公共R不動産のプロジェクトスタディ
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ハイの次はロウライン
The lowline

世界初の地下庭園

高架の次は地下公園

ニューヨークといえば、廃線になった貨物列車の高架線路を公園化したハイラインがかなり有名になりましたが、今度は地下で、ロウライン、というのが計画中ってご存知でしたか?
場所はマンハッタン島の南東、ロウワー・イーストサイド。
地下ターミナルの跡地を市民の憩いの場所に。しかも地下なのに日の光が差し込む!?気になる計画をご紹介します。

世界初の地下庭園

ロウラインは、1903年から1948年までウィリアムズバーグ・ブリッジ横断用の路面電車の車庫として使われていた、地下ターミナル跡地を公園にするという計画。地下でありながら太陽光を採り入れ(地上で収集した太陽光を光ケーブルで地下へ運び、反射板を使って照らすそう)、芝生や草木が光合成して育つ緑豊かなグリーンスペースにするという画期的なアイディアです。

正式名称は、The Delancey Underground Project。財政難にあえぐニューヨーク都市交通局が、収益を得るために再開発を予定している場所で、再開発案のひとつとして応募されたのがこのアイディアです。
あくまでもまだ案の一つで、実現が決定したわけではありませんが、NASAとGoogle出身の2人の若者によるこの斬新なアイディアは、2011年に発表されるなりニューヨーク市民から熱い支持を受け、議員や市を巻き込んで進められています。
2012年の太陽光照明技術のデモンストレーション用のクラウドファンディングでは、$150,000以上を集めたそう。
完成すれば、天候の影響を受けないイベントスペースとしての活用が見込まれ、資金回収も可能という目論見です。

地元も巻き込んで

訪れた日は、近くのギャラリーで、”Shaping the Lowline”というYoung Designer Programの展示が行われていました。
このプログラムは、地元の子供たちに、理想のロウラインをデザインする過程で、ロウライン、ひいては地域に関心を持ってもらおうというもの。人生の先輩に町の歴史を聞いたり、町を歩いて調べたりしながら、考えて作った作品が展示されていました。
展示会場は、普段は現代アートを扱う本格的なギャラリー。ヤングデザイナーと銘打つからには、子供であってもデザイナーとして扱う、という心意気が感じられて、これが公民館やスーパーの展示スペースではないところがニューヨークだなと感じました。

実現すれば、世界初の地下公園となるロウライン。目が離せません。

PROFILE

松田 東子

株式会社スピーク/公共R不動産。1986年生まれ。一橋大学社会学部卒業後、大成建設にてPFI関連業務に従事。2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。スピークでは「トライアルステイ」による移住促進プロジェクトに携わる。2017年から2020年までロンドン在住。2021年University College London MSc Urban Studies 修了。

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