佐賀県 MIGAKIプロジェクト
佐賀県 MIGAKIプロジェクト

佐賀県が仕掛けるMIGAKIプロジェクト|行政が“磨き上げ”に本気で挑む理由

どこか謎めいていて、しかし耳に残る「MIGAKI」という名称。
佐賀県が進める「MIGAKIプロジェクト」は、県内に点在する県所有の公共施設を「磨き上げる」ための取り組みです。この取り組みが立ち上がった背景には、公共施設が社会状況の変化や利用者のニーズに十分対応できていないという、長年抱えてきた課題認識があったといいます。
MIGAKIチームのリーダーである佐賀県政策部の納富大介さん、メンバーの垣永美里さん、原口夏葵さんにお話を伺いました。

管理される施設から、活かされる施設へ

佐賀県が2023年度からスタートさせた、県有施設の価値を高め磨き上げるプロジェクトである「MIGAKIプロジェクト」。
単なる施設改修やリニューアルにとどまらず、施設の設置目的や運用ルール、料金体系、関係者の巻き込み方、エリアとしての見せ方に至るまで、ハードとソフト、制度と運営、施設と地域を横断しながら、公共施設の価値を根本から問い直し、更新しています。
一見、「公民連携推進チーム」に近いように思えますが、「MIGAKI」は、あえて具体的な手法を示さない名称を採用することで、取り組みの対象や方法を限定せず、柔軟に検討を進める姿勢を示しているのが特徴です。
全国の行政の試みとしても先進的なこのMIGAKIプロジェクト。佐賀県政策部 MIGAKIチームのリーダーである納富大介さん、チームメンバーの垣永美里さん、原口夏葵さんにお話を伺いました。

佐賀県には、豊かな自然環境を活かした県有施設が複数点在しています。キャンプ場や少年自然の家、海水浴場、歴史文化施設など、それぞれが地域の資源として整備されてきました。

しかし、こうした施設の多くは、完成から何十年も経過し、社会状況の変化とともに、当初掲げていた施設の目的と現代の利用者のニーズにはズレが生じている部分もあります。にもかかわらず、運営の仕組みや使われ方は当時のまま。これは佐賀県に限った話ではありません。背景には、行政組織特有の構造的な課題があります。予算の縮減や縦割り体制、人事異動によって、前例踏襲が合理的な選択になりやすく、利用者目線よりも管理者目線が優先され、施設が本来持つ可能性が十分に引き出されない状況が続いていました。

波戸岬キャンプ場が示した「成功の型」

こうした課題感を強く浮かび上がらせたのが、唐津市の波戸岬キャンプ場(波戸岬海浜公園)です。

佐賀県唐津市の最北西端・波戸岬にある波戸岬キャンプ場は、海を見渡すロケーションが魅力の人気施設です。佐賀県が所有、有明海再生・環境課が所管し、唐津市が指定管理者として運営していた施設でしたが、整備から30年以上が経過し、サイト区画が狭く十分にキャンプ空間を満喫できないなど、利用者ニーズとのミスマッチにより利用率が低迷しており、他の施設と同様、管理中心の運営から抜け出せずにいました。

転機となったのは、2018年、指定管理者の更新のタイミングで運営に民間事業者を迎え入れた際のプロセスです。夕日が目の前に沈みゆく圧巻のロケーションと、唐津や呼子に近い立地を活かし、どこにでもあるキャンプ場のイメージから脱却を図るリニューアルを行いました。「九州最強の公営キャンプ場」を目指し、サイトの構成、広さ、場所など、民間ならではの視点から利用者のニーズを取り入れ、新しいキャンプ場へと生まれ変わりました。

2018年に民間事業者との連携によりリニューアルが行われた波戸岬キャンプ場(波戸岬海浜公園)(提供:佐賀県)

県が先に「あるべき論」を固めるのではなく、計画段階からキャンプ場運営のノウハウを持つ民間事業者と意見交換を重ね、「どのようなキャンプ場であれば利用者にとって魅力があるのか」を共に考えながらリニューアルの構想を練り上げていきました。

現在MIGAKIプロジェクトのリーダーを務める納富大介さんは、当時のことを次のように話します。
「リニューアルの結果として、施設の魅力は大きく向上し、利用者数も5倍に増加しました。重要だったのは、計画段階から、行政と民間が同じ方向を向きながら一緒になって考えた点。行政として目指す姿、方向性を示しながら、民間が得意な点は任せたからこそ、他にはない施設に生まれ変わらせることができたと考えています。」

