公共R不動産の頭の中
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【開催レポート】前橋市アーバンデザインから紐解く、エリアの価値を高めるための道路活用のあり方とは?

道路空間がより豊かなものになっていくための課題や解決アイデアを国・行政・民間の立場からそれぞれ持ち寄り、共に解決への道筋を考えていく「道路空間活用勉強会」によるイベント「ウォーカブルなまちづくりの本質に迫る!vol.5」のレポートをお届けします。

2019年に制定された「ウォーカブル推進事業」、そして2020年に制定された歩行者利便増進道路(通称:ほこみち)といった制度が立ち上がり、道路そのもののあり方を「通過するだけでなく、歩きたくなる・居たくなるみち」という方針で問い直し、新たな活用のあり方を模索する動きが全国各地で進んでいます。

前回のテーマ「道路活用にそびえ立つ高い壁、どう乗り越える?」を経て今回は「エリアの価値を高めるための道路の役割」をテーマに実施しました。

全国各地で様々な道路活用のプロジェクトが進んでいますが、道路活用の「収益性」と「持続性」を担保しつつも、商業的・均質的な空間ではなくその地域ならではの特色や資源を生かしながら、まちの人の居場所となる「公共性」を意識した空間をどのように作り上げていけるのか。難しいテーマではありますが、今後各地で道路活用に伴う公民連携の動きが増えていくことが予想されるので、改めて立ち止まって考えました。

ゲストには、群馬県前橋市のアーバンデザインをベースに様々なまちづくり・公共空間活用の動きを進める前橋市市街地整備課の田中隆太さん、そして民間サイドでこの動きを一緒に進めている前橋デザインコミッション(MDC)の日下田伸さんをお迎えします。前橋市アーバンデザインをベースにした官民連携プロジェクトの概要、そして道路活用の背景や意義、そして今後の展開についても伺いました。

事例①前橋市における官民連携アクションとは?

まずは、前橋市で広がる官民連携アクションの概要から、田中さんにお話しいただきました。

田中隆太さん(前橋市 市街地整備課 CCRC・計画推進室 主任)

人口34万人の中核市である前橋市は、豊かな自然や子育てしやすい環境など、様々な地域資源のある都市です。そんな資源を活かした官民連携でのまちづくりを推進するため、2015年に立ち上がったのが「前橋ビジョン策定プロジェクト」。地元の起業家と一緒に「民間の創意工夫が発揮される街」を目指して作成されました。

「前橋ビジョン策定が未来への転換点となり、官民それぞれから様々な施策やアクションが打ち出されるようになりました。前橋市において”新たな価値の創造”がムーブメントになるきっかけになったと思います」と田中さんは話します。

2019年9月、そんな動きをベースにさらに策定されたのが前橋市アーバンデザイン」。2015年からの実践をもとにまちの将来像を可視化し、これまで以上に民間主体のまちづくりを進める土台となる計画です。

田中「民間のみなさんが自分ごととしてまちづくりに参加したくなるビジョンを目指して、前橋市アーバンデザインを策定しました。今までのまちづくりは成長社会をベースに考えられていたハード整備中心の社会です。行政から”与えられて使う”のが市民や民間団体という構造でしたが、これからの人口減少社会に向けて大切なことは既存のハードのなかで何をするか考えること。そういったことを、市民・民間のみなさんと議論しながら動くことが必要です。一度決めた計画を数十年スパンで実行するのではなく、共通の理念に基づいて小さなアクションと小さなサイクルを回していくやり方を目指しています」

モデルプロジェクト①けやき並木通り

前橋市アーバンデザインをきっかけに生まれた様々なモデルプロジェクトのうち、2つの取り組みをご紹介。まずは前橋駅前のけやき並木通りの道路活用の事例から。

田中「前橋駅前のけやき並木通りは片側3斜線、広い歩道が特徴的で、その巨大な骨格をどう使いこなすかが課題のエリアでもありました。まず、”けやき並木フェス”というイベントが2018年から始まりました。初めは歩道だけの活用でしたが、2回目のイベントでは、車道も含めて活用範囲を拡大しました。最近はコロナによってなかなか大規模なイベントは実施できていませんが、道路占用許可特例制度を使って”けやき並木通りオープンカフェ”という取り組みでキッチンカーを導入したり、いろいろなチャレンジをしています」

