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三次町エリアリノベーションプロジェクト

[開催レポート・前編] 三次町エリアリノベーション2017 vol.1 DIYワークショップ

2016年度初めに出版された、公共R不動産ディレクター馬場正尊の著書『エリアリノベーション』。魅力的な変化を遂げている街を「工作的都市」と呼び、計画に沿ってできているのではなく、むしろ既存の空き空間をうまく活用して尖ったコンテンツが生み出され、それが波紋のように伝播し変化していくメカニズムを、事例をもとに分析した本です。広島県三次市から、そんな変化を自分の街でも起こしたいとのご相談を受け、公共R不動産では2016年度から「三次町エリアリノベーション」プロジェクトのお手伝いをしています。2017度は2回のワークショップを開催しました。いったい今年はどんな変化が起こったのでしょうか?その様子をレポートします。

※ 2016年度のワークショップの様子はこちらをご覧ください。

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いよいよ実践フェーズに

2017年度、第1回目のワークショップは2018年1月20〜21日の週末2日間で行われました。今回は「〜まちのカフェをみんなでつくろう〜DIYワークショップ」。昨年度のエリアリノベーションワークショップで、偶然にも元クラスメイトだった原田さんと藤田さんのお2人が再会。ワークする中で、実はお2人ともカフェをやってみたいという夢があったことが判明し、まちに再度クラスメイトが集まれるような居場所をつくろうと「カフェクラスメイト」を提案してくださいました。

ベストプレゼン

その後、すごいスピードで藤田さんたちはその提案を実現し「カフェ クラスメイト」がオープンすることに。竣工2ヶ月前のそのカフェを題材として提供していただき、DIYワークショップを開催することとなりました。

 

 

DIY ワークショップの目的

今回エリアリノベーションプロジェクトで、DIYワークショップ(Do It Yourselfの略。実際自分たちで手を動かして改修工事をしてみること)を開催した意図は2つ。ひとつ目は、DIYをする楽しさを知ってほしいと思ったから。2つ目は、今回のワークショップを通じ三次市で「エリアリノベーションではDIYで空き店舗改修するものだ」というパターンがどんどんまちにひろがっていくモデルケースとなってほしいから、ということがあります。

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DIYで改修して空き物件を使うことでコストを抑えることができますし、何より愛着の湧く空間になります。リノベーションの良さは初期投資が低く抑えられ、その分投資回収期間も短く済むこと。DIYで、自分たちのほしいコンテンツをみんなで力を合わせてどんどんつくっていく…なんて未来が描けたら楽しいなと思ったのです。

 

講師には、常に地域の歴史的・空間的資源や施主さんのパーソナリティを最大限に活かした愛あるリノベーションプランを提案してくださるコモン建築事務所の高藤宏夫さんと、旅するリノベーション集団パーリー建築の宮原さんのお2人を鳥取からお迎えしました。

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1日目:レクチャー&安全講習

10時にふれあい会館に集合。今回の参加者は全部で16名。9割方女性、というのに驚き。すでにつなぎ着用で集合してくださった方もいらっしゃり気合い満々です!

まずは今回のワークショップのガイダンスに続き、鳥取での高藤さんの取り組みについてのレクチャーをしていただきました。高藤さんは、ご自身の会社の他に、鳥取の仲間たちと家守会社というという、設計・不動産・事業計画の物件プロデュース会社も主宰されています。その実践からまちに楽しい居場所をつくりだす工夫をいろいろお聞きすることができました。中でも、空き家を使い、近所の方々もお招きして一晩限定のバー営業をする「空き家BAR」はぜひ三次でもやってみたいねと、盛り上がりました。

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自己紹介をしつつランチタイム。今回参加してくださった方の大半は三次市在住の方でしたが、自己紹介をお聞きする中で、参加動機として「空き家を入手してDIYしながら住んでいるので、プロに教わりたい」というたくましい女性の声が聞かれたのが多かったです。三次の隠れたDIYニーズの高さに、可能性を感じます。

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午後からいざ現場へ。まずは高藤先生による安全講習。ちょっと危険な丸ノコの扱いを中心に、怪我のないよう安全な道具の使い方を学びます。

