小金井みんなの公園プロジェクト「play here」
小金井みんなの公園プロジェクト「play here」

誰もがのんびり過ごせる・遊べる公園を、みんなでつくる。未来のための練習場としての公園を目指した「栗山公園のんびりデー」レポート

公園を、障害のあるなしに関わらず、誰もが自由に遊べる場所にしていきたい。そんな思いから始まった東京都小金井市「小金井みんなの公園プロジェクトplay here」は、令和7年度より公共R不動産も参画し、新体制でプロジェクトがスタートしています。大切にしているのは、「公園は、未来をつくる練習場」という考え方。2025年11月16日(日)に行われたコンセプトイベント「栗山公園のんびりデー」は、誰もがごちゃまぜになって遊べる・過ごせることを目指し、地域のみなさんと一緒につくり上げました。その模様をレポートします。

公園を通して、地域の自治を練習する

「小金井みんなの公園プロジェクトplay here」では、東京都小金井市内の3つの公園(梶野公園、栗山公園、三楽公園)を対象に、インクルーシブデザインに配慮した公園づくりを進めています。

プロジェクトの経緯や詳細はこちらからご覧ください。

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このプロジェクトは、地域の当事者や支援者の皆さんの声を伺うことからスタート。インクルーシブ遊具の設置は決まっていたものの、誰もが「ここで遊べる・過ごせる」環境や状況を本当の意味で実現するには、ハード整備だけでは足りないのではないか。年齢や障害の有無、遊び方や感じ方の違いによって、公園での居心地は大きく変わります。そうしたまだ見えにくい現状を、当事者や支援者の方々から学ぶことから始めていきました。

インタビューや対話を通して見えてきたのは、本来あらゆる人に開かれているはずの公園に「行きづらさ」を感じる方々の存在。おむつを替えるスペースがない、周りから白い目で見られることがある、遊具の順番待ちを守ることが難しく利用をためらってしまう、などなど、人それぞれの様々な事情がありました。(インタビューは書籍にまとめ、小金井市役所で配布している他、ウェブサイトでも全文ご覧いただけます)

インタビューをまとめた書籍第一弾。Webサイトでご覧いただける他、小金井市役所でも配布しています。

こうした声は、子育て中の方、体調に少し波のある方、初めての場所が不安な方など、障害の有無や年齢に関わらず、誰もが抱えうるニーズであると同時に、一定の尺度では語れない、ひとりひとり異なる生き方や感じ方が存在することに改めて気付かされるものでもありました。

だからこそ、お互いを自然に知り合い、顔の見える関係を築いていく機会が必要なのではないか。都心ではなく「日常の暮らし」が中心にある小金井市というエリアだからこそ、そうしたプロセスそのものが、みんなが安心して過ごせる場の土台になるのではないかと感じました。

そうした地域コミュニティをベースにした取り組みの積み重ねが、結果的に多くの人にとって心地のいい居場所になっていくのではないかという思いから、公園を舞台にした地域社会の自治の練習の場として、栗山公園のんびりデーに取り組んでいきました。

顔の見える関係性を育みながら、みんなで考える

play hereでは、地域の皆さんと一緒に公園や地域のことを話し合い、学び合う場として、定期的に「のんびり作戦会議」を開催しています。

小金井市の児童発達支援・放課後等デイサービス「木の葉クラブ」で開催されたのんびり作戦会議の様子(撮影:鎌田芙実)

メンバーは、障害のあるお子さんを持つ保護者の皆さん、子どもたちの居場所づくりや療育に関わる方々、不登校支援に関わる方、理学療法士や作業療法士を育成する先生など、地域の様々な皆さん。

当時、のんびりデーの舞台となった栗山公園は、インクルーシブ遊具やビオトープが整備中の段階。完成に向かうプロセスそのものを皆さんにオープンにするとともに、一緒に関わり合える場所にしたいという思いで、障害のある方々について理解を深める勉強会を開催したり、やってみたいことやアイデアを話し合う場を持ちながら、少しずつ準備を行いました。

栗山公園のんびりデーを一度きりのイベントとして終わらせるのではなく、日々の暮らしや関係性につながっていくことを大切にしながら対話を進めていきました。その過程そのものが、ひとりひとりの背景や立場、経験を持ち寄るような、お互いを知り合うような、そんな時間でもありました。

児童発達支援・放課後等デイサービス木の葉クラブ代表の島田優子さん(撮影:鎌田芙実)
全国特別支援学校知的障害教育校PTA連合会長の冨永美和さん(撮影:鎌田芙実)