しかし、この成功事例が、県内で横展開されることはありませんでした。別の施設では、所管する部署ごとに従来通りの指定管理や運営方法が続き、『なぜあの成功を活かせないのか』という疑問が繰り返し浮かび上がりました」

MIGAKIプロジェクトのリーダーを務める納富大介さん

成功事例があっても県内に広がらない。真似してみようともならない。
その背景には、施設ごとに所管する部署が異なり、新たな試みやノウハウが共有されない上、それぞれの部署には本来の主要業務もあるため、どうしても施設管理が片手間になってしまうという理由がありました。

こうした状況を打破するために必要だったのが、施設や部署を横断し、全体を俯瞰して判断できる仕組み。県知事も同じ問題意識を抱えており、立ち上がったのが「MIGAKIプロジェクト」でした。

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スピード感を持って立ち上がったMIGAKIプロジェクト

MIGAKIプロジェクトが始動したのは、2023年7月1日。年度途中という異例のタイミングで始動した背景には、次期指定管理者の公募や選定など、更新の節目に差し掛かる県有施設が複数あり、前例を踏襲する従来のプロセスでは「せっかくの成功事例ができたのに、その経験を生かせないまま進んでしまう」という危機感が高まっていたことがありました。

興味深いのは、最初から組織として設置されたわけではないこと。MIGAKIプロジェクトの立ち上げ初期は、各施設の担当者がそれぞれの部署に所属したまま、兼務体制でプロジェクトに参加し、目指す姿や方法論を議論する準備期間がつくられました。

そして翌年の1月1日付で組織化。前年のクリスマス頃、正式に異動を告げられたという担当職員の垣永美里さんは「年度を残り3ヶ月残している状態にもかかわらず、必要と判断すれば時期を問わず変化を起こす佐賀県の柔軟さと決断の速さを改めて実感しました。そのスピード感に、人生で初めて、驚きのあまり指先が痺れるという体験もしたほどです(笑)」と振り返ります。

当時の心境を語る垣永美里さん(中央)

現場担当者が集い、ノウハウを横串で共有する仕組み

MIGAKIプロジェクトは、政策部の中に位置付けられています。リーダーの納富大介さんのもと、森林整備課やまなび課など各部署で所管するそれぞれの施設の主担当だった職員が集められ、チームとして動いています。

「兼務体制だった頃は、担当者同士でより良い策を検討できるようになった一方で、MIGAKIに十分な権限がなく、何かアイデアを出しても、部署ごとの意思決定や優先順位に左右されやすいという、やりづらさのようなものがありました。ですが、組織化によって、施設の管理運営に関する判断が一箇所に集まり、意思決定のスピードが格段に上がりました。さらに、散在していたノウハウも集約・共有されています。各施設について横断的に考えることができるようになったのは大きな利点だと思います」(納富さん)

推進体制の変化
多様な部局ごとに分かれていた施設管理を一元化してMIGAKIプロジェクトチームが組成された

入庁4年目の若手職員である原口夏葵さんは、「MIGAKIチームができたことで、『一人じゃない』という安心感が生まれました」と続けます。
「公共施設の運用には、工事発注、指定管理、条例改正、料金設計、利用者対応、広報など、さまざまな専門知識が求められます。同じ部署でも、他の職員はまったく異なる業務を行っていることも多い中で、従来の縦割りの組織の中では、誰に相談したらよいかもわからず心細さを感じていました。そのため、小さな変更にも多くの時間を費やしていたんです。

でも今は納富さんや垣永さんをはじめ、同じく施設管理を担当してきたチームのメンバーにすぐに相談することができ、様々な部署での経験を元に一緒に考え、横断的な試行錯誤を重ねることができています。兼務がかかった時からこのチームが好きだったので、本格始動したときは喜びでいっぱいでした」(原口さん)

MIGAKIプロジェクトの中でも若手に当たる原口夏葵さん

なぜ「MIGAKI」なのか……MIGAKIプロジェクトを支える3本の柱

もう一つ、このプロジェクトを特徴づけるのがネーミングです。もし「公民連携推進チーム」のような名称だったら、民間事業者との連携こそが目的のように見え、手段が固定化されてしまう恐れがあります。

