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〈後編〉公園マスターに聞く!

公園を活用しようと思うと、立ちはだかる法律や規制の壁。一体どうなっているんだろう?悶々と悩んでも、条文とにらめっこしても、一向に答えは出ない。そうだ、専門家に聞いてしまおう!僕は公園の専門家であり、東京都で公園緑地部長を務めていた国交省 公園緑地・景観課 緑地環境室長の町田誠さんに話を伺うことにした。これは、そこで聞いた、驚くべき公園法にまつわる物語…

町田さんによって明らかにされる、「緩い」公園法の真実。では、なぜ公園の活用は進まないのか…?いよいよ最終回となった今回は、公園の管理について、今後の課題に迫ります。

指定管理について

馬場 正尊 馬場さん

上野公園は東京都の直営管理とのことですが、他はどうやっているのですか?

町田誠 町田さん

井の頭公園も東京都の直営で、他の公園はすべて(公園、庭園、動植物園、霊園など90以上)指定管理者がやっています。

馬場 正尊 馬場さん

どんな指定管理者がやっていますか?

町田誠 町田さん

東京都の公園の場合、文化財の庭園や防災上の位置づけのある公園など、高い安定性が求められる公園は、これまでどおり随意契約によって公益財団法人の東京都公園協会が指定管理者になっています。浜離宮庭園や小石川後楽園、六義園などです。その他は、競争ということになっており、民間企業を中心としたグループや公園協会も参加して、受託者が決定されています。

馬場 正尊 馬場さん

文化財と防災が随契なわけですね。ほかのところは、ブロック分けして競争に移すわけですね。代々木公園の指定管理は?

町田誠 町田さん

あそこは、広域防災拠点なので東京都公園協会です。

馬場 正尊 馬場さん

公園協会があって実際の作業は民間企業に発注していますよね?

町田誠 町田さん

そうですね。文化財庭園の場合は、協会内でも伝統技術者を育成するなど、技術継承もやっています。もちろん個別の維持管理作業を造園業者にも発注してはおりますが。

馬場 正尊 馬場さん

ほかのどんな公園が指定管理なのでしょうか?結構大きいところも指定管理ですよね?

町田誠 町田さん

大きなところもありますよ。東京都の公園って、もともと10ha以下のものはないので、基本全部大きな公園ですよ。10ha以下は区市管理の公園になります。

馬場 正尊 馬場さん

区の公園は、指定管理ですか?

町田誠 町田さん

区市町の公園は、区市町村の考え方で管理しています。一般の都市部の小さな公園は、公園愛護会(自治会)に管理が任されていたりすることも多いので、指定管理者に出している公園の実数は即答出来ませんが、全国で1万箇所以上は指定管理者であった記憶があります。

馬場 正尊 馬場さん

そういうところの実態を知りたいですね。指定管理をうまく利用すると、清掃や管理に加えて小さなお店をやるサービス精神のある民間が指定管理を取れば、今の法律の枠組みで行政の確認を取りながら施設を作ることも可能ですよね?

公園協会と民間事業者の切磋琢磨

馬場 正尊 馬場さん

上野公園の仕組みと同じで、小さなハードは行政が作り、民間やもしくは、公園協会を通してという枠組みはあるわけですよね。公園協会っていう組織は柔軟ですか?スタバやっているくらいだから柔軟そうですが。

町田誠 町田さん

柔軟だと思います。指定管理制度が始まり、民間企業も管理運営を受託するようになり、そこが気の利いたNPOと組んで結構なサービスを提供しています。そういうものと競争する環境下にあるため、東京都公園協会もある程度自分たちの姿勢を変えざるを得ないですよ。

たとえば、子供が速いスピードで大きな滑り台を滑っていれば、昔は管理所のおじさんに「怒られた」という感じだったかも知れない。事故は避けたいから。でも「怒られた」という苦情は寄せられる。そういうことが積み重なって、業務全体が評価されるとなると、サービスのマインドに欠けている「管理人」は淘汰されるわけです。

一方、指定管理で民間企業が管理する公園では、NPO法人などと組んで、ディズニーランドかな、と思うような自然教育や環境学習のプログラムをやるわけです。紙芝居なんか持ちながら。

そういうところから刺激を受けながら、公園のサービスはどんどん意識が変わっていくわけですよ。公園協会が話題の中心みたいになってますが、今の東京都公園協会は結構戦闘力あると思いますよ。

馬場 正尊 馬場さん

国所有の公園はどうですか?