みんなでやってみたい「練習」を持ち寄る

のんびり作戦会議や関係者の皆さんとの話し合いや対話を重ね、20以上の連携団体、50名以上の関係者やサポーターの皆さんとともに迎えた栗山公園のんびりデー。それぞれのエリアごとに「ありたい未来に向けた練習」を持ち寄り、みんなでほしい日常の風景を確認し合う。そんな1日がつくられました。

当日みんなで持ち寄った練習は、こんな内容が集まりました。

・地域の情報が集まる、困った時にも立ち寄れる「インフォメーションコーナー」
・みんなでごちゃまぜになって遊べる「あそびひろば」
・寝っ転がれたり、ちょっとした相談やセルフケアの時間が取れる「リラックスひろば」
・地域のおいしいごはんやお菓子が楽しめる「フードとドリンク」
・摂食嚥下障害コミュニティによるミキサーのお貸し出しコーナー
・地域の中学生と支援員による「焚き火」のエリア
・公園に隣接する健康運動センターでの「室内プログラム」

「栗山公園のんびりデー」のチラシ表面。関係者の方にご協力いただき、英語版も作成!
「栗山公園のんびりデー」のチラシ裏面

みんなでごちゃまぜの遊び方をひろげる練習

「あそびひろば」では、感覚遊びおもちゃやシャボン玉、輪投げなど、様々な遊び道具をお貸し出し。インクルーシブ遊具の有無によらず、みんなでごちゃまぜになって遊ぶ可能性を広げる練習として、理学療法士や作業療法士を育成する社会医学技術学院の先生と学生の皆さん、社会福祉協議会の皆さんのサポートのもと、こどもたちがのびのびと遊ぶ空間が生まれました。東京学芸大学石井研究室による、大きな紙に自由に絵を描けるコーナーも!

また、プールやジムなどを完備する健康運動センターでは、スポーツメンタルコーチの上坂先生によるリズムジャンプ教室、パーカッショニストのまめちゃんと打楽器で遊べるプログラムなど、室内だからできる遊びも広がりました。

段ボールによるサインや看板は、地域の中学生やボランティアチームによる手作り!(写真提供:益子徹)
あそびひろばの輪投げで遊ぶこどもたち。サポートが必要なお子さん向けのコーナーも。(撮影:鎌田芙実)
車椅子ユーザーのこどもたちも遊べる手作りのおもちゃも。(写真提供:益子徹)
健康運動センターでの室内プログラムの様子。(撮影:鎌田芙実)
あそびひろばには、シャボン玉やフラフープなど、いろいろな遊び道具をお貸し出ししました。(撮影:鎌田芙実)

みんなで「いただきます」をするために

フードとドリンクのエリアには、小金井で親しまれる洋菓子店のオーブン・ミトンさん、お好み焼き屋さんの六甲山、カレーとハヤシライス屋さんの高橋商店さん、障害がある人もない人もともに過ごすきっかけをつくるマイペースカフェの皆さんが参加。

オーブン・ミトンさんのブースでは、小金井市の児童発達支援・放課後等デイサービスに通うこどもたちがお手伝い。マイペースカフェでは、知的障害や書字障害等を持つこどもたちがコーヒーを淹れながら、訪れた方々と交流し、おしゃべりを楽しむ様子も。

また、摂食嚥下障害コミュニティ「スナック都ろ美(一般社団法人mogmog engine)」によるもぐもぐスタンドでは、ミキサーやブレンダーをお貸出しし、食べものを自分に合うやわらかさにその場で調整できるコーナーも。外出時に劣化しやすい嚥下食は、屋外に持ち運びしにくい場合もあります。公園や飲食店にミキサーやブレンダーがあれば、みんなで食事を楽しめる可能性が広がるかもしれない。そんな気づきもありました。

武蔵小金井の洋菓子店オーブン・ミトンさんのブースでは、小金井市の児童発達支援・放課後等デイサービスに通うこどもたちがお手伝い。(撮影:鎌田芙実)
公園のあちこちに椅子や段ボール、ピクニックシートを設置。思い思いにゆっくりのんびりできるスペースをつくりました。(撮影:鎌田芙実)
摂食嚥下障害コミュニティ「スナック都ろ美(一般社団法人mogmog engine)」によるもぐもぐスタンドでは、ミキサーやブレンダーをお貸出しすることで、自分にあった柔らかさに食事を調整することができるように。(撮影:鎌田芙実)
マイペースカフェによるソーシャルアクションブース。おいしいコーヒー片手にみんなでおしゃべり。(撮影:鎌田芙実)

みんなで過ごす、思い思いに一緒にいる練習

会場には、寝っ転がったり腰かけたり、各々がリラックスして過ごせるように、ピクニックシートや椅子、テーブルをあちこちに配置しました。さらに、会場中央には地域の中学生や不登校支援員の方による焚き火エリアも。みんなで火を囲みながらマシュマロを焼いたり、ダッチオーブンでつくられた焼き芋を食べたり、のんびりできる場も生まれました。

