コラム

泊まって考える!公共R不動産 in 東彼杵町

text = 公共R不動産

この10年間、全国で約5800校の学校が廃校となっています。ノスタルジックな雰囲気や広々とした空間を活かし、そのうちの約70%が新たに活用されています。近年では、宿泊施設や企業の研修施設などの用途に生まれ変わる事例も増えています。地域の拠点として愛されてきた学校の活用には、多くの障害があり、また、その特性から大きなポテンシャルも秘めています。
公共R不動産では、長崎県東彼杵町にある廃校に実際に泊まり込み、とことん廃校活用について考えてきました。その2泊3日の廃校活用合宿の模様をレポートします!

参考データ:「廃校施設活用状況実態調査の結果について」文部科学省 (平成26年11月13日)

 

IMG_4052 のコピー

大村湾を望む、長崎県東彼杵町。

人口約8千人、長崎県のほぼ中央に位置する東彼杵(ひがしそのぎ)町は、一年を通し比較的温暖な気候で、波穏やかな大村湾と茶畑が広がる山々に囲まれた、自然豊かな町。長崎空港から車で30分でアクセスできる立地で、周辺には焼き物で有名な波佐見町、日本三大美肌の湯で知られる佐賀県嬉野市など、西九州の魅力を堪能できる場所です。

今回、合宿の舞台となったのは、大村湾を望む斜面に建つ「旧音琴(ねごと)小学校」。2016年3月末に廃校となり、現在活用方法が検討されています。とは言え、廃校を活用するには、財産処分の手続きが必要であったり、合意形成に時間がかかったりと、様々なことがハードルとなることも。

そこで、公共R不動産メンバーが、実際に空間を体験し、地域のリサーチを行いながら、新しい視点の活用提案を行うべく、合宿にお邪魔してきました。馬場正尊の率いる設計事務所オープン・エーのメンバーも加えた総勢15名で、より具体的な活用を想定したチームアップで、長崎県へ乗り込みました。

IMG_3979 のコピースーツケースで各地からメンバーが集合

 

2泊3日!(強行)合宿プログラム

<1日目>
8:15   羽田空港発
10:10 長崎空港着
11:00 東彼杵町からの情報提供
11:30 旧音琴小学校視察
13:00 町巡り
・千綿駅「UMIHICO」(2016年11月末閉店)
・味噌蔵「大渡商店
・米倉庫リノベ「Sorriso riso
17:00 夕食作り、交流会

<2日目>
9:00  2チームに分かれグループワーク
12:00 漁港でBBQ
14:00 追加調査、プランづくり

<3日目>
10:00 地域の方へプレゼンテーション、意見交換

negoto-map提供:堀越 一孝

 

町の魅力を肌で感じながら、事業を考える!

まず訪れたのが、日本一海が近い駅として有名な「千綿(ちわた)駅」。レトロな駅舎のすぐ向こう側に海が広がっています。自治体が駅舎を所有している珍しい事例で、町が公募で活用者を募集し、「UMIHICO」というカフェ兼デザイン事務所として使われていました。元地域おこし協力隊の堀越さんが、2015年より町から借受け、カフェの運営に加え、地産食材の販売やワークショップを開催するなど、町の交流拠点として機能していました。(現在は、他事業者が活用中)


14372388_883753225090754_2808425949437564229_o日本一海が近いと言われる「千綿駅」

 

続いて、昔ながらの製法で味噌を販売する「大渡商店」で味噌の仕込み現場を視察。三代目の大渡さんはまだ20代で、バイオテクノロジーの勉強をして味噌蔵を継ぐため東彼杵に帰ってきたそう。

次に訪れたのは、米倉庫をリノベーションしカフェやアンティークショップの複合施設として再生した「Sorriso riso」。倉庫の雰囲気をそのまま生かした空間は、ほぼDIYだと聞き驚きました。どちらも若手の事業者が運営しており、まちづくりの担い手の方々と意見交換することが出来ました。

DSC_0279左:「大渡商店」、右:「Sorriso riso」

 

夕飯は、地域のお母さんと一緒にクジラを使った「だご汁」づくり。地域の方々と郷土料理を囲みながら、旧音琴小学校への想いを伺いました。

食後には、東彼杵の名産品、そのぎ茶をいただきました。大山製茶園の大山さんに、お茶の淹れ方を伝授していただきました。お湯の温度で、こんなに味が変わるなんて、一同目からウロコ。東彼杵の魅力を堪能した1日。この魅力をどのように提案につなげていくか…妄想は膨らみます。


夕食
左上:クジラ、右上:みんなでいただきます、左下:淹れたてのお茶で驚く様子、右下:地域のお母さんがふるまってくれたバラ寿司

 

点在する魅力をどのように活かしていくか?

