プロジェクト
× 大津市
公共R不動産 ✕ 大津市
Otsu Lakeside Renovation Project

[イベントレポート] 公共空間を活用してまちを変える-なぎさ公園の使い方の話をしようin大津-

2019年もあと数日というところ、琵琶湖畔の大津湖岸なぎさ公園、サンシャインビーチ&市民プラザのサウンディング締め切りが今週末に迫ってまいりました!さらに、昨年事業のOtsu Lakeside Renovation Project第一弾、サウンディングから事業者公募まで進んだ大津駅前公園では、来年完成予定のカフェのパースが発表されました。盛り上がってきた大津。今回は、少し間が空いてしまいましたが、サウンディング第二弾のキックオフとして10/19に行われたトークイベントの模様をお届けします。

サウンディング実施中の2エリア

Otsu Lakeside Renovation Projectは2018年から開始した、大津市最強の地域資源である琵琶湖の湖畔エリアを、もっと大津の顔になるような、そして市民も楽しめるエリアにしていこうというプロジェクト。企業や市民の方々の意向を聞きながら、活用事業者募集につなげていきます。

湖岸は全長4km以上もあるため、いくつかのエリアに分けて年ごとに募集を行なっています。今年度は、サンシャインビーチと市民プラザという2エリア。サンシャインビーチは、琵琶湖畔でも貴重なビーチがあり、ウォータースポーツなどアクティビティに最適、公園の中でも最も遊び系コンテンツに向いたおすすめエリア。市民プラザも、琵琶湖八景の描かれた時代から、最良の景観スポットのひとつといわれる、琵琶湖の絶景中の絶景、ともいえる場所です。

道路と琵琶湖の関係?

今回のキックオフトークでは「道路を活用してどのようにまちの価値を上げていくか」にスポットを当て、道路活用の達人、建築家の西村浩さんをお招きしました。

あれ?水辺の話なのに、なぜ道路…と、不思議に思われるかもしれません。しかし、Otsu Lakeside Renovation Projectの目的である、多くの人が楽しめる琵琶湖畔にするためには、そこまでの動線が非常に重要。まずは、駅から湖畔まで、歩を進めていただかねば、ということで、JR大津駅から大津湖岸なぎさ公園までの800mをいかに歩きたくなる道路にするか、というところまでスコープに入れています。

JR大津駅は、京都駅から9分の利便性の高い駅。最近、京都の外国人観光客の加熱した宿泊需要の余波をうけ、大津の宿泊需要も増大中です。そんな便利なJR大津駅前、真正面に、実は琵琶湖が望めるのです!しかし、ビルや街路樹にかき消され、普通は気づけないような存在感になってしまっています。当然、「琵琶湖まで行ってみよう」、というモチベーションも湧かず。なんとも、もったいない状況。

大津駅前は県庁所在地とは思えない風景といわれ続けてきましたが、2015年に駅舎がリニューアルし、お洒落なホテルとレストランとなって、無駄のないヒューマンスケールな再生が図られたところ。気持ちいいルーフテラス席もあり、これまでになかった人の流れを生み出しています。さらに、2020年夏には、本プロジェクトの第一弾で手がけた、大津駅前公園にもカフェがオープン予定

大津市としては、それに合わせ、JR大津駅から大津湖岸なぎさ公園を結ぶ中央大通りの1車線を車道から歩道にするという大胆な手で、大津駅前公園自体が道路側にはみ出してきたような空間とし、駅から琵琶湖側の公園まで、歩みを進めるきっかけとなるようなしかけにしたいと考えています。

そんなわけで、駅前に巨大な歩行者のための空間が開けるわけですが、人が歩いていなければ、今まで通りただの道路。そこで、西村さんに、人が歩きたくなる・使いたくなる道路のつくりかたをご指南いただいたという趣旨です。

歩きたくなる道路とは?

トークイベントでは、冒頭、越市長より、ジュネーブ構想を中心とした、大津のまちづくりのお話がありました。ジュネーブ構想もまさに、この、ジュネーブのコルナヴァン駅からレマン湖へのゆったりとしたリビングのような道の雰囲気を、大津でも実現しようという構想。

プレゼンテーションの中で、越市長が自ら描いた、未来の琵琶湖畔のイラストをご披露され、会場がドッと湧く一面も。湖上でプカプカ浮かびながらお仕事をしている姿。働くという機能と、リラックスして楽しめる水辺がとても近くに共存している都市像が表現されていました。

また、公共Rの馬場からは、道路に限らず、公共空間を使うことで、まちにどんなインパクトをもたらすのか?ということを、馬場の携わる3つの公園、南池袋公園、INN THE PARK、仙台のライブラリーパークの事例から紹介。公共空間をつかうというと、市役所のガチガチのルールの中で行うイメージがありますが、「暫定的に使って、まずは理想的な風景をつくってみる」、という手法が提案されました。

西村さんの軽快なトークでは、ご自身の携わられた佐賀市のプロジェクトを中心に、事例の紹介がありました。佐賀市呉服町で空き地・空き家を活用し、道路に人通りを取り戻し、ママの雇用まで生み出している事例、岡山県庁通りで、社会実験的に道路を活用しながら、整備の方針を決めていく、使いながらつくっていくという事例など。メッセージとしては、社会実験などで、道路を使う側も習慣化する訓練が必要であることや、ハード整備のデザインや規制緩和(大津の場合はすでにある程度実行されている!)の重要性と同時に、プレーヤー発掘が肝であることなどが、これからの大津のヒントとなりそうでした。

