津々浦々パブリック見聞録
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アリーナ建設予定地で育む、アーバンスポーツカルチャー。未来につながる公園「Kawasaki Spark」

川崎駅周辺エリアで動いているアリーナ建設に先駆けて、予定地を暫定活用して期間限定での公園を作るプロジェクト「Kawasaki Spark」が2025年4月から11月までの約8ヶ月間実施されました。川崎というまちの建設予定地を、ただ工事が始まるのを待つのではなく、作られる前からエリアの未来が透けて見えるような場として、アーバンスポーツやパフォーマンス等といったプログラムや仕掛けが随所に散りばめられています。その取り組みの背景、プロセスについて、オンデザインパートナーズの原 唯菜さんがレポートします。

※本記事は寄稿による記事です

プロジェクトについて

Kawasaki Spark」は、川崎駅周辺エリアの賑わいづくりや新たな文化を創造することを目的とした「Kawasaki Arena-City Project」の一環として、アリーナの建設予定地である自動車教習所跡地を、工事が始まるまでの約8ヶ月間、暫定活用するプロジェクトです。オンデザインは空間設計および企画運営協力として関わりました。

コンセプトは「未来につながる公園」。日常的にアーバンスポーツを楽しめる公園として開放した他、「TRY! DAY」と称して地域住民の「やってみたい」を共に実現するイベントを実施しました。

アリーナの完成に向けて、この場所やアーバンスポーツなどに対する地域の認知と理解、期待感を高めていくとともに、「つくってみる」「使ってみる」のトライ&エラーを繰り返しながら活動の種を育て、未来のアリーナへつなぐ役割を担う場となることを目指しました。

立ち上がりの背景

アリーナを含む従来の大規模開発では、建設予定地は工事が始まるとすぐに仮囲いが設けられ、長期間、地域に対して閉じた印象を与えてしまうことが多くあります。その間、地域住民は、WEBなどから大まかな情報は知ることができても、実際にどのような場所ができ、どのような活動が起こるのかといった具体的なイメージを持ちづらい状況が続きます。

そこで、Kawasaki Sparkでは工事着手までの約8ヶ月間、予定地を「公園」として活用し、アーバンスポーツを楽しむ人はもちろん、まちの人たちにも開かれた場所となるよう計画しました。

オープン前のイメージ画

ここでは、どんなアリーナができるのかという周知と理解の促進とともに、建設前からアリーナを自分ごと化し、一緒に楽しんでもらう人を増やしてていくこと、そして実践を通してアリーナの計画にフィードバックを生み出すことを目指しました。

自動車教習所跡地を活用したKawasaki Sparkだからこそ、自動車の運転を練習する場所から、未来のアリーナをみんなで楽しむ練習をする場所へ捉えなおすことにしました。

空間デザインのポイント

この場所は、ただの公園ではなく、観戦や応援、パフォーマンスといった体験をきっかけに熱狂が生まれ、人が集い、地域とつながっていく、アリーナのような体験ができる公園を目指しました。
元自動車教習所であることから、アスファルト舗装や縁石が敷かれた道路さながらの風景は残りつつ、縦列駐車やS字カーブといった教習のためのスペースがまるでオブジェのように敷地全体に細かく配置されており、ひとつひとつに居場所となり得るポテンシャルを感じました。そこで、本来は“車のための施設“である自動車教習所を、休む機能や、アーバンスポーツに触れる機会を促す“人のための公園“として再解釈できないかと考えました。

園内:Parkエリアの様子
園内:Playエリアの様子

また、仮設のファニチャーやグラフィックアートを中心に空間を構成し、川崎の文化であるアートやカルチャーを取り入れながら、トライ&エラーが可能なように、柔軟な使い方ができる場を目指しました。

園内:Performanceエリアの様子。坂道発進の坂の前に設置されたスケートパーク。
バスケコートを塗装した時の様子。

運営の面では、日常的に公園として開放しながら、定期的に「TRY! DAY」というイベントを企画し、ママコミュニティや地域の飲食店など、川崎で活動する人たちとともに、地域から集まった「やってみたい=TRY!」を一緒に実践しました。

