公共R不動産のプロジェクトスタディ
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働く人の公園活用 キャンピングオフィス!
@臨港パーク

横浜市「都心臨海部の魅力向上につながる横浜市公共空間活用モデル事業」の一環で実施された、NPO法人ハマのトウダイとスノーピークビジネスソリューション株式会社のみなさんによる「キャンピングオフィス@臨港パーク」を取材しました。

働く人の公園活用 キャンピングオフィス
働く人の公園活用 キャンピングオフィス

横浜市では、公民連携での公共空間の有効活用を目指し、平成29年度より「都心臨海部の魅力向上につながる横浜市公共空間活用モデル事業」に取り組み始めています。公園、道路、港湾地区など40数箇所の公共空間の活用を希望する事業者を公募し、今後の横浜市での新しい民間連携のモデルとなる事業実現を目指すもの。(詳細はこちら )

 公共R不動産では、その取り組みの裏側についてコラムで取り上げさせていただいていますが、今回は3月22日に、この事業の一環で実施された、NPO法人ハマのトウダイとスノーピークビジネスソリューション株式会社のみなさんによる「キャンピングオフィス@臨港パーク」を取材しました。

左 背後のビル群から公園の会議室に向かう…という風景が日常化したら素敵です 右 夜の方がさらに議論が盛り上がりそうです

ターゲットは臨海部のワーカー。公園での新しい働き方とは?

NPO法人ハマのトウダイとスノーピークビジネスソリューションズ株式会社が提案するのは、「キャンピングオフィス」という自然の中でのクリエイティブな働き方。この日は、臨海部で働くみなさんが集まって公園で会議を行い、その後、バーベキューや焚き火を楽しみました。

イベント後、NPO法人ハマのトウダイの岡部祥司さんにお話を伺いました。

—実際にイベントを開催してみていかがでしたか?

ランチはバーベキュー!?
ランチはバーベキュー!?

「とてもいいイベントになったと思います。ご参加いただいた企業のみなさんからも好評でした。外で働くことが気分転換になった、自由な発想が生まれやすかった、プラス思考になった、などの声がありました。また、普段の会社での上下関係が一旦フラットになり、会議室だと言いにくいことも気軽に言えるなどの感想もありました。公園でキャンプ感覚で仕事をすることは、新しい事業・企画を考えるブレストや、チームビルディングの場に向いていると感じています。

大企業の役職が上のみなさんだと、はじめはよく理解できないと言われる場合が多いのですが、実際にやってみると一番テンションが上がるのはそういった方々だったりします(笑)。」

—民間事業者による、様々な公共空間活用事例が増えるためにはどのようなことが必要だと思いますか?

「民間事業者がリスクを背負う意識を持つこと、行政側ときちんとコミュニケーションをとることが大事だと思います。

たとえば公園で焚き火を行うことはタブーと思われがちですが、国の定める公園法上、禁止されているわけではありません。ただ、行政側からすると、周辺住民への影響、事故の可能性などを鑑み、やはり条例で禁止せねばならない(※)。

民間事業者に必要なことは、やりたいことをやるために、いかにリスクを背負えるかを考えること。また、条例の解釈の仕方について、行政としっかり議論すること。行政側ときちんとコミュニケーションをとることもとても重要ですね。」

(※焚き火は「横浜市生活環境の保全に関する条例」で屋外燃焼行為として原則禁止。)

左 スーツ姿でテントがややシュール 右 特別な許可を得て、公園で焚き火も実施

—これからやってみたいことはありますか?

「”公園”と“働く“をもっとつなげる活動をつくりたいです。 住民や観光客を対象に、休日にマルシェなどのイベントを行う公園は増えていますが、平日にもワーカーを対象とした素敵なイベントを増やしていきたいですね。
まさにマルシェのような楽しい感覚で、公園での企業説明会や交流会を増やせていけたら楽しいと思うんです。

企業ごとにテントを設けて、会場の真ん中には焚き火があっておいしいごはんが食べられたり。そういった雰囲気でのコミュニケーションは、きっと企業側にも参加側にも新しい発見や出会いがあるはずです。」

横浜らしい環境を生かした活用に、横浜市も期待!

本事業で事務局を務める横浜市政策局共創推進課の担当職員にも実際に参加された感想を伺いました。
 「アウトドアでの会議はリラックス効果があり、意見が活発になる、と言われますが、通常の都会のビル群の中では交通騒音等もあり、なかなかそこまでいかないと思います。その点、臨港パークは、みなとみらいのオフィス街から近いにもかかわら ず、都会の喧騒から遮断され、海風を感じる開放的で理想的な空間と思います。 “働き方改革”が今年 4 月から施行になりますが、様々な角度からオフィス環境 の見直しをする機会ではないかと思います。

左 夕方の会議もあたたかなライトでほっこり 右 かんぱーい!のポーズかと思いました、が白熱する議論の様子でした

また、2020 年春に新たな MICE 施設「パシフィコ横浜ノース」の開業が控えており、アフターコンベンションのラインナップの充実が求められています。当該事業がアフターコンベンションの一つとして取り入れられることで、国内外か らの来訪者に、港町ヨコハマの魅力を伝える一助になり得ると期待しています。今回も、通りがかる人が興味深げに見入ったり、主催者へ質問したりしている姿に、手ごたえを感じました。 」

なるほど、今回の実験的な活用によって、今後整備される公共施設と民間事業の連携が視野に入ったというのは素晴らしい成果ですね!また、住民や観光客を対象にしたものではなく、ワーカーを対象にした点で、これからの横浜にとって新たなモデルとなりうる可能性を感じます。民間事業者と行政が議論・協力し合いながら新しいチャレンジを生み出す横浜市の取り組みに、今後も注目していきたいと思います!

PROFILE

阿久津 遊

1988年宮城県生まれ。ワークショップ等のこども向けプログラムの企画運営に携わり、公共空間活用に関心を持つ。2018年から公共R不動産にライターとして参加。

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