の手で、運営目線を構想から入れていける方法を考えます。
ここから先は2段階で作戦を練りました。

STEP1:運営事業者の参加要件

まず第1段階は、非常にシンプル。「DO方式『的』な参加要件とする」こと。つまり、「基本構想作成」の発注ステップで、公募要項の中に、参加要件として「運営事業者と組んで提案すること」を盛り込む。PFIのような事業効率化の視点で考えると一括発注が望ましいですが、運営を見据えた設計を求めるという視点では、自然な要件とも考えられます。拍子抜けするくらい単純なことで、これならすぐにでもできそうです。
一方で、これだと担保できていないのが、構想から関わる「運営者」が、最終的に運営者として選定されないこと。選定されないどころか、第6話でみてきたような、従来型の分断発注を基本にすると、「基本構想作成」に関わったら「運営事業者選定」のステップでは公募資格を剥奪される可能性すらあります。できるだけ、構想策定に関わった運営事業者が、最終的に運営事業者選定まで可能になるような参加要件とセットであることが望ましいです。

確かに、1年目に「構想」の段階を受託し、構想を描いている会社は、その他の会社と明らかに持っている情報に差があるので、その後の公募の際に、フェアな公募にならない、故に失格、という考え方には一理あります。しかし、設計の公募要項と審査基準、審査員さえきちんとしておき、公平な審査を行えば、ある程度、そんな情報格差がつくり出す溝は防ぐことができるのではないでしょうか。その段階で、もっとよい設計・運営提案をしてくる会社があったら、単純に、そちらを選定すればいいわけですし。

STEP2:リレー方式の条項挿入

前段は、要するに、「要件だけはDO方式的にするが、ステップごとにいちいち公募はする」ということ。理論的には、十分可能そうですよね。しかし、ここで考慮すべきは、運営事業者にとってのインセンティブと、行政的なメリットとのバランスです。
行政には、運営目線を反映した構想が描けるメリットがあるとしても、運営事業者にとっては、結局、公募を挟むことによって、自分達が最後まで関われる保証はない、という状況。これでは、彼らの提案の本気度は低くなってしまいます。設計など他の業態と組んで提案するということは、運営事業者にとって、コミュニケーションコストが増大するというデメリットがあることも忘れてはなりません。行政側としても公募するからには本気度の高い提案を出してもらいたいですよね。

そこをカバーするのに妄想したのが「リレー発注方式」。「構想」「設計」「運営」のステップを随意契約でリレーさせるという方式です。発注前から一定の評価基準を設けておき、たとえば「構想作成業務」を請け負った運営と設計の事業者が、その基準に照らして「問題がなければ」、原則として翌年、随意契約で「運営事業者の意見を反映した設計業務」を受託することができることをあらかじめ最初の要項(契約条件)で定めておく、というイメージです。

(「随意契約」とは、公募を経ずに、行政が民間と直接契約する契約方法です。随意契約については、今後、連載の中で改めて取り上げる予定です。なんだその裏技?と思われる方も、しばしお待ちくださいませ。)

ハードルの高い「債務負担行為」は潔く諦める!リレー方式の提案。

リレー型DO方式発注:佐賀県佐賀市の事例

廃校になった小学校を、スポーツをメインとした合宿施設にリノベーションしたSAGA FURUYU CAMP。(提供:OpenA)

実際にこの発注方式が採用されたのが、佐賀県佐賀市の事例です。10年以上使われていなかった山間部の小学校を宿泊施設・サテライトオフィス・地域交流施設などの複合施設に再生する事業。
条件のいい立地では、PFIも選択肢に上がりますが、地方都市では運営できる事業者が限られていることに加え、立地や事業規模から大きなゼネコンなどの参加が見込めないため、リレー型DO方式が選択されました。
設計と運営というソフトだけを切り離すことで、中小規模の地元企業や設計事務所がチームを組んで、デザインや機動力を活かした再生が可能となりました。改修費を行政で賄い、設計、運営を民間に任せ、民間が賃料も支払うというスキーム。行政投資が発生するため、構想作成からスタートしてますね。