モデルプロジェクト②広瀬川河畔整備

続いて、前橋市民の憩いの場でもある広瀬川河畔の再整備。ただ「見る」だけの河畔ではなく、遊んで楽しむ、積極的な利活用を目指していることがポイントです。

田中「行政主体で水辺活用を活性化する”ミズベリング前橋”の取り組みと、民間主体のキッチンカーイベント”広瀬川nightテラス”が連携したイベントや、川を使ったアクティビティを楽しむ”街中リバーフェス”、リバーサイドビアテラスなど、様々な社会実験を行いました」

ソフト面だけでなくハード面の再整備も並行して進めているとのこと。前橋を象徴する素材「レンガ」をふんだんに使ったり、滞留性や居心地向上のためのベンチやテーブルを配置したり、萩原朔太郎の詩を刻んだレンガを歩道に使ったり!前橋らしさを活かしたユニークな河畔整備となりそうで、こちらも楽しみです。

前橋版リノベーションまちづくり

前橋市職員が積極的に有休不動産調査と出店希望者を掘り起こしてマッチングにつなげていく「前橋版リノベーションまちづくり」についてもご紹介いただきました。

田中「自分で活用する予定はなく誰かに使ってもらいたい不動産オーナーと、物件を探している出店希望者をつなぐ取り組みを行っています。家守会社やまちづくりファンドも誕生し、様々な動きが生まれています」

前橋版リノベーションまちづくりをきっかけに、シェアオフィス、コーヒー屋さん、ギャラリー、ベーカリー、古材小道具店など、様々な事業が生まれているそう!

若者が主役のストリートファニチャーイベント

このように、官民連携の取り組みが続々生まれている前橋。特に「若者を中心にすごいスピードで展開していること」が特徴的だと田中さんは言います。

田中「前橋には、まちを面白がり自らアクションを起こす若者が増えています。そんな若者にスポットを当てるべく、若者自らが製作したストリートファニチャーをまちなかで展示するイベント「STREET FURNITURE EXIBITION」を行いました。まちなかの人の流れにも変化が生まれたり、広瀬川沿いの飲食店の最高売上が更新されたり、飲食以外のアクティビティが多く生まれたり、たくさんの反響がありました」

若者たちは自主的な参加で、材料費は基本的に自己負担ですが、まちづくり公社の持つパレットを提供したり、行政で紹介パネルを用意するなどのサポートや伴走は行ったそう。参加した若者は全部で20名ほど。

「前橋ビジョン策定プロジェクト」「前橋市アーバンデザイン」から始まった様々な官民連携アクションを振り返り、田中さんは「会いたい人がたくさんいて、歩くたびにわくわくするまちって、それだけで素晴らしい街なのではないかと思います。官民連携でつくった前橋市アーバンデザインを中心に、これからも民間中心のまちづくりを進めていければと思います」と話します。

今後も大注目の前橋市のまちづくり。そんなアクションを支えるのが、2つの都市再生推進法人の存在です。公共施設の管理運営やにぎわい創出を進める「前橋市まちづくり公社」、前橋市アーバンデザインの周知や普及、エリアマネジメントを担う「前橋デザインコミッション」の二つの法人と行政が連携し、新しいまちづくりを進めています。

事例②一般社団法人前橋デザインコミッションとは?

