コラム

徹底解説!大津市駅前公園&中央大通り公募要項

text = 公共R不動産

8月初めにキックオフしたOtsu Lakeside Renovation Project。京都から9分という好立地ゆえに、ちょっと個性に欠ける滋賀県大津市。琵琶湖の使い方を本気で変えることで、まちに新たなアイデンティティを与えるようなプロジェクトがスタートしました。

あれから4ヶ月。この間、マーケットサウンディング調査を行い、どんなニーズがあるのか、どんな条件ならありなのか?探ってきましたが、ついに公募がリリース!

8月に開催したキックオフイベントで話をする左から馬場正尊、越直美大津市長、ハートビートプランの泉英明さん

第一弾の公募は、駅から琵琶湖につづく「道」を変えていこうという狙いです。駅前の公園と道路をまるっと活用して、駅を降りたら、自然と大通りの方に進みたくなるようなきっかけとなる仕掛け、ご提案をおまちしております!!!

大津市HP:大津駅前公園及び中央大通りでの活用事業者の公募を開始します!

公募要項解説!

とはいえ、今回の公募要項(以下、「公募設置等指針」のことを公募要項で統一)、非常に複雑なので、少し解説させてください。複雑になっている理由は、2つ。

【理由1】ひとつは、駅前から湖への「道」を変えるのに、ちょうどいい立地にある「公園」もセットで使おうとしているため。つまり、道路と公園の2種類の違う法律により管理されている空間が、一本の要項のなかにつめこまれていること。

【理由2】もうひとつは、さらに、そのうちの公園空間については、P-PFI(パークピーエフアイ)という、新しい制度に基づいて募集されており、国土交通省が定めた聞きなれない用語が飛び交っていること。

上記の要項は、図示するとこのような構成になっています。下記を手元に要項を読み進めていただければ迷子にならないと思うので参考にしてほしいです。

※公募設置等指針より公共R不動産が独自に作成

それにともない、役割分担も複雑に。業務全体の図と、各種役割も整理してみました。イラストのエリアと、業務内容表の色を対応させています。あわせて条件もざっくりまとめてみました。要項に描いてあることは、つまりこの図に集約されています!

※公募設置等指針より公共R不動産が独自に作成

P-PFIとは?

公園についてですが、まず、P-PFI(パークピーエフアイ)という制度をつかっています。この新制度については、国から制度概要と「こんな要項にしてください」という見本が提示されています。

これも十分わかりにくく、これ自体に解説記事が必要なのですが…完璧に理解しなくても大丈夫なので、さらりと目を通しておくと、すんなり要項が読めるかもしれませんので、お目通しいただければと思います。

国土交通省資料:都市公園の質の向上に向けたPark-PFI活用ガイドライン

 

前出の国土交通省ガイドラインより抜粋

P-PFIができた背景を知っておくと、すんなり制度の意味がわかると思うので少しだけ。全国の自治体の保有する公園で施設の老朽化がすすんでいるのですが、一方で財政状況は悪化の一途。そこで、P-PFIでは、民間事業者に機会を広げることで、彼らに利益を得てもらいつつ、そのお金で市が希望している公園のリニューアルを図るということを目指しています。

 

なので、同じ公園内の整備について、呼び方が3種類存在しています。今回は、うち2種類をもとめており、①民間が自由に事業提案できるメインの施設(=公募対象公園施設)と、②市の側がリニューアルをリクエストしている施設(=特定公園施設)にわかれています。

<ポイント>
①公募対象公園施設:
民間が自由に事業提案できるメインの施設
②特定公園施設:市の側がリニューアルをリクエストしている施設

 

つまり、市の側がリニューアルをお願いする代わりに、これまで公園敷地面積の2%までとされていた建ぺい率(施設を建ててよい敷地面積)を、12%に拡充し、稼げる機会を強化。面積要件緩和によるビジネスチャンスの拡張と、リニューアル費用の充当をバーターにした制度と考えていただければと思います。(基礎の基礎を主観的に捉えたものであり、本当はもっと色々ありますがとりあえず)

大津駅前公園

公募対象公園施設と特定公園施設とは?

さて、それを踏まえ、今回の大津。
まず、民間事業者からの事業提案の中核を担う施設が公募対象公園施設で、今回は飲食か物販が主な用途となりそうです。求められている事業は、道にはみ出して賑わいが可視化され、楽しげな雰囲気が醸し出されるような事業であること。そのために、道と公園をつないで使い、大津駅から降車してまちに来た人が、思わず足を運んでしまうような仕掛けが仕込まれていることです。

それから特定公園施設。これがAとBに分かれていまして、この違いは使い方が指定されているかと資金の出し手になります。Aはトイレを作ってくださいという指定があり、ついては市が負担する上限2,000万円で、整備後、市から事業者に整備費をお支払いします、というもの。

Bは、市が「こんなものがあったら助かるなー」と思っているもので、民間企業が資金を負担せねばならないもの。ものとしては、休憩スペース(きっとベンチのこと)、照明や歩道、サインなど。公募対象公園施設からの利益を充当して、自主的に提案してつくってくださいね、というものです。

中央大通り

特殊な点:全体のレイアウト・デザイン提案が可能!

