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公共R不動産 ✕ 沼津市
1DAY RePUBLIC@沼津プロジェクト

[開催レポート・後編] 1DAY RePUBLICアイディアコンペ@沼津

市民が公共空間に対して思いを伝えられることって、残念ながらクレーム以外にはあまりないもの。結果、禁止事項ばかりの公園になってしまっているのかもしれません。より気軽に、よりポジティブに、行政にサイレントマジョリティになりがちな市民のニーズを伝え、生産的な議論のきっかけをつくりたい。そんな想いから公共R不動産が企画したアイディアコンペ。前編では沼津市の公共空間の課題と、フィールドワークについてご紹介しました。後編の今回は参加者から提案されたアイディアとその後の取り組みなどをお伝えします。


狩野川2
狩野川のフィールドワーク

事業プラン検討&発表!

コンペ提案対象エリアを視察後は、各チームに公共R不動産メンバーも加わり集中してアイディアプランを練っていきます。いかんせん、広大な公共空間なので全部を一つにまとめるのにどのチームも苦戦していた模様。途中、市長もふらりとワークショップ会場に現れ、檄を飛ばしていってくださいました。さてどんなアイディアが飛び出したのでしょうか?

アイディアコンペは公開し、市民の方も加わって会場はいっぱいになりました。各チームからの発表内容をご紹介します。

グループワーク

いよいよ最終プレエンテーション開始!

 

(1)狩野川大学「カノダイ」

1つめの発表は狩野川大学、略して「カノダイ」。

今回の対象エリア全体を市民の生涯学習の場と位置付けて、色々なスキルを持っている人が教え合い、発表し合える環境をつくる。そしてサークルのように、学んだ人同士がその後も繋がり、ゆるやかに自主的な活動やイベントを、ここをキャンパスとして行うことで自然と活用の輪が広がっていく取り組み。特に新しい投資もなく、明日からでも実現できそうなのが魅力の提案でした。

グループC
遊べる学び場として「カノダイ(がの川大学)」を提案

 

(2)POP UP RIVER

次のグループは行政にリバーサイドの公共空間の規制を緩和してもらい、設備投資を極力軽く、ポップアップできるコンテンツが集まる場所にしようという“POP UP RIVER”を提案。階段堤にはwifiを完備し、グランピングやカフェに。水上にはカヤックや屋形船、ウォーターバルーンなんかを浮かべて遊び場に。狩野川は深すぎて子供達の水遊びにはちょっと向かない。ならば左岸にちょっとした水遊び場をつくってしまおう。左岸にはかるーくポップアップできるカラオケのステージとハンモック…などなど。このグループで一番面白かったのは、あゆみ橋にキッチンカーを持ってくるというアイディア。ここにみんなが集まるキッチンかーをもってくることで、左岸にも右岸にも、中央公園にも人は回遊していく。そのきっかけとなる点を橋の上に置いたところが秀逸でした。

Bチーム

日常利用が図られる仕掛けにランチ時のキッチンカーを持ってきました

 

(3)River Side Living

その名のとおりリバーサイドにリビングを持ち出してのんびりしたり、趣味を楽しんだりしようという提案です。具体的には正方形の木枠を“Living CUBE”と名付け、このキューブを川辺にもちだし、様々な空間に見立てて使うというもの。その中でハンモックで飲みながら昼寝をしたり、2坪のバーが開催されたり、そこに本屋さんが出現したりコタツで鍋をしたり、はたまた水辺の散髪屋さんと化したり。小さな映画館、マッサージ、レンタサイクルステーション、昼寝できるベッド…などなど、街にこんなものがあったらいいなと思うものを何でもここに持ち込める空間を、1日定額3,000円でレンタル。

キューブは骨組みだけを貸し出すので、夏には川辺が暑いので日よけの白い布をかぶせることも可能。冬は厚めのビニールをかけて風をしのげます。レンタルスペースとして貸し出すことで、大きな企画としてまとめ上げずとも、勝手に個々の部屋が使われ、キューブの中では何が起こっているのか自然と見える仕掛けで、賑わいのある風景がつくりだせるというところがポイントでした。

livingCube
リビングを持ち出せ!というコンセプトで様々なアクティビティがキューブ内で行われる提案

 

沼津のみなさんが選んだ提案は…?!