今回二人目のゲストは、前橋デザインコミッション」(MDC)の日下田さん。馬場川通りアーバンデザイン改修プロジェクトを中心に、活動のご紹介をいただきます。

日下田伸さん(都市再生推進法人(一社)前橋デザインコミッション(MDC)企画局長)

MDCとは、「前橋市アーバンデザイン」の推進母体として2019年に立ち上がった民間会費による一般社団法人であり都市再生推進法人の指定を受けています。2020年5月から実働が始まり、前橋市アーバンデザインの共有と市民の自発的なアクションを促すサポートをすることを軸にした民間主体のまちづくり組織です。まちづくりプレイヤーの支援や発掘、育成、各種モデルプロジェクトマネジメントが主な活動内容となっているそう。

全国初、まちづくり分野でのSIB導入「馬場川通りプロジェクト」

MDCの手がける取り組みのひとつが馬場川(ばばっかわ)通りの再整備事業。馬場川通りは前橋の中心部の東西エリアをつなぐ機能を持ち、ここ2,3年で新しくホテルが開業したり、ブルーボトルコーヒーやベーカリーがオープンしたり、にぎわいのあるエリアに進化しています。

馬場川通りのプロジェクトは、都市利便増進協定(地権者+市+都市再生推進法人MDC)を締結することで市有地・公共空間である遊歩道公園を民間事業として整備することを軸にしています。200mの街路での「公共空間の民間整備」としてのハード整備の原資は地元財界の篤志的寄付で確保できていましたが、「まちづかい」の創出やプレイヤーの育成といったアーバンデザインの本質的推進にはまだまだ足りませんでした。そこに、成果連動型民間委託方式「PFS/SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)」導入や多様な仕組みを活用することで、一過性のハード整備にとどまらないまちづくりスキームになっており、SIBでは馬場川通りの通行量を指標にして評価することで、成果を可視化することも狙っているとのこと。

日下田「馬場川プロジェクトは、行政予算の他に、太陽の会という地元企業有志により結成された団体からの寄付を受けています。その上でMDCがプロジェクトマネジメントの役割を持ち、設計や建設会社との調整からビジョンやコンセプトをまちに浸透させる活動までを担っています。一番大切にしているのは、地域が主役であることです。そのためにはまちづくりに主体的に関わるプレイヤーの発掘が欠かせません。いかにまちを使い倒せるか=”まちづかい”の可能性を発見する社会実験を昨年からスタートしています」

地域が主役の社会実験!馬場川パーク

「馬場川パーク」は、馬場川通りを一部車両規制して歩行空間の高質化を検証し、馬場川通り遊歩道公園の設計プランや改修後の地域活動へとつなげていく目的で実施した実験。まちなかに遊具を置いたり、道路でチョークアートを楽しんだり、ライブやマルシェ、様々な企画が実施されました。

馬場川パークのプログラム(提供:MDC 公式noteより)
馬場川通りをキャンパスに!(写真提供:MDC 公式noteより)
「こんな馬場川通りになったらいいな」のメッセージふせんで創るモザイクアート。(写真提供:MDC 公式noteより)

日下田「実施にあたっては、馬場川で『つながりたい』という市民による準備委員会を中心に何度もワークショップをし、対話を重ねました。マルシェや路上のチョークアート、屋外図書館なども地元の参加者のアイデアです。工事が終わった後も、プレイヤーが育つ仕組みがもっとも重要です。プレイヤーを発掘して育成する、コンテンツが地域で生まれる、そんなプロセスをつくりました」

イベント前後ではエッヂAIを使った継続的な動態モニタリングも行ったそう。「普段と比べてイベント当日に交通量が増えるのはもちろん、翌週や翌々週も効果が持続することが分かりました。また、一度馬場川パークに来ていただいた皆さんの多くが”また来たい”と思う意向が高いという調査データも得られました」と日下田さんは振り返ります。

日下田「私たちは、戦略的ファシリテーションと科学的マーケティングによってまちの挑戦者の勝率を上げることで、まち全体の価値を上げていくことを目標にしています。”まちづかい”のプレイヤーを増やすために、市民が自分ごととして関わりたいと思えるきっかけをつくること。社会実験と効果検証を重ねて、どんな課題やメリットがあるのかポイントを洗い出すこと。単なる土木工事に終わらせない取り組みにするためには、プロセスが最も大切だと考えています。馬場川パークでは交通量調査のほかにも、ストリートファニチャーを実験的に置くことで住民のみなさんに直接使ってもらいながらフィードバックをもらいました。様々な論点の落とし所をイベントで見極めていけたらと考えています」

