公共R不動産のプロジェクトスタディ
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廃校のポートランド的解釈|McMenamins Kennedy School(マックメナミンズケネディスクール)

100年前の小学校にタイムスリップできるホテル

都会的なカルチャーと自然が共存したライフスタイルが人気のポートランド。ポートランダーたちは公共施設も素敵に使いこなしている。そのひとつが廃校をブルワリー&ホテルとしてコンバージョンした「McMenamins Kennedy School(マックメナミンズケネディスクール)」だ。

元学校の食堂だったスペースがレストランにリノベーションされ、校庭のテラス席につながる。 食堂横のロッカールームは本格的なブルワリーになり、ここで醸造されたクラフトビールを楽しめる。ボイラー室は配管丸見えの独特な雰囲気を活かしたバーに。講堂は映画館に。使い込まれた廊下には古い写真や絵がかけられ、今にも子どもたちの声が聞こえてきそうだ。教室棟はホテルの客室へとコンバージョンされている。

市民に乞われて再生した文化財

この廃校ホテルは、ポートランドでコンバージョン物件を多数手がけるマックメナミンズ兄弟の代表作の一つ。世界最大級の観光サイト・トリップアドバイザーでも、全米の面白ホテルランキング1位に輝いた実力派だ。

元の小学校の設立は1915年、築100年超の文化財だ。老朽化により1975年に閉校を迎えたが、その後PTAや卒業生の粘り強い保護運動によって解体の危機を免れ、再生のためのコンペを実施。屋内サッカー場や老人ホームなど、複数の提案の中から現在のホテル案が採用された。そんな経緯もあってだろうか、けっしてポートランド市の中心部から近いとは言えない立地にもかかわらず、観光客だけでなく、ホテルとなった現在でも地域の人たちの庭のように 愛され日常的に賑わっている。

ビールタンクもポップな醸造所
アールデコ調のインテリア
小学校の当時のままの外観
北海道と同じくらいの緯度に位置するポートランド、冬期は寒いので校庭のテラス席にはポータブル焚き火台が。これ、ほしい。
訪問した日は生憎の雨でしたが、テラス席にはたくさんの緑とピザ窯が。
体育館が地域の映画館に。以前は子供の学ぶ場所だった記憶を継承し、家族の日やママの日があって、「赤ちゃんも歓迎!」というメッセージがとっても素敵。
元ボイラー室を改装したバー。かっこよすぎる、、、

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上記の記事については、公共R不動産が編集・執筆した書籍、
公共R不動産のプロジェクトスタディ 公民連携のしくみとデザイン」でもご紹介しています。
他事例や妄想コラム・インタビューも掲載していますので、ぜひご覧ください。

PROFILE

菊地 マリエ

公共R不動産/アフタヌーン・ソサイエティ。1984年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。日本政策投資銀行勤務、在勤中に東洋大学経済学部公民連携専攻修士課程修了。日本で最も美しい村連合特派員として日本一周後、2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。現在はフリーランスで多くの公民連携プロジェクトに携わる。共著書に『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』。

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