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公共R不動産のプロジェクトスタディ
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規制緩和と利用者主体の運営体制。
スケーターやアウトドアのテーマ型広場「新とよパーク」

2019年、愛知県豊田市の駅前に通称「新とよパーク」という広場が完成しました。新とよパークは主要駅の目の前にも関わらず、ボール遊びもストリートスポーツもOK、火の使用も音楽演奏も、出店や販売もOK!いったいどんな経緯で生まれ、日々どのような運用がされているのでしょうか?

園田さんより提供
園田さんより提供

テーマ性・目的性の高い広場へ
地元コミュニティによる主体的な運営を目指す

愛知県豊田市では、2015年から新豊田駅と豊田市駅という主要駅周辺の再計画事業が進んでいます。こちらの記事では、この計画にコンサルタントとして関わる有限会社ハートビートプランの園田聡さんに「プレイスメイキング」という都市デザインの手法に沿った豊田市のまちづくりのお話をうかがっています。

豊田市の再計画事業全体の目的は、「人が主役のまちなかを『未来の普通』にし、駅前にいつも人がいる風景をつくる」こと。その一環で行われた約10箇所の駅前広場での社会実験「あそべるとよたDAYS」を通して、広場ごとの特性やニーズを分析した活用方針がつくられました。

新とよパークができた新豊田駅東口駅前広場もそのひとつ。この広場は駅裏にあり、豊田市駅に比べると人通りも少なく、面積は1,000平米程と小さめ。広場としては不利な状況にも思えるこの場所での社会実験を通して見えてきたのは、ストリートスポーツなどの目的性の高いアクティビティのニーズだったそう。
 

新豊田駅東口駅前広場ビフォー(園田さんより提供)

再整備検討の社会実験に向けて広場活用のアイディアを募集したところ、地元のスケートボードチーム、こどもを安全な場所で自由に遊ばせたいPTAなどの保護者コミュニティ、木材を有効活用したい森林組合、自由に使える場所が欲しいフットサルチーム、囲碁をゆっくり楽しみたいシニアチーム、気軽にアウトドアを楽しみたいコミュニティなど、多種多様なプレイヤーが手を挙げました。

「多くの公園で禁止されているストリートスポーツを自由にできて、まちの真ん中でも火を使えて自然を感じることができて、車の心配が少ない場所で子どもたちをのびのび遊ばせることができる…。社会実験を経て、そんな日々の生活でマイノリティになってしまっているコミュニティの何気ない想いが見えてきました。もともと利用者数が少ないのならば、いっそのこと目的性の高いテーマに振り切り、そのコミュニティによる主体的な運営を目指す居場所づくりに向けた検討が始まりました」と園田さんは話します。
 

2015年に行われた社会実験。3日間限定でスケーターたちによる手作りのスケートボードパークが出現しました(あそべるとよた推進協議会より提供)

低リスク・低コストで始める
「ハーフメイド」による段階的プロセス

園田さんは、新とよパークの構想から実装に至るまでの道のりを「ハーフメイド」と呼びます。ハーフメイドとは、最初からすべてをつくり込むのではなく、低リスク・低コストで最低限のインフラや舗装、植栽などの設備でスタートし、利用者や運営者のニーズや実態に合わせて後から工事をするなど、徐々に成長させていくプロセスのことを意味しています。

2016年からは、広場活用に名乗りを挙げたコンテンツホルダーのみなさんと「新とよパークパートナーズ」というコミュニティをつくり、毎月1回のワークショップを始めます。そこで活用の具体的なイメージや、運営方法や改修案についての話し合いを進めていったそうです。

さらに2017年〜2018年には、ワークショップで生まれた企画の実証イベントを開催。行政からの資金補助はなく、スケーターコミュニティがベニヤ板を持ち込んでスケートパークを設置したり、森林組合が余った木材で遊具やベンチをつくったり、市役所から借りたプリウスを電源にしたDJブースを設けたり、「新とよパークパートナーズ」のメンバーができることを持ち寄るかたちで実施されました。
 

2017〜2018年頃に行なった実証イベントの様子。こちらの写真は2回目(園田さんより提供)

「実証イベントをやってみることで、電源やコンクリートなど新たに必要なものや、そのまま残したい植物やエリアが分かり、広場設計の方向性がより具体的になりました。コンクリートは舗装後の維持管理が大変なのですが、そういったリスクも含めてパートナーズのみなさんと共有しながら進めました。自由と責任をセットにした広場運営を考える大切なポイントになりました」(園田さん)
 