町田誠 町田さん

全国に国営公園は17か所あります。その管理については、地方自治がベースの指定管理者制度でなく、いわゆる、公共サービス改革法というもので、すべてが、競争に晒されています。東京都に公園協会があるように、国の公園には、公園財団という組織があります。民間企業と競争しながら、公園の管理業務を受託していますよ。

道路や河川も指定管理できるか?

馬場 正尊 馬場さん

指定管理の仕組みは、道路や河川にも使えますか?

町田誠 町田さん

指定管理者制度っていうのは、公物を管理するための地方自治法の下の仕組みですよね。ですから、理論上は道路だって河川だってやろうと思えばできます。でも、ふつう指定管理者制度が使われているのは、図書館とか公民館などです。

馬場 正尊 馬場さん

ハコものか公園ですね。

町田誠 町田さん

河川は出水があれば、洪水が起きる。道路も事故と隣り合わせで、交通自体は道路交通法があって警察が管理している。そんな場所、普通、指定管理者に任せられないでしょう。だから具体的には知らないけれど、道路管理、河川管理には指定管理者は居ないと思いますよ。そういう意味で、バリバリの社会資本の中で指定管理者制度が多用されているのは公園だけですね。公園は出来そうに見える。

馬場 正尊 馬場さん

もしかすると、もう少し時代が進めば、マッカーサー通りなんかあり得るかもしれない、あれ僕には細長い公園にみえるわけですよ… 下に道路があるんだから、上は、車は通さずに人のための空間にしてしまえばいい。そうすれば、指定管理者の管理する公園道路になるかもしれない。虎ノ門ヒルズに繋がる緑の道、ステキじゃない。

torano
この道路も公園みたいに使いたい。
町田誠 町田さん

森ビルの前の社長さんのもともとの発想として、そういうことを考えていた、という話は聞いたことがありますよ。スケッチも見た覚えがある。

馬場 正尊 馬場さん

河川と道路にも、枠組みとしては、指定管理制度は使えるわけですね。

町田誠 町田さん

しかし、現実に指定管理者制度がたくさん使われている社会インフラは公園しか無いでしょう。公園は指定管理者の運用によっては、創造的にお金を儲けて、公園管理にバックしていく仕組みを構築することができるわけですよ。

現場の悲哀

馬場 正尊 馬場さん

これだけ緩く柔軟な枠組みがあるのに、公園には禁止事項がいっぱい掲示してありますよね。あれは何故なんでしょう?

町田誠 町田さん

集会であれば、何の集会なら良くて何のデモならだめなのという悩みがある。コンサートやると「うるさい」と苦情が来る。BBQをやると「火は危ない、臭う」と苦情が来る。犬のリードが長すぎる、猫に餌やっている人がいる、走る人、自転車乗る人、スケボーする人がいる、ホームレスがいる、その支援活動をする人がいる。それらに対して、すべて苦情が来る。「危ない」や「うるさい」という声が絶えないのです。公園管理者は、それを調整しろと言われる。

こうしたことに常に挟まれているので、「何か新しいことをやらせて欲しい」って声が第三者から上がると、とりあえずNOと言ってしまうような習慣が、公園管理者にあるという傾向は見受けられます。この苦情の合唱に挟まれる構図を少しでも緩くしてやらないと、公園管理者はもたない。公園を良くする人でなく、単なる番人にしている原因の一部は利用者側にもあると思う。

法令では妨げてはいなくても、現場の判断として公園の利用が思い切り創造的でないものになっているという事実はある。それが行き過ぎると何のための公園なのかということになります。

馬場 正尊 馬場さん

秩序をどう保つかっていうバランスが本当に難しいですね。少数のクレーマーのために大多数のサイレントマジョリティの利益が損なわれているのは、まったく公平じゃないですね。サイレントマジョリティには、クレーマーたちに黙れという権利もあるわけですよね。

町田誠 町田さん

公園は、利用者も周辺の人も、思い切り自己主張してくるという珍しい公共施設。図書館の中のトラブルなんかと比べて想像してみてくださいよ。公園の管理者を皆で守る(支える)ような風土(気持ち)は必要だと思いますね。

馬場 正尊 馬場さん

そうしないと公園管理者の大変な状況は浮かばれないな。公園管理者が指定管理で民間のほうが、クレームが少ないということはありますか?

