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三次町エリアリノベーションプロジェクト

[開催レポート・前編] 三次町エリアリノベーション2016

2016年度初めに出版された、公共R不動産ディレクター馬場正尊の著書『エリアリノベーション』。今、実際に魅力的な変化を遂げている街を「工作的都市」と呼び、計画に沿ってできているのではなく、むしろ既存の空き物件をうまく活用して尖ったコンテンツが生み出され、それが波紋のように伝播して変化していくメカニズムを、事例をもとに分析した本です。広島県三次市から、そんな変化を自分の街でも起こしたいとご相談を受け、公共R不動産では「三次町エリアリノベーション」プロジェクトのお手伝いをすることになりました。全2回4日間の実践的ワークショップ プログラムの様子を2回に分けてレポートします。

 

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ハード整備はばっちり、でも…

広島県三次市は山陰と山陽のちょうど真ん中くらい、島根県との県境近くに位置する街です。馬洗川、西城川、江の川の3本の合流し日本海側に流れていく地点であることから「三次」という名前がついたんだとか。三次市の中心部である三次町の本通り商店街は、江戸時代には瀬戸内と石見銀山をつなぐ銀山街道の要衝として栄えた宿場町で、現在でも歴史香る卯建(うだつ)の街並みが残ります。

そんな素敵な街並みの三次町ですが、これまで街並みを大事に大事に整備し、街道の石畳装や電線地中化などを進めてきたものの、なかなか人の賑わいは戻らず、空き店舗や駐車場が増加。町はピカピカなのに、人が歩いていないという状況に陥ってしまいました。その状況を改善するため、既存のストックを活用し、もっと町をおもしろく使う人を増やそうと始まったのが「三次町エリアリノベーション」プロジェクトです。

きりこ

所在地(出典:三次市HP

 

 

プロジェクト概要

第1回でポテンシャルの発掘を行い、第2回で事業アイディアの提案をつくります。
第1回は9月3日(土)、4日(日)の週末、三次町に眠るポテンシャルを発掘するため、4チーム28名の方々にご参加いただき、「地域資源の発掘」と「空き家発掘」に分かれ、町歩きをしました。

ポンチ絵

 

【WS1】1日目 ー まず街の潜在力を知る!

まず『エリアリノベーション〜次の概念』の著者であり、公共R不動産ディレクターの馬場正尊の講演会から始まりました。書籍の中で紹介している尾道市は三次市からも比較的近く、倉庫をリノベーションし民間が運営をしているU2もあるなど、身近な事例を紹介。ワークショップ参加者を中心に、地域の方や島根からの参加もあり、みなさん熱心にノートをとっていました。

馬場さんレク夕方からは地域資源を知る実習として(!?)三次市の伝統文化である鵜飼を体験。ゆらゆらと松明や篝火の明かりが水面に映り、船を自在に操る鵜匠達の姿はなんだかタイムスリップしてしまったようで、地元の参加者の方にとっても貴重な体験となったようです。なんともいえないあの幽玄な感じ…普通に観光スポットとして超おすすめです。
うかい

 

【WS1】2日目 ー フィールドワークへ出発!

2日目は「空き家発掘チーム」と「地域資源発掘チーム」それぞれ2チームずつに分かれ、さっそく街歩きへ。空き家チームは魅力的な空き家(と思われる物件)を発掘して地図にプロットしていきます。いつもの見慣れた街を、別の視点で見直しながら歩き、そのチャームポイントは何か?感想を共有しながら歩き、最後にみんなで共有します。

空き家発掘中「地域資源発掘チーム」は、三次市の地域資源と思われる方々にインタビューに出かけました。鵜飼の鵜匠さん、三次ワイナリーの総支配人さん、地域貢献活動に熱心なお寺の副住職さん、郷土料理である「ワニ」(サメのこと。中山間地域の三次市まで運んできても腐りにくい食材であるため昔から貴重なタンパク源として親しまれてきたそう)料理を振る舞うお店の店長さんなどと、手分けして直接お話を伺いました。

 

発掘した空き家・地域資源を発表!

2日目夕方、それぞれのチームから発掘した三次の資源を報告してもらいました。当たり前の風景や物事に改めて目を向けるよいきっかけになったようです。

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【左】空き家Aチームは卯建、木造3階建て物件など特徴的な物件を発掘。さらにワイン酒場やカフェがほしいと勝手に妄想が始まっていました。

【右】空き家Bチームは職人の町であった頃の記憶を発掘し、「職人通り」とネーミング。

こいする町

地域資源Aチームは「もう一度恋する町三次」と名付け三次の魅力を堪能するモデルルートを考えてくれました。三次市の伝統文化ある鵜飼は夜、素晴らしい景色が楽しめる霧の海(雲海)は朝なので、宿泊してゆっくり楽しめるよう、カフェやワイナリーに協力してもらい、朝から楽しめるようなルートづくりを提案。

 

ワニの図

地域資源発掘Bチームからは2つのプロジェクト提案がありました。一つはワニ(サメ)を食する文化が地域から消えつつあることを知って、ワニ協会を立ち上げワニ料理のレシピを共有したり、画像を作成したりしてもっと身近にワニを感じられるようにするという提案。もう一つは、副住職さんが取り組んでいる344プロジェクト(市民が自分のお気に入りのスポットの写真をウェブサイトで共有するもの)にヒントを得て、空き家の増えている本通りに、その写真を展示し街開きイベントを開催するという提案です。

公開プレゼン

まだ具体的な事業のアイディアを提案する段階ではなかったものの、どのチームも今にでも動き出しそうなくらいの熱気がある報告会となりました。

さて、これらがどんな提案につながるのでしょうか…?

第2回は事業アイディア提案の模様をお届けします。

 

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PROFILE

菊地 マリエ

公共R不動産/アフタヌーン・ソサイエティ。1984年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。日本政策投資銀行勤務、在勤中に東洋大学経済学部公民連携専攻修士課程修了。日本で最も美しい村連合特派員として日本一周後、2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。現在はフリーランスで多くの公民連携プロジェクトに携わる。共著書に『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』。

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