公共R不動産研究所
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【アーカイブ視聴可能!】 まるでパズルを解くような『スモールコンセッション最適活用論』レポート

11/17に開催されたセミナー『スモールコンセッションの最適活用論』。岡山県津山市で実践を重ねてきた川口義洋氏のレクチャーは、「コンセッションの5つの落とし穴」をまるでパズルのように解いてゆく面白さに満ちた、約2時間のセッションとなりました。今回このセミナーに参加(録画視聴)した行政担当者をゲストに迎え、登壇者3名とともにセミナーを振り返ります。まだ視聴されていないみなさま、ぜひお読みください。

現場の行政担当者はセミナーをどう見たか?

2025年11月17日、公共R不動産研究所にて『スモールコンセッションの最適活用論—コンセッションの落とし穴を回避するには』というセミナーを開催しました。

「スモールコンセッション」の名前が付く以前から、岡山県津山市で実践を重ねてきた川口義洋氏をメインスピーカーに迎え、研究所メンバーの矢ヶ部慎一・宮本恭嗣が深掘りしつつ進行した約2時間。単なる制度解説ではなく、「コンセッションの5つの落とし穴」をまるでパズルのように解いてゆく面白さに満ちたセッションとなりました。

写真左から川口義洋、矢ヶ部慎一、宮本恭嗣

今回は、このセミナーに参加(録画視聴)してくださった行政担当者、富山県射水市役所・夏野いつかさんをゲストに迎え、登壇者3名とともにセミナーを振り返ります。

*こちらのアーカイブ動画視聴チケットはまだご購入いただけます(12/26まで)。この記事を読んで気になった方は、記事後半の【アーカイブ録画視聴のご案内】より、ぜひ!

ターゲットど真ん中—公共施設マネジメント担当者が参加した理由

矢ヶ部 夏野さん、ご視聴ありがとうございます。かなり熱心に視聴してくださっていると聞きまして、今回お話をお伺いできればと思いました。まず自己紹介と、セミナー参加(録画視聴)の背景を教えてください。

夏野さん 富山県射水市役所で、公共施設マネジメントの担当をしています。もともと建築等の専門ではない事務職ですが、ファシリティマネジメントを担当するようになって5年くらいになります。現在ちょうど、大きな学校跡地の利活用案件を抱えているのですが、庁内にPFI事業の実績は少なく、一人でぐるぐる悩んでいるような状態でした。そんな時にこのセミナーの案内を見て、「これは自分のための回ではないか!」と思って飛びつきました。

夏野さんとはオンラインにて対談

矢ヶ部 想定していた参加者ターゲット、ど真ん中の方だったのですね(笑)

川口 ここまで想定どおりの方がいるとは思いませんでしたが、同じような状況の自治体職員の方は、きっと各地にいらっしゃると思います。

特に刺さった5つのポイント

矢ヶ部 実際に参加(録画視聴)してみて、具体的にどのあたりが刺さりましたか?

夏野さん 「あるべき論」ではなく、「どうやったらできるか」具体的な条文や図解で示してもらえたので、本質的な理解から、明日からの仕事にすぐ活かせる実務まで、全体通してずっと刺さりっぱなしでした。特に印象的だったポイントを挙げてみますね。

①「スモールコンセッション」の定義の迷いがとけた

夏野さん まず、国が言う「広い意味」のスモールコンセッションと、「狭い意味」でのスモールコンセッションがごちゃまぜになって混乱していました。でも、制度の話でも補助金の話でもないと整理されたことで、とてもスッキリしました。

矢ヶ部 やはりここが最初の落とし穴でしたか。

宮本 「どう進めたらよいか?」という実務者の視点に立つと、多様な手法を一枚に包含しているスモールコンセッションの範囲図(国土交通省作成)は、かえって混乱を招きますね。

国土交通省の作成するスモールコンセッションの範囲図

川口 今回のセミナーでは後者の「狭い意味」でのスモールコンセッションを取り上げています。

②コンセッション方式はPFI法改正による「発明」

夏野さん 私が今回救われたのは、落とし穴-2として語られていた「PFI法が定義する公共施設等とは?」の箇所で、この公共施設等の具体的な用途を、どのタイミングで決めればよいか整理できたことでした。

