〈中編〉公園マスターに聞く!

公園を活用しようと思うと、立ちはだかる法律や規制の壁。一体どうなっているんだろう?悶々と悩んでも、条文とにらめっこしても、一向に答えは出ない。そうだ、専門家に聞いてしまおう!僕は公園の専門家であり、東京都で公園緑地部長を務めていた国交省 公園緑地・景観課 緑地環境室長の町田誠さんに話を伺うことにした。これは、そこで聞いた、驚くべき公園法にまつわる物語…

公園マスターの町田さんに、公園法にまつわる疑問をぶつけていくこの企画。第二段は、上野公園のスタバが出来た仕組みと、「公園施設」なるものについてお話を伺っていきます。

上野公園のスタバはどうやってできた?

馬場さん

上野公園にスターバックスがありますが、あれはどんな仕組みであそこにあるのですか?

町田さん

上野公園のスタバの仕組みはちょっと複雑です。第三者に施設の設置許可をしているのではなく、あの大きい建物二つ(レストランとスタバ)は東京都が作りました。要するに、ハードは東京都が整備し、その施設の管理許可を東京都から東京都公園協会に出しています。東京都公園協会は、もともと都立公園の管理を主とした所謂外郭団体ですが、今は、指定管理者として、競争の下で公園管理を受託する者のひとつです。そして、東京都公園協会がテナントを募集(コンペ)し、スタバとレストランが入っています。あたかもスタバができたという風に思われていますが、東京都の箱を管理している公園協会がいて、そのテナントに入ったのがスタバということです。

馬場さん

スタバはどんどん売り上げていますよね。建物の賃料しかスタバは払っていないのでしょうか?

町田さん

賃料のほかに、売り上げの数%が公園協会に入るような仕組みです。東京都公園協会はその上がりを何に使っているかというと、上野公園の運営にそのお金をバックしています。公園協会は公益財団法人ですが、事業の半分未満までなら収益事業も行えますので、このように、収益から上がる利益を公益目的的なお金として公園管理にバックする仕組みを持っているわけです。いろんなものを合法化する手続きがちゃんと用意されているわけです。

上野公園の再生計画

馬場さん

誰がその仕組みを考えたの?

町田さん

上野公園は開設して140年も経っており、樹木も伸び放しになっていました。現在、スタバのある竹の台広場はすごく大きい広場になっていますが、もともと真っ暗な樹林地の中に細長い池と噴水があるだけで、夜は怖くて人も通れないくらい真っ暗な場所でした。そこで、もっと人が集える文化性の高い広場にすべきだということが、上野公園の再生計画の中で決められました、7~8年前くらいの話です。

現在の竹の台広場
現在の竹の台広場
町田さん

再生計画では、竹の台広場で文化行事やイベントができる空間を作ろうということになり、大きいイベントスペースにあわせて、カッコいい飲食店も作ろうということで、これらの施設ができました。

馬場さん

結構前からその計画は存在していたのですね。

上野公園での商売と的屋

町田さん

一方、民間が営業するいくつかの店舗などは今後、上野公園から出て行って頂くということも同時に進めようとされています。

馬場さん

それは何故ですか?

町田さん

一言で言えば公園管理の「適正化」ということです。具体的なことはお話ししにくいですが、公園管理上好ましくないと思われる民間営業の施設は公園からは出て頂くべきという整理がなされているわけです。

動機のひとつは、新たな侵入者を許すことが無いよう、公園内の権利関係を整理しようということです。所謂、露天商と公園管理のせめぎ合いということが関係しています。

一般的に的屋などと呼ばれる露天商は公園管理上の問題から、公園管理者はこうした方々の営業には神経を尖らせています。簡単に言えば、日比谷公園や代々木公園は、露天商が営業する場所にしてはいけないということになっています。この問題の根は深く、所謂的屋組織に反社会的勢力が関わっている場合があるというところに行き着きます。ですから、こうした対応も警察と公園管理者が一体となって行うということになります。こうしたことから、公園の中の権利関係をすっきりとしたものにするために、一部の民間営業の施設の整理を行うという考え方は間違いではないと思う。もちろん、公園施設の計画上、どいて頂くということでもあるのですが。
公園管理は、反社会的な勢力に加担することが無いようにという視点にも及んでいるのです。こうした考え方は正しいと思います。

馬場さん

そこは、線引きをしっかりしてあげないといけないですね。
行政も辛い立場にあり、そこを守る仕組みとロジックは必要ですね。下手すると自らの身に危険が及ぶこともあるわけだからなあ。

町田さん

例えば、春の上野公園の桜の時期は、露天商の不法な営業を阻止することに必死なわけです。

馬場さん

市民としても、その背景を知っておかないといけないですね。

町田さん

一部の露天商が儲かるとそれに関係する方々の収入になり得ることを、一般の利用者の方々は意識しない場合も多いでしょうし、いろんなお店がある方が賑やかで楽しい、嬉しいと思う人もいるわけですよね。
公園管理者は、直感的に理解が得られにくいことも、進めなければいけない立場にあるという一つの例です。

 西郷さんの足元

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これも公園施設
町田さん

上野公園の西郷さんの下に飲食ビルが3件ほど建っていますよね。今は綺麗に立て直されましたが、あのビルの中は何かというと基本、飲食店、飲み屋(系列店が多い)です。あれらは、上野公園と無縁のように見えますが、実は、上野公園の公園施設なのです。公園法の2条7号の便益施設の中に、飲食店が含まれますが、それに該当します。

馬場さん

あれが公園の中に置けるなら、なんでも大丈夫じゃないですか!

