地域と共存する廃校の未来
服部小学校

服部小学校外観、左側が体育館、手前が南校舎、背後に見えるのが北校舎

なんとなく、瀬戸内ののんびりした海のイメージが強い広島県ですが、今回の募集は福山市北部の山側にある福山市服部小学校。この季節になると、天然のホタルが飛び交い始める自然豊かな地域です。2階建て9室のコンパクトな校舎。特別教室・職員室棟は別棟になっており、使いやすい大きさで、複数の提案で別々に使い分けた複合施設にしてもおもしろいかも。

明治5年設立の歴史ある小学校ですが、今では1学年1クラス、高学年は複式学級となっています。少子化に加え、高齢化率も42.6 %(2019年現在)と上昇してきていることから、学校再編の計画で、来年度明けに近隣の小学校と合併し、閉校することに。

これまで地域住民との協議を重ねるなかで、「企業に使ってもらっては」という声も聞かれたことから、一度、どのような企業が興味を持ってくれるものか、アイディア募集をしてみることになりました。したがって、貸付の金額や貸出期間についても、利用ニーズのある事業者(あるいは地域団体など)の要望を最大限に聞いてくれるチャンス、ともとれますね。

服部小ってどんな場所

小学校の近くには、高い山の少ない中国山地では比較的傾斜がきつく登りがいのある蛇円山(じゃえんざん)の上り口があり、景色のよさからピクニックやキャンプに訪れる方も多いそう。瀬戸内でサイクリングといったらしまなみ海道ですが、蛇円山はバイクといっても、ヒルクライム人気の方が高い模様。福山は広島県の最も東、岡山県と県境を接しているため、文化圏的には備後地方となり、岡山県側からのアクセスも良好です。

提案前の心構え

わくわく提案を考えていただく前に、留意点を2つ。

1つ目は、公募要項にも書かれていますが、地域住民が一部を地域活動や行事に使いたいというニーズがあり、できればそれらと共存していけるような事業がよいとのこと。

2つ目は、建物の状況は未確認のため、もしかしたら設備の更新投資が必要になる可能性があること(ただし、現在まだ小学校として稼働しているため、基本的には問題がないとの認識。耐震はクリアしています)。改修の予算措置などができている状況ではないため、もしかしたら、住民との調整と貸出の条件調整のため、少し時間がかかるかもしれません。

ひとまずニーズを知りたいということなので、事業者側に求められる提出書類も、1枚のフォームへの記入と、最低限に抑えられています。気軽にご相談していただき、直接施設を見に行かれ、対話する機会をつくっていただくのが得策のようです。ぜひ、ホタルも見てきてくださいね!

PROFILE

菊地 マリエ

公共R不動産/アフタヌーン・ソサイエティ。1984年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。日本政策投資銀行勤務、在勤中に東洋大学経済学部公民連携専攻修士課程修了。日本で最も美しい村連合特派員として日本一周後、2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。現在はフリーランスで多くの公民連携プロジェクトに携わる。共著書に『CREATIVE LOCAL エリアリノベーション海外編』。

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