川口 行政は比較的、どういう用途にするか先に決めたがりますが、民間事業者からの提案を受ける場合、最初から決め切るのは難しいですよね。この点は内閣府に確認済みです。

宮本 「観光施設」がゴミ処理や研究施設に並んでそこに入るのかよ、というのも面白ポイントでしたが、「人工衛星」など宇宙分野のものが公共施設のくくりに入っているのも驚きました。

川口 あとセミナー内で詳しく触れましたが、2011年のPFI法改正による「コンセッション方式」はすごい「発明」だと思っています。この部分に気づいてしまうと、公共施設の運営を劇的に変えられるくらいのインパクトを持っているのではないかと。ここに気づいていない人は、意外に多い気がしています。

矢ヶ部 こうして整理すると、確かにコンセッション方式は「発明」と呼べるものですね。

③すべての公務員に見てもらいたい「公共施設の重ね図」

夏野さん それから、落とし穴-3で紹介されていた、川口さん作の「公共施設の重ね図」とその解説は、すごいです。地方自治法の「公有財産」「公の施設」、PFI法の「公共施設等」の関係性が一目で分かりました。

川口 公共施設と一口に言っても、法律が違えばその定義は異なります。地方自治法だけとっても、意外とベテラン職員でも整理できている人は少ないと思います。「公の施設」が出てくると混乱している感じがします。

宮本 この図があると、行政財産・普通財産の切り替え議論も、かなり整理されますよね。

夏野さん 解説を踏まえてこの図を見ると、いま自分が扱っている施設がこの図のどこに位置するのか、すぐに分かります。今後も使い続けると思いますし、全公務員に見てもらいたいくらいです。

矢ヶ部 ぜひ皆さん、この図を活用して「スモールコンセッション」の落とし穴にハマらないようにしてください!

④胸が熱くなる「違法ではないが、適法ではない」

夏野さん 落とし穴-4の「PFIの議決」で、議決がいらない場合があるということを知ったのは衝撃でした。PFI事業では「議会の回数が多くて大変だ」、だからハードルが高いという声も上がります。私も「3回は必須なんだろう」と思い込んでいましたし。

宮本 議会に諮るかどうかでスケジュールが数ヶ月簡単に変わりますからね。民間事業者にとってもコストに直結する、大きな話です。

川口 もちろん判断は各自治体で行うべきものではありますが、必要な議決をキャンセルするという話ではありません。議決を要さないものまで議決することは、違法ではないけれども適法ではない、というのが当時の判断でした。

矢ヶ部 僕、当時の津山市がこの判断を下したエピソードが胸熱で大好きなんですが、決してトリッキーな裏技ではなく、書かれた条文を適切に読み取り、過剰な安全運転ではなく適切な運用をしようとした先に生まれたものなんですよね。そこを合わせて伝えたいです。

⑤「R」はもはや「リボーン」で良いのではないか

夏野さん 落とし穴-5ではPFI事業類型の「RO(Rehabilitate-Operate)」について語られていましたが、時代が進めば進むほど、「元に戻す」というより、今の暮らしに合うように「再編」することが求められます。その点で今後、PFI事業の「R」は、「Rehabilitate(リハビリテート)」から解釈もアップデートしていいのではないかと思いました。

宮本 僕らの界隈だと「R」と言えば「Renovation(リノベーション)」で、リノベーションは「Re+Innovation」だとずっと教わってきたので、むしろ「RO」という用語を国が入れていたことに、最初は感動したくらいなんですよね(笑)

川口 僕らは「Reborn(リボーン)」だって言ってましたからね(苦笑)

