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「公共空間 逆プロポ」ができるまで / できてから
  「公共空間 逆プロポ」ができるまで / できてから

Mobility for Possibility─
地域の魅力を引き出す移動型滞在施設「BUS HOUSE」|第3回「公共空間逆プロポーザル」

公共の遊休不動産や遊休地、地域の産業やコミュニティをいかすべく、柔軟な発想を持つ民間プレイヤーと自治体とのマッチングを行うイベント企画『公共空間 逆プロポーザル』。2020年9月25日に開催する第3回のプレゼンターをご紹介しています。
今回は、移動型滞在施設や小型モビリティなど、「モビリティ」にまつわる幅広い事業の開発支援を行うことで、人とモビリティが共生する社会を目指す、株式会社EXx代表の青木大和さんです。青木さんが描く将来の宿泊施設のスタイル、自動運転社会の都市のあり方、事業立ち上げに至ったバックグラウンドまでお話を伺いました。

マイクロバスを改修した「動く宿泊施設」BUSHOUSE
マイクロバスを改修した「動く宿泊施設」BUSHOUSE

≫オンライン開催決定! 9/25(金)『第3回 公共空間 逆プロポーザルonline』
イベント概要はこちら。

移動の自由によって新しい景色をつくる

2020年5月に設立した(株)EXxでは、(株)DADAと(株)マイメリットが事業統合する形で、移動型滞在施設や小型モビリティなど、「モビリティ」にまつわる幅広い事業の開発支援を行い、人とモビリティが共生する社会を目指しています。

EXx代表の青木大和さん。学生時代からシェアハウス事業を立ち上げるなど、「暮らし」のあり方を常に問い続けている。(写真提供:EXx)

「モビリティ× ◯◯」という無限大のコラボレーションが可能な中、複数の事業軸で展開しているEXx。今回は「モビリティ×旅行・観光」の視点で手掛ける、“動く滞在施設「BUSHOUSE」”を取り上げます。

マイクロバスを改造したその車内は、キャンピングカーよりも大きく、青木さん曰く「ちょうどワンルームマンションに近い馴染みあるスケール」とのこと。その広さを生かして、滞在目的に限らず、会議やヨガなど、さまざまな用途に使うことができます。当然移動が可能なので、まちなかでスポット的に行われるイベント会場に移動して設置するなど、柔軟な利用が想定できます。

マイクロバスを改修したバスハウス外観。
様々な内装を施したBUSHOUSEの内部。天井が高いので、普通の部屋のように立って移動できる。

宿泊ニーズのある場所へ自ら出向く

「移動の自由」は宿泊施設にどんな可能性を生むのでしょうか。2020年2月1日〜28日、宮崎県日南市と共同で行った利用実証に、そのひとつの可能性を見い出せそうです。

「日南市では毎年プロ野球の春季キャンプが行われますが、市内に宿泊先が不足していて、訪れるファンの宿泊先が市外へと流出していました。この利用実証では、BUSHOUSEを2台、球団のキャンプ地から徒歩14分の「堀川夢ひろば」に設置して、滞在場所として訪問客に提供しました。併せて電動キックボードを市内の移動手段として導入し、移動と宿泊が統合したサービスのあり方を模索しました。」

宮崎県日南市で行われた利用実証の様子。BUSHOUSEの提供だけでなく、市内の交通手段としてのマイクロモビリティを併せて導入しているところが特徴。

同年の3月11日〜31日には、沖縄県読谷村のプライベートビーチと、沖縄市一番街商店街内でも、実証実験を行っています。こちらはバスの外部にタープを張り出したり、椅子を置いたりと、居場所をさらに拡張させるようなあり方を模索しています。

沖縄県読谷村での実証実験。CAMP-O 協同組合と協働し、バスの外部にも居場所を拡張するあり方を提案。

宿泊施設は稼働率が命。であれば、お客さんが泊まりに来るのを待つのではなく、ニーズのある場所に合わせて動かせばいい、という発想です。バスなので、たとえば海の前や山の上など、既存のホテルが参入しにくいところにも、設置することができます。

「ひとつの場所がうまくいかなくても、じゃあ次はこの場所、今度はこの場所と、身軽に移動しながら試していくことで、街の潜在的観光ニーズのある場所、魅力的な場所が自然と発見されるんじゃないかと思います。本格的な投資をするのは、そうやって実験を繰り返して確かな収益が見込めてからでも遅くはないですよね。
僕たちが既存の宿泊事業者と異なる点は、BUSHOUSEを設置して集客するだけでなく、そのような実験を繰り返してデータを分析し、よりよい立地の提案までを視野に入れているところです。」