立地や施設の目的次第で、波戸岬キャンプ場のように民間に委ねた方がうまくいく施設もあれば、県直営のままのほうがよい施設もある。ハードの整備が必要な場合もあれば、ルールや料金、運用だけ変えれば良い場合もある。さらには、施設の設置目的が時代とズレているなら、条例そのものを変える必要すらある。
MIGAKIという抽象的な名前は、考え方や手段の自由度を担保し、状況に応じた最適な選択を可能にしているのです。

MIGAKIプロジェクトでは、取り組みの軸として「施設をみがく」「エリアをみがく」「プロセスをみがく」という3本の柱を掲げています。

施設をみがく」は、もっと心地よく、もっと使いたくなる場所へと、利用者目線で見つめ直すこと。社会状況や価値観の変化に合わせて、設備だけでなく、サービスやその基盤となる運用ルールまで、ハード・ソフトの両面から丁寧に磨き続けることで、地域に愛される場所へと変えていくことを目指しています。

そんな施設をみがいた先にあるのが「エリアをみがく」。施設単体では見えなかった面白さや可能性──豊かな自然環境、その地に暮らす人、紡がれてきた文化や歴史──に目を向け、周辺施設と連携することで相乗効果が高まります。あらゆる要素を複眼的な視点で捉え直し、関係者と協力しながら新しい活用方法や取り組みを見いだすことで、エリア全体を磨き、一体的な価値向上につなげていきます。

そして、3本の柱のなかでも、MIGAKIプロジェクトの特徴を最も象徴しているのが、「プロセスをみがく」。ゴールから逆算して計画する従来の手法にとらわれず、状況や関わる人に応じて柔軟に最適解を探っていこうとする姿勢を込めています。行政内部のチーム編成はもちろん、民間事業者や地域の人も、みんなが同じ目線で対話や試行錯誤を重ねることで、小さな実践を繰り返し、関係者とともに目指すべき姿を育んでいく、これからの公共施設のあり方をつくるプロセスそのものを磨いていこうとしています。

プロジェクトが具体的に動き出し、各地で試行錯誤を重ねるなかで、この3本柱は現場に即して少しずつ姿形を変え、より深みを増してきました。
施設単体の改善にとどまらず、周辺環境や関係者との関係性、さらには進め方そのものまで含めて磨き上げていく。その全体像を捉えるための枠組みとして機能しています。

目指す姿を共有して仲間を増やす「コネクトミーティング」

「プロセスをみがく」ために、新たな試みとして始められたのが、「コネクトミーティング」と呼ばれる取り組みです。

「公共施設の改善は、行政だけで考えても限界があります。市町の職員、地域企業、地元の有志、ステークホルダーといった関係者が関わることで初めて動き出すことも多い。ただ、最初から正式な会議体にすると、どうしても話題が重くなり、動きにくくなってしまいます。そうではなくて、形式張らずカジュアルに意見交換ができる場を持ちたいと思ったんです。そうして設けたのが『コネクトミーティング』です。重要なのは、単に意見を集めるのではなく、『私たちはこういう姿を目指している』と提示し、共感してくれる人を増やしていくこと。そして、『もっとこんなこともできるのではないか』と共に考え、可能性を模索しながら試行錯誤していく構造をつくることだと考えています」(納富さん)

佐賀市の北山湖周辺にある4つの施設の関係者が集まる北山エリアコネクトミーティング(提供:佐賀県)

波戸岬エリア(唐津市)では2024年に、「波戸岬少年自然の家」と「名護屋城博物館」をつなぐ試みとしてイベントを実施。これもコネクトミーティングから生まれたアイデアでした。

「両施設の管理者の方々は、これまで顔を合わせたこともない状況でしたが、コネクトミーティングを通じて、お互いの取り組みについて話し合う機会を設けたんです。そこから、『自然体験』と『歴史』というそれぞれの強みを掛け合わせて一緒にイベントができそうですね、と話が進み、スムーズに実施までたどり着くことができました。こうした小さな実験を積み重ねながら、自然と歴史のどちらも楽しめるエリアとして育てていきたいと思っています」(原口さん)

コネクトミーティングというドライバーによって、近くにある施設や、関連する部署・事業者をつなぎ直し、編集しながら、エリアの価値を高めています。

2025年5月には、県市町職員を対象に、公民連携による公共施設利活用や行政職員の考え方や役割について、他都市の先進的事例等を交えて考えていくためのセミナーを開催した。

