≫オンライン開催決定! 9/25(金)『第3回 公共空間 逆プロポーザルonline』
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目標は5年後に300カ所。
ワークプレイスの選択肢を増やしたい。
ひとつのワークプレイスにとどまることなく、その日・その人の状況や職業に応じて働く場所を選択できる新たな働き方の仕組みとその可能性を追求している九州アイランドワーク株式会社。ワークプレイスという場の運営のみならず、独自のアプリを開発し、いくつものコワーキングスペースをネットワーク化、利用者が気軽に働く場所を選べるサービス「KIW」を提供しています。
廃校活用事例として有名な「MUKASA-HUB」内のワークプレイスの運営もされており、遊休不動産活用には実績あり。九州アイランドワークは、そのご縁もあり、MUKASA-HUBの運営事業者である株式会社一平ホールディングスのグループ企業として、2019年1月に設立されました。
事業コンセプトとして「はたらくをオフィスから解放する」を掲げ、九州全域で直営・提携のワークプレイス事業を展開。九州のローカルベンチャーやクリエイターの支援や広域連携を目指し、場所と人をつなげる取り組みを行っています。
「KIW」の導入目標は、5年後に300カ所。現時点では直営5カ所と、既存のコワーキングスペース10カ所以上との提携準備が進んでいます。単にWi-Fiと電源があればいいわけではなく、空間の清潔感はもちろんのこと、運営者との感性の近さを見極めて提携先を拡大しているようです。
空きビルや廃校など、
遊休不動産を活用したサードプレイスづくり
職場の選択肢を増やすことでコワーキングスペースと利用者ニーズのマッチング度を高めると同時に、オフィスに依存しない自由な暮らしを提案する「KIW」。この事業を始めた経緯をうかがいました。
「僕は東京で働いていた頃からテレワークが主で、気分転換や移動の合間にカフェやコワーキングスペースを訪れて仕事をしていました。大分に移住してから、九州にそういったサードプレイス的な場所がなくて困っていたんです。顔馴染みのあるコンビニでお弁当を買ってイートインスペースを度々代用するうちに『出身地でもある九州で、スポット利用できるワークプレイスをつくれないだろうか』と思ったのがきっかけでした」
この実体験を起点に、より働きやすく暮らしやすい九州を目指し、地域の活性化に繋がる可能性が高い空きビルや廃校などの遊休不動産を積極的に活用しながらワークプレイスが生み出されています。また、人々が働くためにKIWワークプレイスを訪れ、その地域を循環することで関係人口の創出を促したいという思いも込められています。
「KIWはテーマのひとつに『ダイバーシティ&インクルージョン』を掲げています。ダイバーシティ&インクルージョンとは、性別、年齢、国籍などの属性や、ライフスタイル、職歴、価値観などにかかわらず、それぞれの個を尊重し、認め合い、良いところを活かすことです。
私たちは、九州がこれからアジアを中心に海外との交流をより深めていくにあたり、このテーマがとても重要だと考えており、そこには地域活性化や関係人口の創出が関わってきます。大分に移住し、小さな地域からダイバーシティ&インクルージョンが生まれている事例を見聞きし、その中で私にできることはなにかと考え始めるようになりました」
コワーキングスペースといってもそのあり方は多様です。KIWでは、どのようなビジネスモデルで展開されているのでしょうか。
九州アイランドワークの直営施設は賃貸物件がほとんどですが、地域の遊休不動産の未来を見据えながら、物件オーナーとの関係性を築くうえでの大事なポイントとして、馬渡さんはこう話します。
「物件オーナーさんが儲からないと地域の遊休不動産は無くならない。僕らに任せていただくことで安い賃貸料しか取れなかった遊休不動産から、定期的な収入が生まれ、地域にとっても価値のある場所が生まれる、と認識していただけることが重要なんです。
『KIW』の利用方法はドロップインと月額15,000円で使い放題になるサブスクリプションの2パターンがあります。そして、利用者は近くの施設だけではなく、KIWの直営・連携する全ての施設を利用することができます。地域の遊休不動産がKIWのネットワークに繋がることにより、単体では作れない価値サービスをうみ、持続可能な収入がうまれる仕組みづくりを行っており、各物件のオーナーさんには、ドロップインの8割・月額のうち10,000円の総額をお支払いするようにしています」