2日目は、2つのグループに分かれプランの検討を開始。
「学校活用チーム」と、町全体の提案を行う「エリアマネジメントチーム」に分かれ、地域の核として廃校からの波及効果の可能性も模索しました。
お昼は旧音琴小学校すぐ近くの音琴漁港でBBQ。この日も周辺町民の方に音琴地区の話を伺いながら、新鮮な食材に舌鼓を打ちました。
地域のキープレイヤーの方々も検討の様子を見に来てくださり、ディスカッションは夜中まで続きます。


 
考えて、寝て、食べて、また考える

 

提案1:泊まれる東彼杵小学校

170117 音琴小学校

いよいよ最終日、合宿の成果を地域の方々に発表します。
「学校活用チーム」の提案は、地域の交流拠点としての機能を維持しながら、来訪者に町の魅力を伝える、情報発信+宿泊施設の機能を持たせる提案です。私たちが地域の方から沢山の魅力を教えてもらった体験を、そのまま伝えたいという思いを形にしました。

フロアごとに、3階は「泊まる場所」とし、普通教室は合宿用の大部屋やドミトリールーム、特別教室はテーマ別の個室とします。
2階は「集う場所」。オープンスペースに「そのぎ茶カフェ」を設け、地域の方が集える場をつくるとともに、そこで来訪者が地域の情報を得るレファレンス役割を持たせます。
1階は「働く場所」。移住者が多いことを踏まえチャレンジショップとして利用できるように整備する提案です。

カフェで使う食材は大渡商店の味噌や大山製茶園のお茶を使い、お料理は地域のお母さんに手伝ってもらうなど、地域の力が発揮できる場所を作りたいと考えました。

 

 

提案2:「ふつうじゃない」町の魅力を支え・伝える 

スライド2

「エリアマネジメントチーム」は、見慣れている風景を「ふつうじゃない」魅力として再認識してもらうための、町外発信コンテンツと、町内での魅力づくりを支える組織づくりの提案です。旧音琴小学校を活かすには、町全体の魅力を知ってもらう必要があること、その魅力は既に揃っていることを再認識してもらう狙いです。
まずは、魅力を伝えるコンテンツ。Uターン・Iターンの方を中心に、東彼杵町の写真を1日1枚公開していくHPをつくり公開。町外に出た人にとって、故郷の風景は特別なもの。移住者が多い東彼杵町だからこそ、あえて外からの視点で日常を切り取ることで、魅力を発見・発信していきます。
次に、魅力づくりを支える組織について。小さくて素敵なお店が沢山あることに着目し、新しく「小商い」を始めたい人のサポートチームを組成。既にお店を始めている人でDIY集団をつくり、新規出展者が現れた時に一緒に店作りを行います。支えられた人が次の支える人になり、連鎖を続けることで、素敵な空間を町に増やしていきます。

写真によるまちづくりを始めている、「東彼杵探偵団」を事業の担い手として提案。実際に動き出すときにはご協力する!という心強い言葉もあり、実現可能性の高い提案となりました。

 

廃校活用を通してまちの未来を考える
旧音琴小学校に寝泊まりし、町民の声や自然豊かな環境をダイレクトに感じながら、東彼杵町の未来を考えた3日間。

DSC_0238廃校の活用を考えることは、町の全体像を考えることにつながります。まちの歴史を知る人と、これから町をつくっていく若いプレイヤーが、どのような役割を担っていくか。町内の人と、町外の人が、それぞれどのような視点で地域の魅力を育み、発信していくか。様々な世代が想いを共有する学校を通して、それらが少しずつ見えてくるように思います。今回の合宿が、東彼杵町の未来を考えるキッカケになっていくことを願っています。

 

短い期間でしたが、ご協力いただきました町内のみなさま、本当にありがとうございました!

日経BP社「新・公民連携最前線」に公共R不動産のコラムを連載中