ここで、リレー方式の具体的な方法をみてみましょう。構想作成業務の要項に以下のように書き足すことで、翌年の随意契約リレーを実現してますね。(ただ、「問題がなければ」の定義が曖昧なのがやや気になるので、今後実施される自治体がある場合は、一定の基準を要項で示しておいた方が望ましいと思います。)

「富士小学校跡地設計・管理運営業務委託 公募プロポーザル応募要項」より抜粋
加藤優一 加藤さん

実はこの事例、設計者として関わったのですが、運営者がチームにいることで将来を見据えた設計が可能になりました。運営側からも、事前に利用イメージを共有できたと聞いています。この手法は、日本中の地方都市の廃校活用に展開できると思います。地域の価値を上げるために、建設費は行政が負担し、地元の建設会社が参加できるスキームにすることで地域経済にも貢献でき、地元の企業が運営に関わる音で既存産業との連携も進む。プロセスとして、新しいモデルになるのではないでしょうか。

コンセプトから一貫した活用に向けて

今回は、PFIが一括発注の夢を描きながらも、どうしても最も大きなお金が動く「施工」の段階で、工事事業者の声が大きくなってしまい、事業的なクリエイティビティを失いがちになる現実と向き合い、それを乗り越えるための妄想をしてみました。債務負担行為という厚い壁を迂回しつつ、行政にとっても手続きが最小限で済み、且つ、民間事業者にも提案のインセンティブを持たせるという、ステークホルダー各者のニーズを絶妙なバランスで保てるのが、リレー型DO方式発注なのではないか、という仮説にたどり着きました。
ぜひ、「構想段階から運営目線を入れ、コンセプトから一貫した活用」を目指す自治体の方は、このリレー型DO方式発注、お試しいただければ幸いです!

イラスト:菊地マリエ

   

飯石藍 飯石さん

人口が増え続けていた時代は、大きなハコをつくっても使い手がいたので苦労はあまりありませんでした。しかし財政難になっているこのご時世、構想段階から、どんな使われ方をするのが理想か考え抜いた上で、必要な機能を盛り込んだ、適切なサイズのハコをつくる。この考え方と具体的なステップが行政の内部でも民間事業者側でも当たり前になると、もっと面白い場所が増えてくるんだろうなと感じます。
その手法のひとつとして今回妄想している「リレー型DO方式」。DO方式自体は少しづつ事例が増えていますが、さらにこのリレー型で公平な審査を経て次のステップに進める方式は、うまく進めば一番効率よく、かつ構想時に描いた理想を体現できる切り札になるかもしれません。

   

寺沢弘樹 寺沢さん

DO方式(の一種)としての「運営事業者選考決定方式」は、近年、大阪府箕面市の船場駅前のホール(PFI法に基づくPFIで運営事業者を先行決定)、茨城県常総市の道の駅(指定管理候補者を先行決定)などで検討がなされています。運営事業者が基本構想や実施設計に関与することで、行政の独りよがりで「こうあったらいいな、たぶんこうなるんじゃないか」という机上の空論・リスキーなものから、実際の運営事業者による「使いやすい」「経営的な視点にたった」プロジェクトにしていける可能性があると思います。そして、発注の順序を入れ替えるだけなので、ハードルも比較的低いのではないのでしょうか。

   

公共R不動産では、民間事業型の公共不動産活用を促すためのデータベース作成にも取り組んでいます。詳細は【公共R不動産 データベースβ】をご覧ください。

PROFILE

菊地マリエ

菊地マリエ

公共R不動産/アフタヌーン・ソサイエティ。1984年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。日本政策投資銀行勤務、在勤中に東洋大学経済学部公民連携専攻修士課程修了。日本で最も美しい村連合特派員として日本一周後、2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。現在はフリーランスで多くの公民連携プロジェクトに携わる。共著書に『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』。