今回のイベントの大きな問いのひとつは「地域ならではの特色や資源を生かしながら、まちの人の居場所となる「公共性」を意識した空間をどのように作り上げていけるのか? 」ということでした。前橋市のお二人のお話からわかったことは、地域の意思が反映された形で進めていくことの大切さ。市としてビジョンを打ち出すだけではなく、そのコンセプトを浸透させ、コンセプトに賛同する主体的なプレイヤーを発掘・育成することが、持続的なまちづくりにつながるのではないか?そんなヒントをいただきました。

ディスカッションタイム!

お二人のゲストのお話のあとは、ディスカッションタイム! 「道路空間活用勉強会」のメンバーのコメントや会場からの質問もご紹介します。

上段左から、今さん(関東地方整備局)、田中さん(前橋市)、日下田さん(MDC)
下段左から、梶原さん(国土交通政策研究所)、飯石(公共R不動産)、佐々木さん(土地総合研究所)、竹田さん(国土交通政策研究所)

梶原:お二人のお話は、従来の道路整備の基本的なやり方と全く違うアプローチで勉強になりました。何をするかではなく、誰とやるか?という視点が強いのが新鮮です。プレイヤーの発掘や地域との丁寧な関わりなど、時間がかかることなのにスピード感を兼ね備えているところが素晴らしいと思いました。

佐々木:道路に恒久的な建物を置く「道路内建築物」について、海外だとそういった事例を見ますが、前橋市ではそのような実験事例はありますか?。

田中:道路内建築物は、前橋市アーバンデザインの将来図でも描いていたが、まだ実現していません。まずはキッチンカーで道路活用の可能性を試しながら、利用者の様子を観察しています。駅前のけやき並木通りはオフィス街なので、ランチ利用などを期待していましたが、動線の関係で意外にワーカーの人たちに使われないこともわかったり。でも、けやき並木通りは東京でいう表参道のような、その名の通り周囲に木々の植えられたポテンシャルある空間です。まずはわざわざ通りたくなる空間になることを目指し、道路内建築はその後方法を考えたいと思っています。

今:地元の金融機関が多く参画していますが、どのように巻き込んだのでしょうか?

田中:前橋市アーバンデザインを策定するとき、地元の企業にも声をかけました。そのなかに地域の金融機関の方々もワークショップに来ていただき、市民のリアルな声を一緒に聞きながら進めたことがきっかけです。ワークショップで資金面の話もできたり、いいプロセスを踏めたなと思っています。

飯石:前橋市アーバンデザインは、具体的な計画ではなく、理念を共有しているのがポイントだなと思いました。指針をもとに官民一緒にトライし続けることが、前橋市アーバンデザインを形づくり価値そのものなんだなと。

道路活用に関しては、小さな賑わいを生む場所をたくさんつくることが大事なのだなと改めて感じました。市民、事業者、学生、様々な活動の点をつなぐために道路が存在している。行政として駅前のけやき並木通りという道路空間をモデルプロジェクトの対象地として選んだのはどんな理由からだったのですか?

田中:けやき並木通りはもともとポテンシャルのある空間で、ここから街が豊かになっていく可能性があるのではないかと思っていました。そのような兆しを行政でも共有できていて、前橋市アーバンデザインはもともと道路だけに主眼を置いたものではなかったが、結果的に道路につながっていきましたね。

飯石:そして資金調達の面について、日下田さんにお伺いしたいです。これまでの公共事業でSIBの活用はあまりなかったですよね。民間団体を通して道路整備をするのも聞いたことがありませんでした。寄付の話もありましたが、寄付者のモチベーションってどんなことだったのでしょうか?