名建築の敷地内に泊まれたら建築マニアにはたまらないのでは……?産業遺跡を好む人もいるかも……?などなど、妄想がはかどります。

「インターネットの登場によって、超ニッチなテーマで発信していても、世界中のファンを可視化できるようになりました。このバスハウスはその最たる例だと思います。極端な話、1年=365日に対して、365人のファンさえ引っ張ってこれればいい。ニーズに合わせたストーリーを引き出して、そのファン層にきちんと届けるようなあり方も模索したいです。」

様々な可能性に対し、まずはテストして、需要が見込めたら本格的に仕掛ける、というアプローチが取れるのは身軽なモビリティの強み。コロナ禍の不確定な時代にもマッチしています。データ分析に基づき、そのまちと相性のよい新たなファン層にリーチできるのも、交流人口増加への有効な一手となりそうです。

地域の資源を活用したmachi hotel構想

EXx社では、今後、人口20万人以下の市町村をベースに、街全体を宿泊施設化するmachi hotel構想を持っています。点在する地域のスペース(土地)を一時的に宿泊・キャンプ等の滞在空間とすることで、街全体を宿に見立てる分散型の宿泊事業です。

たとえば、受付の機能やコミュニティハブとしての役割も果たす事業所はまちなかに固定し、商店街の中、神社、川辺など、その街を象徴するようなポイントに滞在拠点を分散させるなどが考えられます。

EXxのmachi hotel構想。

「その土地ならではの場所に泊まれば、特別な滞在体験になります。一方でBUSHOUSEがそこで提供するのはいわば『快適な滞在空間』のみ。ホテルのように売店やルームサービスがついているわけではありません。必然的に、銭湯や飲食店、コンビニといったまちのインフラに頼ることになります。
これだけ民間主導のインフラが充実して張り巡らされているのはすごく日本的な現象。それをポジティブに捉えると、街全体を宿に見立てることで、観光客をひとつの施設に囲い込むのではなく、様々な形で地域にお金を落とすことにもなると思うんです。」

移動しながら働く父の姿が原風景

こうした青木さんの事業アイデアは、どのようなバックグラウンドから生まれたのでしょうか。

外資系企業で働く父親が10数年前からいち早くリモートワークを実践していたため、幼い頃からその柔軟な働き方に触れていたという青木さん。

「当時、父が文化遺産を巡るのにハマっていたため、平日に突発的に学校を休まされて(笑)、キャンピングカーで地方に遊びに行ったりしていました。日中、父は仕事があるので、その間は、携帯だけ持ってその辺をフラフラしたりして、地元のお年寄りと仲良くなっておやつをご馳走になったり。そんな生活だったので、移動しながらの暮らしにもともと違和感はありませんでした。」

また、15才でホームステイのためアメリカへ。牧場を営むホストファミリーは、連結したキャンピングカーを牧草の位置に合わせて移動して暮らしていたそうです。そんな暮らしもひとつの原風景になっているのだとか。

アメリカ留学時代の青木さん。

慶應義塾大学在学中の2016年に、コミュニティハウス「アオイエ」をオープン。今では、東京や京都などで計17拠点のコミュニティハウスを運営しています。

「僕たちの営むシェアハウスには、クリエイティブな分野など、好きなことに打ち込んでいるような子が多く住んでいます。どこでも仕事のできる彼らは、無理に地価の高い東京に固執する必要はありません。一方で東京には近い価値観のコミュニティをつくりやすい、というよさもあります。だったら家ごと自由に移動しながら暮らせたらいいよね、と議論をするようになりました。そこでまずは1台つくってみようか、というのが始まりです。」

自動運転社会の到来に向けた準備

通常であれば、初期投資の額も大きく立地選定も困難な宿泊業を、実験的に低コストで導入し、新たなまちの可能性を探れるBUSHOUSE。
知られざる、美しい大自然や特色のある地域文化をもっと知って欲しいと願う自治体のみなさまには、ぜひお試しいただきたいところです。

しかし、可動式宿泊という新しい構想・業態であるため、運用する上でのハードルもあります。

「宿泊に関する法律として、旅館業法/簡易宿泊/民泊新法がありますが、一ヶ所に留まらず、宿泊施設に該当しないBUSHOUSEは、現行法上は適用法規が曖昧な状態です。現状は、現行の旅館業法等に則った範囲内で運用しつつ、他事業者も巻き込みながら適切な制度設計を行っていきたいと考えています。」

2019年10月に、BUSHOUSE事業は、内閣官房が窓口となる新技術等実証制度「レギュラトリー・サンドボックス」に認定され、業態の開発に併せた法改正も視野に入れ、国と緊密に連携しながら事業をすすめています。

