日本初!トライアル・サウンディング実施
水海道みつかいどうあすなろの里

トライアル・サウンディングとは、行政が活用を検討している敷地に対し、民間事業者が提案を検討している事業を、まずはトライアルで実施してもらう期間を設けるという取り組み。日本で初めてその手法を取り入れたのが常総市!今回は2つの物件への提案を募集します。

あすなろの里ロッジ

先日、常総市さんからうれしいご連絡をいただきました。

「公共R不動産の本を読ませていただき、そこに出てくる、妄想企画の中の『トライアル・サウンディング』を実際にやってみたいのですが、この名称つかっていいでしょうか?」と。もちろんです!さっそく、どんな公募なのかお聞きしました。

トライアル・サウンディングとは?

公共R本を読まれていない方のために、改めて。トライアル・サウンディングとは、行政が活用を検討している敷地に対し、いきなり事業者募集の公募を実施するではなく、民間事業者が提案を検討している事業を、まずはトライアルで実施してもらう期間を設けるという取り組み。官民両者ともその結果をフィードバックし、その後の公募に活かしていくための新しいサウンディングのプロセスとして書籍でも提案しています。

公民連携手法の中でも、特に、行政がとある公共空間活用を民間に貸付ける場合、事業期間が長くなりやすいもの。民間企業にとっては投資回収期間が長い方が安心というメリットがあるのですが、事業期間が長くなると、行政はパートナー選びに慎重になり、必然的に会社の信用力やネームバリューに頼ることに。なかなか新しくておもしろい事業を展開するベンチャー企業や、中小規模の実績の少ない会社が公共空間活用に参入する門戸を開くことが難しいという状況にあります。

そこで!実際にトライアルしながら、事業者を決めてしまおう、というのがトライアル・サウンディングの趣旨。事業者にとってもテストマーケティングになり、行政にとっても、信頼できるパートナーであるかコミュニケーションをとりながら選ぶことができます。

さらに、官民だけでなく市民にとっても「いったいどんな事業者がくるの?私たちの公共空間が何に変わってしまうの?」という不安をぬぐい、宿泊や飲食など、企画によっては市民も参加しながら選定プロセスを体験できてしまう、まさに三方よしな手法ではないかと思っています!

対象敷地は常総市イチオシ物件

さて、前置きが長くなりましたが、今回、常総市が日本で初めてその手法を試されるというフィールドは2つ。

●水海道あすなろの里(”ミツカイドウ”と読む)

昭和53年に整備され、市内の小・中学生の自然・農業体験の研修場となってきましたが、老朽化し、利用率が低下。しかし、都心から車で1時間ほどの場所に、冬には白鳥が飛来するような沼やキャンプ場、少し起伏のある散策路など、東京ドーム2個分の広さに自然が広がり、滞在する設備もそろっている、という悪くない条件。近隣にちょうどいい具合に住宅地もなく、世界観は作りやすそう。

●吉野公園

こちらは、珍しい市営の「へら釣り場」!(と、盛り上げてみたもののヘラって何か知りませんが。)釣りファンはもちろん、私のような釣りファンでなくとも、この川沿いに続く公園はもっと色々できそうですよ。釣りに特化してきたために、潔いくらい他に何もない、というのが実はアピールポイント。

その他詳しい推しポイントは行政のページでぜひチェックを。

2020年3月までいつでも提案受付中

※募集期間を延長しました!

期間については4月1日から公募開始、2020年3月31日まで随時トライアル事業者を募集とのこと。民間事業者が事業期間を自由に設定できます。春夏秋冬、季節ごとにテストしてみるもよし、1日だけ使ってみるもよし、週末ごとに通うもよし、夏休み狙いで一定期間借りるもよし。どんなパターンでのトライアルも可。

ただ、自然環境の中ということもあり、夏に応募が集中してしまう可能性が。一年中募集はしているものの、使いたい期間がある方は、なるべく早めの申請がよさそうですね。

参加費0円。トライアル期間は期間がどんなに長くても無料で借りられます。営利・有料イベントも可。ただし、逆に行政からお金がでる事業ではないので、そこはご承知くださいね。

トライアルまでのプロセスと、その後

手続きはシンプルな3ステップ。スムーズに行けば最短5日間くらいで手続き完了です。

→事業概要の提出(メール可、使用許可申請書も同時に提出)
→審査
→行政財産使用許可

ですが、どういう施設なの?とか、こういう事業は可能?といった事前相談・視察はいつでも受付とのこと。顔が見えないドキドキなコンペよりいいですよね。民間事業者が実際に企画を実施するわけなので、行政としてはその時に実力を見ればよく、事前の提案や審査での厳しい基準、煩雑な手続きはなさそうです。

 今後の事業の展開については、12月までの実施状況を見て、今後、長期で借りてくれる事業者を正式に公募する予定。恐らく、2020年に公募となり、トライアル参加しなかった方も含めて応募できますが、トライアルに参加しておいた方がお互いにとってよいような気がします。

この場所、ちょっといいかも。と可能性を感じてくださる方、中小規模でまだ実績がなくなかなか公共空間活用に乗り出せないともぞもぞしていた方、日本初手法に取り組む常総市の気概に共感してくださる方、ぜひぜひ、ご参加おすすめです!

妄想責任者の公共R不動産としても、なにかできることがあればサポートしたいと思います。まあ、初めての試みでわかりにくかったりすると思うので、一歩踏み出したい事業者さんで、そもそも公共との事業がよくわからなくて常総市さんに連絡するのめためらう…という方は、ぜひ気軽に公共R不動産にご連絡ください(笑)

どんな結果になるのか、私たちも楽しみにしています!

PROFILE

菊地 マリエ

公共R不動産/アフタヌーン・ソサイエティ。1984年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。日本政策投資銀行勤務、在勤中に東洋大学経済学部公民連携専攻修士課程修了。日本で最も美しい村連合特派員として日本一周後、2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。現在はフリーランスで多くの公民連携プロジェクトに携わる。共著書に『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』。

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