日下田:寄付者のみなさんは、道路か、建物か、広場かに興味があるのではなく、前橋というまちそのものへの関心があるのだと思います。前橋市アーバンデザインへの賛同が前提としてあり、たまたま優先順位が高かったのが道路空間だったのです。

けやき並木通りは前橋市の戦後復興でつくられた立派な空間で、広瀬川も水辺という圧倒的なポテンシャルを持っています。一方で、馬場川は変える価値のある空間でした。伸び代を持つ空間で、投資効果が一番高いのは馬場川だという納得感もあったのではないでしょうか

竹井:ストリートファニチャーの5日間の展示イベントに感動しました。学生の巻き込み方が素晴らしい。行政のみなさんの感想としても、想像以上の風景になった実証になったこともすごいなと感じました

一般の方々からの質問①

「MDCは民間会費を集めて運営されているとのことでしたが、取り組みを通じた収益はどうなっているか知りたいです。ちゃんと利益が出ているのか?もし利益が出てない、もしくは利益は見ていないのだとすると、街のにぎわいを可視化して成果としているのでしょうか?」

日下田:ほぼほぼ事業収支はトントンに近い運営状況です。ベーシックな財源として会費があって、事業ごとのある種のプロジェクトファイナンスとして寄付やSIB調達があります。持続性確保のために歳入を増やし続けることは今後必要になってきています。現時点で利益は出ていませんし、利益を出すというよりはまちづくりの次の原資を確保することが目的です。

一般の方々からの質問②

「前橋市アーバンデザインは、計画ではなく理念に基づいて動いていく考え方に非常に共感しました。既に庁内に道路空間の活用をする部署やリノベまちづくりをする部署があって、そこから全体の共通理念を抽出したようなイメージでしょうか?それともアーバンデザインが先にあって、後から市街地整備課さんのような部署ができたのでしょうか?」

田中:もともと道路活用部署はありませんでした。前橋アーバンデザインをつくるプロセスで、道路活用の必要性に気づき、同時並行で市街地整備課がその専門部署となりました。組織再編のプロセスはとても大変でしたが、アーバンデザインが描けていればあとは専門部署が実行する、という役割分担がスムーズにできるので、その体制に向けて調整していきました。

一般の方々からの質問③

「別のイベントで、日本には「道路法はあるけど、広場法がない」ということを聞いたことがあります。専門ではないのですが、今日のお話からすると、移動機能に特化した道路法の限界があるのかなあという気もしています。もうちょっと道路の他の側面に着目した法改正なり新法なりが必要なんですかね。お考えがあれば、お聞かせください。」

梶原:「道路法としても、移動だけでなく滞在空間としての道路の機能も向上しようということで「ほこみち」制度が始まりました。道路管理者としては皆さんの取り組みを伺いながら、さらに「ほこみち」がもっと使いやすくなるようにどうすれば良いか、ぜひ皆さんとも議論を重ねていきたいです。

少し話がそれますが、まちづくりを進めるにあたり、理想の風景やイメージを見せて関係者の共感を集めて実行するという手法が各地で取られているが、それだけだと道路管理者は維持管理の面から受け入れるのが難しい場合もある。そこを前橋市の取り組みでは、イメージを描くだけでなくデータで見せたり、工事の部分にもケアがある。工事のすすめ方や交通のデータをしっかり関係者に共有しながら進めることで、道路管理者にも届きやすくなっているように感じます。

空間の境目なく様々な立場の知恵を集めて道路活用を考えていく

飯石:前橋市の取り組みは、道路・広場・河川、さらには民間の土地や建物、という境目なく、アーバンデザインの理念に基づきビジョンが描かれ、実践が繰り返されている印象を受けました。道路管理者や広場管理者という場所に紐づく役割で動いている方にとっては、自分の管理する空間をどうすれば良いかを考えていますが、その上位概念としてエリアとしてのビジョンを掲げて部署横断型で実行するという前橋市のプロセスは非常に示唆に飛んだものだったと思います。

私たちの勉強会は道路の活用に主眼を置いていますが、今回のようにより多角的な視点で道路という場所の価値や活用のあり方を捉えていくスタディを続けていければと思います。本日はありがとうございました。

