公共R不動産の頭の中
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注目が集まるトライアル・サウンディング、その本質とは

都市計画協会の機関紙『新都市』の2023年4月号で、トライアルサウンディング特集が組まれており、公共R不動産の馬場正尊と、矢ヶ部慎一が寄稿しています。公共R不動産の妄想をきっかけに生まれ、少しずつ定着しつつある「トライアル・サウンディング」という手法について、改めて紹介します。

トライアルサウンディングの実践の場となった「トライアルパーク蒲原」(撮影:石母田諭/OpenA)

都市計画協会の機関紙『新都市』の最新号(2023年4月号)で、トライアル・サウンディングの特集が組まれている。

もともと「トライアル・サウンディング」とは、公共R不動産による著書『公共R不動産のプロジェクトスタディ』において提案した言葉。「サウンディング」と「社会実験」を組み合わせた、実践的な公民連携の手法のひとつだ。

『公共R不動産のプロジェクトスタディ 公民連携のしくみとデザイン』(学芸出版社、2018年)で示した、トライアルサウンディングのイメージ

「サウンディング」は、すでに公募前の行政と民間のコミュニケーション、情報共有の機会として定着していると言ってよいだろう。行政も営業マインドを持って、民間にアプローチする必要性に迫られ発明されたのが「サウンディング」であるが、机上での対話だけでは限界を感じることも多かった。

実際にその場所、その空間で試しに期間限定の実践を行うことで、行政・民間双方のイメージのすり合わせを行い、同時に民間企業としては事業性、収益性の検証を行う。本格的な投資が伴う場合、想定している事業が本当に軌道に乗るのか、その想定の精度を少しでもあげたい。これらのニーズに対応すべく考えたのが、「トライアルサウンディング」である。

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新たな言葉が状況をさらに進めることもある。例えば「エリアリノベーション」という言葉も今では一般名詞のように使われ始めた。この「トライアル・サウンディング」もそんな言葉として、普通に使われるようになれば、それはすなわち、公民連携のかたちがさらに多様化したという証だろう。

僕も「トライアルサウンディングの源流と今後の展望」というタイトルで、トライアルパークの実践をベースに紹介している。公共R不動産メンバーで、公共R不動産研究所所長の矢ヶ部慎一も、実験的なプロセスとしてより戦略的に実施していくための視点からトライアル・サウンディングを読み解いているので、機会があればぜひ読んでいただきたい。

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『新都市』最新号「特集:トライアル・サウンディング 〜公共施設の新たな活用手法〜」はこちらから
https://www.tokeikyou.or.jp/books/shintoshi.html

PROFILE

馬場 正尊

オープン・エー代表取締役/建築家 /東北芸術工科大学教授 1968年佐賀県生まれ。1994年早稲田大学大学院建築学科修了。博報堂、早稲田大学博士課程、雑誌『A』編集長を経て、2003年OpenAを設立。建築設計、都市計画、執筆などを行い、同時期に「東京R不動産」を始める。2008年より東北芸術工科大学准教授、2016年より同大学教授。2015年より公共空間のマッチング事業『公共R不動産』立ち上げ。2017年より沼津市都市公園内の宿泊施設『INN THE PARK』を運営。 近作は「Under Construction」(2016)「旧那古野小学校施設活用事業」(2019)など。近著に『民間主導・行政支援の公民連携の教科書』(学芸出版社、2019、共著)、『テンポラリーアーキテクチャー:仮設建築と社会実験』(学芸出版社、2020、共著)など。

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