全国初。サービスエリアにテレワークの拠点をつくる
九州アイランドワークの活動は既存の建物だけにとどまりません。2020年1月より、NEXCO西日本(西日本高速道路株式会社)と宮崎大学地域資源創成学部との社会実験的な提携事業として、宮崎県都城市のサービスエリアにトレーラーハウスを用いたワークプレイス「KIW WORKBOX 山之口SA」を設置しています。
当初は複数の利用者による共用を想定していましたが、新型コロナウイルスの感染防止対策として、現在は1日1組限定のドロップイン利用で稼働させています。このような状況下ですが、6月の稼働率は約50%と意外と高く、近隣住民が気分転換に週1ペースで利用することが多いといいます。また、このような直営案件でも、地元の方に管理を依頼して雇用を創出していたりと、地元とのコラボレーションを徹底しています。
分散型ワークプレイスのニーズを実感している馬渡さんは、今後の可能性について言及しました。
「新型コロナウイルスの影響で、テレワークやオンライン会議の必要性が増していますよね。だけど自宅では作業できない、とにかくスポットで場所がほしいという人も少なくありません。なので今後、昔の公衆電話のような感覚でどこにでもあり、サッと利用できるワークプレイスの需要が高まってくると考えています。
『KIW WORKBOX 山之口SA』のようなスタイルであれば抵投資で実施できますし、例えば公園のような公共空間に仮設するのも相性が良さそうです。誰も想像していなかった場所にワークプレイスをつくることで、その場所の新たなニーズを開拓するきっかけになるとも思っています」
「KIW」の仕組みの“鍵”となるスマートロックで、無人駅の利活用も
これらの「KIW」の仕組みを構築するうえで欠かせないのが、独自開発されたスマートロックのアプリです。各施設のエントランスにある鍵と連動し、アプリをダウンロードした自身のスマートフォンを用いて、利用可能な拠点の検索から予約、鍵の開閉、利用料の決済まで行うことができます。
このアプリにより「KIW WORKBOX 山之口SA」のような小規模施設は無人運用が可能となります。また、アプリの機能を応用して、プロダクト「KIW OFFICEBOX(仮称)」も開発中。空間全体を施錠するのではなく、さまざまなオフィス用品や書籍などを詰め込んだ会員限定のボックスのみを施錠して設置することで、カフェや公共空間などをワークプレイスとしても利用できるようにと考えています。
九州全域の「クリエイター集団化」を目指し、
官民連携で未来を変える
九州アイランドワークが目指す最終ゴールは、分散型ワークプレイスを増やすことの先にあります。それは「KIWパートナー」のコミュニティを創出すること。「KIW」の繋がりをもとに、九州のローカルベンチャーやクリエイターとパートナー契約を結んでクリエイター集団を組織することで、クリエイターの受託案件の適正かつ安定的な開拓と育成環境を整えようとしているのです。
「僕らがやろうとしていることは3つ。スペースをつくること、それらをテクノロジーで繋ぐこと、そこにいる人たちが本領を発揮できる働く仕組みをつくることです。首都圏の大きな企業ではなく、地元の人たちが元請けとなって、企業や自治体の方々と仕事ができるチームをつくろうとしています」
以上のように、今回の『公共空間 逆プロポーザル』に期待を寄せて、九州の自治体が管理する既存のコワーキングスペースの活用促進や、遊休不動産・公共空間を生かした抵投資のワークプレイスづくり、インキュベーション事業の運営受託といったさまざまな官民連携を思案しています。
開催当日に向けて、馬渡さんはこのようにインタビューを締めくくりました。
「コロナ禍を加味したテレワーク施策や創業支援など、世の中のニーズを汲んで各自治体の方々はすでにさまざまな取り組みを始めているかと思います。そこで、もし『自治体主導でやってきたけど、どうも上手くいかない』と悩んでいることがあれば、ぜひ一緒に取り組ませていただければと思います」
第3回「公共空間逆プロポーザル」
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