公共R不動産のプロジェクトスタディ
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ポートランドのエコな赤煉瓦倉庫
ナチュラル・キャピタル・センター

エコトラストビル外観

ポートランドがポートだった頃

ナチュラル・キャピタル・センター(通称エコトラストビル)は、環境に対する意識の高いポートランド市民のシンボル的な存在。パールディストリクトというお洒落なエリアに建っていますが、ここは「ポート」ランドが、その名の通り港として物流拠点だった頃の赤煉瓦倉庫群。

エコトラストビルは、そのうちのひとつ、築100年以上の倉庫をアメリカの環境NPOエコトラストが買い上げ、再生したものです。環境団体が、森や山でなく、なぜ倉庫を?しかも、工業エリアで?と、一時は物議をかもしたそうですが、結果を見れば誰もが納得。環境配慮の行き届いたモデルビルとして生まれ変わったのでした。

環境配慮はハードだけじゃない

まずテナント構成に意志を感じます。一階にはパタゴニアの店舗と地場産野菜を使ったオーガニックのピザ屋さん。上層階には環境保護のためのコミュニティーバンク、ポートランド市の持続的開発局、そしてエコ・トラストのオフィスと、環境系のテナントがずらり。しかも官・民・営利・非営利のミックスというところもポートランド的。1階の吹き抜け部分ではピザをほうばりながらセクターを超えて活発に意見交換。これぞリアル・ソーシャル・ネットワークがここにあります。

建物も、リノベーションの段階で徹底的にゴミを出さず、使えるものはつかって、98%再利用したとか。また、内装には極力木材を、しかも2/3はFSC認証を取得しているものを使用。屋上にはエコルーフ、駐車場周りにはバイオ・スウェルといって、雨水が敷地内を通過する間に95%は濾過されるシステムを採用。また、一階のピザ釜の熱で建物全体を温めたりと、いちいち「できたらいいな」が、できている。

リノベーションに哲学が加わると、こうなるんですね。

ここまで徹底した環境配慮リノベの実験、誰か、日本でも一緒にやりませんかー!!

PROFILE

菊地 マリエ

公共R不動産/アフタヌーン・ソサイエティ。1984年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。日本政策投資銀行勤務、在勤中に東洋大学経済学部公民連携専攻修士課程修了。日本で最も美しい村連合特派員として日本一周後、2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。現在はフリーランスで多くの公民連携プロジェクトに携わる。共著書に『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』。

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