町田さん

都市公園法には、「飲食店(料理店、カフェ、キャバレーその他これらに類するものを除く)」とあります。カフェやキャバレーなど、古めかしい風俗営業法上の名称が使われておりますが、あの飲食店群は公園法上、認められる「飲食店」に該当するという解釈を東京都はしています。

:解釈の問題なのか。

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そしてこれも公園施設
町田さん

なぜ上野公園ではあれを公園施設として認めているのか。実はつい最近まで公園施設という整理をしていなかったものを、近年正式に公園施設としているのです。

馬場さん

なんでだろう?

町田さん

上野公園周辺は戦後、多くの闇市で、ごちゃごちゃでした。そこで、闇市を出発点とした商店をひとつの建物に押し込んで整理した。それが、上野公園の地面の下に埋まっているように見えた、建物の中の中だったのです。それがあの施設のきっかけであり、今に至って、正式に公園施設という市民権を得た。まさに、第三者による公園施設の設置・管理許可を大胆に適用させた例です。
どのような法令上の解釈だったのかというと、以前は、東京都の公共財産の目的外使用、という位置づけでした。都の監査上、公共財産の使用許可をあのような民間の商店に適用するのは適切でない、ということになって、それでは、ということで、都市公園法の公園施設にすること、設置・管理許可施設とすることによって、一気に整理してしまったわけです。

公園利用者が飲食する施設ですから、あのような公園の足下の飲食ビルを公園施設にしてしまうことは、解釈上出来てしまう。それくらい公園法の規制というのは実は緩く運用することが出来るのです。東京都の監査上認められないものが、公園法上では適法になってしまっています。

馬場さん

でも、日本中の自治体の人は、そんなこと全然知りませんよね。

町田さん

公園施設っていう定義は、公園の機能を全うするもの、都市公園の効用を全うするものです。あそこの居酒屋も公園の機能、利用者のためのものであり、公園利用者がそこで飲み食いしているのです。そう解釈すれば良いのだという例です。

馬場さん

公園に関する法律は、それ位良い加減なわけですね。都市公園に近隣公園と街区公園が含まれるということは、近隣公園、街区公園はこの枠組みの中に入るってわけですよね。

町田さん

そうなりますね。

馬場さん

規制は全くないんですか?

町田さん

都市公園の中で根本的な規制、縛りは何かというと建蔽率ですね。建蔽率は基本2%で、それ以上は、施設の種類(休憩のための施設、図書館など)に応じて10%ごとに緩和されます。最大で30%を超えます。大きい公園では、かなり多くのものを建てられますが、小さい公園では難しいのが実態です。しかし、近年の規制緩和による法改正で建坪率も参酌基準という位置づけになり、地方公共団体の条例で変えることができるようになりました。建蔽率ですら変えることができるようになっているのです。勇気のある公共団体なら大変高い建蔽率もできないことはないわけですよ。まあ、もともとの用途地域に定められた建坪率の範囲内に縛られるわけですが。

馬場さん

商業地域なら60~80%くらいまでになりますね。

町田さん

でも、やっぱり公園ってオープンスペースですから、オープンスペースを基調とする空間であって欲しいですね。

馬場さん

どんな公園でもコンビニ・キオスクぐらいは建ちますからね。地方自治体の人は公園で営業をしちゃいけないって思っている人が多いと思うのですが?

町田さん

地方公共団体の条例の中で一切の営業をすることを禁止しているところもあるかとは思いますよ。

馬場さん

あれは、公園法ではなく条例で禁止しているわけですか。

町田さん

少なくとも法律には書いていませんよ。

どこの公園でも物を売ることができる

町田さん

でも、たとえばイベントでものを売ることは、多くの場合、行為(イベント)の許可の中で物品を販売することは一般的に行われていますよ。許可を受けて、モノを売ることができます。

「イベントでこんなことをやらせてほしい」という申し出があったときに、それを絶対不許可にするということの根拠は多くの条例にはありませんよ。条例上、「禁止」しかあり得ないという定めになっているなら仕方ない、取り付く島もないということだけども、多くはそうではない。公園管理者が許可さえすればできるわけです。

東京都の公園では、昔、いわゆる営業的冠イベント(スポンサーがついている)例えば〇〇フェストなどのビールのイベントなどのは、基本、許可していませんでした。というよりも、基準が明確では無かったのだと思います。

それでは時代にそぐわない、ということで、日比谷公園が開設100年を迎えた年(11年前)に、規制緩和公園という概念を作りました。

馬場さん

それは、都が作ったということですか?

町田さん

はい。規制緩和公園は、冠イベントや営業的イベントをして、そこで儲けてもらって構わないという公園です。規制緩和公園は、10か所くらいあります。

馬場さん

その10か所の公園以外は規制されているわけですね。

町田さん

規制緩和公園っていうと、その公園だけ開かれていて、ほかの公園は全く規制されている印象を受けますが、そんなこと本当はどこにも書いていないわけです。「自主」規制公園といえるのでは無いでしょうか。他の公園も冠イベントをやってはいけない、という規制が条例上あるわけではないのですが、規制緩和公園と言っている公園については、冠イベントを許可することを明確化したというふうに考えてもらって良いと思います。

馬場さん

単なる都の方針ということですか。

町田さん

そう、方針ということです。

馬場さん

規制緩和公園は、日比谷公園の他にもありますか?

町田さん

代々木公園、駒沢公園などですかね。

馬場さん

東京を代表する公園ですね。

民間企業が経営する飲食店も公園施設になりうる、というのは驚きでしたね。次回後編では、せっかくこんなに「緩やかな」公園法の枠組みがあるのに、公園の活用は進まないのか、今後の課題に迫ります。

公園マスターに聞く!前編

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