国の出しているガイドラインにはない、ちょっと特殊な状況として、民間の提案業務に、『全体のパース』作成というのが含まれていることが挙げられます。

これは、そもそも、市役所が公園全体の改修工事を考えているタイミングだったので、どうせなら民間事業者が「あったらいいな」と思う、全体の公園のデザインも提案してください。市役所で反映させます、というもの。これは、めっちゃお得ですよね。公園内の施設レイアウトやデザイン全体を、民間が使いやすいように提案でき、市役所がそれを聞き入れて、市の資金で整備してくれるようなものですから。

ただ、制約があります。これまでこの周辺で定期的にイベントを開催してきた地域の方の要望を踏まえて提案するのが必須ということです。具体的にいうと、それはステージと多目的な空間(これは、要するに何にでも使えるような「広場」のことだと思います)になります。きまった面積の要件や形状は特にありません。別紙の資料に、これまでの使われ方と、地元の委員会で話し合われて描いたビジョンが添付されているので、これを参考に提案していただければと思います。ただし、注意点は、地域の方の描いたビジョンではトイレの撤去は考慮されていないため、提案でいる範囲が限られた状況での提案となっているところです。

例外的な点:資金的措置、利便増進施設なし

また、国のガイドラインでは含まれているのに、大津の要項から除外されているものとしては、国の資金的なバックアップが適用されないこと。また利便増進施設の提案を求めていないこと(純粋に民間の利益を追うもの)。どちらも、この公園敷地が狭すぎて、除外された点となります。こちらは、P-PFIをよく知っている人ほど注意です。

中央大通りについて

さらに、今回、この公募を複雑化しているのが道路(中央大通り)の存在!
公園前の中央大通りを、下のような風景にしたい!というのが市の要望、と見られます。なんせ、ベースになっているのはジュネーブ構想ですから。ジュネーブのモンブラン通りのように、人が街に溢れて、歩いて琵琶湖までの通りを楽しむような風景を描いているのです。


越市長自らがジュネーブで撮影した写真

実は、今回の公募に先立ち、大津市では、このジュネーブ構想にもとづき、1車線を歩道化、中央大通りの一部歩道を現在の約3倍に拡幅する計画をすすめていました。しかし!オープンカフェって、だいたいカフェの前にでているものですよね。で、計画をすすめるうちに、「歩道化してもそもそも席をだしてくれるカフェがないとあかんやん」と、気づいたようなのです。そのため、今回は公園部分と道路をセットで公募するということになったということが経緯のようです。

なので、道路部分については、オープンな業態であり、さらに、駅を降りて街に出た人が、つい歩みをそちらに進めてしまうような場所になることが求められています。ということで、道路への提案を求めますといっても、何か建ててくださいということではなく、あくまでも、使われている状態が見えたり、楽しそうな雰囲気が伝わったりする工夫をしてくださいということ。

と言う意味では、席を外に出すだけでは人は来ないわけですから、積極的に道路部分をつかう定期的なイベントやプログラムを企画・提案してもらえるとポイントが高いと思います。もちろん、もし、人がそちらに足をすすめるきっかけとして、なにか建築物を建てたいという場合は、それも可能です。が、このエリアは耐火構造にしないといけないエリアにかかっているため、建てるとなると、かなりガッチリしたものになってしまいそうで、投資額がかさんでしまうかも…というわけで、間をとって、キッチンカーとか、仮設店舗のマルシェとかが例示されているというわけです。

審査員の顔ぶれもちょっとおもしろい

さて、最後に気になる審査員は!
審査委員長は、さまざまな公共物件の審査会の座長は大阪府立大学の武田先生。さまざまな街の取り組みの知見があり、超バランサーです。こんな複雑怪奇な要項でも取りまとめられるのは、武田先生くらいしかいないかもしれません…!

そして今回特徴的なのは、まず、人数が多いこと。そして建築出身ではない審査員のお二人がはいっていること。
一人はにぎわい総研の松本大地さん。様々の商業施設のコンサルティングを手がけてこられた実績があり、クリエイティブシティ ポートランドのエキスパートとしても知られています。もう一人はハートビートプランの泉さん。泉さんにはキックオフ時にも水辺のお話をお聞きしましたが、そのご縁で審査員もお引き受けいただいたようです。というわけで、変化球的な提案も評価できる陣営が揃っているように見受けられます。むしろ変化球を待っているかもしれません。駅前という好立地で市民からの注目度も高いとうことで、今回は公開プレゼンテーションで審査会を実施します。ぜひ、ちょっと尖った提案も思い切ってご提案ください!

※公募設置等指針より公共R不動産が独自に作成

駅前が変わると印象がガラッとかわりますよね。
毎日通勤が楽しくなるかもしれないし、遊びに来た人も「お?この街なんかおもしろそう」と思ってくれるようなエントランス。どんなのがいいんだろう。皆さんのご提案楽しみにしています!

※なぎさ公園の方については、まだまだ調整中。
もう少しお時間いただきます。

日経BP社「新・公民連携最前線」に公共R不動産のコラムを連載中