町田誠 町田さん

それは、あり得ます。言葉悪いけど、役人面した管理人より、柔らかな物腰の指定管理者のほうが、結果的に高い調整能力を発揮するケースがあるように思いますね。苦情だって減るし、接し方も変わってくる。

馬場 正尊 馬場さん

市民のほうも行政だと思っていたときと、民間の人だと思ったときとでは言い方が変わりますからね。委託費も行政側で決められるわけですし、それなら指定管理をもっと増やして…

町田誠 町田さん

管理費の削減を指定管理制度に求めるような側面も、行政側にも無いわけではないし、指定管理者をどんどん増やして、という単純な考え方ではダメかも。全国の公園管理のために使われているお金って10年前から、面積がずいぶん増えたにも関わらず、あまり変わっていない、むしろ減っているのではないかと思います。

馬場 正尊 馬場さん

じゃあ、指定管理の人も大変ということですね。

町田誠 町田さん

競争で取るわけだから、今となっては昔の7掛けくらいとか。

馬場 正尊 馬場さん

おいしくはないですね。

町田誠 町田さん

指定管理者の中で一生懸命やっているNPOの人たちが、ちゃんと、家庭生活や人生のビジョンを描けるだけのお金をもらえているのかと心配になることもありますよ。余計なお世話かも知れないけど。

そもそも公園は、不要不急の代物で、無くたって良いじゃないなんて言われる時もありますよ。全体の予算がきつい時に、どの蛇口を締めるかって時には、公園管理は厳しい分野だと思いますよ。管理にお金をかけるな、っていうのは、市民の要請だったりもするわけで、どういう管理が求められるのか、きちんと議論していく必要があります。

行政側に専門家がいない

町田誠 町田さん

もう一つ、行政側に公園の専門家(技術者)が圧倒的に少ない、ということも課題の一つです。じゃあ誰が担当しているのかというと、土木などが専門の人が入れ替わり立ち代わり来るところも多いわけですよ。土木は、技術基準に基づいて判断できることも多いですが、公園は、技術基準というより人の声、ファジーな中でより妥当な判断をしなければならない。

こうした特殊性に慣れる前に、数年でまた異動なんてこともあると思う。ずっと公園のこと真剣に考える人材が行政側にそれほどいないわけですよ。施設の設置・管理、行為の許可を出す側に、創造的な公園管理を進める専門家が圧倒的に足らないと思う。

馬場 正尊 馬場さん

民間側が関わりやすい構造を作っていただけるということが、一番大切な役所の仕事なのではないかとよく思います。そうすれば、それをやる人間の人口が一気に増えるわけですから。

町田誠 町田さん

そうですね。最近私は、利用者側に、使い手のプロ集団を一つ作って、この人たちがどこからともなく来ると、公園利用が活性化して、公園の周辺環境、関係もすごく良くなる、そしてまた、次の公園に渡っていくというような集団があればいいなと思ったりします。絵空事のように聞こえるでしょうけど…

馬場 正尊 馬場さん

「Happy Outdoor Wedding」をやっている柿原さんとか、それはどちらかというと一時的なものですが、もう少しそれを恒常的に運営するといいですよね。それを複数のところでオーガナイズできればいいのではないでしょうか?

もっと柔軟な都市公園の管理を

町田誠 町田さん

公園は規制だらけ、と思われることが多い。けど法令上致命的なことは、それほど無いと思う。そう思われるような管理になってしまっているだけ、というのが事実だと思います。管理法である公園法の何かを改正すれば、公園の利用や活用が飛躍的に活性化する、というような単純な構図では無いですが、もっと都市の魅力や活力に寄与する素敵な公園が増えるための取組は、粘り強く続けていかなければいけないと思う。

現場の管理人?に四方八方から対立するクレームが集中する状況や、専門家の不足や厳しい予算の制約など、意外と根本的な問題があるわけですから、そう簡単には変わらないでしょうけど、公園資産の効用を高めるようにしたい。

馬場 正尊 馬場さん

公園管理をしている自治体の気合いもありますよね。新たな旗をたててもらえれば、僕らもそれを振れますから。利用者の側からももっと声を上げていきます。

質問を終えて

これだけ法律と現実との関係を体系的に捉え、しかもわかりやすく説明できる方はちょっと町田さんの他にはいないんじゃないでしょうか。話を聞きながら、僕の認識が間違っていたところもたくさん気がつくと同時に、現在のルールの中でもかなりのことが可能であることも分かりました。やはりルールの背景があって、それを把握した上で行う活動には強度があると思います。公共Rでは、これからもこうしたルールや背景を、学ぶとともに、わかりやすく発信していきます。

公園マスターに聞く!前編

公園マスターに聞く!中編

PROFILE

松田東子

ライター
松田東子

株式会社スピーク/公共R不動産。1986年生まれ。一橋大学社会学部卒業後、大成建設にてPFI関連業務に従事。2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。スピークでは「トライアルステイ」による移住促進プロジェクトに携わる。ロンドン在住。