「申請・認定・運用の過程において、内閣官房の官僚の方々が献身的かつ建設的に議論を重ね、実証可能な仕組みづくりに尽力してくださった事で、行政や規制を敵のように捉えるのではなく、議論を前向きに進めていく仲間として見られるようになりました。
2027年には自動運転時代がくると言われています。宿泊をはじめとする可動産のニーズが今後高まれば、グレーゾーンではカバーしきれない領域が出てくるでしょう。現状でもすでにコロナ禍で、モビリティライフの需要は伸びているので、今のうちから法整備の議論を積み重ねていくことが大切だと思います。」

自治体に求めるもの

最後に『公共空間 逆プロポーザル』に向けて、連携を希望する自治体や公共空間の条件を伺いました。

「今、自社運営で2拠点ほどトライしてみようと、BUSHOUSEの設置場所を探しています。理想は東京から2時間ほどで行ける距離ですね。」

「最終的には、ホテルやキャンプ場等の滞在施設の運営は地元企業で担ってもらい、僕たちはシステムの開発や、より収益性の高い運営のサポートに専念したいと思っていますが、安心してパートナーシップを組んでいただけるよう、まずは自社運営で十分な収益を出すことを目指しています。」

EXxはあくまでモビリティのテックカンパニー。この逆プロポーザルでは、彼らの事業ビジョンに共感し、バスの設置場所を提供してくれる自治体との連携を求めています。
たとえば設置場所は自治体所有の遊休地とし、ホテルの運営は地元の企業が主導する、というスタイルもあり得ます。遊休地のある自治体さん、元気のある地元の企業さんを誘って、逆プロポに参加してみませんか?

「僕たちの事業に共感し、今の段階から並走していただける自治体さんに、この逆プロポーザルで出会えると嬉しいです。数年後、法律も改正された時、初期段階からトライを重ねてきたからこそ自動運転社会のフロントランナーになれたね、と振り返れる状態を目指したいと思っています。」

「理想は、モビリティテクノロジーや施設の開発を担うEXx、土地を所有する自治体、新規事業として投資・参入する地元企業という、トライアングルの関係を築けること。実は、日本は世界で一番中小企業が多い国。一方、人口減少などで既存事業が伸び悩む企業も少なくないんです。そういうオーナーが次のステップに踏み出す一助になれたら嬉しいです。事業者ごとの色が出てくると、それがそのままBUSHOUSEの地域性に繋がっていくと思います。」

モビリティ×公共交通

自社で開発した電動キックボード。軽く持ち歩きが容易に設計されている。

宮崎県日南市での事例でも少し登場しましたが、EXxは、BUSHOUSEの他にも、電動マイクロモビリティのシェアリングサービスを自治体に導入し、取得データを元にした地域活性化のコンサルティングを行う事業も手掛けています。
電動マイクロモビリティの導入によって、地方交通経済の衰退や生活交通の維持、自家用車非保有者の移動手段不足といった、地方交通機関が抱えるインフラとしての課題の解決が期待されています。

気軽に乗れるのが魅力である電動キックボード。環境意識が高く、渋滞が都市問題化している海外の大都市においては、いち早く導入が進んできています。
しかし、日本の現行法では原動機付自転車に該当するため、免許の所持、ヘルメットの着用、公道走行などが求められるなど、日常使いにはちょっとハードルが高い状況です。

EXx(旧DADA)では経済産業省の「新事業特例制度」を活用し、まずは公道(車道および普通自転車専用通行帯)を走行する形で、東京都世田谷区、神奈川県藤沢市などで実証を開始する見通しです。期間は、2020年の10月〜2021年3月まで。実証を経て、さらなるルール整備や事業展開へ繋げていきたいとのこと。

新事業特例制度:現行の規制の適用範囲が不明確な場合においても、安心して新事業活動を行い得るよう、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度。
https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/result/shinjigyou.html

モビリティの様々な可能性を感じさせる、EXxの事業。自治体の規模や交通状況によって、特色のある出会いが生まれそうですね。
全国には魅力的な遊休地がたくさん眠っているはず。第3回逆プロポーザルでどんな自治体や地元企業とのマッチングが生まれるのか、今から楽しみです。

PROFILE

木下 まりこ

木下 まりこ

OpenA/公共R不動産/共立女子大学家政学部卒業。法政大学大学院工学研究科修了。2009年に新建築社に入社し建築雑誌『a+u』『新建築』『新建築住宅特集』の編集を担当。2020年より、OpenA/公共R不動産にてメディア・編集に関わる。