公共R不動産のプロジェクトスタディ
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河川敷で一夜限りの映画鑑賞|ねぶくろシネマ

2016年3月の夜、多摩川河川敷に一夜限りの映画館が出現、映画「E.T.」が上映されました。京王線の橋脚にプロジェクターで映し出される大きなスクリーンで、400人以上が寝袋や毛布にくるまり映画を鑑賞。会場では温かい飲み物や映画にちなんだ食べ物も販売されました。赤ちゃんが泣いても、犬が吠えても問題なし。映画が終わるころには大きな満月が昇り、誰もが忘れがたい映画体験となりました。

父親たちのブレストから始まった野外映画館

これが2回目の開催となった「ねぶくろシネマ」。きっかけは、調布在住の父親たちが始めた「調布を面白がるバー」というブレスト飲み会でした。映画の撮影所があった調布市は「映画のまち」を宣言してきましたが、当時は映画館もなく市民には実感がありませんでした。家族で気兼ねなく映画を観られる環境をつくれないかという議論の中で出てきた「多摩川の橋脚に映画を映して芝生の上で観たら気持ちいいのでは」というアイデアを実現すべく、パッチワークスという会社を設立。橋脚は京王電鉄、グラウンドは調布市、それ以外の河川敷は国交省が管轄していましたが、2週間後には河川敷で上映許可を取りつけました。

「ねぶくろシネマ」は、2017年末で20回を超え、全国に広がっています。橋脚や壁、廃校、競馬場といった遊休不動産を活かすこともあれば、公園にスクリーンを設置することもあります。プロジェクター、スクリーン、音響設備、発電機、映画の著作権料など、1回の開催で30万円はかかるが、「呼ばれればどこへでも行きたい」と代表の唐品知浩氏は語ります。

夕暮れ時、多摩川河川敷に続々と人が集まる

上記の記事については、公共R不動産が編集・執筆した書籍、
公共R不動産のプロジェクトスタディ 公民連携のしくみとデザイン」でもご紹介しています。
他事例や妄想コラム・インタビューも掲載していますので、ぜひご覧ください。

PROFILE

松田 東子

株式会社スピーク/公共R不動産。1986年生まれ。一橋大学社会学部卒業後、大成建設にてPFI関連業務に従事。2014年より公共R不動産の立ち上げに参画。スピークでは「トライアルステイ」による移住促進プロジェクトに携わる。2017年から2020年までロンドン在住。2021年University College London MSc Urban Studies 修了。

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