クリエイティブな解体
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「クリエイティブな解体」を探る #04|キックオフトーク開催!『公共不動産の解体新ショー』

昨年12月4日に開催したトークイベント『公共不動産の解体新ショー Vol.00「解体」から始めてみよう』。これからリサーチを本格化させるにあたっての課題を共有しつつ、すでにこの領域に取り組まれている企業の方もトークに巻き込みながら、濃密なキックオフとなりました。その様子を公共R不動産研究所所長の矢ヶ部がレポートします!

クリエイティブな解体をめぐるキックオフトーク開催!

2025年12月4日、HOME/WORK VILLAGEにて、トークイベント『公共不動産の解体新ショーvol.00—「解体」から始めよう』を開催しました。

6月に「クリエイティブな解体」というテーマで記事を公開して以来、はじめてのリアルイベント。当日の会場参加だけでなく、後日の録画視聴も含め、想定以上に幅広い分野の方に参加いただきました。

連載企画「クリエイティブな解体を探る」のキックオフとしての位置づけとしての、このトークイベント。

これまで公共不動産の「活用」に取り組んできた公共R不動産が、なぜ今、あえて「解体」に着目するのか。私たち自身も「こうすればいい」という明確な正解を持っていません。だからこそ、現場が抱える悩ましい現状を共有し、来場者のみなさんとディスカッションすることで、今後掘り下げていくべきポイントを探る時間となりました。

【登壇】
・公共R不動産 編集長 飯石藍(モデレーター)
・公共不動産研究所 矢ヶ部慎一/川口義洋/宮本恭嗣/松田東子

左から、飯石、松田、矢ヶ部、川口、宮本

公共不動産の「解体」の現在地

トークは、まず私たちが「解体」というテーマに取り組むに至った背景や、現場が抱える悩ましい現状を共有するところからスタート。

これまで私たちは「使える公共不動産は活用しよう」と提言し、その後押しを続けてきました。10年前と比べれば、活用される公共不動産も増え、一般化しつつあります。もちろん今後も、活用される世界を積極的に後押ししていきたいと考えています。

一方で、公共不動産活用の実態をよく知る私たちから見ると、実際に有効的な活用ができる公共不動産は全体から見ればおそらく1割程度です。残りの9割の公共施設は、立地などを踏まえた採算性の観点や建物の老朽化の問題で、活用の目処が立ちにくいのが現実。「解体」についても、そろそろ目を背けていられない段階に来ています。

しかし、建物の「解体」には、多額の費用がかかります。

中心市街地にある市役所やデパートの跡地であっても、解体後の土地の活用ビジョンが見えなければ、解体工事の優先順位はなかなか上がりません。解体予算は、他の施策に押し出され後回しになりがちです。結果として、その場所に「使われないハコ」が残り続けてしまいます。

さらに使われなくなった公共不動産の家具や備品などの課題も見えてきました。本来は大切な公的財産であるはずのものが、制度や慣例がネックとなり再流通しにくく、結果として「廃棄することが合理的になる」状況が生まれています。

会場からは、「使われなくなった公共施設が、使われない家具の倉庫がわりになっている」という、笑うに笑えない話も聞かれました。

今後、使われなくなる公共不動産も、家具や備品も、まだまだ生まれてきます。いわば「大量解体・大量廃棄」の局面に入っていきます。ここは「もったいない」という感情論だけでは動かない、構造的な問題として捉えていく必要があることが見えてきました。

「解体」をクリエイティブに捉え直す

こうした現実を並べると、どうしてもネガティブな話になりがちです。

でも、私たちは「解体」を単なる「撤去」や「廃棄」としてネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに捉え直したいと考えています。それが「クリエイティブな解体」です。

では、どのように「解体」を捉え直す事ができるのか? 議論のきっかけとして私たちが今考えている「攻め」と「守り」の両輪からなる仮説を提示しました。

【価値を生む「攻め」のアプローチ】
・モノの価値化:解体資源の再利用・アップサイクル
・コトの価値化:解体プロセスそのものを価値ある体験に
・ツギの価値化:解体後の土地活用に新たな価値を

