公共空間のトリセツ
公共空間のトリセツ

2-1広場のトリセツ:空き地に一時的に店を出すには

連載コラム「公共空間のトリセツ」、第二弾は「広場のトリセツ」です。「公園のトリセツ」では公園でカフェを営業するノウハウをご紹介しましたが、今回は自治体が管理する空間から幅を広げ、空き地でお店を一時的に開く方法を考えます。第一回のキーワードはこちらです。

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【事例から学ぶ】COMMUNE246

南青山の中心に突如あらわれる、たくさんのキッチンカーや屋台。COMMUNE246は、個性溢れるカフェやシェアオフィスが集まった屋外のスペースです。好きなお店で食事やドリンクを選んで、青空の下で楽しむことができる、とっても魅力的な場所ですが、12月28日に惜しまれつつも一度その幕を閉じます。このスペースで使われている、キッチンカーにフォーカスしながら、車両を使って一時的にお店を開く可能性を探ります。

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つい足を止めてしまう、お祭りのような空間

【場の成り立ち】

松田:青山通り沿いにあるCOMMUNE246、雰囲気も素敵でずっと気になっていたんだけど、いつからあるの?

加藤:2012年に、都市再生機構(以下、UR)がまちづくり用地の暫定利用のために事業者を公募し、2012年7月〜2014年5月までの2年限定で246COMMONができたのが始まりです。246COMMON6終了後、2014年7月に再びURが公募を開始し、株式会社コミューンが事業運営会社となりました。そして、2014年11月から同じく2年限定でCOMMUNE246がスタートしました。

松田:あの場所は法人の土地なのね。おしゃれなキッチンカーが沢山あるけど、どうしてキッチンカーなんだろう?

加藤:2年という期間限定の利用には、キッチンカーが向いているからですね。

松田:というと?

加藤:そもそも、建築物を建てるには建築確認申請や基礎工事が必要です。申請には手間も時間もかかるし、壊すことが決まっているのに基礎工事にコストをかけたくないですよね?しかも、基礎工事をした建物には固定資産税も掛かります。。。

松田:建築確認申請や基礎工事をしないで済む方法はないのかしら?

加藤:そこが今回のポイント。建築物に該当しない「非建築物」であれば、建築確認申請も基礎工事も必要ないし、使う期間に制限もありません。

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非建築物に該当するキッチンカー

松田:非建築物!?また難しいワードが。。。

加藤:そんなに難しくありませんよ。建築基準法第二条第一号では、下記に該当するものを「建築物」と定めています。つまり「非建築物」とは、「建築物に該当しないもの」すべてのことを指します。キッチンカーは車両なので建築物に該当しないので、建築確認申請も基礎工事も必要ないんです!

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建築基準法

松田:なるほど。一時的に利用したい今回のケースにぴったりだね!

加藤:ただし!キッチンカーも使い方に注意しないと建築物とみなされてしまうことがあるんです。

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出典:建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例2013年度版
一般財団法人 建築行政情報センター

加藤:つまり、
①移動を妨げるものがない
②インフラ設備を工具なしで取り外せる
③適法に公道を移動できる状態にある
この3点に注意する必要があります。例えばキッチンカーでも、タイヤがパンクしていたり、後から付けた階段などが地面に固定されていたりして、すぐに移動することができないと建築物とみなされてしまいます。

松田:じゃあ、逆にそこ注意すれば、キッチンカーに限らずトレーラーハウスや、トレーラーに載せたコンテナも一時利用に使えるってこと?

加藤:お、分かってきましたね。上記の条件を満たせば一時利用の可能性があります。一時利用に使える非建築物をまとめるとこんな感じ。

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作図:公共R不動産作成
多摩川河川敷に集合したキッチンカー

松田:どれも建物を建てるより少ない投資で始めらるかも!

加藤:それが魅力です。残念ながらCOMMUNE246は一度終了してしまいますが、他の場所やイベントでも、キッチンカーが有効に使われています。例えばこの夏二子玉川で行われたTOKYO ART FLOW 00。多摩川の河川敷にキッチンカーが集合しました。

加藤:下の写真のキッチンカーでもガスボンベがすぐ取り外せるようになっていました。

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 ガスボンベは容易に着脱可能・車にはナンバープレートが取り付けられている

 

【まとめ】

空き地で一時的にお店を出す場合、キッチンカーなどの車両を使うことで建築確認申請や基礎工事をせず、時間もコストも少なくする工夫ができます。しかし、そのためには

①移動を妨げるものがない
②インフラ設備を工具なしで取り外せる
③適法に公道を移動できる状態にある

という3つの条件をクリアする必要があります。

PROFILE

加藤 優一

Open A/公共R不動産/(一社)最上のくらし舎代表理事。1987年生まれ。東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻博士課程単位取得退学。2011年より東日本大震災の復興事業を支援しながら自治体組織と計画プロセスの研究を行う。2015年より現職にて、建築の企画設計、まちづくり、公共空間の活用、編集・執筆等に携わる。銭湯ぐらし主宰。編著書に『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』。

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