ページを読み込み中 ...

学校 公園/道路 水辺 文化/スポーツ 役所/庁舎 その他

No.1 公共Rプチお役立ち情報

旗アイコンは「公共R」×「自治体・企業」プロジェクト

公共R不動産のプロジェクトスタディ
  公共R不動産のプロジェクトスタディ

横浜みなとみらいの実証実験。ニューノーマルな屋外オフィスの可能性とは

コロナ禍における新たな生活様式(ニューノーマル)として注目されている屋外空間。積極的に屋外を選ぶ時代、“屋外で働く”可能性を探る実証実験が、横浜みなとみらいで行われました。

ワーカーのクリエイティビティを引き出す、”Vivid”なワークプレイス

“外で働く”ことをテーマとしたこの実証実験は、一般社団法人横浜みなとみらい21(以下、YMM)、国立大学法人横浜国立大学(以下、横浜国立大学)、三菱地所株式会社(以下、三菱地所)、YADOKARI株式会社(以下、YADOKARI)の4社の主催により、2021年4月21日〜28日の8日間で行われました。

発起したのはYMM、横浜国立大学、三菱地所の三者。
このエリアでは、これまでYMMや三菱地所を始めとするエリアマネジメントの取り組みが行われていましたが、そこに関わることになった横浜国立大学の野原准教授から、「豊かな公共的空間が充実して用意されたみなとみらいの特性をうまく活かし、コロナ禍の状況も踏まえながら、新たな使い方の一つとしてワーカーが外部空間を用いるという可能性に関する実験から、将来的にはみなとみらいの様々な外部空間の可能性やマネジメントにつなげていきたい」といった提言がきっかけとなりました。

屋外空間の可能性が見直されている今、あえて外を選ぶとすると、どんなワークプレイスが求められるのか。
三者からバトンを受けてこの実証実験の企画・会場構成を担当したYADOKARIの川口直人さん、伊藤幹太さん、アキナイガーデンの梅村陽一郎さんにお話を伺いました。

左から、YADOKARIの伊藤さん、川口さん、アキナイガーデンの梅村さん。

コンセプトは、「Vivid Worker’s Place ~新しい発想・ひと・問い・好奇心に出会う~」

「ホワイトカラー」は、広くは事務系の職種に従事する方を総称する表現として使われますが、管理業務や事務作業を淡々とこなすような、やや無機質なイメージもあります。

あえて“外で働く”を選択するのであれば、自由な発想やクリエイティビティを創造するような、新しい発見や出会いが生み出される仕掛けができないか。そんな思いから、鮮やか(Vivid)に彩りを与える「Vivid Worker’s Place」というコンセプトに辿り着きました。

屋外オフィスならではの体験とは

実施場所は、みなとみらい東急スクエアとランドマークタワーの2つの商業施設に挟まれた、グランモール公園ヨーヨー広場周辺。民地と、横浜市の公園という、官民にまたがる敷地で開催されました。

会場となったグランモール公園ヨーヨー広場。中央が横浜市の公園、両サイドが民地になっている。

現地で興味深かったのは、通りすがる人々の多様性。
商業施設を目当てに遊びにくるカップルや高校生など10代の若者はもちろん、日産自動車や富士フイルムビジネスイノベーションはじめ大手企業のオフィスや研究施設が集中していることから、スーツ姿のサラリーマンの方々も多く行き交います。
さらにはベビーカーを押すお母さんグループや子供をつれて公園で遊ぶ家族、高齢者の方々など生活者の姿も。
この多様性もみなとみらいの魅力のひとつです。

そんな多様な人々が行き交う公園のど真ん中に現れるビビットカラーのオフィス。
実証実験では、屋外ならではのコンテンツとして、
・インスピレーションデスク
・コミュニケーションガチャ
・アルコールクエスチョン
など、刺激を受けたり、人とゆるくつながったりする仕掛けがたくさん用意されていました。