施設視点とエリア視点、両方で可能性を探る

コネクトミーティングを始めとした現場での対話を起点に、エリアの見え方そのものを更新しようとする姿勢も、各地で少しずつ形になっています。

当初、「エリアをみがく」という考え方は、施設を磨くことで、その効果を水の波紋のように周辺へ広げていくものとして掲げられていました。約1年にわたる取り組みを通じて、コネクトミーティングが各プロジェクトの起点となったことから、その考え方は施設の改善が進んだ「その先」ではなく、プロジェクトの初期段階から機能するものへと、自然に変化していったといいます。
そのひとつが伊万里市の「イマリンビーチ」での試み。

夏の限られた期間のみ活用されてきた県が所有する海水浴場「イマリンビーチ」を、海と陸の両方のアクティビティを楽しめるスポットへと進化させる取り組みを進めています。このプロジェクトに着手する際、磨きの方向性を考えるために、最初に実施したのが伊万里市とのコネクトミーティングでした。その場で、市の方から『近くにある伊万里市所有の伊万里ファミリーパーク(通称:いまり夢みさき公園)もうまく利活用できていない』という話を聞き、せっかく近接しているのなら『エリア一体で考えたほうがいいのではないか』という発想が両者の間に生まれたんです」(垣永さん)

イマリンビーチ(右奥)と福田マリーナ(中央)と伊万里ファミリーパーク(左)。連携することで1日の過ごし方が広がる可能性がある。

イマリンビーチと伊万里ファミリーパークは近くに位置しながらも、運営主体が異なるためにこれまで一切の関わりがなく、市民にも横断的に過ごせる場所とは思われてこなかった場所。そこを県と市が同時に俯瞰的な視点を持ち、エリアとして捉え直すことで、これまで見えなかった面的な魅力や、経営的な可能性も浮かび上がってきました。単体では難しくても、エリア全体で考えれば成立するかもしれない。その方法を議論するため、2ヶ月に1度のペースで継続的にコネクトミーティングを実施し、2025年度には、県と市で連携し民間企業へのサウンディング調査を行うことになりました。

制度そのものの見直しに積極的に踏み込む

他にも、MIGAKIプロジェクトは、県内各地でさまざまな形で進められています。

県北部の北山エリア(佐賀市)では、北山湖の周囲に「北山キャンプ場」「レイクサイド北山」「北山少年自然の家」という3つの県有施設が点在しているにもかかわらず、所管部署も指定管理者も異なり、連携がほとんどない状態が続いていました。MIGAKIプロジェクトをきっかけに所管が統合されたことで、各指定管理者も含めたコネクトミーティングを実施し、さまざまな立場で意見交換できる体制が整えられています。

「3つの施設に一体感を持たせる最初の取り組みとして行ったのが、案内看板などのサインの更新です。これまでは、所管する部署ごとにサインが作成されていて、デザインもばらばらでした。それを来訪者の動線を意識し、湖周辺を巡りながら、エリア一帯を楽しめるように見直し、サインの付替えを行っています。

さらに、新しくリニューアルしていたキャンプ場の条例が現在の利用実態と合っていない点に着目し、条例改正を行いました。開設した際は『県民の健康増進』が目的でしたが、現代のキャンプ場は『観光資源』でもあります。指定管理者を公募するにあたり、交流人口を増やしながら体験価値や利便性の向上を図りたい県の思いを条例に書き込みました。ハード整備だけでなく、制度そのものに積極的に踏み込む点も、MIGAKIの特徴だと思います」(納富さん)

北山エリアのサイン改修。施設の内部および周辺施設まで統一したデザインのサインが設置された。2026年度には周辺道路なども含めたサインの増設が見込まれている。

「県内の各所にある少年自然の家では、現在、紙のみで何回もやり取りが必要だった利用申請方法の見直しも行っています。申請の仕組み一つをとっても、これまで何十年も続いてきたやり方を変えていくには、相当なエネルギーが必要です。それでも事業化し、予算化し、実際に動かしていく。このスピード感は、MIGAKIならではだと感じています」(垣永さん)

複数の施設を横断的に見ているからこそ、共通する課題や改善の余地が見え、プロセスを比較しながら仕組みを更新していくことができます。ソフトウェアや管理システムは、一度構築すれば、それを施設ごとにカスタマイズして展開することもでき、今後の取り組みを効率的かつ柔軟に広げていく可能性も秘めています。

