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ヨコハマ式公共空間の活用促進プロジェクト

ヨコハマ式公共空間の活用促進とは? 共創オープンフォーラム・ヨコハマレポート 後編

「共創オープンフォーラム・ヨコハマ」後半では、一般参加者のみなさんも交えた議論が行われました。公共空間活用における課題、地域の巻き込み方、横浜ならではの活用ビジョンなど、さまざまなテーマで盛り上がりました。ファシリテーターは、株式会社オンデザインパートナーズ代表、西田司さん。

株式会社オンデザインパートナーズ代表 西田司さん

いくつかのトピックに分けて、議論の様子をお伝えします。

事業継続のためのマネタイズ問題!

「公共空間活用における課題とは?」というファシリテーター西田さんからの問いかけに対して、まず挙がったトピックはマネタイズのお話。各社ならではの意見が興味深かったです。

古川さん/ドッグラン・ラボ:「今年は、横浜市営バスをオリジナルデザインでラッピングをしてチャーターする計画でしたが、景観を守るための市のレギュレーションがあり、企業のロゴマークなどは入れられないとのことでした。横浜ドッグウィークにはまだ特定のスポンサー企業はいませんが、これからは企業が乗りやすい仕組みを行政と一緒に考える必要があると考えています。」

永井さん/相鉄ビルマネジメント:「一般社団法人横浜西口エリアマネジメントは、相鉄グループが中心となり立ち上げました。活動継続のためには、社内理解の浸透が重要です。目先の利益ではなく、エリアがブランド価値をもつことで将来的には利益につながる可能性があるという社内認知を広げなければいけません。そのための伝え方が重要です。」

長嶺さん/横浜緑地:「わたしたち指定管理業者は、一般の方々から見ると、民間ではなく公共側の人として見られることが多いですが、もちろん、いち民間事業者として稼ぐことが必要なのです。しかし、少しでも高価なイベントをすると行政に苦情がいってしまうことも…会社内部でも公共空間で稼ぐことに抵抗がある社員もいるので、住民の皆さんだけではなく、社内認知も大事だと感じています。」

このような事業者のみなさんからのお話に対し、横浜市で公園行政を担当する環境創造局公園緑地管理課清水さんからはPark-PFIの紹介が。この仕組みに対する認知を、民間企業だけではなく、市民へも広めていきたいというコメントがありました。

さらに、一般参加者の方から「Park-PFIは良い仕組みだが、その名称ゆえにわかりにくさもある。ヨコハマビジネスパークなど、目的を全面に押し出したヨコハマオリジナルの呼称を打ち出してもいいのでは?」という意見も上がりました!

周囲の巻き込み方のポイントとは?

続いては、公共空間活用において大きなポイントとなる地域の巻き込み方の話題に。

長嶺さん/横浜緑地:「公園運営に関しては、町内会、商店街、ボランティア組織など、それまで地域でずっと活動をしてきたみなさんとのネットワークづくりがとても重要ですね。例えば、岡村公園では地域の声がきっかけで夏祭りが始まりました。わたしたち自身が人と人をつないでいく場所になるのだ、という意識が大切だと考えています。」

永井さん/相鉄ビルマネジメント:「クローズじゃなくオープンな形を常に意識しています。地域活性化サポーターという仕組みをつくり、様々な人を巻き込んでいますが、対象を横浜市民に限定するのではなく、横浜という土地やまちづくりの活動自体に興味を持っている方々に開いていくことも意識しています。それによって活動に多様性も生まれ、企画も良くなっていきます。」

政策局共創推進課の河野さんからは、「地域から愛される公共空間活用のポイントは、やはり、周辺の住民と事業者に関わってもらうことだと考えます。横浜市が主体となって進めている大通り公園での活用実証実験は、はじめは数社だけだった参画企業が徐々に増え、周辺住民の参加率も上がっています。周辺住民と事業者が、主体的に関わることのできる仕組みをつくることの大切さをあらためて感じています。企業とのネットワークづくりを今後もさらに進めていきたいです。」というコメントがありました。

活動の効果測定について

議論が盛り上がるなか、一般の方から「社内認知や地域理解を促進するための効果測定は、どのように行っていますか?」という質問が。各社の取組が紹介されました。

長嶺さん/横浜緑地:「基本的には、来園者数、駐車台数、有料施設の利用人数で測ることが多いです。テニスコートのある公園だと駐車場の利用台数が上がる、などの相乗効果が見られます。イベント時にどのくらい来場者数などが増えたかという指針もありますが、それがすべてではありません。そのときの広報戦略でどう変わったか、という目に見えにくいところも含めて考えることがこれからの課題です。」

永井さん/相鉄ビルマネジメント:「効果測定には苦労しています。ただ、最近はスマホのビーコンなどを活用して来場者係数などが比較的簡易にできるようになりました。効果測定がもっとやりやすくなるといいなと思います。ただ、来場者数と店舗の売上の結びつきまでは測ることができないので、それは今後とも課題ではありますね。」

古川さん/ドッグラン・ラボ:「臨港パークでのイベントでは定点カメラを使って来場者数を計測しています。また、愛犬家はインスタグラムを利用していることが多いので、イベントのあとはインスタグラムをチェックします。ハッシュタグなどでどのくらいの人がインスタグラムに投稿しているかをカウントしています。」

現在横浜市では、公共空間オープン化にむけた新たな取組「都心臨海部の魅力向上につながる横浜市公共空間活用モデル事業」を推進しています。(事業の事務局を務める政策局共創推進課の皆さんへのインタビューはこちらから)公共R不動産では、今後も公民連携分野のフロントランナーである横浜市の取組に注目していきます!

*共創オープンフォーラム公式ページでは、基調講演の講演資料や、今回ご紹介した「ヨコハマ式公共空間活用促進」のセッション関連資料などが公開されています。ぜひご覧ください!

PROFILE

阿久津 遊

1988年宮城県生まれ。ワークショップ等のこども向けプログラムの企画運営に携わり、公共空間活用に関心を持つ。2018年から公共R不動産にライターとして参加。

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