2022年1月25日、オンラインで配信したものに一部加筆・編集

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●登壇者プロフィール(敬称略)

田中隆太(たなか・りゅうた)

前橋市 市街地整備課 CCRC・計画推進室 主任
1985年新潟県三条市生まれ。前橋工科大学建築学科卒業。
2008年株式会社丹青社に入社し、商業施設等の空間づくりの現場に携わる。
2015年前橋市役所入庁。市営住宅の建設や営繕業務に携わり、2018年から現職。
市街地整備課では前橋市アーバンデザインの策定や前橋版リノベーションまちづくり、ミズベリング前橋など、まちの方々との協働による官民連携まちづくりに取り組む。他にも、自らが企画したストリートファニチャーエキシビジョンや前橋no密部などを展開。

日下田伸(ひげた・しん)

都市再生推進法人(一社)前橋デザインコミッション(MDC)企画局長
66年東京生まれ、屋久島高校、筑波大農学、日大修士(開発経済学)、宇都宮大博士(都市計画)在学。清水建設で環境エンジニアリング、星野リゾートで旅館再生事業の立上げを経て、多くの事業再生や経営コンサルティングを手掛ける。20年MDC本格稼働から現職、はじめてまちづくりに挑戦中。

●道路空間活用勉強会とは
道路空間がより豊かなものになっていくための課題や解決アイデアを国・行政・民間の立場からそれぞれ持ち寄り、共に解決への道筋を考えていく勉強会。

勉強会メンバー:

飯石藍(いいし・あい)
公共R不動産 コーディネーター/株式会社nest 取締役
公共R不動産の立ち上げから参画。クリエイティブな公共空間活用に向けたメディア企画・プロジェクト推進、新たなマッチングの仕組み「公共空間逆プロポーザル」等のディレクション等に携わる。また、2017年からまちづくり会社”nest”の取締役として、地元豊島区の公園”南池袋公園・グリーン大通り”の企画・エリアマネジメントの戦略検討・事業推進など、池袋駅東口のエリア価値を上げるための公共空間活用プロジェクトを推進。

梶原ちえみ(かじわら・ちえみ)
国土交通政策研究所主任研究官
2006年国土交通省入省。本省業務の他、東京国道事務所、横浜国道事務所などで道路の整備・管理業務を経験。2度の育休を経て、2018年より東京国道事務所にて渋谷、新宿、日本橋などの交通結節点整備や道路空間活用に携わる。2020年より現職。現場で感じた課題意識から道路空間活用についての研究を始め、当勉強会の発足を呼びかけ。

今佐和子(こん・さわこ)
国土交通省都市局市街地整備課
大学院にて都市計画を勉強後、2010年IT企業に入社。都市に関わる仕事を志望し2013年国土交通省入省。まちづくり推進課や新潟国道事務所、育休等を経て、2018年より約2年街路交通施設課にて、クルマ中心から人中心、ウォーカブルなまちづくりを全国に広める政策に携わる。育休を経て2021年より現職。

佐々木晶二(ささき・しょうじ)
1982年東京大学法学部卒業、建設省入省。岐阜県都市計画課長、建設省都 市計画課課長補佐、兵庫県まちづくり復 興担当部長、国土交通省都市総務課 長、内閣府防災担当官房審議官、国土交通省国土交通政策研究所長を経て、現在は(一財)土地総合研究所 専務理事などを務める。

竹井昭彦(たけい・あきひこ)
国土交通政策研究所研究官
1997年大和工商リース株式会社(現大和リース)入社。主にPPP専任担当としてPPP案件の企画立案の支援業務に携わる。PFI事業、PRE(公有地活用)、包括施設管理事業、民間提案制度など幅広く経験し、行政課題や社会課題の解決に邁進中。2020年より現職へ出向。

PROFILE

阿久津 遊

1988年宮城県生まれ。ワークショップ等のこども向けプログラムの企画運営に携わり、公共空間活用に関心を持つ。2018年から公共R不動産にライターとして参加。

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