【行政の壁を乗り越える「守り」の視点】
・解体を先送りしないための予算化、発注方法、売却方法、合意形成などのしくみ

この仮説を探求を進めるための取っ掛かりとして、今後、みなさんと一緒に深めていきたいと投げかけました。

実践から見える悩ましさとヒントの糸口

この日、会場には、すでにこの領域で取り組まれている企業の方々も。D&DEPARTMENTの松井俊太郎さん、合同会社パッチワークスの唐品知浩さんです。彼らもトークに巻き込みながら、議論は展開していきました。

D&DEPARTMENTでは、中古家具にクリーニングやカスタムを施し、再び生活の中で使ってもらえる状態に整えて販売しています。買い付けの対象として公共施設も視野に入れているそうで、バイヤーである松井さんからは、公共施設の使わなくなった家具等を購入する現場で何が起きているかを伺いました。

松井さんは、行政にも泥臭く電話をかけてアプローチするものの、話を聞いてもらえるのは1割程度だといいます。不要な家具を欲しがる企業がいるとは想定されておらず、警戒されることも多いそう。ようやく話が進んでも、入札などの手続きが必要になったり、「どの施設で使われていたものかは明らかにしないで欲しい」と言われたりすることもある、と話します。

D&DEPARTMENTの松井俊太郎さん

また、建物の解体の際、感謝と別れの儀式を「棟下式(むねおろしき)」として式典化する取り組みを行う、合同会社パッチワークスの唐品さんのお話も印象的でした。

どうにも活用できない建物をそのまま放置したり、知らないうちに更地にされたりするのは忍びない。人にはお葬式があるように建物にもちゃんとお葬式をした方がいい。そんな思いでスタートしたのが「棟下式」です。実施すると、建物の現役時代の思い出を語る方が現れ、知らなかったエピソードが掘り起こされることもあるそうです。

一方で、民間開発のプロモーションとしては実施されやすいが、個人所有の建物の場合は身内だけの場にとどまり、オープンなものとして広がりにくい、という課題も共有されました。

合同会社パッチワークスの唐品知浩さん

こうした実践の話を聞くほどに、前例がないことへの慎重さ、個別判断の難しさなど、これから解いていかなければならない構造的な課題が浮き彫りになります。

同時に、それは「解体」をクリエイティブに捉え直すための糸口にもなりそうです。
例えば、使われなくなった学校の椅子や公共施設の家具が、単にモノとして売られるだけでなく、思い出や背景ごと次の使い手に受け渡されていく。あるいは、建物を解体する前の時間が、地域の人たちが思い出を持ち寄り、次の場のあり方を考える機会になっていく。そんな可能性が公共不動産の文脈にも立ち上がってきたら、「解体」の風景が少し変わって見えてくるのではないでしょうか。

「クリエイティブな解体」をカルチャーに

トーク後半で、研究員の宮本さんから紹介されたのは、東洋大学・根本祐二教授の著書『インフラ崩壊—老朽化する日本を救う「省インフラ」』。

量を減らしながらも公共サービスの質は維持する「省インフラ」という考え方。根本教授は「省インフラをカルチャーにしなければならない」と指摘しています。日本で省エネルギーがこれほど浸透したのは、技術開発等によって快適性を落とさずに生活へ染み込んだからです。省インフラも同様に、カルチャー(文化)にまで落とし込むことが求められています。

「クリエイティブな解体」も同じです。今後の公共施設のあり方、サーキュラーエコノミーの実現、そして私たちが暮らすまちの未来をつくるために、「解体」をポジティブに捉え直すカルチャーを育んでいく必要があると思うのです。

引き続き進める「クリエイティブな解体」の探求

会場も巻き込みながら進行した『解体新ショー』。悩ましい現状や越えなければならないハードルを前に、「モヤモヤ」を抱えたまま帰路についた方も多かったかもしれません。

でも、初回記事を世に出した6月から半年で、想定以上に多くの方から確かな反応や共感をいただき、土木・インフラ、教育、建設、サーキュラー、産業廃棄物処理、家具や建材の再流通など、思っていた以上に幅広い分野で関心が重なっていることが分かってきました。

技術的にも制度的にも、解かなければならない課題は山積みです。まだまだ知恵と実践と仲間は必要です。「うちのまちでこんなことやっているからシェアしたい」「取材に来て欲しい」といった情報提供も大歓迎です。

今後も関心を持ってくださる皆さんとの接点を広げ、より掘り下げていくリサーチプロジェクトとして動かしていきたいと思っています。

引き続き、一緒に探求していきましょう。

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