最後に会場の方々も含めみんなでいいと思ったものに投票。最も得票数が多かったのは “River Side Living”!聴いている方も「自分だったらこう使いたいな…」と、引き寄せて考えられ、共感を生みやすかったのが勝因だったのかもしれません。沼津には潜在的なユーザーがたくさんいるということですね!

 

今回はアイディアコンペだったので、とにかくアイディア勝負。実現するとなると、また一歩踏み込んで実行できるチームビルディングが必要になりそうです。が、まず自分の街の公共空間に感心を持ち参加してくださった市民の方がこれだけいらっしゃったということが素晴らしいですし、みなさん、この半日は本気で公共空間の一体利用について没頭して考えたわけで、小さな意識の変化も確実に起きたはず。参加してくださった市民の中には「本気で考えていたら実現したくなったので仲間を求めたい」という声もありました。

箱
リビングキューブの熱いプレゼンテーション!

 

また、今回は市役所職員の方がスタッフとして会場設営から街歩き、中にはアイディア出しに参加する方まで現れ、市民からのポジティブな「使いたい」という声に直に触れる機会となったことも、今後、街が変化する際にじわじわと威力を発揮してくるのではないかと思います。今回蒔いた種が芽吹くように継続してサポートをすること、そして芽が出た時、それを見逃さずいかにうまくすくい上げサポートしていくかが、今後の行政サイドの役割になりそうですね。今後も目が離せない沼津市の公共空間活用。どんな花が咲くのか、楽しみです!

パーティー2懇親会では近くの商店街の沼津グルメを取り揃えてくれるという気遣い。沼津の魅力を胃袋から感じました!

 

 

<事後レポート>

その後、最も得票数が多かったチームの方々を中心に意見交換会を開催。実現できるかどうかを含めて、さまざまな意見交換が行われました。が。いかんせんみなさんサラリーマン。イベントの企画は片手間で関わるにはなかなかハードルが高いもの。地域問わず、どうやったら市民の手で、公共空間を継続的に楽しい空間に変えていけるかが課題ですね。

意見交換

事後に行われた意見交換会の模様

 

また、公共空間の活用ということで、新たな動きもみられます。
さっそく「まずは自分たちができることから」、という意気込みで、スタッフとして参加してくれていた職員さんたちから嬉しい2つの報告が。

ひとつめは、その後屋台ワークショップを実施し、4台の屋台を制作。3月末には市役所ピロティという公共空間を使いポップアップ屋台イベントを開催する予定だそうです!

屋台

 

この屋台が今後は沼津市内の色々な場所に登場する予定。乞うご期待!

 

そしてもう一つは、アイディアコンペの会場だった狩野川沿いの旧病院の建物に、リノベーションまちづくりの交流拠点「まちなか相談所」を開設するということで、床貼り&黒板塗りのワークショップを開催したそうです。どちらもDIYワークショップ形式で、市民と一緒につくっていこうという姿勢が感じられて素敵ですねー。しかし、こんな前のめりな行政チームめずらしいです。ぜひ、市民の方も乗っかって盛り上げていってあげてほしい!!

 

セルフリノベ
元病院だった場所の床貼り&壁塗りワークショップ。これだけのことですが、見違えるように居心地の良い空間になってきました!

PROFILE

菊地 マリエ

公共R不動産/アフタヌーン・ソサイエティ。1984年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。日本政策投資銀行勤務、在勤中に東洋大学経済学部公民連携専攻修士課程修了。日本で最も美しい村連合特派員として日本一周後、2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。現在はフリーランスで多くの公民連携プロジェクトに携わる。共著書に『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』。

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