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公共R不動産のプロジェクトスタディ
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公園づくりのレシピ公開、全米でムーブメントに 
KaBOOM!(カブーム)

アメリカではこの20年間で1日あたり約34のペースで公園がつくりだされました。この偉業を実現したのがNPO「KaBOOM !(カブーム)」。「全米のすべての子どもたちにバランスのとれた遊ぶ機会を」をビジョンに、1995年に設立。2017年までの22年間で、全米で3000を超える公園の開設に貢献し、2021年現在までに、17,000以上のプレイスペース、150万人以上の人々が関わり、1,100万人以上の子供たちに遊び場を提供してきたという実績をもつ、公園エキスパート集団です。

住民総出で遊具を運んで設置する
住民総出で遊具を運んで設置する

3000 の公園をつくりだしたNPO

KaBOOM !とは、英語の効果音で「ドカーン!」という意味。不思議なネーミングですが、これは彼らの奇想天外で大胆なサービスをうまく表現しています。週末のたった1日で、地元ボランティア数百人を動員し、空き地をドカーンと公園につくりかえてしまうのです。

”KaBOOM!” ”Playground” ”Build”で検索すれば、その一部始終が1 分程度の高速の動画にまとめられ、全米からアップロードされています。朝、大勢が空き地に集合、手分けして穴を掘り、次々と遊具を立てて、砂場や フェンスを設え、ベンチを組み立てペンキを塗り、6時間後には公園が完成します。

SEGA, Kaboom, and Youth UpRising Build a Playground in 1 Day

行政に頼らない自立的な運営

もちろん、その日までに長い準備期間が必要です。カブームの正規スタッフは18名。提供するサービスは大きく二つに分けられます。直接カブームが公園を開設するパターンと、ウェブサイト上の情報提供により間接的に開設をサポートするパターン。

直接開設する場合、民間企業からの依頼でカブームがマネージャーを派遣します。一つの公園の企画から完成まで約半年。平均的な予算は約600万円で、その9割が企業負担、1割が地元負担となっています。あえて地元負担を必ず入れているのは、主体性を保つため。公的な補助にはほとんど頼らず、自治体に熱意のある担当者がいる場合を除き、自治体との協働はしません(NPO は行政の手の届かない領域を担っているとも言えますね。日本でも一時流行った「第三の公共」的な役割をしっかり果たしているというか)。基本的には、土地も民間から購入。公園づくりの材料も、可能な限り地元企業に提供してもらいます。建設後のマネジメントまで視野に入れ、整備プロセスを通じ、地域コミュニティが再形成されることを重視しています。 

 資金の目処がたつと「Design day」と「Build day」を決めます。Design day は地域の子どもたちに欲しい遊び場をイメージしてもらうワークショップの日。それをもとに設計に落としていきます。Build day は冒頭に触れた 協賛企業や住民ボランティアが総出で公園をつくる日です。

民主主義国家アメリカらしいオープンなアプローチ

しかし、自分たちでつくり続けていては全米の公園ニーズには追いきません。そこで、公園開設に必要なノウハウを非常に詳細にわたってオンラインで公開しています。 いろんな公園づくりのレシピの動画やテキストを無料でダウンロードできるのです。ノウハウのサポートは有料版もあり、カブームスタッフによるオンライントレーニング、定期的なワークショップ等も開催しているようです。

日本の1人あたりの公園面積はニューヨークやロンドンの約3分の1。一方で、国土交通省主催の子育て世帯の住まいに関する調査によると、住環境として重視される項目として「公園など遊び場が近隣にあること」は第一位とされています。「公園は自分たちでつくる」というアメリカの常識が日本でも一般化したら楽しいですね!

世界主要都市の一人当たりの公園面積
子どもたちが欲しい遊び場のイメージを描くワークショップ
公園の看板を設置するカブームのスタッフたち

公共R不動産の書籍のためリサーチしたのが2017年。WEB版でのリリースに合わせて再度調べてみると、そこから4年の間に、Kaboom!ではこれまでの25年と大きく2つ異なる動きが出てきていました。

ひとつめの動きは、”play everywhere”というイニシアティブ。これまではあくまで「公園」をつくる、ということがメインでしたが、近年では、公共物である歩道や空き地も対象に、より広く「遊べる場所」につくりかえてしまおう!ということに注力し始めているようです。

その際のデザインややり方、評価方法、ケーススタディもきちんと”playbook”としてウェブに掲載されています。なんでもなかった歩道が、ペイント一つで子供たちの遊び場になっていたり。日本でもすぐ取り入れられそうですよね!

また、より「遊べる機会をどんな子供にも平等に提供する」ということを徹底するため、どこでも遊び場にできるモバイルツールキットを開発したようです。ツールは主に2つ。1つ目は、以前取り上げたことのあるNYCのHigh Lineの運営者の提案により、教育者や木工作家などと協働でつくられた木の遊具セット。もともとはHigh Lineの子供の遊び場用に、その歴史を反映して、インダストリアルな雰囲気(紐で引っ張るクレーンや滑車など)の仕掛け遊具として作られたようですが、それが発端になり、他市からも発注が。”Rigamajig”というプログラムとしてKaboom!が全米に提供し始めたようです。

もうひとつのツールは、”Imagination Playground”。その名の通り、何もないスペースを創造の遊び場にしてしまうツールキット。いわば、硬めのスポンジっぽい素材でできた大きなブロックのセットみたいなもので、それを組み合わせて自由に遊具自体をつくりだすというもの。これは建築家とのコラボで開発された商品とのことで、組み立てると自分の背丈よりも大きな遊具ができたり、本格的です。

どちらも室内でも屋外でも使うことができ、コロナ禍で外出ができない子供たちにパブッリックスペースを開放して一時的に遊び場にするといった取り組みも行われているよう。ウェブサイトには、きちんと使用後の消毒の方法などもマニュアルがありました。

2つめの変化は、パートナーシップの組み方。これまでKaboom!は、市民と企業という民間セクターを中心に巻き込んだムーブメントで、敢えて自治体とは距離をおいていた印象でした。しかし、近年では、子供たちの遊び場にこれまで投資の行われてこなかった都市をリサーチし、自治体と協働して公民連携による遊び場づくりに取り組み始めたとのこと。現在は、デトロイト、ボルチモア、25年の実績も認められ、自治体からもその手腕が請われるようになってきたのかもしれませんね。自治体よりも民間発のイニシアティブで全米に公園がひろがっていくなんて、本当に素晴らしい動き!日本でもこんな活動が広がったら楽しいですね。

Friends of High Lineとともに開発されたRigamajig(kaboom!websiteより)
Imagination Playground、安全に遊べそう!(kaboom!websiteより)
Play Everywhere イニシアティブによって遊び場と化した歩道(kaboom!websiteより)

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上記の記事については、公共R不動産が編集・執筆した書籍、
公共R不動産のプロジェクトスタディ 公民連携のしくみとデザイン」でもご紹介しています。
他事例や妄想コラム・インタビューも掲載していますので、ぜひご覧ください。

PROFILE

菊地マリエ

菊地マリエ

公共R不動産/アフタヌーン・ソサイエティ。1984年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。日本政策投資銀行勤務、在勤中に東洋大学経済学部公民連携専攻修士課程修了。日本で最も美しい村連合特派員として日本一周後、2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。現在はフリーランスで多くの公民連携プロジェクトに携わる。共著書に『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』。