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この建物のリノベーションを担当してくださった設計士の原井さんも、実は昨年度、藤田さんと同じチームでエリアリノベーション講座に参加してくださっていたチームメイト。素晴らしい連携です。

 

その後、①天井壁塗装班、②小上がり班、③本棚制作班、④オブジェ制作班の4班に分かれて作業開始。
天井壁塗装班は養生テープをひたすらはりめぐらすところから開始。

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小上がり班はひたすらインパクトドライバーで壁面に板を打ち付ける作業。打ち付けている材は、もともとこの部屋の床板として使われていたものを再利用しています。

 

カフェオーナーとなる藤田さんが、今回の空間作りの中で、こだわったポイントが、この本棚。三次市には「ひぐま山」というこんもりとしたかわいいフォルムの山があり、妖怪伝説があるなどシンボリックな存在となっています。このカフェでも、お店のシンボルとして、そのひぐま山の形の本棚を真ん中にドーンとおきたいとの意向でした。

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この山シェイプの本棚の作業がなかなか難しく。棚板を徐々に短く切り、仕切り板をランダムにつけていきます。それぞれの板の採寸の方法も学び、測っては切るという地道な作業が続きました。(下記写真左手の山がひぐま山)

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オブジェチームは銅板で、ひぐま山形のオブジェづくり。実は、カフェオーナーの藤田さんの本業は板金屋さん。藤田さんはご趣味でも銅板小物づくりをされており、今回は銅板の端切れを様々な色に腐食し、パッチワークでひぐま山をつくりました。

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夕方で作業を終え、懇親会へ。夜はパーリー建築宮原さんのプレゼンテーションを聞きながらお食事。昨年度のエリアリノベーション参加者の方が割烹料理のお店を開いていらっしゃり、2件目はそこに流れてご挨拶しました。エリアリノベーションに参加されたみなさんが、継続的につながっているのも財産。

 

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2日目:作業、作業、ピクニック、作業…、

朝9時現地集合で、ラジオ体操で体を温めてから、作業の持ち場をローテーションして作業続行。

ランチタイムは、カフェの裏手にある土手にお弁当を持って行きピクニックランチ。藤田さんが、差し入れにと大きなお鍋いっぱいに卵スープを作ってくださいました。寒い日にスープが沁みます。

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参加者のみなさん、さすがDIY実践者が多いだけあり、作業中の質問も具体的かつ積極的。さすが現場で経験を積んでいるプロ、講師の高藤さんの回答も非常に的確で、参加者の方々も勉強になった模様です。

現場にはまちの大工さんや施工業者さんという地元の大先輩のプロたちも加わってくださり、「素人に教えたことがないから、なかなか伝え方が難しい」など、ちょっと恥ずかしそうに、しかし丁寧にご指導くださいました。きっと、今後三次市にエリアリノベーションの動きが広がっていく中、強力な助っ人としてお手伝いくださるのではないでしょうか!

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16時まで作業を続け、最後は記念撮影。作業が終了すると、市役所の方と藤田さんとお友達が、甘くて温かいぜんざいをふるまってくださいました。ああ、一気に疲れが吹き飛びます!

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みんなで感想をシェアして終了。藤田さんから重大発表で、なんと、今回のみなさんの活躍ぶりをご覧になって、このカフェを拠点として三次DIY部を立ち上げてはどうか、とのこと!確かに、まちの仲間たちと工具などシェアできたり、大きな作業場をつかえたら、うれしいですよね。カフェクラスメイトのオープンを機に、三次市のDIY熱が上昇するかもしれません。

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カフェクラスメイトは3月20日にグランドオープン。お近くのみなさんは、ぜひお立ち寄りください!

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第2回目のワークショップの模様は後編をご覧ください。

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PROFILE

菊地 マリエ

公共R不動産/アフタヌーン・ソサイエティ。1984年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。日本政策投資銀行勤務、在勤中に東洋大学経済学部公民連携専攻修士課程修了。日本で最も美しい村連合特派員として日本一周後、2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。現在はフリーランスで多くの公民連携プロジェクトに携わる。共著書に『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』。

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