鎌倉市が公的不動産をサウンディング調査!

現鎌倉市役所本庁舎

様々な行財政改革に取り組む鎌倉市。鎌倉駅のほど近くにある鎌倉市役所について、市民との対話などを重ね、移転する方針(※リンク)を決定しました。これをきっかけにまちづくりへのインパクトが期待される比較的規模の大きい公的不動産の利活用について検討を進めている中で、広くサウンディング型市場調査が行われることとなりました。鎌倉市は観光資源、自然環境の魅力による移住者の増加などポテンシャルが高いと思われる一方で、少子高齢化などの社会課題を抱えています。そこで、恵まれた立地を生かした利活用に向けて民間事業者との連携を模索中です。より良い官民連携の公募に向けて皆さんのノウハウを提案してみませんか。

 

公的不動産で魅力的なまちづくりを!

鎌倉市が間もなく公的不動産の利活用について、サウンディング型市場調査を開始します。主要な対象はなんと同時に5つ。①鎌倉市役所(現在地:移転した場合の跡地利用)、②梶原四丁目用地(野村総合研究所跡地)、③深沢地域整備事業用地(行政施設用地)、④扇湖山荘、⑤資生堂鎌倉工場跡地(寄付予定部分)の5つ。さらに市へ寄贈された旧邸宅の組み合わせによる利活用も対象に含まれています。今後、住む人・住みたい人にとってさらに魅力的なまちとなることを目指し、これらの公的不動産の利活用方法と、市とともにそれを実践する民間事業者を探るのが調査の大きな目的です。

サウンディング型市場調査とは、対象物件の活用にできるだけ適する条件で事業者公募を行えるように、公募の前段階で行政と民間事業者が対話を交わすことで、ニーズを確認し、より良い事業化を進めるプロセスに当たります。鎌倉市は「計画論(市民との合意形成や行政の計画)だけで事業化を進めるのではなく、現状による事業者のニーズを捉えて利活用を推進するため、サウンディング型市場調査を実施することにしました」と話します。

なぜ、5つも同時に?

きっかけは、鎌倉市役所本庁舎を移転するとした整備方針(市民サービス機能は残し、本庁舎を移転)の決定だったといいます。全市的に市が保有している多くの既存施設や敷地について、移転先としての適地を検討するだけでなく、低未利用となっている公的不動産全体の利活用についても問題意識を抱えていました。その解決策として個々の公的不動産について、単体での利活用を図るのではなく、市内各地の主要な公的不動産を総合的に捉えて、利活用を推進するという取り組みが始められたそうです。

課題解決と行政負担の軽減

その背景には、人口減少、少子高齢化の進行があります。鎌倉市は海も山もあるなど自然環境に恵まれ、寺社仏閣をはじめとする歴史的資源も多く、この地を愛して移住する人が絶えない…といったイメージを持っている人も少なくないのではないでしょうか。しかし、同市も人口減少、少子高齢化の波にはあらがえず、人口が2030年には約8%減、2060年には約30%減と予測されているのです。

「これを克服するために、全市的に公的不動産を有効活用して住民の快適な生活と市民の雇用を創出に取り組み、『働きたいまち』『住みたい・住み続けたいまち』、住む人・住みたい人にとってもっと魅力あるまちづくりをすすめたいと考えています。また、公的不動産の利活用について、官民連携を図ることで、行政負担の抑制を目指します」(鎌倉市)

 

利活用の大きな方向性

そのような全市的なまちづくりに大きな影響があり、インパクトが期待できる場所として、①~⑤の5つの公的不動産が選ばれ、それぞれ利活用の基本方針が検討されています(以下はその概要)。

鎌倉市公的不動産利活用推進方針の策定に向けた取組(中間取りまとめ)(PDF:848KB)

鎌倉市役所(現在地:移転した場合の跡地利用)
市民サービスの提供(本庁舎の跡地には、市民サービスや相談のための窓口を残し(主に現在の市役所の1階にある機能)、図書館、学習センターなどを再編し、生涯学習、芸術文化、市民活動、多世代交流などの拠点化を目指します)・周辺の公共施設再編の核とする。市民が楽しめる賑わいや憩いの場の創出により、「住みたいまち鎌倉」を目指す。
所在地(地域名):御成町18-10(鎌倉地域)
用地面積:14,361.54㎡

鎌倉駅西口から徒歩約5分の現市庁舎

 

梶原四丁目用地(野村総合研究所跡地)
自然環境を生かした利活用(市民への開放含む)と企業誘致を下敷きに「働くまち鎌倉」の実現を目指す。
所在地(地域名):梶原4-7-1(深沢地域)
用地面積:175,388.05㎡

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梶原四丁目用地は野村総合研究所跡地。既存の建物が残っている。