2025年9月21日に開催した「TRY! DAY」の様子。

実現までのプロセス

運営事業者とイベント主催者、空間設計者がそれぞれの立場や専門性を活かしてプロジェクトを進めました。事業を担う主体と、空間をかたちにする設計者が近い距離で対話を重ね、同じ方向を見ながら協働できたことで、短期間ながらもトライ&エラーを密に行うことができました。
また「TRY! DAY」では、地域で活動する人たちを募り、時には直接声をかけながら、協働の輪を広げていきました。関わり方については事前にヒアリングを行い、地域への思いや新しい取り組みへの関心を共有しつつ、得意なことを持ち寄り、まずは楽しんでもらうことを大切にしていました。
さらに、プロジェクトの考え方や進め方を開かれた形で共有・発信することを重視し、全3回のトークイベントを実施しました。公共空間活用やまちづくりをテーマに専門家も交えながら議論を重ねることで、プロジェクトへの理解を深め、共感の輪を広げていきました。

2025年4月5日に開催したオープニングイベント:披露園で集めた地域のアイデア。
2025年6月21日に開催したトークイベント:未来のアリーナ建設予定地から考える、アーバンスポーツとパブリックスペースの「いま」と「これから」の様子。

プロジェクトのこれから

アーバンスポーツを楽しむ人、散歩の途中で立ち寄る人、イベントをきっかけに訪れる人など、多世代多目的な人を迎え入れることができ、これからの川崎らしさを象徴する風景をつくることができました。閉園前の最後のイベントでは「アリーナができるのが楽しみ」といった地域の声も聞かれ、活用を通して未来のアリーナについて知り、考えるきっかけとなったことを実感しました。

また、元自動車教習所という特性を活かし、 路面を使ったストリートアートや駐車区画を使ったお試しパークレットなど、さまざまな実験を通して、公共空間の未来の風景づくりにもTRYすることができました。

今後は、取り組みを通して可視化された地域の店舗やコミュニティ、まちを楽しむ人たちがいるというポテンシャル、公共空間活用の練習を活かし、ここで生まれたつながりや熱狂を地域へ広げ、川崎らしいアリーナシティの場づくりへと発展していくことを期待しています。

おわりに

awasaki Sparkでは、工事のために仮囲いで閉じてしまう前から、場を地域にひらき、実際に使うことで、その土地が持つ可能性や人との関係性を育んできました。
短い期間であっても地域に場を開くことで、その場所にどのような使われ方や関わりが生まれるのかを確かめることができ、完成後の姿もより具体的に共有することができたと感じています。
開発前からこうした時間を重ねることで、できあがる風景は大きく変わっていく。その可能性を示せたことが、本取り組みの意義だと感じています。

また「Kawasaki Arena-City Project」としては、これまで川崎駅近隣での社会実験を実施するなど、活動がまちにも展開されており、現在Kawasaki Sparkのレガシーは同じく弊社で設計を行った施設「カワサキ文化公園(2025年9月運用開始)」へと引き継がれています。ぜひ足を運んでみてください!

https://kawasaki-arena-city.spark.dena.com
https://www.ondesign.co.jp/works/article.html?v=aqwz7ey58

【空間デザイン】
全体計画・監理:株式会社オンデザインパートナーズ
プロデュース:bonvoyage株式会社
施工:長栄興業株式会社(外構)、DDDinc(一部内装)
アートディレクション:DDDART

【運営】
運営事業者:株式会社ディー・エヌ・エー
「TRY! DAY」主催:株式会社ディー・エヌ・エー・京浜急行電鉄株式会社
企画運営協力:株式会社オンデザインパートナーズ

パブリックくんより

大規模な開発、かつ長期間仮囲いで覆われると、一定期間その場所はまちにとっても閉じた場所になってしまうし、中の様子は見えてこないので、不安感が募ることは全国各地で起きている状況だと思います。その状況をじわじわ変えていくために暫定活用という形で予定地を開き、公園としてたくさんの人と共に練習していくというプロセスを作り出したことで多くの人の共感と、この場所へのオーナーシップを育む取り組みにもなったんだろうなと想像し、風景を想像してワクワクしました!この取り組みは終了しているとのことですが、このプログラムで育んだ空気感や期待感が再開発にどうつながるのか、今後の展開が楽しみですね〜!

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