公共R不動産がピックアップする物件
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旧川越織物市場でサウンディング実施!
旧川越織物市場、旧栄養食配給所

整備後のエントランス。文化財建造物は創建当時に忠実に復原される予定。

埼玉が誇る小江戸、川越市。時の鐘、喜多院、菓子屋横丁、さつま芋、クラフトビール…みどころいっぱいの川越に、明治から残る文化財「旧川越織物市場」。現在調査のためにいったん解体され、2021年3月竣工を目指して復原、その後はアート・クラフトやまちづくりなどのインキュベーション施設に生まれ変わる予定です。今回ご紹介するサウンディング調査は、その新施設のマネージャーの業務内容について。そこ聞いちゃう?と思わなくもない募集ですが、それには深い理由がありまして。まずは織物市場の歴史を紐解きます。

市民が残した織物市場

幕末から明治時代初期、川越は国内屈指の織物の集散地として流行をリードしていました。しかし、明治時代中ごろには流通経路の不備から損益を被ることが大きくなるという状況に。そこで1910年に、起死回生をかけて建てられたのが川越織物市場です。
大正時代後期に市場として使用されなくなった後も、長らく住居として残されてきましたが、2001年、取り壊して、マンションを建設する計画が浮上。貴重な産業遺構を残すべき、という市民の署名活動などの熱心な保全運動により、保存が決定。2005年には、隣接する、栄養食配給所とともに、川越市の文化財として指定されました。

保存が決まった後も、気を抜かないのが川越市民のすごいところ。不定期の施設開放や、マーケットの実施、お祭りの会場とするなど、積極的に織物市場を活用してきました。織物市場の広場で毎年行われる「手づくり食市+めきき市」、「アートクラフト手づくり市」では、地元飲食店、セレクトショップ、作家などが集い、すっかり川越の風物詩として定着。織物市場は、築後100年以上たった今も、地元の方から大切にされているのです。

歴史ある織物市場を、アート・クラフトやまちづくりなどのインキュベーション施設に

そんな織物市場を復原するにあたり、川越市は、再生後の建物をアーティストやクリエイターが創業支援を受けながら活動を行う、インキュベーション施設とすることを決定しました。若手のアーティストやクリエイターが周辺地域と良好な関係を育み、やがて巣立った後も周辺の地域の空き店舗等に入居し根付いていく。かつて物資の集散地だった川越を、オリジナルのモノや情報の集散地とする取り組みです。

本施設の整備だけでなく、前面道路である蓮馨寺門前通り(立門前線)の整備も併せて実施。また、周辺の空き店舗等へ入居者を誘導する仕組みを作ることにより、面への展開を進め、エリア価値の向上を図ります。

魅力的な建物

広場を挟んで向かい合う2棟の2階建て長屋には、奥行きのある土庇や格子戸と板戸を組み合わせた二重の揚げ戸、連続する間口3間の「見世」など、当時の市場建築の特徴がよく表れています。「見世」はアトリエとして使用することになりますが、2棟の建物によってつくられる広場空間も特徴的で、これまでも多くの方にイベントで活用されてきました。
また、敷地内に隣接し、同時期に市の文化財に指定された旧栄養食配給所は、1934年に設立された工場労働者の栄養改善を目的とした共同炊事場施設。レンガ造りのカマド7基が残されており、当時の姿をそのまま残す遺構としては全国的にも唯一のものです。
市の有形文化財であるため、施設整備は復原工事がメイン。明治時代そのままの建物の中で、制作活動ができるとは、なんて贅沢なんでしょう!

マネージャーが肝

今回サウンディングの対象となるのは、「マネージャーの具体的な業務内容・役割など」。建物用途のサウンディングでも、マネージャー職の公募(求人)でもなく、業務内容をサウンディングするに至ったのには、理由があります。というのも、インキュベーション施設をつくる、とはいえ、言うは易し、行うは難し。入居者を集め、育て、羽ばたかせるために、重要になるのは、入居者の創業やプロジェクトを支援する、マネージャーの役割ではないでしょうか?

たとえば新施設の運営を指定管理者制度を利用して行う場合、施設の維持管理面を重視した事業者が指定管理者となり、マネージャー職の採用も任されることが多いのですが、果たしてそれで適切な人材に出会えるのか…ファシリテーション能力や人脈のある個人や企業が、その力を十分に発揮するために、どんな条件が望ましいのか。施設整備着手前の今だからこそ、最もふさわしい方法を、思う存分検討する余地があるわけです。

募集対象は、新施設の運営に携わりたいと考えている個人または法人。2019年1月4日(月)まで質問受付、1月11日(金)参加締切です。この機会に、あなたのアイディアと志をぜひお寄せ下さい。

ステータス:募集終了
所在地:川越市松江町2丁目11番地10、12番地4
交通:西武新宿線「本川越」駅 徒歩約10分 JR川越線・東武東上線「川越」駅 徒歩20分
面積:敷地面積:1,475.60㎡ 延床面積(合計):1042.39㎡
期間:募集期間2018.12.17~2019.1.11
募集要項:川越市HP
問い合わせ先:都市計画部都市景観課歴史都市整備担当

PROFILE

松田 東子

株式会社スピーク/公共R不動産。1986年生まれ。一橋大学社会学部卒業後、大成建設にてPFI関連業務に従事。2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。スピークでは「トライアルステイ」による移住促進プロジェクトに携わる。2017年から2020年までロンドン在住。2021年University College London MSc Urban Studies 修了。

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