公民連携事業機構連携連載1 街を食いものにする公民連携

連携第一回は、東北芸術工科大学外苑キャンパスで4月19日に行われた、「公民連携ってそもそも会議」の様子をお届け。公民連携とはそもそも何なのか?公民連携はどうあるべきなのか?を、公民連携プロフェッショナルスクールの講師陣が熱く語ります。前編では宮本恭嗣さんが、再開発案件の不都合な真実を告白。公開ぎりぎり、刺激的な内容も!?良薬口に苦し、心してお読みください。(登壇者のプロフィールはこちらからご確認いただけます。)

悪い公民連携

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馬場:今回は良い公民連携、悪い公民連携みたいなところで、思い切りぶっちゃけてもらおうかなと思っています。
最初に悪い公民連携を、ばーんと出してもらって、そこからもう一回問題をあぶり出す、そういう手法で行こうかなと思って。

木下:じゃあ悪の所業を繰り返してきた宮本さんに、リアルな日本をお願いします!

宮本: 皆さんこんばんは。宮本と申します。今はENdesignという会社をやっていますが、元は再開発のコンサルタントをやっていました。

私が手がけた宇都宮市の再開発事業を紹介します。市街地再開発事業とは、国土交通省の定義によれば「細分化された敷地の統合し、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図る。」大そうな事をおっしゃっていますが、本当に再開発でこれが実現されているのか?という話をしたいと思います。

再開発ビル

宮本:宇都宮発祥の地と言われている由緒ある神社参道にあった百貨店跡地の再開発事例です。事業費66億円をかけて、8階建ての再開発ビルを建てました。事業費の3分の2、46億円が税金で賄われています。

もう一つが、私のコンサル人生の半分以上を注いでしまった案件で。1、2階が商業施設、3階から24階がいわゆるタワーマンションという、今時の地方の再開発の典型的な事例です。こちらは総事業費79億円で、内税金が40億円、ほぼ半分です。その隣に宇都宮市バンバ市民広場というものを作りました。今は中心市街地活性化委員会というところが指定管理で運営しています。そしてこれが、今月の広場の利用状況。

banba

宮本:ほぼ利用されてない。

馬場:エラーじゃないですよね。

宮本:エラーじゃないです、さっき調べたらこんな状況でした。週に1回くらいしか利用されていない。

当時、再開発は地域活性化の起爆剤になると言われていたのに、これが現状です。再開発ビルも今は半分空きビルです。向かいのタワーマンションができたことで、人口は少し増えました。でもマンション入居者の年齢構成を見ると、高齢化率25%で、全国平均を上回っています。職業構成を見ると富裕層が6割を超えている。

再開タワマンの不都合な真実

宮本:僕は再開発でタワマンを作っても、街は活性化しないと思っています。再開発タワマンの不都合な真実、それは一等地の権利の切り売りです。従前権利者は9人なのに、開発後は169人に増えちゃったわけですね。だから国交省の定義で「細分化された敷地を統合する」って言っているくせに、権利者を大幅に増やしているのです。これは全国どこでも同じです。更にタワマンは相続税対策に抜群ですと言って売り出します。それを聞いて活性化に寄与しない居住者層が買います。合意形成が困難な住民構成になります。だから二度と建て替えられないマンションになるわけです。

ある日の

宮本:これはある夜の再開発タワマン、ほとんど明かりが点いてない。ものすごく乱暴な話をすると、税金を40億円もかけて、263人の住民を集めたと。一人当たり1520万円の公的負担で、住民を集めたのか?と。これはちょっと言い過ぎかもしれないですけど。

再開発界隈の人にこの話をすると、みんな僕の言う通りだって言ってくれるわけです。当初は僕もそれに満足してたんですが、だんだん腹がた立ってきて、お前らまちづくり不感症か、なんでみんなおかしいと思ってるのに…

一同:爆笑

馬場:ということで、この再開発だって公民連携と言われていたわけです。今の日本は、こういう公民連携が頻発して止まらない。その真っ只中に僕らはいるわけで、それをなんとかしなきゃいけないと思っている人たちが集まってるわけですが、木下さんどうですか?

街を食わす公民連携と街を食い物にする公民連携

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木下:今、宮本さんが宇都宮の話を説明してくださいましたが、これは全国どこにでもあるパターンです。

行政が経済効果を訴え始めたら、疑ったほうがいい。税収につながっているのかなんてほとんど誰も検証しない。先程のタワマンだって、住民しか入れない施設なのに税金が投入されて、金持ちが割安で買う。もう誰得なんだ?というようなことがまかり通っている。そんな現状を変えていきたい。それが今日のテーマです。

街を食わす公民連携と街を食い物にする公民連携というのが存在します。そして今まかり通っているのは街を食い物にする公民連携だなと、ね、岡崎さん。

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岡崎: 今日も内閣府の人が、これから地方を創生する人材育成をやっていくと。それはいいんだけど、国の方は人材育成する前に、税制を変えたり、補助金からファインナンスへ資金調達手法を変えるような、仕組みづくりを先にやるべきじゃないかと伝えました。国の目指す方針があって、それにマッチした人材育成をしていくんだという発信がないままに、人材育成なんてしたらロクなやつしか集まらないぞと。

馬場:その通りですよね。

木下:研修などをやる前に、国にしかできないルール変更をしたり、新しいものが出てきて従来のまちづくりに関わってない層が流入してくる環境に整える、というのが一番の人材育成で。例えば今まで公共が作ってた施設を民間が作った時の不動産所得税の減税であったり、公共が使う施設の一部の長期修繕積立の免税措置であったり、民間がインセンティブを失わないようなルール作りが必要です。

清水: 公務員も含めて、納税者としての視点を持ちましょうよっていうのが僕が一番言いたいことです。税金の投資は税金で回収されなければいけない。国債はダメ。あと地方債、これもダメ。こんな借金漬けてキャッシュフローが回っているだなど言うのは経営とは言えない。

民間の経営を普通に考えればいいんですよ。だいたい公会計制度では、地方債による借金までが収入項目に入っている。公会計狂ってます(※1)。納税者としての怒り、僕らはもっと正直に言うべきじゃないかと思います。

街を食い物にする公民連携の現状にヒートアップしてきたところで、前半終了。後半は街を食わせる公民連携はどうあるべきかを語っていきます。

※1 公会計制度においては、地方債の発行により調達した資金は収入に計上される。

PROFILE

松田 東子

株式会社スピーク/公共R不動産。1986年生まれ。一橋大学社会学部卒業後、大成建設にてPFI関連業務に従事。2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。スピークでは「トライアルステイ」による移住促進プロジェクトに携わる。2017年から2020年までロンドン在住。2021年University College London MSc Urban Studies 修了。

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