プロジェクト
× 小田原市
公共R不動産 ✕ 小田原市
”豊島邸"利活用プロジェクト

小田原市 歴史的建造物「豊島邸<一月庵>」現地案内会レポート 前編

海と山に囲まれた豊かな自然と温暖な気候に恵まれた小田原市は、都心からの交通的利便性も高く(新幹線だと30分!)、古くから政治家や文化人らが「別邸」を構える地としても愛されてきました。そのため、小田原市内には今でもたくさんの歴史的建造物が残り、文学館などの観光施設として活用されている建物もあります。ただ、歴史的建造物の維持・管理には多くの資金が必要であり、行政だけで負担し続けることには限界もあります。「別邸文化」とも称される小田原の伝統をより良い形で後世へつなげていくためには、単なる保全だけではない、新しい視点での活用も大切です。

そんな状況を受け、小田原市と公共R不動産では、歴史的建造物を民間事業者に利活用していただくプロジェクトを今年から本格始動!第一弾が「豊島邸(一月庵)」の活用です(建物の詳細はこちら)。今回は、正式な事業者選定の公募前に、民間事業者から「活用アイデアの募集」を行います。集まった企画や希望条件などを受けて、行政側で必要な条件緩和を見定めることなど、要件整理を目的としています。さらに今回は、利活用に興味のある事業者向けに「現地案内会」を開催することに!
10月6日に実施した、小田原の魅力と可能性がぎゅぎゅっと詰まった現地案内会の模様をレポートします。

実際に「豊島邸(一月庵)」を見学!

当日は絶好のお天気に恵まれ、小田原市内外から30名ほどのみなさんにお集まりいただきました。30分ほどかけて、広々とした庭園から建物内部まで、じっくり見学していただきました。

この日のために腕木門の扉が開かれました!

小田原市の説明に多くの方々が熱心に耳を傾けていました

参加した事業者のみなさんは「こっちをキッチンにしたらどうかな?」「お風呂場が意外にきれいで使えそう…」「庭の整備が大変そうかも」など、すでにいろいろな想像をめぐらせながら見学をしている様子。

参加者同士が意見を交換する場面も

庭園の活用方法にまで自ずと話題は広がります

雨戸も開かれ、快晴のお天気に庭の緑が映えます

水周りの凝った意匠も見所のひとつ

小田原市の魅力満載!歴史的建造物めぐりその1 かまぼこ通り

現地案内会には、小田原市のポテンシャルを事業者のみなさんに幅広く知っていただくため、豊島邸の見学だけではなく、周辺の歴史的建造物や観光エリアのツアーも行程に入れています。

豊島邸見学後、まず訪れたのは海のそばの“かまぼこ通り”。案内していただいたかまぼこ通り活性化協議会副会長の平井さんによると、かつてこのあたりには魚市場があったそうで、今でも、豊富な漁場や良質な水を活かしたかまぼこ屋さん・干物屋さん・飲食店など合計30店舗以上が軒を連ねているそうです。

歴史的建造物が残るかまぼこ通りも視察しました

以前はこの近くに、豊富な漁獲量を誇る漁港があったそう(かまぼこの背景)

創業して200年以上経つかまぼこ屋さんもあるとか。揚げかまぼこなどを食べ歩きしたり、すぐ近くにある海を散策するなど、当日も観光客の皆さんが多く訪れていました。

小田原沖で急に深くなる海は、太陽に照らされ美しい紺碧色

小田原市の魅力再発見!歴史的建造物めぐりその2 清閑亭

かまぼこ通りを後にして、次に訪れたのは明治39年に建てられた清閑亭。数寄屋風の造りで平屋と二階家が連なり、建物内には板絵襖や網代組天井なども見ることができる貴重な建造物です。明治時代に活躍した黒田長成侯爵の別邸として、古くから地域に親しまれてきたそうです。

国登録有形文化財にも指定されている清閑亭を見学

清閑亭は、NPO法人小田原まちづくり応援団のみなさんが、8年前に小田原市から事業委託を受けて運営しています。カフェスペースの運営、毎月1度の別邸文化にちなんだ企画展の実施、週1-2回の別邸をめぐる街歩きツアーなどを日々行っているそうです。

建具や間仕切りの設えも美しさのひとつ

小田原らしい景色を堪能できるのも清閑亭の魅力

この日のカフェはほぼ満席!小田原みかんのジュースや手作りのスイーツなど、魅力的なメニューがいっぱいです。豊島邸で予定している民間事業者による活用とは形態が異なりますが、清閑亭は、NPOが市から事業委託を受けて歴史的建造物を運営している事例のひとつ。清閑亭館長であり、NPO法人小田原まちづくり応援団メンバーの渡辺さんに直接お話も聞くことができ、事業者の方々は日々の運営や資金繰りなどに関して積極的にいろいろな質問をしていました。

清閑亭の運営について質問をされる方も

後編では、ツアーのあとに行われたトークイベントの様子をお伝えします。
最後に、お知らせです。
下記の日程で豊島邸のオープンハウスを予定しています。現地案内会に参加できなかった方々は、ぜひこの機会にご覧ください!
・事業者向け:11月8日(木)・9日(金)
・一般向け:11月10日(土)
詳細は下記、小田原市HPを参照ください。
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/topix/p25934.html

■お問い合わせ
小田原市役所 都市部 まちづくり交通課 まちづくり係(田邊・泉・猪俣)
電話番号:0465-33-1754
e-mail:ma-machi@city.odawara.kanagawa.jp

PROFILE

阿久津 遊

1988年宮城県生まれ。ワークショップ等のこども向けプログラムの企画運営に携わり、公共空間活用に関心を持つ。2018年から公共R不動産にライターとして参加。

連載

すべての連載へ

公共R不動産の本のご紹介

クリエイティブな公共発注のための『公募要項作成ガイドブック』

公共R不動産のウェブ連載『クリエイティブな公共発注を考えてみた by PPP妄想研究会』から、初のスピンオフ企画として制作された『公募要項作成ガイドブック』。その名の通り、遊休公共施設を活用するために、どんな発注をすればよいのか?公募要項の例文とともに、そのベースとなる考え方と、ポイント解説を盛り込みました。
自治体の皆さんには、このガイドブックを参照しながら公募要項を作成していただければ、日本中のどんなまちの遊休施設でも、おもしろい活用に向けての第一歩が踏み出せるはず!という期待のもと、妄想研究会メンバーもわくわくしながらこのガイドブックを世の中に送り出します。ぜひぜひ、ご活用ください!

もっと詳しく 

すべての本へ