左 ワイヤードームに囲われたインスピレーションデスク。ゆるやかに仕切られた個室間が集中するにはいいと人気の席になったそう。 右 アイデアのきっかけとなるような本との出会いも。
左 様々な雑談のテーマが出てくるコミュニケーションガチャ。引いた雑談のテーマによって居合わせた人との自然な交流が生まれる。 右 アルコールクエスチョンでは、これからの働き方を考える質問に対しアルコール消毒で答えるというもの。アルコールの残量により天秤が傾き、回答結果が可視化される。

コンテンツの詳しい解説はPUBLICWAREのコラムからどうぞ。
ワーカーをクリエイティブにする仕掛け。ニューノーマルな屋外オフィスの実証実験

「せっかく屋外で働くなら、普通のオフィスでは得られない体験を提供したいとひたすら考えていました。みなとみらいはワーカーだけでなく地域のかたや観光に来る人も多く、いろんな属性が混ざり合うエリアです。行き交う人々が思わず参加したくなるようなエンタメ要素も意識しました。

また、集積する企業間の交流促進も課題でした。エリアの成長に企業間のつながりは欠かせないので、雑談や出会いが、屋外で働くことの価値になっていくと思います」と、コンテンツの企画から制作まで担った伊藤さんは言います。

実験から見えてきた屋外オフィスの可能性

利用者からはこんな声が。
・働く場所が、室内と屋外、両方にあると気分転換になっていいと思います
・Wi-Fi使えるし、自由に勉強もしていいとのことあったので利用しました。コロナが心配な時期、密にならないし安心だと感じました
・テレワークが増え、自宅だと行き詰まることがあるが、こういう空間も働く場所として選択肢にあるといい
・しっかりしたものである必要はないけれど、植栽のようなゆるやかなパーティションがあると落ち着きそう
・ランチミーティングをする場所を探していて、食事をしながら仕事のツールを広げたり、話したりしやすいのが魅力的だった
・1人で覆われている空間があって秘密基地みたいでよかった
・奥さんとお子さんが買い物をしている間に少しPC作業したいことがあったのでよかった
・見られているのは気にならないが、逆に公園での人の流れとか行動とかが面白くて見てしまう
・カフェに入るほど時間があるわけではなかったので、1時間だけwifiも利用できてオンラインで打ち合わせができるのはとても便利で今後も欲しい

実際に体感した生の声を聞くと、想像以上に屋外空間を楽しみ、居心地のよさを感じることができたとの声が。屋外で長時間働くことは難しいかもしれませんが、屋内と屋内、場面やモードに合わせて使い分けるニーズは高そうです。

屋外空間への課題と期待

利用者から好評だった一方でまだまだ課題も。
対象エリアは、公共性の高い民間の空地(有効空地)と公園にまたがっており、構造物や家具を設置するには、市への手続きが必要。見た目には一続きになっている空間でも、場所ごとに設置できる物等のルールや所管が異なり、協議先も複数に渡るため、活用する側としては時間も労力も大きいです。
不特定多数の人々が行き交う公共空間だからこそ、安全性への配慮が必要となりますが、ポテンシャルのある場所。多様な主体が関わりやすい柔軟な仕組みや体制づくりが求められそうです。

国土交通省の旗振りのもと「ウォーカブルなまちづくり」が推進され全国各地でその実践が始まっていますが、根本的な考え方としてあるのは「都市の多様性とイノベーション」。歩きたくなる居心地のよい都市空間=都市の生産性を向上させる、という考えが起点にあります。

単にコロナ禍だから屋外、ではなく、あえて屋外で働くという選択肢の存在が、より豊かなワークプレイスを生み出すことにつながりそうです。

関連

「ウォーカブルなまちづくり」の本質に迫る

関連記事:「ウォーカブルなまちづくり」の本質に迫る

この実証実験を受けて、これからの展開に期待が膨らみます。

 

PROFILE

菊地 純平

菊地 純平

OpenA/公共R不動産/NPO法人ローカルデザインネットワーク。1993年生まれ。芝浦工業大学工学部建築学科卒業。筑波大学大学院芸術専攻建築デザイン領域修了。2017年にUR都市機構に入社し、団地のストック活用・再生業務に従事。2019年にOpenA/公共R不動産に入社。また、2015年より静岡県東伊豆町の空き家改修、まちづくりプロジェクトに携わる。