公共R不動産のプロジェクトスタディ
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住みたくなっちゃうハローワーク!?
Bud Clark Commons

職業紹介スペースもなんだか明るい雰囲気。デジタル化もすすんでる。

まず、この素敵な建物が公共施設ということに驚き

まあ、それはいいとしましょう。日本にだってそこそこデザインに凝った公共施設はありますし。
しかし、中身は絶対真似できない。この建物、なんとホームレスの複合施設(シェルター/住居/職業紹介等)なのです!

しかも、環境配慮建築のアワードもの(※)で、同規模の建物の平均エネルギーコストの50%OFFを達成してるそうな。浮いたコストはプログラム充実のために使われ、提供する食事に換算して、年間32,850食分が賄われているそうです。

 家はツールでしかない

これまたさすがポートランドだと思うのが、施設のコンセプト。単に「住まい」を与えるのではなく、あくまで「個人がホームレスに陥ってしまう要素を取り除き、人間の尊厳を持った生活をできるようにする」ことが目的とのこと。

定住場所がないと職に就けない。職がないと家に住めない。まずは、このニワトリと卵の関係を解消するツールとして、住まいを提供する。その上で、その他のホームレスに陥ってしまう色々なトラップを取り除いていこうと。

 人間へのまなざし

例えば「清潔さ」の確保。これを欠いては、仕事を得ることは難しい。しかし、厳しい生活環境に置かれている路上生活者にとって、これは解消するのが極めて困難な問題でもある。なので、この施設には共用のランドリールームとシャワールームが配備されていて、住人じゃなくとも、登録制で使えるようになっている。

職を得るには健康も大切。だから簡易的なジムもあるし、夜間の仕事をするの人のために、日中でもたっぷり睡眠がとれるよう、地下の部屋も用意してあるという気遣い。精神衛生面のケア用に、カウンセリングルームや芸術に触れられるアートルームも。

とにかく、人間への優しいまなざしがそこかしこに感じられるんです。希望を感じさせるグリーンが基調のポップなデザインも印象的で、「公共施設=無機質」という固定観念を軽やかにぶち破ってくれる、妬ましいほど素晴らしい施設。なので、新設だけど紹介しちゃいました。

※環境に配慮しているビルを認証する世界基準であるLEED認証の最高レベル・プレミアムを取得。

PROFILE

菊地 マリエ

公共R不動産/アフタヌーン・ソサイエティ。1984年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。日本政策投資銀行勤務、在勤中に東洋大学経済学部公民連携専攻修士課程修了。日本で最も美しい村連合特派員として日本一周後、2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。現在はフリーランスで多くの公民連携プロジェクトに携わる。共著書に『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』。

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公共R不動産の本のご紹介

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