「ボトムアップ型のみがき」から「先行投資型のみがき」まで、アプローチに正解を持たない強さ

施設ごとに異なる“みがき方(手法)”をとるのがMIGAKIプロジェクトの強み。

県南部の白浜海水浴場(太良町)では、「海水浴が楽しめる公園」をコンセプトに、海水浴に限らず年中過ごせる公園のような場所としてのあり方を考える「MICHILL PARK PROJECT(ミチルパーク プロジェクト)」が進められています。それを支えるのが、住民参加型のワークショップをスタートに、そこで出たアイデアをもとに夜間活用の可能性を探るトライアルイベントを実施したりといった、「ボトムアップ型みがき」の積み重ね。
白浜海水浴場は、県内でもややアクセスしづらいエリアであり、民間企業の参入はあまり見込めませんが、収益性を強く求めるのではなく、地域の人たちが日常的に関わり、居場所として使い続けられる風景を目指しています。

2025年夏に開催した利活用アイデアワークショップをもとに実施したトライアルイベント「Super Moon Picnic」。これまで利用していない夜間利用のトライアルになっている。

一方、唐津市で進めているKMAP(Karatsu Marine Activity Park)は、非日常的なマリンアクティビティを軸に、一定の投資を行いながら事業として成立させる「先行投資型のみがき」に挑戦しています。
唐津の西の浜でSUPやシーカヤックなどのマリンアクティビティを充実させながら、2024年には若者やファミリー層に刺さるビーチイベント「Grand Blue」を行うなどして、活用を図ってきましたが、その動きを強力に一層集客を加速するため、2026年度からはパラセーリングの運行を予定しています。
既にあるものを活かすだけでなく、新たな体験価値を県主導で投下することで、「アウトドアアクティビティを楽しむならここ」というエリア全体のイメージを確かなものにし、その価値に見合った対価が生まれる仕組みを整え、将来的には次のプレーヤーに引き渡し、さらなる盛り上げへとつながっていくプラスのサイクルを作り出していくことが狙いです。

深い海の群青のような色「グランブルー」として知られる唐津の海。その青さにちなみ、2023年秋には唐房バイパスから波戸岬までの約20kmのドライブルートが開通し、「ルート・グランブルー」と命名された。(提供:佐賀県)

このように、同じ「みがく」という言葉でも、施設の規模や立地、利用状況、地域との関係性によって、アプローチは大きく異なります。計画を先に固定せず、やりながら検証し、必要に応じて軌道修正を行う。こうしたアジャイル型の手法は、行政の仕事としては珍しいものですが、変化の激しい現代社会においては合理的な選択なのかもしれません。

建物の価値に光をあて収益化を図り、次世代へと継承するサイクルを創り出す

国の名勝に指定されている「九年庵」(神埼市)では、これまで公開にかかる経費を一定数、税金で賄う前提のもと運営されてきました。それを価値に見合った対価を設定し、その収益を維持管理や次の磨き上げへと還元し、次世代へ継承していく仕組みを模索しています。

国の名勝に指定されている「九年庵」。例年新緑の美しい春と紅葉の美しい秋に一般に公開し、多くの人が訪れる。そのあり方をMIGAKIプロジェクトの中で試行錯誤している。(提供:佐賀県)

「公共施設の収益化を図るということは、単に値段を上げるというものではありません。その価値に見合ったものをきちんと提供しながら、来園者を増やしていくことが大切になります。

令和7年度の九年庵秋の一般公開では、従来から見せ方を変え、九年庵の建物を上から眺めることができる新ルートを設定したほか、園内での演奏会や庭園内の解説などを行うようにしました。また、特別に貸切で利用できる(1時間50万円)ようにするなど、新たな活用にチャレンジしました。
来園者からは「新ルートからの眺めは茅葺き屋根と紅葉がとてもステキで、白川郷にも勝る素晴らしい景観で満足した」「自然の中で演奏を聞くことが出来て非常に良かった」など好評で、結果として、満足度を高めながら、県内外から多くの方に来園いただき、収益化を達成することができました。

このような取組みを通して、九年庵を次世代に継承していくサイクルを創出していきたいと考えています。」(納富さん)

令和7年度秋の一般公開から設定された新ルートからの眺め。九年庵の建物を上から眺めることができる。(提供:佐賀県)

公共の視点と経営の視点を行き来しながら、MIGAKIプロジェクトは現在、全13の県有施設のプロジェクトを約15名のメンバーで進めています。
価値を高め、磨き、その先の可能性をひらいていく。佐賀県が進めるこのチャレンジは、公共施設の未来を考えるうえで、ひとつの具体的なヒントを与えてくれるはずです。

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