地域の中学生や不登校支援員の皆さんによる焚き火エリア。マシュマロをみんなで焼いておいしくいただきました。(撮影:鎌田芙実)
焚き火エリアには、小金井市教育長とそのお仲間がダッチオーブンでつくってくれた焼き芋も。(撮影:鎌田芙実)

小金井市の自立訓練事業所であるこらだ環境研究所は、アロマミストワークショップやハンドタッチケアを通じて、自分を労るきっかけを。就労継続支援B型事業所のムジナの庭は、スコーンなどのお菓子、ハーブティー、ケアの日用品の販売を通じて、日々の暮らしに優しい選択肢を。

日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション多摩クリニックの皆さんは、公園で専門家に気軽に相談できる実験として、食事やお口のことをちょっと話せる時間を。そうした場があちこちに点在することで、訪れた方が自分のペースで過ごし、関わり合える空間が生まれていきました。

ピクニックシートや段ボールでつくったリラックススペース。(撮影:鎌田芙実)
こらだ環境研究所の皆さんによるハンドタッチケアやアロマミストづくりのワークショップの様子。(撮影:鎌田芙実)
終了後の振り返りタイム。(撮影:鎌田芙実)

目指したい未来の日常風景を確かめ合う

栗山公園のんびりデーを一緒につくった関係者の皆さんのつながりやご案内を通じて、特別支援学校や療育施設に通うお子さんや保護者のみなさん、地域で関心をお寄せいただいてる方々、福祉や対人援助を学ぶ学生の方々など、当日は500名を超える来場者にお越しいただきました。

のんびりデーの終了後には、関わった人たちが集まり、振り返りの場を持ちました。連携団体の方々、サポーターの皆さん、市長も同じ輪に加わり、その日感じたことや気づいたことを共有し合いました。それぞれが自分にできることを持ち寄って一日をつくりあげたこと、この1日で終わらせてはいけないという思いをお互いに確かめ合った時間となりました。

好きな遊び道具を選んで自由に遊ぶ。自分に合った柔らかさでごはんを食べる。疲れたらひと休みする。各々のタイミングで授乳や医療的ケアができる。ひとりでゆっくりコーヒーを飲む。ちょっとした相談ができる。何かお手伝いしましょうか?と自然に声をかけ会える。大人もこどもものんびり寝っ転がれる。

そのような体験の共有を通じて、みなさんから多くいただいたのは「今日のようなごちゃまぜの風景が当たり前になったらいいのに」という声。「インクルーシブ公園」は、遊具等のハード整備で完結するものではなく、そこに集う人たちの過ごし方や関わり方とともに育っていくものなのかもしれません。そんな可能性を感じさせる、みんなで続ける練習のはじまりのような1日となりました。

地域の高校生や大学生など、play hereに関心を持っていただいた運営サポーターもたくさんご参加いただきました。(撮影:鎌田芙実)
2026年2月1日(日)、栗山公園のインクルーシブ遊具エリアが無事オープン!導入遊具の一部を設計した株式会社ジャクエツの皆さんと、知的障害と書字障害の10代が始めた不定期のカフェ「マイペースカフェ」の石野有紀子さんと息子さんのげんちゃん。

今回、小金井市の場合はこのような風景が生み出されましたが、公園という自由度の高い公共空間を舞台にした、その地域ならではの「ごちゃまぜ」の文化を地域とともにつくっていけるポテンシャルを感じました。ハードとソフト、コミュニティをかけ合わせたところにある「インクルーシブ公園」づくりの探究を今後も進めていきたいと思います。


2026年3月20日に、小金井みんなの公園プロジェクトplay hereの2025年度をともに祝い、振り返り、これからを考える「play hereかんぱい報告会」を開催します。お時間ある方はぜひお越しください。

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play here
かんぱい報告会

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【開催概要】
日時:2026年3月20日(金・祝)
時間:13時半~16時半
会場:栗山公園健康運動センター 小金井市中町2-21-1
対象:どなたでも
参加費:無料
定員:最大50名程度/事前予約優先
事前予約:申し込みフォームより
主催:小金井みんなの公園プロジェクト「play here」
協力:社会医学技術学院 NPO法人東京学芸大こども未来研究所 栗山公園健康運動センター 日比谷アメニス NPO法人UPTREE

詳細・申し込みはこちら

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play hereホームページ
https://playhere.site
play here  Instagram
https://www.instagram.com/play_here_koganei
小金井市 小金井みんなの公園プロジェクト「play here」 情報ページ
https://www.city.koganei.lg.jp/kurashi/479/kouenitiran/minnanokoenkaigi.html

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