公共R不動産のプロジェクトスタディ
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森の中の廃校の求心力
BABAME BASE

人口約1万人、高齢化率約40%。ご多分に漏れず、過疎化の進む秋田県五城目町。なにやらこの町の廃校に起業家達が集まりはじめているそうな。今回はそんな、コミュニティー再生の核施設 BABAME BASEの紹介です。

秋田杉を多用したリッチな小学校は、巨大な山小屋のような雰囲気。ほぼ改修なしで使っているみたい。

秋田県五城目町

人口約1万人、高齢化率約40%。ご多分に漏れず、過疎化のすすむこの町ですが、なにやらこの町の廃校に起業家達が集まりはじめているそうな。

町の中心部から、車で山に分け入ること約15分。山間の小さな集落にありました、BABAME BASEこと「五城目町地域活性化支援センター」。H25年3月に廃校になった旧馬場目小学校を、コミュニティー再生の核施設と位置づけ、町がシェアオフィスとして起業家へ教室の貸出しを開始。現在、7組のベンチャー企業・団体が入居しています。

小麦畑の向こう、森の中に見えるのはドイツのお城!?…ではなく、あきたこまちの中にそびえるBABAME BASE!

賃料は1教室2万円/月。都内のシェアオフィスに毛が生えたような利用料金で、こ〜んな広々した空間が借りられちゃうなんて〜!心が揺れます。

左 平成18年に立て直されたばかりの校舎。 中 ベランダはみーんなつながってます。夏はここで涼みながら一杯。 右 ポートランドのケネディスクールを想起する思い出の品々。

オフィスのうらに人あり、ストーリーあり。

「廃校をシェアオフィスに。」神山町を夢見てか、よく耳にする話です。しかーし!騙されてはなりません!シェアオフィスをつくれば、魔法のように自然と人が集まってくると思ったら大間違い、その裏にはかならず「人」や「出会い」が介在しているもの。

BABAME BASEの場合、東京発の教育ベンチャー・ハバタク㈱が、五城目町の方と出会い、サテライトオフィスとして入居したのがターニングポイントのようです。ハバタクは「シェアビレッジ」や「ドチャベン」等、地域資源×ビジネスをテーマにしたイベントを通じ、人が集まってくる仕掛けを展開しています。

左 最近入居してきたというマウンテンバイクでツアーを提供する会社(団体?)の自転車を借りて、ぐるり馬場目ツアーへ! 中 ハバタクオフィスのかわいらしいオフィス家具はコクヨさん提供とか。 右 玄関を入ると高ーい吹き抜けとウッディーな空間がででーん!所狭しと貼ってあるのは思い出の写真ではなく、最近のワークショップの様子等。

グッドフォロワーたち

そして「なんか面白そうなことが起きている」といち早く察知した会社や、地元出身者たちが「どうせ働くなら実家の近くで。自然の中で」と、続々集まっている模様。そしてその波は県外からの移住者も惹き付け始めています。まあ、なんでこんなところに…とか思っちゃいますが、実際行ってみると、あまりにも自然に、ゆったりと緑に囲まれて仕事している彼らがそこにはいるんですよ。そして、うらやましくなるんです。

左 私のイチオシは、窓からいっぱいの光が差し込む食堂!誰かジビエカフェとかやったらいいのに! 中 食堂横には立派な立派な厨房が。設備もこんだけあれば文句ないでしょ。ケータリングもできますよ、きっと。 右 2階廊下からの眺め。オフィスの価値とは、なんでしょうか。と、心に問い直さずにはいられない。

地域に溢れる廃校が、ポテンシャルの山に見えてくる…一方で、場をつくりたければ、改修費の工面より、志を共にでき信頼できるパートナー探しに注力すべし。今後も五城目、注目です。

PROFILE

菊地 マリエ

公共R不動産/アフタヌーン・ソサイエティ。1984年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。日本政策投資銀行勤務、在勤中に東洋大学経済学部公民連携専攻修士課程修了。日本で最も美しい村連合特派員として日本一周後、2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。現在はフリーランスで多くの公民連携プロジェクトに携わる。共著書に『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』。

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