自由と責任をセットにした運営に向けて、制度と体制の再編成

2018年の後半には「新とよパークパートナーズ」とつくった設計案を元に行政が工事を発注し、ハード面の整備が始まりました。並行して、園田さんたちは制度面の再編成も行います。具体的には、広場の法的位置付けを「道路」(道路法による管理)から「普通財産」(地方自治法による管理)に移行したのです。

「普通財産」の場合、運営や管理のルールを決める際に条例化(議会承認)というプロセスが不要になります。行政の管轄部署の担当者と話し合い、安全な運営方法などが整理できれば、新しいことにもチャレンジしやすくなる。そのような仕組みにより、多くの公園では禁止されている火やボールの使用、出店販売、ストリートスポーツなどが以前よりも行いやすくなっているのです。

さらに完成後の運営体制や役割分担も整理。基本的な維持管理は豊田市で、利用促進は「新とよパークパートナーズ」を中心とした民間コミュニティが行うことに。周辺の商店街組合や自治会とも連携しながら運営を行う方向で話し合いを進めたそう。

そのような検討結果は、豊田市のサイトにて、わかりやすく紹介されています。広場でできることを「自由使用」「行為使用」「占有使用」の3つに分け、それぞれの利用方法やルールが記載されているのでご覧ください。
 

小さなコミュニティが協力し合う自治による運営

こうして多様なコンテンツホルダーと行政がタッグを組んで完成した「新とよパーク」。既存樹木を活かしたこどもたちの遊具も設置できるエリア、スケートボードができる「コンクリートエリア」、イベント時にペグ打ちのテントも設置できる「土エリア」という3つのエリアで構成されています。そして、誰でも自由に使える掃除道具の入った清掃用具箱と有料で貸し出しを行う備品を収納した備品倉庫、さらに各エリアにはそれぞれ電源と水道が整備されています。
 

完成後の新とよパーク。スケートパークは手作りです(園田さんより提供)

新とよパークが目指すのはルールで縛るのではなく、小さなコミュニティ同士が協力し合う自治による運営です。そんな自由と責任をセットで考えた持続可能な運営方針は、新とよパークのサインにも現れています。禁止事項ではなく「できること」がまず記載されているのがとても画期的!
 

実際に広場に設置されている看板サイン(園田さんより提供)

「新とよパークでは、目的性の高いテーマ型コミュニティとの連携に振り切りました。プレイスメイキングで大切にしている『対話』と『実証』に基づいた空間と運用の設計がうまく機能したと感じています。コミュニティごとの広場を活用する目的も判断基準もはっきりしているので、物事を決める際のスピード感もありました」(園田さん)
 

2019年4月1日、『新とよパーク』がリニューアルオープン!(園田さんより提供)

オープン後は、スケートボーダーが子ども向けキッズスクールを始めたり、自治会のおじいちゃんたちが遊びに来たり、さらには隣町の岡崎市や刈谷市からもスケートボーダーがやって来たり。地域の枠を超えたテーマ型コミュニティと地縁コミュニティがうまく混ざり合う風景が生まれているそうです。今までまちづくりに参加していなかったプレイヤーが新とよパークに関わることで、地域に新たな風景と文化が育まれていることがうかがえます。

「スケートボーダーのような一見マイノリティでビジネスとしても成立しにくいコミュニティのための居場所をつくることは、本来の公共の役割なのではないか」と園田さんは話します。

新とよパークでは街にいる本気のプレイヤーを徹底的に主役するため、合意形成の範囲を最小化しています。そのために行政と規制緩和を進め、商店街や自治会にも受け入れてもらえるような運営体制を整えています。

豊田市の駅前再計画全体の担当者、豊田市都市整備部の栗本光太郎さん(当時)は園田さんの著書のインタビューの中で「地域の本気のプレイヤーは街の宝です。良い企画を実現するハードルとなる法律や制度をクリアするのが行政マンの仕事です。民間と行政の得意分野を最大限に生かし、今までになかった体験をつくることが本当の意味での公民連携なのではないか」とおっしゃっています。

豊田市のサイトでは、新とよパークへの想い完成までの経緯についてまとめた資料も公開されているので、ぜひご覧ください。多様な人の「こんなことがやりたい!」を形にできる“ミライのフツー”を実現し続ける愛知県豊田市の取り組みにこれからも注目していきたいと思います!

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