夏野さん 手法を形式的に捉えるのではなく、一度分解してシンプルに考える視点をもらえたのは大きかったです。学校跡地活用も、あらためて整理して考えたいと思います。

「一回視聴して終わりでなく繰り返し見返しています」

矢ヶ部 夏野さん、貴重なご意見をありがとうございました。夏野さんのように、前例のないプロジェクトを前に一人で悩んでいる行政担当者は多いと思います。

夏野さん 一般的なセミナーって、一回見たらそれで終わりなことが多いですよね。必死にメモを取っても追いつかない部分も出てきたりして。でも今回のアーカイブ録画は、期間中何度も視聴できるので、自分のペースで見るだけでなく、必要なところを何度も繰り返し見返しています。これはとてもありがたいですね。

矢ヶ部 確かに一度お伝えして終わる内容ではないですね。「この内容を知りたい!」という方は、これからも続々と現れそうです。今回のアーカイブは視聴期限がありますが、今後必要とする方に必要なコンテンツが届くよう、方法を考えて行きますね。

公務員が発揮できるクリエイティビティとは

矢ヶ部 さて川口さん、最後に全体を振り返っていかがでしょうか。

川口 僕自身、すごく楽しかったですね。普段の講演や視察の対応では、完成したプロジェクトの紹介をすることが多いんですが、実は観に来る方々の多くが、法律や制度の捉え方で混乱されているなと感じることがたびたびありました。

矢ヶ部 今回のセミナーは、単なる制度解説ではなく、公務員がクリエイティブに取り組むために、「法制度という武器」の有効な使い方も伝えられたらいいなと思っていました。

川口 法制度の条文を、できない理由探しではなく、「どうやったらできるか」を探す姿勢で読み込む。それをパズルのように解いていくのは、実は公務員にとって最もクリエイティブで面白い仕事なんじゃないかと思います。

矢ヶ部 「コンセッション方式の落とし穴」にハマるか、それとも攻略の糸口として利用するか。結局のところ大事なのは、打ち出の小槌や魔法の杖などないという前提のもと、地道な基本動作をしっかりやりきることなんだよなと感じます。

川口 ぜひこのパズルを解くような感覚を、アーカイブ動画を通じて一緒に味わってもらえたならうれしいですね。

まだ見れます!【アーカイブ動画視聴のご案内】

<本イベントは録画データをご視聴いただく形式となります>

2024年6月に、官民連携による身近な遊休公的不動産の利活用の推進に向けて「スモールコンセッション推進方策」が策定されました。
しかしいざその検討に取り組み始めると、似通った用語が飛び交い、戸惑う担当者も多いのではないでしょうか。
これを誤解したまま進むと、事業に取り組む民間の自由度を奪いかねない「落とし穴」が待っています。

私たちは11月17日、公共不動産活用に関するコンセッション・スモールコンセッションを検討する自治体職員のみなさまに向け、スモールコンセッションのハマりやすい落とし穴、具体的なスモールコンセッションの実践知、私たちが考えるスモールコンセッションの最適活用論についてお伝えするセミナーを開催しました。

レクチャーは、岡山県津山市で具体的な実践を重ねてきた川口義洋氏。
次から次へと現れる落とし穴、記事には書ききれなかった攻略法や胸熱エピソードに、あっという間に時間が過ぎてしまいました。ぜひご視聴ください!

【チケット】
① 自治体職員(録画視聴)  ¥3,000 /人
② 民間企業等(録画視聴) ¥50,000 /人
③ 自治体 上記①に加え個別相談付き ¥50,000 /団体
※peatixによる事前決済となります。
※請求書が必要な場合は、peatixにて「請求書払い」のチケットをご選択の上、フォームにて宛名等のご指定ください。後日請求書をお送りしますので、支払いをお願いいたします。
※自治体職員の方々に向けたノウハウ提供を重視した参加費設定としております。

【視聴方法】
お申込後、Peatixからのメールでイベント視聴ページへアクセスし、設置されたボタンから指定のURLに遷移して視聴してください(セキュリティの関係等で視聴できない場合は、お手数ですが問い合わせ先までご連絡ください)。

申込URL:https://smallconcession202512.peatix.com/view
※購入期限:2025年12月26日(金)
※視聴期限:2026年1月30日(金)

【お問い合わせ】
公共R不動産
(mail) contact_p@realpublicestate.jp
(担当) 鎌田

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公共R不動産の本のご紹介

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