 

深沢地域整備事業用地(行政施設用地)
市役所本庁舎の移転先として、消防本部や総合体育館と一体となったシビックエリアを形成し、市民に医療や健康などの価値・サービスを提供する。
所在地(地域名):寺分字陣出8ほか(深沢地域)
用地面積:約26,000㎡(行政施設用地部分)

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市役所本庁舎の移転整備候補地。

 

扇湖山荘(せんこさんそう)
自然環境を生かした利活用(市民への開放含む)と旧邸宅群の一つのシンボルとして先導的に活用(企業誘致など)し、鎌倉の歴史・文化・まち並みの保存と地域資源の活用によるまちづくりを目指す。
所在地(地域名):鎌倉山1-21-1(深沢地域)
用地面積:約46,8000㎡

Exif_JPEG_PICTURE扇湖山荘。製薬会社創業者の別荘として移築。

 

資生堂鎌倉工場跡地(寄付予定部分)
大船駅至近の利便性を生かした企業誘致を行い、地域経済の発展を目指す。
所在地(地域名):岩瀬1-1-1外(大船地域)
用地面積:約5,200㎡(寄附予定部分)

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 資生堂鎌倉工場跡地(手前側の約5,200㎡が寄付予定部分)

 

⑥旧華頂宮邸
所在地(地域名):浄明寺2-6-37(鎌倉地域)
用地面積:4,462.77㎡(借地)
⑦旧前田邸
所在地(地域名):長谷1-5-2(鎌倉地域)
用地面積:4,474.66㎡
⑧旧和辻邸
所在地(地域名):雪ノ下2-2-12(鎌倉地域)
用地面積:7,748.15㎡
⑨旧今井邸跡地
所在地(地域名):由比ガ浜3-9-17(鎌倉地域)
用地面積:1,550.51㎡
⑩旧村上邸
所在地(地域名):西御門2-8-22(鎌倉地域)
用地面積:1,677.50㎡

 

 

鎌倉市に新たな人の流れを

特に、市民サービスと文化情報発信が共存する、現在の鎌倉市役所(移転した場合の跡地利用)がある鎌倉駅周辺拠点と、新たなシビックエリアとして期待する行政施設用地の整備予定がある深沢地域国鉄跡地周辺拠点、企業誘致・創業の誘発を目指す資生堂鎌倉工場跡地(寄付予定部分)がある大船駅周辺拠点をまちづくりの3つの核としてとらえています。「それぞれが特性を生かした役割をこなしつつ、連携するまちにしていきたい。そこに、新たな人や文化の流れが生まれて、相乗効果で各地域の魅力や鎌倉市全体の魅力が増すことを目指したい」(鎌倉市)

今回のサウンディング型市場調査では、それぞれの公的不動産やそれらを連携して使いこなす柔軟な発想のほか、市とともに鎌倉のまちや地域の価値を高めていくような「パブリックマインド」を持つ様々な民間事業者の参加が望まれています。また、公的不動産を活用した積極的な「稼ぐ」仕組みによる行政負担の軽減につながる提案も歓迎とのこと。

鎌倉のポテンシャルに惹かれている民間事業者の皆さん、ぜひご応募ください。エントリーは10月2日から始まっています。

【スケジュール】

サウンディング調査参加者の公募:公表~ 平成 29 年 10 月 17 日
現地見学会(梶原四丁目用地(野村総合研究所跡地)及び扇湖山荘)
:平成29年10月13日(事前申込み制)
サウンディング調査(対話):平成 29 年 10 月 25 日~ 27 日(事前申込み制)
サウンディング調査結果概要公表:平成 29 年 11 月下旬頃
追加調査(対話):対話後~ 年度内
事業化決定、事業者の公募など:平成 30 年度以降、各公的不動産で検討
各公的不動産の利活用開始:今後の各公的不動産の事業計画による

公共_スケジュール_1002

【物件概要】

物件表2_1002

 

地図_1002

【問い合わせ・参加申し込み】

鎌倉市経営企画部経営企画課公共施設再編推進担当 (担当: 石塚、江川)
所在地:〒248-8686鎌倉市御成町18-10
電話:0467-23-3000(内線 2565)
メールアドレス: facility@city.kamakura.kanagawa.jp
ホームページ:http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/keiki/saihen_h29pre_sounding.html

 

PROFILE

介川 亜紀

建築、不動産、都市計画、UDがフィールドの編集者。特に、建築や都市の再生に興味津々で全国を飛び回っている。自らも約築40年のマンションに住み、自邸のリノベーションのほか理事として大規模修繕、インフラの刷新に取り組む。昨今は時代に合う住まいや暮らしの在り方についても再考中。

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