ページを読み込み中 ...

学校 公園/道路 水辺 文化/スポーツ 役所/庁舎 その他

No.1 公共Rプチお役立ち情報

旗アイコンは「公共R」×「自治体・企業」プロジェクト

馬場正尊のトップ・インタビュー
  馬場正尊のトップ・インタビュー

〈前編〉和歌山市長 |廃校と水辺の活用による“リノベーションまちづくり”

先進事例を持つ地方自治体のリーダーを取材する特集企画「トップ・インタビュー」。第1回目となる今回は、和歌山県和歌山市長 尾花正啓(おばなまさひろ)さんのもとを訪れました。

若者の県外流出という課題を長年抱える和歌山市が、今まさに大きな変貌を遂げようとしています。まちなかの廃校や廃校跡地を活用して軒並み大学(=まちなか3大学)を誘致し、公共事業と民間事業を結び付けた施策や、水辺や駅前などの公共空間を利用した官民一体の“リノベーションまちづくり”などが活発に行われているのです。
どのような方法論や手続きを経て、今に至っているのか。その舞台裏に迫り、同様の課題を抱える全国の自治体の未来に通ずるヒントを得るべく、和歌山市長をインタビューしました。

2
インタビュアーは、公共R不動産・ディレクターの馬場正尊

廃校や跡地を利用した3大学の誘致

人口約36万人の和歌山市。10代後半〜20代の県外流出が非常に多く、県単位で見ても県外進学率は30年連続全国一という結果になっています。
その課題をダイレクトに解決する施策が、中心地から半径1km圏内における「まちなか3大学誘致」です。
小中一貫校の新設により廃校となる2つの小学校と1つの中学校。2校はリノベーションをし、1校は建物規模などの都合から建て替えて跡地を活かし、看護師・保育士・薬剤師など、和歌山市で人材不足となっている専門職を育成する大学へと生まれ変わります。

2018年から2021年の開校を予定し、総勢1280名の学生数の増加が見込まれています。

3
和歌山市提供 詳細はリンクより

トップ営業”による迅速で合理的なアプローチ

馬場 正尊 馬場さん

2014年の就任後、極めて短期間に、3大学誘致をまとめられていますが、なぜ・どのようにアプローチされたのですか?

尾花正啓 尾花さん

和歌山市の人口減少の大きな要因は、まちなかに大学がないことです。中心地から離れた和歌山大学の約7割が県外出身者で、その多くがまちを知らず愛着を持てず、就職で県外へ。ならば、まちなかの廃校を活用して、大学を誘致できないかと考えました。
選挙期間中、その思いを公約として叫んでいたところ、知事が気に留めてくださって。知事としても“まちなかを賑わせたい”という意向があったため思いが一致。当選後すぐ『県市連携会議』を立ち上げ、大学誘致に向けて動き出しました。

馬場 正尊 馬場さん

なるほど、当選してすぐに枠組をつくられたとは。

4
尾花正啓 尾花さん

といっても、誘致確定にはかなり苦労しまして。地方は専門職の人材が不足しているので県内就職率の向上につながればと、医療系を中心に県内外問わず多くの大学へアプローチをしました。しかし、最初は振られてばかりでした。

馬場 正尊 馬場さん

まさに“トップ営業”ですね。それも就任直後の開始ですか?

尾花正啓 尾花さん

はい。建物だけでなく、グラウンドも体育館もあり、大学の要素はほとんど揃っています。あとは教室の部屋割りを変えればいい。土地も安価で、初期投資と固定費用をかなり抑えられる。今後の少子化を考えると、大学側にとっても好条件のはずだと確信し、少しでも可能性のあるところには全部あたりました。

馬場 正尊 馬場さん

確かに、経済的合理性があってわかりやすい。

尾花正啓 尾花さん

結果、大学側の意向はあったものの場所がなく断念していた過去の案件が見つかったり、保育士養成の強化に向けて4年制大学を設立したいといった地元の短期大学の意向と合致するなどして、ようやく3つの大学の誘致が確定したのです。

5

関係各所をつなぐための新組織の設立

馬場 正尊 馬場さん

圧倒的なリーダーシップで“トップ営業”をして、ヒアリングに基づいた提案を行い、確実に合意を得ている。その間、どのように行政組織を統括されたのでしょう?

尾花正啓 尾花さん

就任の翌年春、市長公室直属の「政策調整課」をつくりました。トップの思いを戦略的に実現するには、関係各所をつなぐ実務部隊が必要だと思いまして。当時、私がトップセールスに力を入れている間、初代課長である犬塚が現場で尽力してくれていました。

馬場 正尊 馬場さん

なるほど、異なる組織を横串でつなぐ役割として「政策調整課」をつくられたと。犬塚さん、非常に大事な組織体制ですが、旧体制との軋轢など新組織の現場は大変なことも多かったのでは?

犬塚康司 犬塚さん

そうですね。大学誘致は新市長のもとで行われる前例のない施策だったので、周囲の理解を得るにはパワーが掛かりました。特に行政というものは前例のないことには慎重ですから。
重要なのは、組織内はもちろん外部関係者や地域の人々にも、物事の経緯を事前にきっちり説明して、あらかじめ意向を聞き出しておくこと。説明のタイミングや順番も大切だと痛感しました。

6
 現在、政策調整部長を務める初代課長・犬塚康司さんのデスクにて。
尾花正啓 尾花さん

さらに、財政担当者が見つけてくれたおかげで、大学誘致に「空き家対策総合支援事業(国土交通省)」の国費を活用することができました。和歌山市としてリスクをあまり負わずに実施できたので良かったです。

馬場 正尊 馬場さん

行政としてのリスクも下げた状態で、一斉に実行されている。ある程度テナントを決め、財政のバランスをとって、物事を進めているというのが、民間企業の手法のようで面白いですね。

_後編に続く

≫ POINT
・まちなかの小学校や中学校の廃校を活かして大学誘致
・ヒアリングに基づいた提案を持って、市長自ら“トップ営業”
・関係各所をつなぐ市長直属の専門組織を設立してトップダウン

————–

※こちらの記事に関するお問い合わせは、<w
>下記の電話番号までご連絡ください。</w

・公民連携担当:和歌山市役所 市長公室 政策調整部 政策調整課
073-435-1013

・リノベーションまちづくり担当:和歌山市役所 産業まちづくり局 産業部 商工振興課
073-435-1233
————–

PROFILE

前田 有佳莉

ライター
前田 有佳莉

全国200軒以上のゲストハウスをめぐる編集者。1986年生まれ。2011年よりゲストハウス情報マガジン「FootPrints」を運営。2016年に書籍『ゲストハウスガイド100 -Japan Hostel &amp; Guesthouse Guide-』(ワニブックス)を出版。2017年より大正大学の月刊誌『地域人』でコラム連載。2018年より毎月各地で「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-」を開催。旅先で得た知見を活用し、和歌山県の移住PR事業にも携わる。