また、西村さんのたくさんの経験の中から、大津駅前の中央大通りに対して、目から鱗の道路活用法の提案が。歩道の一部を道路に平行に走る細長い公園(正確には広場)としてはどうか、と。道路を活用するには、常に警察との協議がつきもので、行政がいくらまちづくりの意思をもっていても、全く別の力が働いてしまうもの。ならば、一部を公園化してしまい、道路に関わるルールを外して自由度を上げて活用しやすくする提案です。

市民と道路の関わり方

後半は、会場からの質問を交えての、越市長、西村さん、馬場によるクロストーク。たくさんの質問が寄せらせましたが、印象的だったのは、「道路を活用していくのはおもしろそうだけれど、自らが事業者となれない場合、一個人として、このような取り組みに参加するにはどうしたらよいでしょうか?」といった趣旨の、関わり方に関する問いが多かったこと。

確かに、単なる「道路」で行われるマーケットに、出店するのはハードルが高い。西村さんからは、「出店はしなくても、参加して盛り上げてあげたり、色々なルートでまちを歩いて道をつかってあげる、というひとりひとりの行為がまちを楽しくするし、事業者さんの応援にもなる」というアドバイスがありました。

中には、マーケットをつくってみたいという方もいらっしゃったり、今回のイベントのように、どうやって道を使うか多くの人とアイディアを話し合う場がもっとほしい、といった意見も。こんなに想いを持った方が多いなら「○○をやりたい」という人同士の出会いの場ができたら、すぐにでもなにか起こりそうな予感です。さっそく、使い方会議を実施してみてはどうか、という話に発展。次の実践的なステップを、みんなで夢見られるような会となりました。

サウンディングに向けて

さて、2020年の大津駅前公園のリニューアルオープンで、どんな風に市民や来街者の大津の認識に変化が生まれるだろうか?琵琶湖のイメージが変化していくだろうか?それにむけた、市民による道づかいの準備が、これを契機に盛り上がっていけばいいなと思います。

さて、そんな、絶賛準備中、盛り上がり前夜のOtsu Lakeside Renovation Project、今回のサウンディングエリアもこんなにまちにも湖にも近いという好条件はなかなかない掘り出し物です。巨大な公共空間である、道路と公園をうまく組み合わせて使い、まちの価値をどんな風に上げることができるか、大津市の挑戦に一緒に取り組んでくださる方、募集です!

▶︎サウンディング要項はこちら:
大津湖岸なぎさ公園における民間活力の導入に向けたマーケットサウンディング調査を実施します

▶︎スケジュール:
提案書の受付期間:令和元年10月21日(月)~令和元年12月20日(金)
質問受付期間:令和元年10月21日(月)~令和元年11月15日(金)
対話の実施日時:令和2年1月20日(月)13-17時
1月21日(火)9-17時
公募実施・事業者決定・事業開始:令和2年度〜

▶︎関連記事:
大津琵琶湖畔 市民プラザ& サンシャインビーチ サウンディングスタート


ちなみに、当日、イベント終了後はなぎさ公園で実施していた社会実験「発酵マルシェ」へ。大津市では今年度サウンディングと並行して、いくつかの社会実験を行なっています。サウンディングの参考となると思いますので、ぜひご覧ください。

●「なぎさ×サップ×ヨガ in なぎさのテラス」
日 時:令和元年 7 月 20 日(土)9:00~19:00
会 場:なぎさのテラス
来場者数:約 1,000 人
運 営:B.S.Y プロジェクト実行委員会

●「なぎさカフェ&びわガーデン 2019」
会 場:なぎさ公園おまつり広場
日 時:令和元年 9 月 7 日(土)11:00~19:00
来場者数:約 2,500 人
(※ びわ湖大津秋の音楽祭関連イベントして開催)

●「なぎさ遊覧飛行 空中散歩&防災フェスin 市民プラザ」
日 時:令和元年 11 月 2 日(土)9:00~17:00
会 場:大津湖岸なぎさ公園市民プラザ
小型ヘリコプター搭乗者:モニター74 人、関係者 18 人
来場者数:約 300 人
運 営:匠航空株式会社

●「Lakeside Cinema ~チルアウト大津~」
日 時:令和元年 11 月 30 日(土)14:00~20:00
会 場:大津湖岸なぎさ公園市民プラザ
シネマ鑑賞者:約 300 人 来場者数:約 500 人
運 営:FLOATING LIFE

PROFILE

菊地 マリエ

公共R不動産/アフタヌーン・ソサイエティ。1984年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。日本政策投資銀行勤務、在勤中に東洋大学経済学部公民連携専攻修士課程修了。日本で最も美しい村連合特派員として日本一周後、2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。現在はフリーランスで多くの公民連携プロジェクトに携わる。共著書に『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』。

連載

すべての連載へ

公共R不動産の本のご紹介

クリエイティブな公共発注のための『公募要項作成ガイドブック』

公共R不動産のウェブ連載『クリエイティブな公共発注を考えてみた by PPP妄想研究会』から、初のスピンオフ企画として制作された『公募要項作成ガイドブック』。その名の通り、遊休公共施設を活用するために、どんな発注をすればよいのか?公募要項の例文とともに、そのベースとなる考え方と、ポイント解説を盛り込みました。
自治体の皆さんには、このガイドブックを参照しながら公募要項を作成していただければ、日本中のどんなまちの遊休施設でも、おもしろい活用に向けての第一歩が踏み出せるはず!という期待のもと、妄想研究会メンバーもわくわくしながらこのガイドブックを世の中に送り出します。ぜひぜひ、ご活用ください!

もっと詳しく 

すべての本へ